内閣府は22日、国の財政についての新たな中長期試算を示した。2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字幅は、足元の税収増や歳出削減の効果で、9・4兆円から6・2兆円に減ると見込んだ。それでも政府が掲げる20年度の黒字化は達成が厳しい状況だ。

 

 PBは、政策にかかる予算を借金に頼らず税収でまかなえるかを見る指標。15年度の赤字幅は15・4兆円となる見通しだ。今年2月の試算では、安倍政権が目指す実質2%の経済成長を前提にしたケースで、20年度の赤字額は9・4兆円だったが、今回の試算では赤字額は3・2兆円減って6・2兆円になるとした。

 まず、14年度の税収実績が計画を上回ったことから、20年度も歳入が1・4兆円増えると見込んだ。16年度に予定する歳出削減の効果が続くと見て歳出も1・2兆円減る。これに復興事業の支出減(0・6兆円)を合わせて計3・2兆円減らせると見込んだ。

 

 ただ、具体的な歳出削減策は決まっていない。実質2%という経済成長率の前提も、過去20年間の平均成長率が1%弱なだけに、楽観的だと指摘されてきた。

 その甘い試算を実現できたとしても、20年度で6・2兆円残る赤字の解消は簡単ではない。政府は17年4月に予定される消費税の10%への引き上げ以外は増税を控える方針で、赤字幅の削減は経済成長と歳出カットで実現を目指すことになる。甘利明経済再生相はこの日の会見で「(目標達成に向けて)確実に取り組んでいきたい」と話した。

 

 6月に閣議決定した政府の「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針)では、一定の所得がある人に医療や介護の負担を多く求めるなどの歳出削減策が並ぶが、大半は「検討事項」にとどまる。国民の痛みを伴う改革をどこまで実現できるかは不透明だ。(生田大介、大内奏)