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安倍政権の同一労働同一賃金のダメさ

 

赤石さんが基礎的なことを書いたが、この程度のことさえ通じない。だから安倍政権の「同一労働同一賃金」はダメなものになるのは目に見えている。
異なる職務の客観的な価値の評価がいるがこれは実はむつかしいし、それを労働組合が入ってやらないとだめ。どう職務評価するかで結果は大きく変わってくる。客観的といってもだれがどの立場でやるかで変わる。そういう事がわかっていないで、非正規の待遇改善といっていても、実は進まないだろう。口先だけ適当なことを言う安倍のいい加減さはすさまじい。


「(あすを探る 家族・生活)仕事の「価値」を評価して 赤石千衣子」@朝日新聞
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12286358.html

2016年3月31日05時00分

 

 ある会社で契約社員の営業事務として働くシングルマザーは、同じ職場にいる正社員が月に20万円以上の賃金なのに、時給870円、手取り12万~13万円である。仕事ができるからといって仕事量は増えても処遇は変わらない。中学生と高校生の2人の子どもの塾代捻出のため、夜に別の仕事をしたこともあった。

 

 今年1月、安倍晋三首相は施政方針演説で、同じ仕事をする労働者に同じ賃金が支払われる「同一労働同一賃金」を実現すると述べ、驚かせた。3月には、そのための有識者による検討会も立ち上がった。

 

 総務省労働力調査によれば、雇用者のうち、パートや派遣などいわゆる非正規で働く人々が4割近くになっている(女性だけでみれば6割近くになる)。非正規労働者の増加は、生涯未婚率の上昇や、少子化の加速に影響しているといわれる。子どもの貧困も親の雇用が関係している。低賃金のため国内の消費が拡大せず、日本の経済はよくならない。

 

 「同一労働同一賃金」が実現すれば、パートや派遣労働者の賃金が上がり、シングルマザーが、ダブルワークをしなくてもよくなるのだろうか。非正規で働く人たちの生活を安定させ、経済の活性化にもつなげるためには、「同一労働同一賃金」だけでは不十分であり、「同一価値労働同一賃金」の考え方が必要だ。

 

 政府のいう「同一労働同一賃金」の定義は現在のところあいまいだ。

 「同一価値労働」は、仕事の「価値」を評価する。仕事の「価値」とは、その仕事に必要な「知識・技能」、精神的緊張の持続などの「負担」、さらに仕事の相手や提供するサービスについての「責任の重さ」、暑さ・寒さや危険性などの「労働環境」を客観的に評価して導き出される。その人の能力の評価ではない。仕事の「職務評価点」として数値化し、職種や雇用形態が違っていても比較することができる。

 

 そもそも、「同一価値労働同一賃金」の原則は、1951年に国際労働機関(ILO)で採択された100号条約が定めている。日本も67年にこの条約を批准している。

 

 「同一価値労働」について、小売業の正社員とパートタイマーの仕事を比較した調査を例にとろう。一般パートは正社員の約半分の賃金を得ていたが、職務評価点の結果は正社員の7~8割の結果となった。正社員の賃金を基準にした同一価値労働同一賃金であれば、パートの賃金を上げなければならない(森ます美浅倉むつ子編『同一価値労働同一賃金原則の実施システム』)。

 

 「知識・技能」「責任」「負担」「労働環境」は、ILO基準で、欧米などではこの4要素をもとに職務評価を行い、賃金格差の是正につなげている。フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準が、ヨーロッパ諸国では7~8割程度だ。

 

 厚生労働省も賃金格差是正のための職務評価マニュアルを発表しているが、4要素のうち「負担」「労働環境」が欠けている。これでは仕事の「価値」が適切に評価されない。日本のフルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準は6割弱だ。

 現在の国会や検討会の議論では、職務評価については言及がない。報道によると同一労働同一賃金の検討会では、「日本の雇用慣行の実情との違い」についての発言が相次いだという。

安倍首相も「雇用慣行には十分留意」するとの考えを示しているが、慣行に合わせて熟練度などが評価されれば、年功序列型の賃金をなぞるだけである。さらに同一労働同一賃金が賃金を低いほうに合わせる口実になるという危惧すらある。

 

 安倍首相が言うように、「非正規雇用で働く人の待遇改善は待ったなし」なのであれば、非正規の労働者の賃金を上げる同一価値労働同一賃金の施策が必要だ。それは少子化、子どもの貧困、経済の低迷などの課題を解決する道でもある。

 

 (あかいし・ちえこ 1955年生まれ。NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長)