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ソウルヨガ

主流秩序、DV,スピシン主義、フェミ、あれこれ

高橋源一朗「ここは、DV国家なのか」

 

 

高橋源一郎が、「ここは、DV国家なのか」といったやつ、紹介しておきます。

bokunoburogu mitandarounaa (冗談)

 

作家・高橋源一郎  @朝日新聞デジタル

愛を強いる支配 ここは、DV国家なのか   

 ある若者が、デモに行くという友人と、その後で映画を見ようと約束した。 その若者が、友人が交じったデモ隊の列と並んで歩道を 歩いていた時 突然、私服警官に逮捕された。 理由は公務執行妨害だったが若者にはまったく覚えがなかった。 後に若者は検察官から」「きみが威圧的態度をとり、警官は恐怖を感じたからだ」といわれた。 そういえば、私服警官らしい人間と目があったことは思い出したがそれが公務執行妨害にあたるとは夢にも思わなかった。

 

留置場に入った若者は、そこで、1年近く裁判も始まらずただ

 

留め置かれているという窃盗犯に出会った。

貧困から何度も窃盗を繰り返した男は、1件ずつゆっくり起訴されていた

警察・検察の裁量によって、裁判が始まる前に、 実質的には刑罰の執行が行われていたのだ。

「それって、人権侵害じゃないの」と若者がいうと 「わからない。 法律なんか読んだことがない」と男はいった

 

 若者と男の話を聞きとがめた看守が、房の外から、バケツ で2人に水をかけた。  「うるさい黙れ、犯罪者には人権なんかないんだ」

極寒の房内は室温が氷点下にまで下がっていた 濡(ぬ)れた体を震わせながら、若者は、犯罪者の人権 が軽んじられる国では人権そのものが軽んじられるだろう と考えていた

それは、本や理論で学んだ考えではなく経験が彼に教えたものだった 。 その若者が半世紀近くたって、いまこの論壇時評を書いている。   

* * * * *

秘密の内容や罰則適用について拡大解釈が危惧されている 「特定秘密保護法」が、強い反対の下、可決・成立した。

 

この法律の問題点については、多くのメディアが詳細に論じている たとえば、秘密情報の専門家として佐藤優〈1〉は 特定秘密に該当する情報は国民のものではなく官僚のものになる、 と警告し、 外岡秀俊〈2〉は秘密保全に関する法の歴史をたどり直す。

この法案に反対する約2千人の学者たちの代表が記者会見を行った、その映像をユーチューブで見ることができる。

 

中でも、わたしは、平田オリザのこんなことばに強い印象を受けた〈3〉。

 

「最近、わたしは大阪のある行政職員から封書をいただきました。 なぜ封書かというと、大阪の職員は、メールは検閲される可能性があると、萎縮してしまっているのです。……

このいやな感じは、東京にいるとわからないと思います。

(特定秘密法の成立とは)それが国政で当たり前になるということです」

 

維新の会の政治家がトップを務める大阪の状況は、この法案とは厳密にいうなら関係がない。 けれども、平田は関係がある、と示唆するのである。

 

 今年になって目立ったのは、様々な社会的「弱者」がバッシングを受けたこと、 「従軍慰安婦は戦争につきもの」という政治家や、「子どもが生まれたら会社を辞めろ」という女性評論家が現れたこと、そして、新しい政権が、強硬な政策を次々と打ち出し、対話ではなく力でその政策の実現を図ろうとしていることだった。

さらに不思議なのは、力を誇示する政治家たちが、同時に力とはおよそ正反対な「愛(国心)」ということばを叫ぶことだった。

 

誤解を恐れずにいうなら、わたしには、この国の政治が、パートナーに暴力をふるう、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)の加害者に酷似しつつあるように思える。

 

彼らは、パートナーを「力」で支配し、経済的な自立を邪魔し、それにもかかわらず自らを「愛する」よう命令するのである。

 

平田が紹介した大阪職員は、「外部への発信」が「パートナー」に知られることを極度に恐れている。

それは、DVでもっとも典型的な症候に他ならない。  

 * * * * * *  

わたしは、いま毎日、「特定秘密法」全文〈4〉と、「国家安全保障と情報 への権利に関する国際原則」(通称「ツワネ原則」)の(膨大な) 英和対訳全文〈5〉を

持ち歩き、しょっちゅう読んでいる。

 

妙な言い方だが、とても面白い。 前者で特徴的なのは、そこで使われている日本語が奇妙であることだ。

いわゆる法律用語で書かれた文章のいくつかはまったく意味がわからない。

 

詳しい人たちの話を聞くと、通常の日本語では考えられないような意味になったりするらしい〈6

 

日本語でないとしたら、それは何語なのだろう。ほとんどの日本人に意味がとれないことばで書かれた「重要」法案とは何なのだろう。

 

一方、国家の安全保障と情報の権利に関して、長い討議の果てにできた「ツワネ原則」は、全ての人間に「公権力が保有する情報」にアクセスする権利があることを、民主主義社会の根幹であるとしていて、知る権利の価値を軽んじる「特定秘密法」の考え方と鋭く対立する。

 

だが、「原則」で、わたしがもっとも感銘を受けたのは、「わかる」ことだ。

およそ、ことばを理解することができる者なら誰でもわかるように

「原則」は書かれている。

「ツワネ原則」(の文章)は読むものすべての心を明るく、励ます。

 

DV被害者へのアドバイスの多くは、こんな一文で終わっている。

わたしがいま書くべきことは、実はそれと同じなのかもしれない。

 

 ……自分を責めてはならない。明るく、前向きな気持ちでいることだけが、

この状況から抜け出す力を与えてくれるのである。     

 

* 記事内の解説

 

〈1〉佐藤優特定秘密保護法統帥権」(創1月号)・・・

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