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ソウルヨガ

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NHKがいい番組  原発再稼動 必要性を考える

 

 

2015年09月02日 (水) 

視点・論点 「原発再稼動 必要性を考える(2)」

九州大学大学院教授 吉岡 斉

http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/226484.html#more

 

 九州電力川内原発1号機が、9月10日にも営業運転に入る予定です。新規性基準に適合したものです。経済産業省が7月に決定した長期エネルギー需給見通しには、西暦2030年におけるエネルギー・ミックス、つまりエネルギーの種類ごとの供給シェアの目標として、原子力発電20~22%という数字が示されています。

 

 これは自家発電を除く発電量に占める比率を指すようですが、原子炉の新増設なしにこれを実現するには、現在残っている43基の原子炉を全て次々に再稼働させる必要があります。福島原発事故前、日本には全部で54基の発電用原子炉がありましたが、福島第一原発の6基と、全国の老朽化原発5基、合わせて11基が廃止されたため、全部で43基となっています。

 

 しかしこの20~22%というシェアを実現するには、全ての原発を再稼働させるだけでは不十分で、43基の原子炉の半数程度の寿命を、現在法的に定められている40年から、60年に延長することが必要です。

このように日本政府は、原子力発電を将来にわたり堅持していく姿勢を打ち出しています。

 

 しかしそれは賢い選択ではありません。原子力発電は他の発電方式と比べて劣った技術であり、それを国策によって特別に優遇して維持していくことは、国民の利益に反するからです。

 

 何よりも原子力発電は、巨大事故を起した場合に、他の技術とは比較にならない異次元の被害をもたらします。そのことは人類が1986年のソ連チェルノブイリ原発事故や、2011年の福島原発事故によって経験済みです。

 

 また原子力発電はいわゆる3E、つまりエネルギー安定供給、環境保全、経済性の観点からも、劣っています。

まず安定供給性についてみると、福島原発事故から今日までの4年半、エネルギーが不足気味だった経験に照らしても、事故・災害・事件などが起きれば多数の原子炉が一度にダウンし、運転再開までに長時間を要します。

原子力発電は各種のエネルギーの中で、実績において、最も安定供給性が劣ると断言してよいでしょう。

 

 次に、環境保全性の観点から見た原子力発電の利点は、エネルギー1単位を生み出す際の有害化学物質や温室効果ガスの排出量が、火力発電よりも格段に少ないことです。その一方で原子力発電は、事故による放射線放射能の環境への大量放出のリスクをかかえ、また各種の放射性廃棄物を生み出します。

放射能二酸化炭素のどちらがより深刻であるかは、福島原発事故により決着がついたと考えてよいでしょう。放射性物質との戦いは子々孫々続きます。

 

 最後に経済性については、原子力発電が優位にたつという試算が、政府によって発表されてきましたが、非常に作為的なもので信頼性はありません。

とくに使用済み核燃料を取り出してから最終処分するまでの費用、つまり核燃料サイクルバックエンドコストは、法外な金額となる恐れがあります。

また福島原発事故による損害額は、現時点ですでに11兆円、将来分も合わせれば数十兆円にのぼることが確実です。それは原子力発電の原価を、1キロワットアワー当たり数円も押し上げます。

 

 このように原子力発電は多くの点で、他の発電方式よりも劣っています。

 

それでも電力会社が原子力発電を拡大してきたのは、政府の原子力発電推進の国策に協力する見返りに、電力会社が本来背負うべきコスト・リスクの多くを政府が肩代わりしてきたからです。

しかしそれは結局のところ国民負担となります。

素性のよくない原子力のような技術を国民負担によってからくも支えてきたというのが、原子力発電の歴史であり、また現在の姿です。

 

たとえ原子力発電を廃止しても、福島原発事故の収束や後始末、放射性廃棄物の処分、原子炉などの核施設の廃止に、被曝労働を含めて多大な国民負担が必要ですが、原子力発電を維持していくのに比べればはるかに軽くすみます。

 

 そもそも原発再稼働が必要なのか、ここで問い直す必要があります。日本の一次エネルギーの1割程度、自家発電を含め電力供給の4分の1程度は、原子力発電が担ってきました。

しかし2012年以降、日本が原発ゼロ状態となっても、電力供給危機は生じませんでした。それは電力会社が過剰な火力発電施設を抱えていた上に、電力需要のベースラインがリーマン・ショックにより2008年から09年の2年間で8%近く(7.8%)も下落したからです。ちなみに一次エネルギー全体では9.4%下落しました。

 

2010年に少々回復したものの東日本大震災により再び大きく下落し、その後も回復の兆しがみられないためです。たしかに化石燃料の異常な高騰と安倍政権による円安誘導のおかげで化石燃料の焚増し費用は相当な金額にのぼりましたが、今では化石燃料価格の急落により、取るに足らぬ金額となっています。

停止による原子力発電の燃料コストの節約分を差し引けば、1兆円にも満たないでしょう。少々原発を再稼働しても、それによる化石燃料コストの節約はわずかなものです。

 

 原子力発電は、他の技術とは異次元の、時間的にも空間的にも並外れて巨大な災害をもたらすリスクを抱えています。しかもその災害の原因究明は放射線放射能に阻まれて困難をきわめています。福島事故から4年半を経過した現在でも、事故進行の詳細なシナリオは解明されておらず、核燃料デブリの所在場所すら分かっていません。さらに事故の収束もままなりません。今も10万人以上の被災者が避難生活を続けています。

 

このように原子力発電は特別のリスクを抱える異次元の技術です。

 

 今後、日本のエネルギー消費は少子高齢化の進行や製造業の地盤沈下などにより、電力消費も含めて順調に減少していくでしょう。そのような歴史的趨勢のもとで、異次元の災害をもたらす危険のある原子力発電を続けていくことは賢い選択ではありません。政府が国民世論を正面から受け止め、原発ゼロ社会に至る政策を構築することが必要です。