ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

寺尾紗穂『原発労働者』

 

 

寺尾紗穂原発労働者』講談社現代新書

 

以下の紹介を読んで、この人はまともだろうから、この本も面白いだろうなと思った。この視点で社会問題を見ればすべてが違ってくる。どこから何を見るかを「立場性」とか、昔は「階級性」とかいっていた。

 

(著者に会いたい)『原発労働者』 寺尾紗穂さん

2015年7月12日05時00分

 

 ■人の尊厳と対立する被曝労働 寺尾紗穂さん(33歳)

 

 音楽家でエッセイストの寺尾紗穂さんには、歌詞に原発労働者が登場する「私は知らない」という作品がある。この歌も本書も、誕生のきっかけは樋口健二さんの『闇に消される原発被曝(ひばく)者』だという。この約30年前の本を読み衝撃を受けた翌2011年、福島で原発事故が起きた。

 

 原発推進側の安全神話と隠蔽(いんぺい)体質が批判されるなか、原発労働者の話は聞こえてこない。彼らは通常、どんな仕事をしているのか。劣悪な労働環境は樋口さんの時代よりも改善されたのか。事故後、福島の下請け労働者はどうしているのか。「それが知りたい。私は樋口さんの仕事を引き継ごうと思ったんです」

 

 思い立つと、すぐ行動に移す。会えた元原発労働者らから、日常的なデータの改変、効率化で増えた「使い捨て」の非熟練者や謎の外国人労働者、労災認定の却下など、理不尽な労働現場の実態を聞き出す。それだけでなく、寺尾さんは彼らの人生にも向き合う。背景には「ひとごとではなく、わがこと」と感受できる想像力が人一倍ありそうだ。

 

 学生時代に東京・山谷で出会った「元土方さん」に感銘を受け、ホームレスを支援する音楽イベント「りんりんふぇす」を続ける。戦争にも関心を抱く。東大大学院時代の論文は著書『評伝 川島芳子』(文春新書)に。近刊『南洋と私』(リトル・モア)では戦前のサイパンが主題という。戦争でも原発でも、寺尾さんの視線の先には弱者がいる。

 「経済性や合理性というのは、命の問題や人間の尊厳と対立するトピック。そのことを、頭ではなく、目の前に座っている人の言葉や存在から考えていきたい。いまある自分はただの幸運にすぎないですから」

 (講談社現代新書・821円)