松井久子監督の最新作『不思議なクニの憲法』を見た。
護憲派が話すだけかなと、想定して期待せずに見たら、想定以上にずっと良かった。
想定内の映画ではないです。
参議院選挙前にぜひ皆が見てから判断してほしいと思う。
若い人がちゃんと自分の言葉で話しているのが特によかった。
希望を持ちにくい時代というときに、憲法を手掛かりにちゃんと考えている人がいるのは希望だ。
若者に意見をもつべきというが、大人の多くが主流秩序に対してちゃんと考えた意見を持っていないで流され、操作されている状況。
憲法12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」は、国民一人一人が権利というものを維持するために戦いつづけないといけないことを示しているが、その努力をしない受け身の国民になっているので、憲法は死んでいる。(それが主流秩序に従属した社会ということ)
立憲主義が壊されている状況に、何も言わない多数の国民。
バカな人のツケが、結局未来の社会の国民の苦しみをもたらす。
だから状況はひどいが、とりあえず、今、できることをまわりでしていくこと。とりあえず次の選挙で自民党・公明党で3分の2にさせないよう、自民(公明、大阪維新)以外に投票すること。
民進党を批判する人は多いが、ファシズム国家にしないためには、そこの選挙区で自民(公明、大阪維新)以外を勝たせることだ。
共産党が歴史的には大きな英断で選挙協力をしていることを評価して、何とか与党以外が勝つようにしていこう。
この映画の中で、安積遊歩さんのむすめさん、宇宙(そら)さんの語りをみれて特によかった。
私の意見としては「新9条に改憲しよう」という伊勢崎さんの意見は、その意図とは逆に改憲に手を貸してしまうので、政治的に間違った判断だと思う。
彼の語りの攻撃性も気になるし。
朴井は今や左翼やリベラルであろうと、語り方が暴力的な人はダメだなと思う。でもそれがまだまだ多い。
憲法学者の長谷部氏も腕組んだり、自衛権認めるといって、私とは考えが違うところもあるが、いいところもあった。赤松良子さんは主流秩序側の行動もとってきたと思うが、今回はましなことを言っていた。同じように瀬戸内寂聴さんも主流秩序に沿っていた面もある人だが、ここではましだった。
つまりこの映画では、主流秩序にそってきた人でも、こと戦争、こと憲法という点では、最低これは言うということが伝わり、それくらい今、ギリギリのところにきているということがわかる。
そのほかにも個人的には、ちょっとなあという語りのひともいるが、別に皆が完璧である必要はないし、癖もあるし、だめな面があってもいい面もある。違いがある人が、せめて、戦争に突き進む安倍政権を止める点で動いていくところに希望を感じた。
違う人にも耳を傾ける。それを体現した映画だ。
戦争はほとんど自衛のためといって起きてきたし、今の憲法を変えないというのも一つの政治的選択なので馬鹿にすることではない。
安倍政権に反対する勢力は、小異を捨てて憲法を守る点で踏ん張ってほしいと思う。
主権者は国民というが、主流秩序の状況を見ていると、自分で考える国民があまりにすくなくて、だから憲法は死んでいる。その現状の上で、其れでも…と思える映画だった。
そして実は憲法の大事な精神のことなど知らない人がほとんどなので、憲法の〈たましい〉の勉強が簡単にできる映画。
映画登場者の中の〈たましい〉に触れられて希望を持てる映画だった。
もう一度言うが、選挙の前にぜひ一度は見ておいてくださいね。