ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

共依存概念の検討

 

 

今度次の本の合評会があり、私もシングル単位、主流秩序、DV加賀プログラム実践者、フェミニストとして発言します。

 

小西真理子『共依存の倫理―――必要とされることを渇望する人々』晃洋書房、2017年9月

 

映画「リービングラスベガス」の評価にもかかわるものです。

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共依存の倫理と支援の在り方

掲載日: 2018-01-23

 

日時: 2018年3月9日(金)14:00〜17:00(開場 13:30) 会場: 立命館大学 朱雀キャンパス 304教室 主催: 立命館大学生存学研究センター 参加: 参加費無料、申し込み不要

※駐車スペースがございませんので、ご来場の際は公共交通機関をご利用ください。

 

企画趣旨

 

生活に何等かの困難や問題を抱えている人々の生存を支える制度の体系として、福祉や医療が存在する。こうした制度やそれに基づく支援の枠組みは、多くの場合、まず当事者が生活に困難を感じ、しかる後に(ときには当事者による様々な運動を経て)そうした困難が「社会問題」として受けとめられるようになることによって、整備されてきた。しかるに「共依存」という問題に対する支援の枠組みは、そうした経緯とはいささか異なる形で展開してきたところがある。「共依存」は、当事者の生命も危険にさらす関係性として専門家や支援者から問題視されてきた。実際にこの視点は「共依存」に苦しむ多くの人を救ってきた。しかし他方でその当事者のなかには、そうした関係性に価値を置く人びとも少なからず存在してきた。

 

こうしたなかで小西真理子氏は、著書『共依存の倫理――必要とされることを渇望する人びと』において、共依存関係の危うさにも触れつつも、「共依存」の当事者の声にも耳を傾けながら、「共依存」における「倫理」を考察し、共依存関係にありながらも「分離」を望まない当事者に対する支援の在り方や、「支援」と距離をとって生きることを選ぶ人びとの「評価」に対して問題提起している。〈共依存という生き方〉や、そうした関係にいる当事者の〈価値観〉や〈愛〉を、われわれはどうとらえるべきなのか。小西氏の著書を手掛かりにし、倫理学・修復的司法・フェミニズム・DV被害者支援などという観点から議論を深め、参加者が、共依存関係に内在する「危うさ」と「倫理」について深く理解し、そして支援の在り方について考える契機としたい。

プログラム

1330

開場

1400

企画趣旨説明 角崎洋平(日本学術振興会特別研究員PD/生存学研究センター客員研究員)

1410

コメント1 奥田太郎(南山大学教授)

1430

コメント2 小松原織香(同志社大学嘱託講師他)

1450

コメント3 伊田広行(DV加害者プログラム・NOVO(ノボ)運営者、神戸大学立命館大学愛知淑徳大学大阪経済大学非常勤講師)

1510

休憩

1530

著者からのリプライ 小西真理子(日本学術振興会特別研究員RPD/生存学研究センター客員研究員)

1600

全体討論

1700

終了

お問い合わせ先

立命館大学生存学研究センター事務局 〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1 TEL:075-465-8475 FAX:075-465-8245 E-mail:ars-vive@st.ritsumei.ac.jp

 

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日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その4 

日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その4 

 

8. 日本政府が、閣議決定で認めた 19簿冊182点の文書に存在する記述

 

 この度の紙智子議員の質問主意書での「記述の確認が」が原文と完全に一致するものではなかったにせよ「御指摘のような記述がされている」と閣議決定答弁書で確認した意義は大きい。以下に「完全に一致する記述」を紹介する。この記述が何を物語っているのか、真実は何かを広く国際社会が知る必要がある。

 

これらの記述に対して日本政府の副長官補室審議官は「個別の資料の評価はしていない。全体として見ると、強制連行を直接示すような記述は見当たらない」と述べている。[i]

 

 これらの記述を確認しながらも「強制連行を直接示すような記述は見当たらない」と日本政府が言い続けるならば、それは国際社会で恥をさらし続けるだけであろう。しかし、これらの文書入手した以降今日まで、日本政府は「強制連行を示す文書は無い」と公式に発言することをしていない。もしかしたら、きちんとした訂正をせずに口をつぐんだままでいることにしたのかも知れない。

 

 

(1)(政府の通し番号29の2)「桂林市民九名の(桂林市内に於ける日本軍残虐行為)宣誓供述書広西省」に「偽組織人員を利用し工場の設立を宣伝し四方より女工を招致し、麗澤門外に連れ行き強迫して妓女として獣の如き軍隊の淫楽に供した」との記述がある。これは誘拐罪の記述である。

 

 

(2) (政府の通し番号30の2)ブリラグ・フエルナンの宣誓供述書に「各地ではフランス人女子に対        する凌辱行為も若干行われました。ある婦人と十四歳になるその妹とは、強制的に数週間、約五十名の日本兵と雑居させられ、その虐待と暴行を受けました。その一人は発狂しました。彼女達は二人ともその後処刑されました。また別の例では(中略)更にまた数地方では原住民婦女子は売淫行為を強制されました」との記述がある。これは18歳と14歳のフランス人姉妹を全裸のまま兵舎に数週間置き奴隷状態にしていたことを示す記述である。

 

(3) (政府の通し番号31の12)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第25号事件(1名)」の法務省面接調査でバリ島海軍第三警備隊特別警察隊長からの聞き取りとして「私の一番恐れていた事件は、慰安所事件であった。これは慰安婦の中には、スラバヤから蘭軍下士官の妻君五人の外、現地人七十人位をバリ島に連れて来た件である。(中略)この外にも、戦中の前後約四カ年間に二百人位の婦女を慰安婦として奥山部隊の命により、バリ島に連れ込んだ。私は終戦後、軍需部、施設部に強硬談判して、約七十万円を本件の工作費として貰い受け各村長を介して住民の懐柔工作に使った。これが完全に効を奏したと見え、一番心配した慰安所の件は一件も訴えが出なかった」との記述がある。これは、部隊(軍)の命令により「慰安婦」を連行した記述である、

 

(4) (政府の通し番号33の1)「BC級(オランダ裁判関係)ポンチャナック裁判・第13号事件(13名)」の起訴状に「本被告は(中略)特警隊が強制売淫をなさしむる目的を以て彼女等の意志に基かずして少女婦人を拉致せるを黙認せり。(中略)又本被告は〇〇に対しカタバンの少女・婦人等をポンチャナックに連れ来り慰安所に入所せしむべく命じたり。其の命により二十名の少女・婦人等は自己の意志に基かずして(中略)慰安所に入所せしめられたる上強制的に淫売婦たらしめたり」との記述がある。と、女性たちを性奴隷状態に置いていたことの記述である。

 

  (政府の通し番号33の3の2)同事件の判決文に「第一被告は「ポンチャナック」警備隊長兼特警隊長としTKTに依り犯罪行為が行われたることを知りいたる上、多くの場合之に自ら命令を与 えたり(処刑、及慰安所用に婦女を探すこと)」との記述がある。

 

   同判決文に「斯る最大級の野蛮なる振舞いをしても住民を絶えず恐怖におののかしむるには未だ足りずとて、敵は婦女子を慰安所にいれて之に売淫を強制することに依り犯罪を重ねたり」との記述がある。

 

(5) (政府の通し番号35の2)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第69号事件(12名)」「婦女達は交互にこの手術台に乗せられ一番検査に都合の良いやうな恰好をした。之を眺めているものが見て、大声で笑ひたてた。恐れと痛みから台から降りやうとすると、手荒く取扱はれた(中略)此の時〇〇の行動も極めて唾棄すべきものがあった。即ち、彼は煙草の火で陰毛や大腿部を焼いたりして、皆で大笑ひの種にした。(中略)三名の娘が失神したが、名は憶へていない。此の三名は正気づかせる為に打ち殴られたり、大声で怒鳴られたりした。(中略)既に第一日目である日曜日の午前中に十八名~二十名の客がとられ、その上に夜間にも「仕事」があった。月曜日の朝には既に数名の娘は起き上れず、歩けもしなかった。(中略)B姉妹は逃げ出して終った。然し、彼女達は火曜日の朝には警察の手に依って捕った。送り帰されて来てから、彼女等は裸にされ、洗濯夾を乳首につけられて、便所の掃除をさせられ、通りがかりの日本人達から侮辱された。」との記述がある。読むに堪えない悲惨な実態で在り、まさに性奴隷の実態を記述している。

 

 

(6) (政府の通し番号35の36)前記第69号事件の判決に「被告は(中略)婦女子を抑留所より連行し之を慰安所に入れることが ―たとえそれが自由意志にて行はれたにせよ― 人道及び国 際条約の侵反行為なりと悟る程には本件を深く考えざりき。(中略)(日本人)自らが設けたる抑留所の非人道的な悪状況(食料、宿舎)を利用して抑留所より志望者を募集すること自体が既に道義と人道に反する行為なるも、本件の場合はそれと共に又戦争の法規慣習に対する違反行為なり。更に「兵站係将校」をも兼務しありたる被告は、斯かる計画を是認し、その計画作成に協力し、更に、本計画が如何に実行され、又その結果開設されたる慰安所が如何に経営せられたるやの監督を全く行はざりし事実に依り、犯罪行為に責任を負はざるべからず。(中略)被告は高級将校として和蘭人婦女子が一般的に、又、主義として日本人の慰安所慰安婦として働くために抑留所を離るることを欲さざること及び斯かることは偽瞞乃至暴力を用ひて始めて可能なることを当然知りいたる筈なり。(中略)被告〇〇を「強制売淫の為の婦女子の連行」、「売淫の強制」、「強姦」なる戦犯行為に依り懲役15年に判決す」との記述がある。部隊(軍)が組織的に実施していたことを示しており、それが国際法に違反した犯罪行為であるとの判決文書である。

 

 

(7)(政府の通し番号36の74)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第106号事件(1名)」の〇〇中将に対する「判決文」に「次の部下が下記の刑に処せられていることを考慮し、即ち

   1 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制及び強姦罪で死刑

   2 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制罪で懲役十年

   3 被逮捕者の悪待遇罪で懲役七年

   4 被逮捕者の悪待遇及び強姦罪で懲役十六年

   5 強制売春の為の婦女子のら致罪で懲役二年

   6 売春強制罪で懲役二十年

   7 売春強制罪で懲役十年

   8 売春強制罪で懲役十五年

   9 売春強制罪で懲役七年

   10 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制、強姦罪で懲役十五年

(中略)この本人の自由意志に反してキャンプから連れてきた婦女子を遊女屋に入れることを容認したと言うことは、婦女及び娘達は、自己の意志に反してスマランの遊女屋に入れられたものであり、又、〇〇一味に対する事件の審理の際にも既に明らかにされた如く、彼女らは、如何なる条件の下にも遊女屋を出ることは許されず監禁され上記判決に証拠充分と認められ且つ本件においても右判決に基いて確実と見られている如く或は強姦或は悪待遇で売春を強制されたことが判明している故に、同時に彼の部下が犯した「売春強制」、「被逮捕者の悪待遇」及び「強姦」と言う戦争犯罪を容認したと言うことにもなることを考慮し(中略)本判決の頭初に掲げた被告人〇〇に対し、起訴事実のうち、証拠不充分のものについては無罪を、証拠充分のものについては「売春の強制」、「強姦」、「監禁した者の悪待遇」なる戦争犯罪に有罪を宣告し、よって懲役十二年の刑に処す」との記述がある。日本がサンフランシスコ条約で受け入れた裁判の判決であり、女性たちを強制連行し、性奴隷としていたことを認定している判決文である。

 

9. 韓国政府の新方針

 

 本年1月9日、韓国康京和(カンギョンファ)外交省長官が「2015年の日韓慰安婦合意に関する新方針」を発表した。報道によるとその内容は以下のものである。[ii]

 

 一、韓国政府は慰安婦被害者の方々の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けてあらゆる努力を尽くす

 

 二、この過程で、被害者や関係団体、国民の意見を幅広く反映しながら、被害者中心の措置を模索する。日本政府が拠出した「和解・癒やし財団」への基金10億円については韓国政府の予算で充当し、この基金の今後の処理方法は日本政府と協議する。財団の今後の運営に関しては、当該省庁で被害者や関連団体、国民の意見を幅広く反映しながら、後続措置を用意する

 

 三、被害当事者たちの意思をきちんと反映していない2015年の合意では、慰安婦問題を本当に解決することはできない

 

 四、2015年の合意が両国間の公式合意だったという事実は否定できない。韓国政府は合意に関して日本政府に再交渉は求めない。ただ、日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する。被害者の女性が一様に願うのは、自発的で心がこもった謝罪である

 

 五、韓国政府は、真実と原則に立脚して歴史問題を扱っていく。歴史問題を賢明に解決するための努力を傾けると同時に、両国間の未来志向的な協力のために努力していく

 本日述べた内容が被害者の皆さんの思いをすべて満たすとは考えていない。この点について深くおわびを申し上げる。今後も政府は真摯(しんし)に被害者の皆さんの意見に耳を傾け、追加的な後続措置をまとめていく。

 

 この韓国政府の新方針について「慰安婦」被害者支援団体の挺身隊問題対策協議会(挺対協)は「『合意は慰安婦問題の解決ではないことを政府が正式に宣言し、日本政府の拠出金10億円を(韓国の)政府予算で負担する方向は歓迎するが、日本政府の自発的な措置だけを期待することは矛盾』と指摘。

外交問題との理由で法的責任を問わず、政府にできる措置だけを取るという態度は受け入れられない」と強調した。その上で、合意に基づいて設立された慰安婦被害者支援財団「和解・癒やし財団」の解散を求めた』とされている。[iii]

 

 

日本政府はこの韓国の新方針に抗議している。「日韓慰安婦合意をめぐり韓国政府が新方針を打ち出したことを受け、外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は9日午後、在日韓国大使館の李熙燮(イヒソプ)公使を同省に呼んで抗議した。

 

抗議に先立ち、河野太郎外相は『日韓合意で慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認したにもかかわらず、韓国側が日本側に対して更なる措置を求めることはまったく受け入れられない』と反論。韓国政府に合意の履行を改めて求めた。

 

 韓国の康京和(カンギョンファ)外相は9日、合意について日本側に再交渉を求めないとする一方、元慰安婦の名誉回復などのため努力するよう期待する考えを明らかにした。これについて、河野氏は『合意は国と国との約束であり、政権が変わっても責任を持って実施されなければならない。合意の着実な履行は国際社会に対する両国の責務だ』と強調した。

 

 また、日本政府が元慰安婦への支援事業のために拠出した10億円について、韓国側が政府予算で補塡(ほてん)すると発表したことについて、河野氏は『発表以上のことをまだ承知していない』としつつ、韓国側に説明を求める考えも示した。

 ただ、韓国側は『合意に関して日本政府に再交渉は求めない』としており、両政府の立場は平行線をたどっている。日本政府は韓国側の今後の対応を注視する構えだ。」[iv]

 

 

10.  日本軍「慰安婦」問題の早期解決は可能

 

 

 日本政府が日本軍「慰安婦」問題を解決する気になれば早期の解決は可能である。残されている壁は、日本政府がその気になるかどうかの政策選択の壁でしかない。

 

国際社会では、被害者が告発する「日本がやった」ことを証明する資料は山ほど発見され収集されている。日本政府は、それに目をつむり問題を解決しようとしていないだけである。

 

例えば「「新たに見つかった資料の中に『軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述』のある文書があることが判明した。また、日本軍が「慰安所」を設置し、管理、運営していたことも明らかになった。更に、そこでの生活は、まさに性奴隷的な状況であり、「慰安婦」問題は,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。

 

日本国の内閣総理大臣が改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。」と発表することで解決に一歩近づくことが出来るのではないかと思われる。

この度、日本政府が閣議決定で「慰安婦」に対する強制の記述を認めた意義は大きい。

 

累次述べてきた通り、悲なしいかな我が日本政府はトリックを使い、有るものを無いと言うとんでもない政府である。私たちは、そのような政府を相手にしているのである。

 

より一層、日本政府に対し、しっかりとした加害事実の認定を求める国際社会の取組みを進めるとともに、その日本政府が、選挙で選ばれた人々によって構成されていることも指摘しておきたい。

 

そして、日本政府が解決する気になるための取組みを日本人の一人として行うことの重要性を改めてここに自覚していることを申し述べ、このレポートの終わりとする。

以上

 

 

 

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[i] 東京新聞 2017年04月17日(夕刊) 、共同通信配信、

[ii] 朝日新聞 2018年1月10日 https://www.asahi.com/articles/ASL194RPYL19UHBI00Y.html

[iii] 聯合ニュース 2018/01/09 16:39 http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2018/01/09/0400000000AJP20180109004700882.HTML

[iv] 朝日新聞 2018年1月9日18時48分https://www.asahi.com/articles/ASL195PXNL19UTFK01M.html 

 

                                     (2018年2月27日)

                                 ――――――――――――――

連絡先 小林 久公 (KOBAYASI HISATOMO)

 

日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その3 

日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その3 

 

 

4, 「強制連行はなかった論」の進行

 

 限りなく制限条件を付けたこの答弁書の「強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」という文言は、その後「強制連行を示す文書は無い」⇒「強制連行は無かった」⇒「『慰安婦』被害者は嘘つきだ」⇒「『慰安婦』はいなかった」へと次々とエスカレートし、ヘイトスピーチにつながっていくことになる。

 このエスカレートは日本政府によって支えられ、そして、日本政府自らがその道に落ち込んで行ったのである。

 

 第二次安倍政権は、河野談話を亡きものにしようとしたが、国際世論の反撃にあい安倍内閣河野談話村山談話の継承を表明するが、その骨抜きを図ることに方針転換をしたと思われる。[i]

2014年4月に内閣官房に「河野談話作成過程等に関する検討チーム」を発足させ、その報告を同年6月20日に公表した。[ii]

 

この報告書によると1991年10月ごろには既に「一部に強制性の要素もあったことは否定できない」との認識を日本政府が持っていたことが確認されている。しかし、報告書の結論は「(河野談話までに集めた)これら一連の調査を通じて得られた認識は、いわゆる『強制連行』は確認できなかったというものであった」と断定させるものであった。

 この報告書を受けて菅内閣官房長官は、2014年10月21日に、国会で「まさに強制連行を確認できない、示す資料がなかった」との答弁をした。[iii]

 そして、2015年12月の「日韓合意」後の2016年2月16日に、国連の女性差別撤廃委員会の席上、日本政府を代表して外務省の杉山外務審議官が、期間限定条件無しに「日本政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる『強制連行』を確認できるものはなかった」と発言をエスカレートさせている。

 

5. 「慰安所」での性奴隷状態こそ日本軍「慰安婦」問題の核心

 

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日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その2 

日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その2 

 

 

2.  河野談話の事実認定の背景

 

 日本軍「慰安婦」問題が、浮上してきた背景には1987年の韓国民主化闘争とその後の日韓市民の取組みがある。当時は、高度成長でアジアの大国に復活した日本から韓国へ「キーセン観光」が盛んであった。その売買春ツアーに対する取り組みが韓国では「韓国教会女性連合会」が、日本では「キリスト教矯風会」などが結成した「売買春問題と取り組む会」が行っていた。

 

 1990年1月、日本軍「慰安婦」問題を調査していた尹貞玉先生が「挺身隊、魂の足跡」を韓国の日刊紙に連載し大きな反響を呼んでいた。[i]

 同年5月30日に、日本の国会で社会党竹村泰子議員が「従軍慰安婦の調査もなさいますね、官房長官」と日本政府に調査を要求し、同じく6月1日には共産党の吉岡吉典議員が、同月6日には社会党本岡昭次議員が「慰安婦」問題を取り上げて質疑を行った。

 

この6日の本岡質疑で日本政府は「民間の業者がそうした方々を軍とともに連れて歩いている」と答弁し、この無責任な答弁に、韓国では猛烈な反発が起こった。

 そして、この年の10月17日に韓国女性団体連合会など39の団体が駐韓国日本大使館を通して日本政府宛に6項目要求の公開書簡を提出した。その内容は次のとおりである。[ii]

 

 ① 韓国女性を強制連行した事実を認めること。

 ② これについて公式謝罪をすること。

 ③ 蛮行の全貌を明らかにすること。

 ④ 犠牲者たちのために慰霊碑を建てること。

 ⑤ 生存者や遺族たちに賠償すること。

 ⑥ 同じ過ちを繰り返さないために、歴史教育でこの事実を教えること。

 

この6項目要求を提出した段階では、まだ「慰安婦」被害者の出現は無かったが、その後のアジア連帯会議などをとおして「慰安婦」被害者の同意を得て共通の要求になっていった。

 1990年の公開書簡に回答していない日本政府に対し、翌1991年4月1日に本岡議員が再度国会で取り上げた。その答弁で「厚生省勤労局も国民勤労動員署も朝鮮人従軍慰安婦』といった問題には全く関与していなかった」と答弁し「政府の関与」を否定した。

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日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その1 

日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その1 

 

 

ソウルで「日本軍「慰安婦」資料の現在と未来国際コンファレンス」があったそうで、そこで小林久公さんが発表したレポートを知りました。

とてもまともなものと思いますので、紹介しておきます(掲載の許可を得ました)。

 

長いので、4

回にわたって載せます

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日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 

                   小林 久公 

(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動 資料チーム)

 

                                 Japan National Movement for resolution of "Comfort Women"Issue

Member of a material team Hisatomo Kobayashi

 

1. はじめに

 

 (1) 私の問題提起

 

 日本軍「慰安婦」被害者が、その損害賠償と謝罪、名誉回復と再発防止を求めているのは日本政府に対してであり、その求めに応じて日本軍「慰安婦」問題を解決する責任が日本政府にあると私は考えている。

 その解決の前提が、被害者に対してその加害事実を認めて謝罪し賠償することである。問題解決は、被害者がそれを受け入れることができるかどうかにかかっている。

 日本軍「慰安婦」問題の解決が求められてから四半世紀を過ぎた現在も、日本政府はこの問題を解決できないでいる。その原因は、日本政府が加害事実をしっかりと認定しないでいるところにある。

 

 この四半世紀、多くの研究者によって「慰安婦」関係資料の調査・研究が進められてきたが、残念ながら、それらの成果は、日本政府の事実認定に生かされていない。日本政府は、それらの資料を無いものとする独特の立場を一貫して貫いている。

 

 この状況を打破して、しっかりした事実認定を日本政府にさせるためには、各国、各団体などが収集している資料と、日本政府が収集している資料を相互に共有し、事実認定の共有の基礎をつくることが必要である。

 

2014年に「第12回日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議」が「日本政府への提言」とともに500点を超える資料を日本政府に渡し、その共有を図ろうとしたことがあるが、日本政府は「市民からの資料提供は、受け取れない」として返却してきた経緯がある。

 

 この経験を踏まえるならば、国と国との関係として事実認定の共有化を図るための相互の資料提供関係を作り上げることが望ましいと考えられ、この間、収集、発掘された資料について、各国政府を通して日本政府に提供し、また、日本政府が収集した資料についても各国政府を通して入手することが大切である。このことは、資料のデータベース化による共有システムの構築とは別に、「慰安婦」問題解決のために必要な取組として、本カンファレンスで、そのような取組み方向が確認されることを期待している。以下に、そのための論を展開する。

 

 

 (2) 日本軍「慰安婦」問題解決の基本

 

繰り返しになるが、日本軍「慰安婦」被害者は、日本政府に「日本がやったことを認めよ」、「謝罪し賠償せよ」と求めているのであり、日本軍「慰安婦」問題解決の基本は、日本政府が「慰安婦」被害者に対して、その加害事実を認め、謝罪し賠償し、再発防止の措置を約束することが基本原則であると考えている。

 

 日本政府は長い間、国と国との紛争の解決については相互に交渉主体とし認めてきたが、他国に対する個人請求権の存在は認めながらも、国際関係での国と個人との当時者同士の関係を裁判上でしか認めていないように思われる。だが、日本軍「慰安婦」問題は、国が犯した人権侵害をその被害者に対して謝罪し賠償する問題である。そこに難しさはあるが、世界の趨勢は個人と国の関係を認める方向に動いていることを日本政府は知るべきである。

 

 本論の9で扱っている韓国政府が「慰安婦」問題の新方針として打ち出した「日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する」との立場は貴重なものである。

 とりわけ、加害の事実認定なしに、謝罪も賠償も成り立たないのであるから、日本政府の日本軍「慰安婦」問題に対するしっかりした事実認定こそが問題解決の基本となる。

しかし、これまでの「河野談話」、アジア女性基金(国民基金)の「お詫びの手紙」、「2015年の「日韓合意」の事実認定では、責任の所在が曖昧なために解決に至ることができなかったものと私は考えている。

 

(3) 日韓両国政府に欠けている視点

 

 韓国の文在寅大統領は、昨年12月28日に声明を発表し「2015年韓日両国間の慰安婦合意は手続き的にも内容的にも重大な欠陥があった」、「これは歴史問題の解決にあって確立された国際社会の普遍的な原則に違反しているだけでなく、何よりも被害当事者と国民が排除された政治的な合意だった」と述べた。

 

 これに対し日本の河野外務大臣は「韓国政府が同報告書に基づいて,既に実施に移されている合意を変更しようとするのであれば,日韓関係がマネージ不能となり,断じて受け入れられません」との談話を発表した。[i]

 

そして本年1月4日には、韓国大統領は「慰安婦」被害者を招き「公式合意だった事実は否定できないが、合意で慰安婦問題が解決したと受け止めることはできない」と述べた。[ii]

 この日韓両国政府のやり取りに基本的に欠けていることがある、両国政府が日本軍「慰安婦」問題に対するしっかりした事実認定をしないままでいることである。文在寅大統領は「確立された国際社会の普遍的な原則」と述べているが、その普遍的原則こそがしっかりした事実認定を前提にしているものである。

 

 日韓両国で、日本軍「慰安婦」問題の事実認定を共有化する作業が必要であり、そのための「慰安婦」関係資料の情報共有が両国政府に期待されるところである。

 

(4) 日本政府の事実認定の問題点

 

日本政府の日本軍「慰安婦」問題についての事実認定は、1993年8月4日の「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」(以下、河野談話と言う)に示されている。この河野談話は、現在の安倍政権を含め歴代内閣が継承している。そこには次のような事実認定がなされている。[iii]

 

①「長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた」

 

②「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送

については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した

 

③「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加

担したこともあったことが明らかになった」

 

④「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」。

 

⑤「戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた

 

 この日本政府の事実認定は、「慰安」の募集が本人たちの意思に反した強制的なものであり「甘言、強圧」などの違法手段で行われていたことまでは認めている。「慰安所」での生活も強制的な状況の下での痛ましいものであったことも認めている。

 だが、この河野談話の事実認定は、「慰安婦」被害者とその支援者たちには受け入れられるものとならなかった。その主な理由は、日本軍と日本政府の主体としての責任を曖昧にする「軍の関与」のもとに行われたとの不十分な事実認定にある。

 

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 

[i] 日本外務省のホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_003587.html

[ii] 朝日新聞2018年1月4日18時 https://www.asahi.com/articles/ASL145DN5L14UHBI013.html 

[iii] 日本外務省のホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html

朝鮮総聯中央本部への銃撃事件にたいして

私たちは抗議の意を表明し、日本政府に厳正な対応を求めます

 

  報道によれば、2月23日午前4時頃、東京・千代田区にある在日本朝鮮人総聯合会

朝鮮総聯)中央本部の前に、男2人が車で乗りつけ、建物に向かって拳銃の弾を数

発撃ち込む事件が発生しました。

犯人は右翼活動家の桂田智司容疑者と右翼関係者の

川村能教容疑者であり、二人は建造物損壊容疑で逮捕され、容疑を認めているといい

ます。

 

警視庁公安部によると、桂田容疑者は、「北朝鮮による相次ぐミサイル発射に

堪忍袋の緒が切れた」と供述し、発砲後に中央本部に車で突入するつもりだったとの

ことです。

 

 

  桂田容疑者は、2013年に日本最大の在日コリアン集住地域である大阪の鶴橋におい

ヘイトスピーチデモ・街宣を行なった団体の顧問として活動を主導し、「われわれ

日本人はいかなる在日韓国、反日勢力、不逞鮮人どもの圧力に屈しない」とスピーチ

する(20161225日の「韓国とは絶縁せよ!日本国民怒りの大行進」にて)など、

南北を問わず朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンにたいするヘイトデモ・街宣にお

いてヘイトスピーチを繰り返してきた人物であり、今回の事件は、在日コリアンにた

いする差別意識・排外主義にもとづく「ヘイトクライム」(差別的動機に基づく犯

罪)にほかなりません。

 

 

私たちは、あらゆる人びとの人権と尊厳が保障される社会を擁護し、またそうした

社会を構成するメンバーとして、このようなヘイトクライムは決して許されないとい

う抗議の意をここに表明します。

 

 

私たちは政府にたいして、以下のとおり、今回の犯罪行為に厳正に対応することを

強く求めます。

 

1.今回の事件を非難する声明を直ちに公表すること

政府は今回の事件にたいして、在日コリアンへの差別意識・排外主義に基づくヘイ

トクライムとして、事件を非難する声明を公表すべきです。また、在日コリアンをは

じめとするマイノリティ集団への差別意識・排外主義に基づく犯罪行為にたいしては

厳格に対処していくことを、あわせて言明すべきです。

 

ヘイトスピーチ解消法は、ヘイトスピーチが被害者に多大な苦痛を強い、社会に深

刻な亀裂を生じさせているとし(前文)、解消が喫緊の課題であることに鑑み(1

条)、国は解消のための措置を講ずる責務を有すると定めています(4条1項)。今

回の犯罪は、言動による攻撃よりさらに深刻な銃撃という究極の暴力による攻撃で

す。在日コリアンの受ける多大な恐怖、絶望感を伴う苦痛と、在日コリアンを同じ社

会の構成員としてみず、殺傷してもいい対象だというメッセージのもたらす社会の亀

裂の深刻さを踏まえ、同法の責務としても直ちに非難の態度を明確にすべきです。

 

 

 

2.今回の事件をヘイトクライム事件として捜査し、差別的動機が認められる場合に

は厳罰を科すこと

 

欧米等多数の国においては、特定のマイノリティ集団への差別的動機に基づく犯罪

であるヘイトクライムにたいして、通常の犯罪よりも加重に処罰するヘイトクライム

法制が整備されており、本件のような特定のマイノリティ集団への差別意識に基づく

ことがうかがわれる犯罪については、動機についても詳しい調査を行ない、通常の犯

罪よりも厳格に処罰しています。日本においては、ヘイトクライム法が制定されてい

ませんが、政府は国連人権監視諸機関にたいし、動機が悪質な場合には斟酌して重く

処罰できる、と報告しています。本件においても、在日コリアンへの差別的動機を認

定した場合には、通常の建造物損壊事件に比べて、ヘイトクライムとして刑罰を加重

すべきです。

 

 

3.排外主義団体によるヘイトクライム再発の防止

 

日本社会には、朝鮮総聯がテロを準備しているかのような言説が流布されています

が、実際に近年連発しているのは、日本の排外主義団体あるいは排外主義思想を持つ

者によるヘイトクライムです。1990年代、朝鮮学校の生徒たちにたいするヘイトクラ

イムが続発したため、生徒たちが民族衣装の制服を着ることができなくなってしまい

ました。さらに2000年代にヘイトデモが行なわれるようになって以降、200912月か

2010年3月にかけての京都朝鮮学校襲撃事件、2014年1月の神戸朝鮮高級学校襲撃

事件、2015年3月の新宿の韓国文化院放火事件、2017年5月のイオ信用組合名古屋市

大江支店放火事件等と頻発しています。また、今年に入ってからも、福岡県直方市

ある在日本大韓民国民団の施設でのガラスが割られるなどのヘイトクライムをうかが

わせる事件が発生しています。

 

今回の事件は、排外主義団体あるいは排外主義思想を持つ個人によって引き起こさ

れる犯罪の危険性を端的に示すものであり、警察は、特定の民族への憎悪や排外主義

的な思想を表明する個人・団体の活動の取り締まりを強化し、ヘイトクライムの発生

防止に努めるべきです。

 

 

4.人種差別禁止法およびヘイトクライム法の制定

 

今回のヘイトクライムヘイトスピーチを連発していた人により起こされたもので

あり、ヘイトスピーチを放置するとヘイトクライム、暴力へ直結することを如実に示

しました。またヘイトスピーチ解消法には禁止規定、制裁規定がなく、実効性が弱い

との問題点が浮き彫りになりました。

 

日本には人種差別それ自体を禁じる法律はなく、人種差別は許されないという社会

的認識も低く、また、日本における人種差別の実態について、教育現場で教えられる

ことはほとんどありません。今回の事件の背景、および事件後に「在日朝鮮人による

自作自演」「総聯だから仕方ない」といった反応が散見される背景には、「人種差別

を禁止する」という社会規範が弱いことにも原因があります。今後のヘイトクライム

の発生を防止するためにも、政府は、ヘイトスピーチ解消法を実効化し、さらに人種

差別禁止法およびヘイトクライム法を速やかに制定すべきです。

 

  また、私たちは、報道機関においても、排外主義的な思想が実際の銃撃にまで至っ

た今回の事件が、南北を問わず多くの在日コリアン朝鮮半島にルーツをもつ人びと

を恐怖や不安に陥れていることを踏まえ、その背景を取材、報道し、ヘイトクライム

を決して容認しないという立場をいっそう明確にすべきだ、と考えます。

私たちは、この社会に暮らすすべての人びとの人権と尊厳が保障され、誰もが安心

して暮らせる社会の構築にこれからも力を注いでいく所存です。

 

2018年2月28

 

 

外国人人権法連絡会

移住者と連帯する全国ネットワーク

人種差別撤廃NGOネットワーク

のりこえねっと

ヒューマンライツ・ナウ

 

 

アリさんマークの引越社との労使紛争での合意内容

 

 

以下のキャンペーン報告で合意内容がかなり説明されています。本当に良かったです。

 

f:id:hiroponkun:20180227180732j:plain

 

 

 

 

 

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キャンペーン成功!アリさんマークの引越社との労使紛争について213日、中央労働委員会にて全面和解。組合員には弁償金の負担を求めないことを確約!

 

プレカリアートユニオン

 

2018年2月27日 — アリさんマークの引越社の労使紛争について、2月13日、中央労働委員会で全面和解をすることができました。 動画→https://www.youtube.com/watch?v=Dma5NNVdk1c

「大勢の皆さんと一緒に、会社を攻めていると思えた」  組合加入後、シュレッダー係に配置転換されたり、懲戒解雇をされたり、「罪状ペーパー」を貼られたり、さまざまな嫌がらせを受け、最初の頃は、何度も心が折れそうになりました。自分の無力さが悔しく泣いたこともありました。  懲戒解雇が撤回されて、職場に戻ったときに、誹謗中傷するような貼り紙を見たときは、さすがに食事がのどを通りませんでした。シュレッダーをかけるためだけに会社に通う毎日のなかで、朝、会社に近づくにつれて、動機がして苦しくなることもありました。  しかし、自分は矢面に立ってはいても、プレカリアートユニオンの組合員や弁護団、応援してくれる大勢の皆さんと一緒に、会社を攻めているという視点を持つことができました。だから闘い続けることができました。

 

 プレカリアートユニオンをはじめ多くの労働組合のみなさん、家族、友人、この問題に関心を持ってくださった多くの方々には、3年近くにわたり、多大なご支援をいただき、本当にありがとうございました。  

 

この闘いを通して、団結すれば、泣き寝入りすることなく闘えること、会社を変えることができることを示せたと思います。  

 

職場では孤独で、苦しかったときは、組合事務所が自分の居場所だと思うことができました。これからは、プレカリアートユニオンの専従として、この輪をもっと大きくし、職場で理不尽な目に遭っている一人ひとりが勇気を持って立ち上がれるよう、精一杯サポートしていきたいです。

 今後ともよろしくお願いいたします。  野村泰弘(副執行委員長/引越社支部支部長) 

 

中央労働委員会での和解協議は13時30分から22時過ぎまでかかりました。会社は、労働法を遵守し、不当労働行為を行わないこと、組合員に対して、故意や重過失を除いて弁償金の負担を求めないことを確約。

原告33人と未提訴4人の組合員の未払い賃金、弁償金(請求総額約2億4000万円)について、解決金を支払うことで合意(解決金額は非公開)。

 

組合加入後、シュレッダー係とされながらも、在職で果敢に会社と闘ってきた、これまでは西村有さんという仮名でメディアなどに登場していた野村泰弘さん(36歳)は、会社都合で退職(今後は、プレカリアートユニオンの専従として働く決断をしました)。過去の紛争については、互いに誹謗中傷をしないことを確約しました。

3年近くにわたり、ご支援いただき、有り難うございました。様々な応援をしてくださったみんなでつかみ取った成果です。この闘いで得たものは、特に若い世代の労働者にとっても労働組合が希望となるように、職場の理不尽に泣き寝入りする、辞める以外の闘って変えるという選択肢があるということをお伝えしながら、皆様にお返ししていきます。有り難うございました!

http://www.labornetjp.org/news/2018/0215ari レイバーネット

「アリさんマークの引越社」争議が一括和解~野村さんユニオンの専従職に https://www.asahi.com/articles/ASL2F5W7VL2FULFA028.html 朝日新聞 2018年2月14日22時27分

元シュレッダー係の労使紛争、「アリさん引越社」と和解 https://www.bengo4.com/c_5/n_7421/ 弁護士ドットコム 2018年02月13日 23時09分 アリさん「引越社」労働問題、ついに和解、元シュレッダー係の男性「本当に良かった」 http://www.yomiuri.co.jp/national/20180214-OYT1T50116.html 読売新聞 2018年02月14日 20時54分 「引越社関東」社員配置転換で労組側と和解

和解条項について 組合及び組合員らと会社らは、本件紛争が下記の通り中央労働委員会において和解により円満に解決したことを表明する。 記 1 組合及び組合員らと会社らは、組合及び組合員らに関する現在継続中の事件並びに実継続の未払い賃金及び弁償金等に関する紛争(本件紛争)を全て解決し、今後の円満かつ正常な労使関係を実現するため、この協定を締結し、信義誠実の原則に則り、この協定を締結することを確約する。

2 組合と会社らとは、労使間の問題については誠実な団体交渉によって解決を図り、相互に良好な労使関係の構築に努める。

3 会社らは、労働関係法令を遵守し、不当労働行為を行わないことを確約する。

4 会社らは、組合員に対し、故意又は重過失があるなど信義則上相当と認められる場合を除き、弁償金の負担を求めない。

5 引越社関東と在職中の組合員1名は、同人が会社都合により退職することを確認する。

6 会社らは、組合に対し本件紛争に関する解決金を支払う。

7 組合及び組合員らと会社らは、相互に誹謗中傷等相手方の信用を損なう行為を行わないことを確約する。

8 会社らと組合、会社らと組合員らとは、それぞれ本件紛争について、本件和解協定に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。 以上 【労働相談】誰でも一人から加入できる労働組合 プレカリアートユニオン 労災、残業代請求、解雇、パワハラ、セクハラ……解決できます。 〒151-0053東京都渋谷区代々木4-29-4西新宿ミノシマビル2F TEL03-6276-1024 FAX03-5371-5172 info@precariat-union.or.jp ※会社のPCからは相談メールを送らないでください。 http://d.hatena.ne.jp/kumonoami/  http://www.precariat-union.or.jp/

「大江千里「ヒットして最大公約数のファンを得ることは、本当に好きな人を減らすんだな。」


鷲田さんが紹介していたので、大江さんのインタビュー記事を読んだ。

 

東洋経済オンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180131-00206780-toyo-bus_all&p=1
大江千里、47歳で始めた僕の「ライフ・シフト」
1/31(水) 6:00配信


***********

 


全体を読んで、少し、鷲田さんの紹介と違う印象も受けたが、主流秩序論に通じる、自分の生き方をみつめるものを感じて好感をもった。


おすすめです。


多くの人に受けるようにシステムに巻き込まれ金もうけにとらわれるのではなく、そこから離れて、手ごたえのある小さな、直接的なかかわり。秘書とかの支援があるのではない生き方。多くの人に受けるということによって失うもの。

主流秩序論的に分かるなあと思うところが多い。

 

以下、一部だけ紹介
****
 そうなんです。だから米国の地元の高校で講演をすることもあるんですよ。人生は限りがある。だからやりたいことをやるために、これからの人生を使おう。そういう決断を47歳でした。そのためにすべてを一度捨てた。この過程そのものを話します。
学校を卒業して、米国のレコード会社がCDを出してくれるわけでもないから、自分で音楽レーベルを作ってネットで売っている。そういう話をすると、「結局、捨てたのは何?」「逆に手に入れたのは?」といった突っ込んだ質問が高校生から来るんですよ。


 ――「何を捨てたのか」は、ぜひ聞きたいです。

 

 「アメニティグッズみたいなもの」を捨てたんだと思います。たとえば、誰かに運転してもらってその間に仮眠をする、といったことですね。今だったら移動は全部自分で公共交通機関に乗って、必要な機材を担いでします。これがいちばん違いますよね。

 

 

――人にサポートしてもらうことを捨てた? 

 

 サポートというより、コンフォータビリティ(快適さ)みたいなもの。それはそれで価値のあることではあったのですが、今の僕はもっと別のところに照準を当てていて、そっちに価値を見いだして生きている。その価値観の中では、コンフォータビリティはいちばん重要じゃなくなったんですよね。

 


***
 肝炎のような身体的な問題があったのも、やっぱり休養が足りなかったのかなあ、と思ってしまう。ゆっくり休んで、ワインを飲んで、翌日起きて、「今日も生きてて、こうやってぱちっと目が開いた。何だってできるよね、恥なんて捨てて! とりあえず犬の散歩に行きますかね」っていう感じになれば、もう一度わくわくしてくる。

 

  人生って、時々休んで思い切り羽を伸ばせて、話を聞いてくれる最高な仲間が1人でもいたら、十分なんとかやっていける。たくさんの人に囲まれていなくても、高級車で移動しなくてもいい。電車で移動したほうがむしろ、そこでどんな出会いがあるか、何が始まるかわかりません。


***

 

APOLLO』(1990年9月発売のアルバム)を出してオリコンランキング1位を取った直後ぐらいに、ライブツアーの会場で不思議な光景を見たんです。前回のツアーでいた人が、1列分ぐらいいないんです。地方の公演でしたね。あれ?  今オリコン1位なのにどうしていなくなっちゃったんだろう? って。ヒットして最大公約数のファンを得ることは、本当に好きな人を減らすんだな。これは覚悟しなきゃいけないときが来るんじゃないかな、って直感しました。それが見えたのは、僕だけだったんですよ。

 


 悔しい思いをした後に実際に音楽の世界で旬が過ぎ始めて、いろいろ頑張ってみたら次に仕事がつながってきて、そうしたらまたちょっと浮上して……という時期を迎えました。それが40代半ば。そのときにちょうど肉親の死が重なったこともあり、「僕はいつまでやるんだろう。やるんだったら覚悟を決めなきゃいけないことがあるんじゃないか」と思った。それで、どうなるかまったくわからない世界だけど、別の次元に行ってみたいという思いを止められなかった。こういう経緯がすべてあって、今ここにいるんだなと思う。

 


 

――近著の中で「運命を変えることは難しいかもしれないが、自分がどう生きるかは自分自身が決めることだ」という言葉があります。コンペで選ばれるかどうかは運命のようなもの。でも結果がどうであれ、そこに挑戦するかどうかは全然別の意味がある。

「“弱者”の集団的な戦い」への感性と立場

 

以下の香山 リカさんと北原 みのりさんの対談、(一部紹介だけだから不足点はあるが)まあそうおかしなことはいってないのに、コメント書き込みがひどい(いつもながら)。聞く耳を持たない「非国民は出ていけ」レベルばかり。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180225-00009760-gentosha-ent


「恋人からの過剰な束縛も性暴力だ<性暴力とフェミニズムを考える>」
2/25(日) 6:01配信

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慰安婦問題など存在しないなどといった暴論も含め、あまりにおろかな意見の人は相手にする必要はない(過剰に影響される必要はない)のだが、ネットには一部勢力が組織的意図的に左翼批判、フェミニズム批判などを載せ、それに乗せられて洗脳・動員される「一般の人」もいて、またその書き込みを見て影響を受ける人が一定いる。その相乗効果が今や安倍政権的なものを維持させている。

 

 

こういう本を含め、ネットのなかでもまともな意見を出して暴論や偏見や間違った情報を正すことが必要なことは間違いない。
またこういう状況だからこそ、一部、素直な意見には丁寧に説明して誤解を解くこともいる。

 

だが大きな流れというものもあって、なかなか難しいものもある。大衆の在り方、メディアや政治(民主主義、メディア)の在り方、インテリの在り方などの問題も絡まっているし、確かに一部の運動側の問題もある。大きくは主流秩序の問題がある。

私は「完璧でない」ことをもって社会運動を「中立主義的に批判する立場」はとらない。社会運動でも個人としての人間でも限界や問題があろうと、その意義(積極性)の側面をちゃんと見るべきと思う。時には「“弱者”の集団的な戦い」というものもある。それを強者の論理(形式的法的個人主義の水準)で、批判するような人が多いがそれはわかっていないなと思う。

 

例えばいじめられていた人(暴力被害者)の反撃の在り方、コミュニケーションの在り方は、「運動の観点」や「異文化容認、多文化共生の観点」がないとなかなか「理解、応援、共感する」ことがむつかしい。

(慰安婦問題でも学問の自由などの観点で、運動を批判するフェミニストや学者がいる)


が、なかなかそのあたりをバランスよく受け取る人が少ない。特に運動を知らない人は、分かったように批判して得意げになるから困ったものだ。感性と立場の問題(党派性)だ。


このことは無批判的に群れること、その仲間の間で相手側を一方的に攻撃することを無条件に肯定することを意味しない。自分のスタンスを持ちながら、ほかの人の在り方にも許容性を持つということが必要だ。と思う。

 

人権派の諸運動、平和運動、反基地、反原発、労働運動、リベラル、サヨクフェミニズムなどを種論としてブラッシュアップして説得力を高めたいと思うが、なかなか伝えきれていない。

 

それにしてもトランプや安倍やプーチンを求める排外主義的ナショナリズムに親和的な人々の増大(分断、戦争への熱狂)は、あらためて繰り返される歴史をおもう。

そのおかしさを主流秩序論として伝えて、自分で考えていく人、非暴力を選び取る人が増えることに微力ながら諦めずに力を注いでいきたいと思う。

 

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大阪市大のひどい対応 大阪市大不当解雇裁判

大阪市大不当解雇の件で、和解を進めるはずだったなかで、それを放置して都市研究プラザの公募が勝手に出されたということです。

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以下、尋問の案内です。

Aさんと被告証人の阿部所長の尋問が、1週間後に迫ってまいりましたので改めてご案内いたします。

2月28日(午後1時半から) 場所は大阪地裁809号法廷です。

この間の動きとして、大学が年明けにならないと復職に向けた具体的な労働条件を示すことができないと言うので和解協議を進めることができていなかったのですが、先日Aさんに全く知らされることなく都市研究プラザの公募が出されていたことが判明しました。 大阪市立大学および阿部所長は人を愚弄するにもほどがあると思います。

労働者として、研究者としての尊厳をかけて闘うAさんをぜひ応援に来て下さい。

関西非正規等労働組合 ユニオンぼちぼち http://rootless.org/botiboti/blog/

その人を想うだけでいい

「anone」第5回

病院の一室を寒空の下、見つめる人。

ここいてもしょうがないから

ここにいなさい。ここ、離れちゃダメ。何もできなくていいの。その人を想うけでいいの。その人、想いながらここにいなさい。

***

彦星君、目、覚ましたよ

++++

ある人のことを想ってお経をあげる、題目を唱えるという行為がある。

細く長く、その人を想うという行為がある。

生きなくたって、暮らせばいい。

しょうがなくても、する。

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前田朗が、「慰安婦」強制連行・証明の本紹介

今田真人『極秘公文書と慰安婦強制連行』(三一書房という本がでたそうで、 それについての前田さんの紹介。

http://maeda-akira.blogspot.jp/2018/02/blog-post_21.html WEDNESDAY, FEBRUARY 21, 2018

慰安婦」強制連行の証明 今田真人『極秘公文書と慰安婦強制連行』(三一書房https://31shobo.com/2017/11/18002/

1章 戦時動員職種に未成年朝鮮人女性の「接客業」 第2章 吉田清治氏が属した労務報国会を追う 第3章 奥野誠亮氏の死去 第4章 「業者」は初めから軍の偽装請負・手先

第5章 国会図書館が「極秘通牒」を内閣官房に提出 第6章 労務調整令の前身、青少年雇入制限令 第7章 発見した1938年当時の外務省関連文書 第8章 公文書が示す「慰安婦」強制連行のルートと人数

第9章 女子動員計画に「民族力強化」の言葉 第10章 婦女売買を禁じた戦前の国際法 【抜き書き】「慰安婦」強制連行関連の公文書(1938年中の外務省関連の公文書12点全文他、全41の資料を書き起こし)

朝日新聞が「吉田証言の検証」と称して歴史修正主義の立場を表明したことに対して、著者は、次の2冊の著書で、吉田証言の意義を明らかにし、一次資料に基づいて「慰安婦」強制連行の実相を追及してきた。

今田真人『吉田証言は生きている』(共栄書房) 前田朗編『「慰安婦」問題の現在―「朴裕河現象」と知識人』(三一書房) *

著者はその後も極秘公文書の調査を続け、今回1冊の著書として送り出した。外交史料館等の重要資料がこれまできちんと検証されてこなかったので、著者は一つひとつ読み込み、比較・検証して、資料の真義を確認している。

一例をあげると、歴史修正主義の典型例の一つである「業者主犯説」に対して、「業者」なる者の実態がそもそも軍関係等の人物であったこと、「業者」と称しているが軍の下部機関と言った方が早いこと、当時の植民地や戦地の交通手段(渡航証明書等)や食事の実際から言って、軍の組織的寛容がなければ、慰安婦を募集することも移動させることも、食事を提供することも不可能であったことなどを次々と明らかにしている。

本書で利用している資料のほとんどの抜き書きが巻末に「資料」として収録されているので、読者は資料に遡って、著者の論述の成否を自分で検討することができる。 「慰安婦」問題に詳しくない一般の世論では、「慰安婦」強制連行の否定という頓珍漢な見解が幅を利かせているが、日本政府・安倍政権が否定しているのは、軍による強制連行や強制連行への軍の関与である。「慰安婦」強制連行の証拠は多数あるが、軍による強制連行や強制連行への軍の関与、特に軍がそのような命令を下した証拠の存在である。ここでは、証拠そのものが争われているのではなく、証拠の「解釈」が争われている。どれだけ証拠があっても、恣意的な「解釈」によって軍の関与を否定するのが安倍流である。

これに対して、著者は、軍でなければ「慰安婦」の募集や連行が不可能であったこと、実際に軍が強制連行に関与したことを論証する。 政府及びマスコミは本書を無視するだろう。本書が注目を集めて議論の対象になることは歴史修正主義者にとっては困りものだからだ。

著者はあとがきで次のように指摘する。

朝日新聞の検証記事は、何度読んでも、学者などの見解(二次資料)を根拠にしたものばかりで、いっこうに、一次資料が明示されない。…(中略)…朝日新聞の検証記事に登場した何人もの学者・研究者からは当然、吉田証言を否定する一次資料を駆使した論文が、すぐに発表されると思ったが、いつまで待ってもそんなものは出てこない。日本の『知識人』は、本当にどうしてしまったのだろうか。」

これを読んで「恥」を知る「知識人」――朝日記者も歴史研究者もいないだろう。元々、歴史修正主義者たちなのだから、恥を恥とも思わないだろう。著者が名指しているのは、秦郁彦だけではない。外村大も名指されている。

ちなみに、外村歴史学のいかがわしさについては下記参照。

http://maeda-akira.blogspot.jp/2017/08/blog-post_20.html

前田朗よる、「帝国の慰安婦」擁護派への批判

http://maeda-akira.blogspot.jp/2017/08/blog-post_20.html

SUNDAY, AUGUST 20, 2017 預言者イエス朴裕河と15人の使徒

浅野豊美・小倉紀蔵西成彦編著『対話のために――「帝国の慰安婦」という問いをひらく』(クレイン) *

1.本書出版の経緯と編集方針 (1)ドグマとの闘い (2)イエスの受難 2.本書の基本的特徴 (1)第1の欠落:「応答しない」 (2)第2の欠落:「批判者を明示しない、引用しない」 (3)第3の欠落:「法を否定する」 (4)第4の欠落:「解決策に関心がない」 3.復活の日のために *

1.本書出版の経緯と編集方針

(1) ドグマとの闘い

しっかりした編集方針のもと、15人の執筆者が一糸乱れず編集方針を守って、ていねいにつくった本である。編集方針が確固としていて、言葉も明晰で、誤読の余地がない。迷いもブレもなく、目的に従ってまっしぐらの直球である。

日韓で政治的社会的問題となった朴裕河『帝国の慰安婦』を擁護する15人の著者による論文集である。 本書編集の直接のきっかけは「まえがき」(西成彦)に書かれているように、2016年3月に東京大学で開催された研究集会<「慰安婦問題」にどう向き合うか/朴裕河氏の論著とその評価を素材に>である。 「対話」を求めた研究集会(3.28集会)だったが、「オウムのように過去の主張をくり返す」(3頁)、「『ドグマ』にしがみつこうとする『帝国の慰安婦』批判の声は想像以上にかたくなで、『対話』らしい『対話』は成立しなかった」(5頁)からであるという。

つまり、問題は批判者の「ドグマ」である。あるいは、 「踏み絵」(24頁、浅野豊美)、 「自らの鏡に見えているものに誠実でありたいと考える人を窒息させようとする人たち」(44頁、東郷和彦)、 「レッテル貼り」(78頁、中山大将)、 「誹謗中傷」(96頁) 「悪意あるデマゴギー」(96頁) 「狂信」(104頁) 「病理」(104頁) 「集団ヒステリー」(112頁、以上の5つは、四方田犬彦)、 「暗黒の恐怖が渦巻いている」(277頁) 「恥ずべき暗澹たる汚点」(285頁、以上の2つは小倉紀蔵)である。 批判者は「暴力」「暴力的」である(本書に頻繁に登場する指弾の言葉である)。 ――本書はこうした悪罵のオンパレードである。他人を罵る表現に磨きをかけるためにひたすら時間を費やした金字塔である。 本書の著者たちは冷静に学問的に話しているのに、批判者はオウム、ドグマ、デマゴギー、狂信、病理、集団ヒステリーである。このことを何十回でも言わなくてはならない。

このように宣言して、本書では15人の著者が、歴史学、文学、フェミニズム等々の領域からこの問題に切り込んでいる。

私も、オウム、ドグマ、デマゴギー、狂信と切り捨てられている側の一員だ。例えば、次の出版に関わっているからだ。 前田朗編『「慰安婦」問題の現在――「朴裕河現象」と知識人』(三一書房前田朗編『「慰安婦」問題・日韓合意を考える』(彩流社) 「戦争と女性への暴力リサーチセンター」編『日本人「慰安婦」』(現代書館) 「戦争と女性への暴力リサーチセンター」編『「慰安婦」バッシングを越えて』(大月書店) 日本軍「慰安婦」問題webサイト制作委員会編『性奴隷とは何か:シンポジウム全記録』(お茶の水書房

なお、私も上記3.28集会に参加した一人であるが、発言の機会は与えられなかった。批判派50名、擁護派50名という規模なので、それはやむを得ない。秘密集会であったことに違和感を抱いたが、それも当時の「雰囲気」の中で主催者が選択したことであり、とやかく言うことではないと思った。ともあれ、この集会を企画・実現した主催者に感謝している。

(2)イエスの受難

この件では、朴裕河ハンナ・アーレントに喩える驚愕の珍事があったが、本書では、なんとエドワード・サイードに喩える(93~95頁、四方田犬彦)。そして、本書の随所で、朴裕河は実直誠実な研究者であり、不当な「誹謗中傷」に耐えているとされる。不当な批判が裁判にまでなり、朴裕河は精神的にも物理的にも迫害されているという。 こうした記述がえんえんと続いた後に、「もし彼女が精神を病んだり、自死したりしていれば、批判者たちはひとりの知識人の社会的生命のみならず、生存さえ奪った」ことになるという(257頁、上野千鶴子)。他人にここまで筋違いの因縁をつけて恫喝を加えるのだから、ぶっ飛んでいる。チンピラヤクザそのものである、と思ってはいけない。著者たちは、まじめなのだ。 何しろ、朴裕河は「民族の預言者」(264頁)であり、『帝国の慰安婦』は「十字架」(274頁)であり、すべては「イエスの受難」(274頁、以上の3つは天江喜久)であるのだから。

神の子にして預言者であるイエス朴裕河の著書『帝国の慰安婦』への批判など許されるはずがない。それはオウムであり、ドグマであり、狂信であり、暴力である。それゆえ預言者を守るために15人の使徒が立ち上がったのである。

15人の使徒は次の通り(なぜ名前を明示・列挙するかは後述する)。

浅野豊美(早稲田大学教授、国際政治) 小倉紀蔵京都大学教授、韓国思想) 西成彦立命館大学教授、比較文学東郷和彦京都産業大学教授、国際政治・元外交官) 外村大(東京大学教授、日本近現代史) 中山大将(京都大学助教、北東アジア地域研究) 四方田犬彦明治学院大学教授、比較文学) 熊木勉(天理大学教授、朝鮮現代文学中川成美立命館大学特任教授、日本近現代文学) 加納実紀代(女性史研究) 藤井貞和(詩人・日本文学) 熊谷奈緒子(国際大学准教授、国際関係) 上野千鶴子東京大学名誉教授、社会学) 天江喜久(台湾・長栄大学副教授、台湾近現代史) 金哲(延世大学校名誉教授、東アジア近現代文学

2 本書の基本的特徴

本書には数多くの特徴があるが、それをいちいち列挙できない。ここでは、その一つであり、基本的と思われる、「欠落、否定、無視、忘却」に限って示しておこう。明確な編集方針をしっかり守り、決して道を踏み外すことのない使徒の懸命の努力がうかがえる。

(1) 第1の欠落:「応答しない」

3.28集会前半の一つ焦点は、『帝国の慰安婦』には数えきれない事実誤認があり、しかもその事実誤認がすべて朴裕河の主張に都合の良い方向での事実誤認であるという論点であった。 批判者側は数人が次々と事実誤認を論証し、「事実誤認の上に学問が成り立つのか」と迫った。「朴裕河はSTAP細胞の小保方晴子だ」という趣旨の発言が締めとなった。 擁護派はこれについて応答しなかった。問題を特定せずに、一般的に「仮に事実誤認があったとしても」といったレベルの応答がなされるにとどまったといえよう。このため対話が成立しないのは当然であった。本書も同じことの繰り返しである。15人の執筆者たちは、事実誤認を認めようとしない。

そして、「なぜ<数>を問うのか?」(中山大将)のように、論点そのものを審判に付し、批判派が数や多寡を問うことそれ自体を批判する。数や多寡を問題にしたのは朴裕河であるにもかかわらず、中山は、批判派を非難する。

中には「確かに歴史的事実の誤認や不適当な説明」(50頁、外村大)があることを認める表現もあり、歴史研究において史料群を調査すると「自分にとって“都合の悪い史料”に出会ってしまう、ということは往々にしてありうる」(52頁)とし、「“都合の悪い史料”を無視することは、プロパガンダでは許されるかもしれないが、研究の世界においては行ってはならない」と正論を唱える。ならば、朴裕河はどうなのか。“都合の悪い史料”を書き換えているのではないかと疑われている『帝国の慰安婦』はどうなのか。ところが、外村の矛先は朴裕河ではなく、慰安婦をめぐる従来の歴史研究に向かう。「不都合な史料について考える作業は軽視されてきたのではないだろうか」(54頁)と。かくして事態は反転する。朴裕河の事実誤認は容認され、天上の星よりも高く評価されるが、それ以前の歴史研究の側にこそ問題があったことにされる。

ここで外村の学問方法論においては許される事実誤認と許されない事実誤認があることが判明する。そう考えないと理解できない。外村は許される事実誤認と許されない事実誤認をどのように区別しているのだろうか。外村自身が、歴史研究において、いったいどれだけの許される事実誤認を駆使してきたのか、それは書かれない。

私は刑事法専攻である。日本において刑事法を専攻するということは、自分の理論において他人に死をもたらすことがあるということである(私は死刑廃止論者だが)。刑事法においては、てにをはのミスも許されない。てにをはの一文字の違いで、死刑か無罪が分かれるのだから。従って、刑事法学の世界では、慎重さが求められると同時に、誤りは速やかに訂正しなければならない。擁護派・中山・外村のような主張をすることはおよそ考えられない。歴史学では許される事実誤認や許される書き換えがあるという事実が、本書を読んでわかったが、納得しかねる。たぶん、それは私のドグマであり、狂信なのだろう。

(2) 第2の欠落:「批判者を明示しない、引用しない」

本書では、15人すべてが、「批判者」を非難しながら、その「批判者」の氏名を名指ししない。「批判者」の文献・出典を明示しない。編集方針として明確に「批判者を明示しない、引用しない」と決めたのであろう。そう考えない限り、ありえないことが起きている。 他の著作で、このようなことがありうるだろうか。15人の著者が、同じ「批判者」をひたすら非難しているにもかかわらず、その「批判者」の名前を書かない、文献も引用しない、出典を確認できない、という稀有の事態である。

本書で用いられるのは、 「一部の市民運動」(19頁) 「この本をめぐる批判」(26頁、以上の2つは浅野豊美)、 「制度的レイプ派」(40頁、東郷和彦)、 「諸研究者」(81頁、中山大将)、 「彼らの一部」(111頁、四方田犬彦) といった言葉ばかりである。

本書には韓国挺身隊問題対策協議会の名前が頻繁に出てきて、何度も非難されている。ところが、韓国挺対協の主張をその文書から引用することはしない。論者が自在にまとめた言葉で語られるに過ぎない。 本書には吉見義明の名前が出てくる(54頁、外村大)が、「重要な資料を発掘し」たとされるだけで、吉見の研究内容は紹介されず、主張が引用されることもない。 本書には女性国際戦犯法廷が出てくる(171頁、西成彦)が、時代背景の説明のために出てくるにとどまり、女性国際戦犯法廷がいつどのように開かれたのか、主催者はだれか、判事はだれか、どのような判決かは紹介されない。 本書には、松井やより、西野瑠美子、中原道子、鈴木裕子、大森典子、金富子、小野沢あかね等々が登場しない。吉見義明、林博史、戸塚悦郎、荒井信一、鄭栄桓らも登場しない(吉見の名前は上記の形で一度出てくるだけである)。VAWW NET/RACも登場しない。

このことが意味することは、次の3つにまとめることができるだろう。 1つは、朴裕河が事実や証言の引用箇所を明示しない方法を愛用しているので、本書でも同じ方法を採用した。 2つは、具体的に名指しして引用すると、反論される恐れがある。反論を許さないために、相手を特定しない方法が望ましい。誰かが反論してきても「いやそれはあなたのことではありません」。 3つは、批判者はオウムであり、ドグマであり、暗黒の恐怖である。まともな人格的存在として扱う必要はない。預言者を批判するなどという裏切りと堕落と暗澹たる汚点である。名前を出すのも汚らわしい。 4つは、もともと15人の使徒は事実誤認を容認している。事実誤認が許されないなどと狂信する批判対象を明示しないのは驚くに値しない。相手に反論を許さず、一方的に叩いて叩いて叩きまくること、それだけが真実への道なのである。

私は、上記で15人全員の名前を列挙した。煩瑣だがいちいち頁数も明示した(ブログの記事で、普通、ここまではしない)。

批判する時には相手の氏名、具体的な主張内容を特定し、出典を明示するのが通常の方法だと思う私は、悪意あるデマゴギーであり、狂信であり、病理であるに違いない。

(3) 第3の欠落:「法を否定する」(ただし、都合の良い時は「法」を使う)

法の否定は2つの局面で明示される。

1つに、国際法の否定・軽視である。「慰安婦」問題では、国連人権委員会や国際労働機関で議論がなされ、国際法に照らして結論が示された。性奴隷制であり奴隷条約違反及び奴隷の禁止の慣習国際法違反。強制労働条約違反。そして戦争犯罪と人道に対する罪。女性国際戦犯法廷や、本書で批判派とひとくくりにされているらしき論者の多くが、国際人権法と国際人道法を引用してきた。 朴裕河が韓国挺対協批判を通じて、国際法に基づく議論を切り捨てたことは有名である。特に国際法における奴隷制概念は諸悪の根源であるかのごとく扱われる。15人の使徒も預言者に従って法を否定し、国際法を排除する。

奴隷制については興味深い記述がみられる。「慰安婦」が「預金通帳」を持っていた、私有財産を持っていた。だから、「”salve”とは呼べないと考えても不思議ではない」(80頁、中山大将)。 1990年代から何度も議論されたことだが、アメリカ黒人奴隷に典型的なように奴隷は「私有財産」を持っていた。いつでも取り上げることのできるカギかっこ付きの「私有財産」であるが、奴隷も蓄財して自由身分を買い戻すことが認められていたのだ。こうした常識を否定する中山は藤岡信勝小林よしのりと祝杯を挙げることになる。

2つに、国内法の否定である。近代市民国家の法が否定される。朴裕河が訴えられた裁判の否定である。本書の随所で、名誉毀損を理由とする民事訴訟と刑事訴訟を繰り返し何度も非難している。法とか裁判とか検察など国家権力の装置であって、歴史学がこれに拘泥するべきではない。預言者を世俗の裁判にかけるなど許されるはずがない、と。近代法における裁判を受ける権利に唾を吐きかける。

ただし、15人の使徒は、都合の良い時だけ法を利用する。近代憲法における基本的権利としての学問の自由を根拠に、朴裕河免罪を主張する。そして、近代憲法における学問の自由を、学問ならば何でもあり、誹謗中傷の自由と読み替える。新聞や雑誌やTVやインターネットや街頭演説における名誉毀損不法行為となり、時に犯罪になるのはよい。しかし、書物による名誉毀損があったとしてもそれは自由である。ここでは学問の自由が、学問の特権、学者の特権と読み替えられているのだが、そんなことを指摘するのは狂信である。ただし、学問の自由にも一定の慎重さを要するとの見解もあるが(231頁、熊谷奈緒子)、それも一般論にすぎず、朴裕河を擁護する。預言者を擁護することだけが目的となっている。

(4) 第4の欠落:「解決策に関心がない」

慰安婦」問題について議論しているのだが、本書ではその解決策に関心が向けられることがない(ほとんどない)。国際法を否定し、国連人権機関からの解決勧告を無視する。

しかし、代替案は提示しない。アジア女性基金の積極的肯定(東郷和彦)、2015年12月の日韓合意の肯定(東郷和彦)、「平和の像(少女像)」への批判(本書各所)が明示されるが、それでは、慰安婦問題をいかに解決するべきか、には関心が向けられない。 法を否定し、国家権力を否定する仕草を続けながら、日本政府によるアジア女性基金政策を支持する態度しか示すことができない。こっそり権力に寄り添うことも忘れない。 使徒の関心が向けられるのは、あらゆる手段を用いて預言者を擁護することだから当然のことであり、これに疑問を抱くのはユダへの転落であり、暗澹たる汚点である。 中には、当事者を置き去りにしてはならないとの感想も示されるが(例えば82頁、中山大将)、そこから先を論じることはしない。 * 以上のように、本書では、周到な準備のもと細心の注意を払って編集方針を貫徹し、読者からいかなる誤読もされないように配慮している。 それゆえ、まともな研究者がやらないこと、やってはいけないことが満載である。 時間をかけて念入りに準備し、学問破壊の福音書として十全の内容を備えるように工夫したのである。

3.復活の日のために

 本書で15人の著者は何をしようとしたのか。それも具体的に、鮮やかに示されている。 聖なる15人の使徒は預言者を擁護するために立ち上がったのである。それでは、預言者を擁護するとはどういうことか。

イードが「石を投げている写真なるもの」(94頁)、水に落ちた犬に「石を投げる」エピソード(110頁、四方田犬彦)にはじまり、イスラエルパレスチナに注目を集める。 アーレントに言及したのも、やはりイスラエルパレスチナに注目を集めることにつながる。 予想通り、朴裕河は「民族の預言者」(264頁)であり、『帝国の慰安婦』は「十字架」(274頁)であり、すべては「イエスの受難」(274頁、以上の3つは天江喜久)であると続く使徒の合唱は、いよいよクライマックスに近づく。

感動に打ち震えながら、「もし彼女が精神を病んだり、自死したりしていれば、批判者たちはひとりの知識人の社会的声明のみならず、生存さえ奪った」(257頁、上野千鶴子)と、朴裕河の「死」を予言する欲望にかられた絶叫が響き渡る。「死」を、「死」を、という激烈な欲望である。 自分たちが何を言っているのかすらわからない恍惚状態で、「死」を、との叫びだけが反響する。

そして、「『預言者』はあたかも十字架を背負ってゴルゴダの丘を上がってゆくようである。嗚呼、学問の自由の代価はかくも重いのか! しかし、十字架の先にあるのは復活の希望である」(274頁、天江喜久)と、朴裕河を無理やりゴルゴダの丘に登らせる。 誠実なる使徒たちは、ひたすら「死」を願う敬虔な祈りをささげる。「死」への欲望が赤裸々に語られる。「死」こそすべてである。 なぜなら「復活の日」を待ち望むことこそ使徒の使命だからだ。

朴裕河氏の『英雄性』は、五年後、十年後にはいまと比較できないほど確固たるものとなっているだろう」(287頁、小倉紀蔵)。 かくして15人の使徒は「確固たる」意思と熱意と欲望で「死」を謳いあげ、「復活」を夢見る。 その日のために、15人の使徒は一切の疑念を断ち、ユダに転落することなく、預言者と心を重ね合わせながら、嬉々として最後の審判への苦難の途を歩むのである。

Posted by 前田朗 at 1:39 AM

ユニオンぼちぼち企画 「キャバ嬢でも、だれでも、労働法は通るんだよ!」

を ユニオンぼちぼち企画 「キャバ嬢でも、だれでも、労働法は通るんだよ!」

今週土曜日に開催します。

http://rootless.org/botiboti/blog/blog-entry-2482

もしよければ、ご参加いただけると嬉しいです。 イベント後は交流会も予定しています。

「久々に行ってみようかな?」というかたも、よろしくお願いいたします。

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2月24日(土)18:00~21:00 @下京いきいき市民活動センター集会室

キャバ嬢でも、だれでも、労働法は通るんだよ! ―キャバクラユニオン労働争議の実践からわかること―

私たちはこれまで、 目の前の人が抱える労働・貧困問題を、ともに変える実践をしてきました。 相手に対話すべきは対話することで。 相手と対峙すべきは対峙することで。

今回、東京からゲストを招いて、キャバクラユニオンの実践をお話いただきます。 ほかに、実際の争議現場の映像上映や、テーマに関連した各種の報告をします。

聞くだけではなく。 「どんなことができるかな?」を話せる交流会も予定しています。 ご参加いただければ幸いです。

○ゲストスピーカー○

田中みちこさん(キャバクラユニオン代表) キャバクラで働きながら、ユニオンの活動に従事。

バンド「新月灯花」ギター・ボーカルとして、 全国各地でライブをこなす。

○ぼちぼちからの報告○

「キャバクラ争議のこれまでと課題」 尾崎日菜子さん(執行委員長)

「介護労働者の現状から」 南守さん(執行委員、ケアワーカーズユニオン執行委員長)

外国人労働者に権利はあるの?」 平松マリアさん(執行委員、とよなか国際交流協会フィリピノ語スタッフ)

立命館大学労基法違反について」 高橋慎一さん(執行委員)

「知って得する労働・社会保険法のポイント」 橋本裕介さん(執行委員、社会保険労務士

参加費:無料 (カンパあればうれしいです)

場所:下京いきいき市民活動センター (京都市下京区上之町38) 交流会は終了後、 ぼちぼち京都事務所で予定しています (おわったらみんなで移動します。 300円ぐらい・持込歓迎!)

主催:ユニオンぼちぼち(関西非正規等労働組合

問い合わせ:masakila0423@gmail.com/080-9741-1240(ラボルテ)

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いいニュース2つ目  アリさんマーク争議、解決勝利!

皆さん、ごっ無沙汰していました。 色色々あって忙しくて、ようやく時間がとれる状態です。

またぼちぼちとブログも書いていきますが、学生さんのレポートの本とか、その他新しい本も書きたいので、今年はちょっと頑張らないとと思っていますが、まあたぶん、あんまり頑張れないだろうなあ。

山田編集長のうれしいニュースと、その前のもう一つのうれしいニュース。

「アリさんマークの引越社」争議が全面解決。 和解内容も組合側の要求に近いと推測できます。 ひどい奴のやりたい放題を阻止して、戦う当事者が勝ちました。 よかったー よかった、よかった レイバーネットTV91号 http://lntv.labornetjp.org/?m=201509

●「アリさんマークの引越社」争議が一括和解〜野村さんユニオンの専従職に

 2月13日、「アリさんマークの引越社」ではたらく野村泰弘さんを含む従業員ら計37人が、会社に対して、残業代の支払いや事故による弁償金の返還等を求めていた労働争議は、中央労働委員会にて、ついに一括和解した。野村さんがプレカリアートユニオンへ相談してから約3年。

長い道のりだった。 野村さんは、この日を契機に本名を明かした。 和解条項には、プレカリアートユニオンの組合員に対し、故意や重い過失がなければ弁償金の負担を求めない旨が明記された。

「アリさんマークの引越社」のグループ会社ではたらく同組合員に対して労働紛争の解決金を支払うことで和解した。和解金額は非公開だ。

会見で野村さんは、「労働者と使用者の力の差は歴然としている。是非、組合に入ってほしい。しっかりした労働環境を、自分の力で切り拓いてほしい」と語った。

野村さんは引越社関東を退社し、プレカリアートユニオンの専従職となるという。(土屋トカチ)

↓全文(動画準備中) http://www.labornetjp.org/news/2018/0215ari