ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

クルーグマン程度のことがなぜ言えないか

 

朝日のクルーグマンコラムが、またよかった。この程度のことがなぜ日本ではメディアが言えないか。


今日、森達也監督「FAKE」をみてきたが、ほんと、3流のメディアには、3流の国民と3流の政治家がお似合いだ。

 

それにしても、トランプの言う「壁」は、  橋下の言う「都構想」だし、
トランプの言う「メキシコ人」 は、 橋下の言う「労働組合、公務員」などだが、まあ、フィリピンも含め、単純白黒で言い切る人が横行している。
佐村河内守氏に対しての単純批判は、同じ問題。私もその単純化に加担していた面があると自覚。

 

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以下は、中立=バランスという逃げが日本メディアではアメリカ以上に進んでいるので痛い指摘だ。

 

「(クルーグマンコラム@NYタイムズ)米大統領選の報道 バランス主義が招く過ち」
朝日2016年5月13日05時00分

 

 米大統領選の本選挙で、ヒラリー・クリントン氏(民主党)とドナルド・トランプ氏(共和党)の戦いを、ニュースメディアはどのように報じるだろうか? 私には、答えがわかるような気がする。それはとても、いらだたしいことになりそうだ。でも、ひょっとしたら、ジャーナリズムが陥りがちな過ちについて事前に注意喚起す ることで、被害を抑えられるかもしれない。だからこそ、報道が間違いうること、間違うであろうことについて話そう。


 まず、接戦のほうが面白いからといって、実際よりも接戦であるように見せたいという衝動がある。すでに、共和党の候補者指名争いで見て取れる傾向だ。驚くべき結果が出たのは、世論調査が無意味だからだという具合に。


 だが現実には、世論調査は最初からずっと、かなり良い指標だった。トランプ氏の指名獲得の可能性はないとした専門家たちは、世論調査ゆえにではなく、世論調査が8カ月以上もトランプ氏が大きくリードしていると伝えてきたにもかかわらず、そのように判断したのだ。


 世論調査のうち、一つだけを重視しすぎるのもやめよう。多くの世論調査がなされる場合、かけ離れた値を示すものが、必ずいくつか出てくる。誤差もあれば、調査設計の偏りもあるからだ。まさにいまのクリントン氏のように、最新の世論調査の平均が、ある候補が非常に優勢であることを示しているとしたら、その平均と一致しない世論調査は、かなりのまゆつばものだと考えるべきだ。
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 政治報道に見られる最大の悪習は、あしきバランス主義である。過去の選挙戦でも頻繁に見られたが、もし今回これが起きたら、被害ははるかに甚大になるだろう。


 具体的な政策課題では候補者間の主張の違いが明らかだから、そんなことは不可能だと思うかもしれない。では、際立った例を見てみよう。トランプ氏は巨額の減税を提案しているが、これと見合うような歳出削減案は示していない。他方、クリントン氏は具体的な税の引き上げを財源とする、控えめな歳出増を提案している。


 つまり、ひどく無責任な空想をする候補者がいる一方で、かなり綿密に数字をはじいている候補者がいる。「バランスをとる」という名目で、この際立った違いを控えめに扱うニュース分析には用心だ。


 何年も前の話だが、ジョージ・W・ブッシュ氏が予算の数字で明らかにうそをついていたのにだれも報じなかったとき、私はこう言った。「もし、ある候補者が『地球は平らだ』と断言したら、ニュースの見出しはこんな具合になるだろう。『地球の形:両陣営ともに一理あり』と」。今年はこれが、ずっとずっと、ひどいことになる可能性がある。


 「振る舞い」という比較の難しい点は、どうだろう。すでに、2人の指名候補者はともに、みにくい戦いをしていると指摘する専門家がいる。両者ともに選挙戦で「卑劣なやり方」をしている、と。念のために言っておくが、トランプ氏は共和党の候補者指名を争うライバルたちの人格を攻撃し、うそつき呼ばわりして、テッド・クルーズ氏の父親はケネディ元大統領の暗殺犯と関係がある、とほのめかしもした。一方のクリントン氏は、(候補者指名を争う)バーニー・サンダース氏がいくつかの政策課題についてきちんと考えていないと言っている。これは同じ類いの話ではない
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 最後に、約束してもいいが、トランプ氏支持者の立場や動機をきれいに見せかけようとし、運動の中核にある人種差別意識を控えめに扱う試みを、私たちは目にすることになるだろう。私はこれを「報道の中道化」プロセスだと考えている。


 要するに、米共和党保守派の草の根運動「ティーパーティー」(茶会)台頭の後に起きたことだ。茶会の動機は米金融業界の救済だったとする主張を目にした。この運動は主として財政の責任に関するものであり、財政赤字を心配する有権者が推進している、という主張さえあった。


 実際は、そんなことが問題だったことを示すような兆候は一つもなかった。現場を追いかけていたらわかることだが、この運動は常に、自分たちの税金が「ああいう連中」を助けるために使われるかもしれないと腹を立てる、白人有権者の運動だった。それが困窮するマイノリティーに対する住宅ローンの救済措置であれ、低所得世帯の医療保険であれ。


 いまや目に付くのは、トランプ主義を駆り立てているのは政治の停滞に対する懸念だとする意見だ。いいや、それは違う。「経済的な不安」についての問題でさえもない。予備選でのトランプ氏支持は、人種的な恨みつらみと強い相関関係があった。米国社会を支配できないことに怒りを覚える白人男性の運動なのだ。

 


 結局のところ、報道がひどくても、おそらく選挙結果を変えることはないだろう。なぜなら、自らの役割がなくなってきたといって腹を立てている白人男性の考えは、正しいからだ。米国は人種的にますます多様化し、寛容な社会になってきている。共和党の支持層とは大違いなのだ。


 それでも、市民には正しい情報を得る権利がある。ニュースメディアは、あしきバランス主義や、報道の中道化に陥らないよう、できることはすべて行って、実際に起きていることを伝えなければならない。


 (〈C〉2016 THE NEW YORK TIMES)
 (NYタイムズ、5月6日付 抄訳)
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 Paul Krugman 1953年生まれ。米ニューヨーク市立大学教授。2008年にノーベル経済学賞受賞


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