アリさんマークの引越社の労働問題で、労基署に申告
アリさんマークの引越社の弁償金給与天引き問題について、名古屋南労働基準監
督署に、労働基準法24条違反の刑事処罰を求める申告書を提出しました。
会社はナメタ態度をとってきたのですが、プレカリアートユニオンはちゃんとした組合なので、適切に戦っていくでしょう。期待しています。日本中で、このような対応が取られたらいいのになと思います。
それにしても、この会社の仕組み、やらしいーですねー。
金払えと言ってにげられないようにして、金で奴隷にするような感じです。
さて労基署はちゃんと動くでしょうか。動かないならまた次の手を打っていくことになります。労基署はかなりのことをしようと思えばできますが、人によっては腰が引けて何もしないです。
以下申告書
http://d.hatena.ne.jp/kumonoami/20151126/1448546259
2015年11月25日
愛知労働局 御中
名古屋南労働基準監督署 御中
申 告 書
プレカリアートユニオン
執行委員長 清水直子
〒151-0053東京都渋谷区代々木4-29-4
西新宿ミノシマビル2F
TEL03-6276-1024
FAX03-5371-5172
プレカリアートユニオンの組合員である■■■■が、株式会社引越社(以下「被申告会社」とする)で勤務中、同社から、繰り返し、労働基準法24条に違反する違法な天引きをされ、その総額は2010年8月から2014年6月までの間に合計86万5492円にものぼるので、貴局及び配下の労働基準監督署において適切な調査を行った上、厳正に処罰するよう求める。
被申告会社による従業員の給料からの違法な天引きは、■■■■に留まらず、ほとんど全社員に及ぶ。その方法はおおよそ以下の通りである。
1 就職時(資料1:誓約書)
被申告会社は、労働者が入社時に「誓約書」の提出を求める。この誓約書には親族が連帯保証人となることを求められる。誓約書において、労働者及び連帯保証人は「会社の建物、車両、機械設備、器具等及び顧客より委託を受けた運送品に対しては、丁重に取り扱い、故意または過失によりこれを毀損もしくは紛失した場合は、その損害賠償の責に任じます。」旨、約束させられる。
被申告会社は、このような仕組みについて「全作業員「身元保証人」付」などとして、顧客勧誘の手段にしている(資料2:被申告会社ホームページ)。
また、多くの従業員は、入社後、社内貯金をするよう強く勧誘され、毎月1万円ほどの社内貯金をする(■■■■も毎月1万円を社内貯金をしていることが資料13:給与参照から分かる)
2 車両工具紛失時(資料3:車両工具紛失届)
被申告会社の引越作業員が引越作業先で引越に必要な工具類、引っ越し先の養生等につかう道具類、地図等にいたるまで、これらを紛失した場合には車両工具紛失届(資料3)を被申告会社に提出しなければならず、この用紙に最初から「私の責任において上記の工具を紛失致しました。付きましては給料天引きにて工具を購入し、補填することを申請します。」との記載があり、原則的に、引越作業員が自腹で全額を負担することになる上、その金額を給料から天引きされる。
■■■■の給与参照(資料13)を見ても、毎月のように数百円から2万円近くの金額が「社販・制服」の名目で控除されていることが分かる。このような使用者に対する報告書がそのまま天引きの同意書になっている様な書式で「労働者の真に自由な意思」を想定することは困難であり、このようなやり方による天引きは労働基準法24条1項違反である。
3 破損・トラブル発生時(資料4:破損・トラブル報告書)
被申告会社の引越作業員が、引越作業中に、荷物や建物を破損・汚損した場合や、引越車両を損壊した場合、引越車両により周囲を損壊した場合等は、各件ごとに、「破損・トラブル報告書」(資料4)の提出を求められる。
この書類においても、報告書の裏面に「同意書」欄があり、ここに「この破損・トラブルに対して私に弁済義務があることを承認します。弁済金額は《①持参 若しくは ・②個人的事情により給与より天引き》を希望致します。」との記載があり、同意しないことは非常に困難である。
労働者が負担することとなった弁償金は「弁償金」名下で、毎月の給与から天引きされる。天引き額が多くなると、毎月5000円~1万5000円など、場合により様々な金額で継続的に天引きされる。
このような使用者に対する報告書がそのまま天引きの同意書になっている様な書式で「労働者の真に自由な意思」を想定することは困難であり、このようなやり方による天引きは労働基準法24条1項違反である。
4 「引越社グループ友の会」の役割(資料5:引越社グループ友の会入会申込書、資料6:借用書、友の会借用申込書、資料7:【友の会借用】引越社への依頼書、資料8:友の会借用確認表)
被申告会社に就職すると、労働者は「引越社グループ友の会」(以下「友の会」とする)に入会させられる。就職時に入会しない場合でも、弁償金の金額が多額になったときは入会させられることが多い。「友の会」は名目上は被申告会社とは別団体の体裁をとるが、組織実態は乏しい。労働者は毎月1000円~3500円程度の会費を「共済費等」の費目で天引きで徴収されるが、「友の会」から会計報告等はない。
弁償金が数十万円に達すると、労働者は「友の会」に対して、被申告会社に一括返済するための金員の借り入れを申し込むこととなり、その際、「事前承諾書」の部分に「私が、退職等により借入金の返済が困難に成った場合は、退職月給与より一括にて返済、或は、社内貯金より相殺して頂くことを事前承諾の上申し込み致します。」と記載されており、社内貯金と「友の会」からの借入金を相殺することに同意させられる。労働者の社内貯金返還請求権は「友の会」に対してではなく、被申告会社に対するものであるから、労働者が被申告会社に対して有する社内貯金返還請求権と、「友の会」が労働者に対して有する貸金返還請求権を相殺することは法的に不可能であるから、この点からも、「友の会」に独立した運営実態がないことが分かる。
また、「友の会」からの借り入れに際しては、被申告会社に対しても、「退職等により引越社グループ友の会からの借入金の返済が困難に成った場合、私の給料及び社内貯金から友の会に充当してください。よろしくお願い致します。」旨記載した「【友の会借用】引越社への依頼書」(資料7)を提出するように求められる。ここでも、被申告会社と「友の会」が別の権利義務主体であると考えた場合、法的には困難な「充当」を合意することとなる。
申し込みが可とされると「借用書」を作成し、労働者は、毎月1万円程度を分割して「友の会」に返済することになるが、これは、「友の会」の会費(「共済費等」)とは別に、「友の会」名下で毎月の給与から天引きされることとなる。借用書にはやはり連帯保証人をつけなければならない。
「友の会」からの借り入れについては、社内貯金の金額以下であるか、そうでない場合、入社時の誓約書と同一人物が「土地付」で連帯保証するか否か、で決裁権者が異なる(資料8:友の会借用確認表)。
給与参照(資料13)をみると、■■■■も、ほぼ毎月、1万円~1万5000円を「友の会」名下で天引きされていることが分かる。
「友の会」の会費名下に同会が名目上立て替えた弁償金を給与から天引きすることについて、「労働者の真に自由な意思」を想定することは困難であり、このようなやり方による天引きは労働基準法24条1項違反である。また、「友の会」は被申告会社による給与からの弁償金の天引きを目立たなくするための偽装行為ともとれるものである。
5 退職時の処理(資料9:退職届、資料10:引越社グループ社内貯金担当者様と題する文書、資料11:準消費貸借契約書)
労働者が被申告会社を退職する場合は、「退職届」(資料9)を提出するが、そこには「★後日弁償や会社から貸与されていた形態等の個人負担分による債務が発生した場合、お手数ですが私の有する給与・社内貯金等から相殺して頂くよう宜しくお願い致します。不足の時は持参するか振込にて対応致します。」旨、最初から記載されている。
また、同書の「支店確認欄」では、最初から「社内預金額」と並んで「相殺金額」を記入する欄があり実際に社内貯金との相殺が行われる。なお、再就職先に問題がある場合は「ペナルティー」を科すことまで予定されている。
さらに、退職に際しては、社内貯金と被申告会社及び「友の会」への債務の相殺を申し出ることとなっている(資料10:引越社グループ社内貯金担当者様と題する文書)。
さらに、■■■■の場合、退職時に、同人が被申告会社に対して負担している「借入金」について、「準消費貸借契約書」(資料11)で、毎月分割して、「友の会」宛に返済することを約束させられた。その返済は平成26年6月24日の退職時から、平成33年12月まで毎月1万5000円、合計134万7848円にも上ることになっていた。
6 弁償金の金額決定の仕組み(資料12:計算表)
個々の事故・破損・紛失等についての弁償金の金額は専ら被申告会社が決定する。本人の負担比率等もすべて被申告会社が決定し、100%、50%など高率の負担を求められることもしばしばある。
7 グループ内での異動時の処理
上記の天引きは、被申告会社グループ会社内で異動になった場合も、相変わらず続く。法的にはどのような処理がされているのか不明である。
8 売上不足を理由とする恒常的給与カット(資料14)
また、被申告会社では、売上が目標に達していないなどとしながら、実際の経営上の数字をカイジすることもなく、恒常的に賃金総額からの5%カット、さらに2%カットなどが行われている。このような賃金カットを行っていることを被申告会社も否定しない。
このような賃金カットは全く根拠のないものであり、労働基準法24条に違反する。
9 まとめ
上述のように、被申告会社においては、労働者の入社時や、「友の会」借入時等にそれぞれ連帯保証人を立てさせ、また、社内貯金を被申告会社が決定する労働者の「弁償金」負担の担保とした上、「社販・制服」「弁償金」「友の会」など、数々の費目で労働者の賃金から天引きし、それで足りない場合は、労働者の退職時に担保とされた社内貯金と相殺し、それでも足りないときは、追加で労働者に支払わせたり、連帯保証人ともども、労働者に後年にわたって分割での返済を求めている。
結局、被申告会社においては、被申告会社が勝手に労働者の損害賠償額を決定した上、それについて日常的に労働基準法24条に違反する賃金からの天引きが行われ、その不法な天引きについて、連帯保証人や社内貯金によって担保される、という仕組みが取られており、労働者が天引きを拒否することがほとんど不可能な状態になっているのである。これは、労働者に対する違法・不当かつ非常に苛烈な搾取に他ならない。
■■■■の場合、上記のようにして天引きされた給与総額が86万5492円に及び、退職後もそれ以外に総額合計134万7848円もの返済を迫られていたところ、プレカリアートユニオンに加入し、団体交渉を開始したのである。
これらの組織的な天引きないし弁済の仕組みは、重層的に労働基準法24条に違反するものであり、処罰を免れないと考えるから、■■■■のみならず、被申告会社の労働者全体について、貴局において厳しく調査して、被申告会社に対してしかるべき処分を下すよう、厳重に求めるものである。
以上