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主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

宮城県石巻市2010年デートDV殺人事件で死刑確定


有名な石巻市2010年デートDV殺人事件は、拙著でも取り上げたことがありますが、その死刑判決が確定しました。
拙著『デートDV・ストーカー対策のネクストステージ――被害者支援/加害者対応のコツとポイント』(解放出版社、2015年2月)で書いていたものよりも詳しいものとして再度まとめたので、、ここに載せておきます。


NHKの比較的詳しい報道も、あとで資料としてつけておきます。
私はDV加害者を憎むものですし、一定の重罰化にも賛成ですが、死刑制度自体に反対です。死刑は、DVと同じく、暴力です。加害者を更生させ、償いをさせることが必要です。抹殺や重罰化では、問題は解決しません。むしろ逆です。

 

またこの事件でも、被害者が相談しているのに、警察の対応が不十分でした。

この当時は今より警察も未熟でした。多くの犠牲の上に、徐々に警察の対応は改善されていますが、まだまだです。

早い段階で警察が加害者に接触して、指導・教育・監視していくことが大事です。これが次の課題だと拙著で私は訴えていますが、まだ全くそこは動いていません。ストーカーで少し動きがあるだけです。

 

宮城県石巻市2010年デートDV殺人事件


2010年2月、宮城県石巻市で、DV男性・元解体作業員の千葉祐太郎被告(当時18)が、共犯の少年Aとともに、元交際相手・南部沙耶さん(18)の実家に押し入り、復縁に反対する、姉の南部美沙さん(当時20)とその友人(18)の2人を刃物で刺して殺害、姉の友人男性1人に重傷を負わせ、元交際相手・沙耶さんを連れ去り監禁した事件。車を変えて逃走するも同日午後に加害少年2人は同市内で身柄を確保され、未成年者略取と監禁の容疑で現行犯逮捕された。少女は軽傷のまま保護された。

 

DV男性と元交際相手は、2008年夏に交際を始めたが、少なくとも2009年2月以降、女性にDVを繰り返しており、被害者は警察に12回も相談していた。相談内容としては、「交際相手から言葉遣いなどで文句を言われたり、殴るなどの暴力を加えられる」「別れを切り出すたびにダンベルで殴られたり首を絞められたり、たばこの火を押しつけられたりした」というものだった。


2009年10月には娘が生まれたが、DVは続き、別れた後も元交際相手の実家に加害男性が押し入って娘を連れ去ろうとすることもあった。死亡した友人女性は、加害者男性が家に押しかけるようになったため、姉妹に頼まれて泊まっていて被害に遭った。
石巻署は2009年2月と2010年1月に少年に警告し、元交際相手の女性に、暴行や傷害事件として被害届を出すように勧めており、女性は事件当日の2月10日、被害届を出す予定だった。加害者男性は、一緒に押し入った17歳の男性Aに二人の交際に反対する姉と母親の殺人計画を話し、「おまえが殺人の罪をかぶれ」と言い、包丁に指紋を付け、Aの衣服を奪って返り血対策を兼ねて着用したうえで犯行を行うなど隠ぺい工作を行った。


なお、加害男性は、小学校低学年のころから母親に暴力を受け、食事を与えられないときもあるという環境で育った。その後、祖母に引き取られ高校に進学したが、ほかの生徒に暴力を振るったことをきっかけに退学し、事件の1年前には母親を殴るなどして大けがをさせていた。そんな中、交際相手だった女性にもたびたびDVをふるうようになっていた。


2010年11月の1審の仙台地方裁判所裁判員裁判と2審の仙台高等裁判所は、いずれも死刑を言い渡し、弁護側が「事件当時は未熟で、更生の可能性がある」として上告していた。2016年、最高裁で、出されていた少年への死刑判決が確定した。
最高裁判決で最高裁判所の大谷直人裁判長は「交際相手を連れ去るため、邪魔をする者は殺害すると思い定めて襲っていて、身勝手極まりない動機にくむべき余地はない」と指摘した。

 

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参考資料
石巻3人殺傷事件 元少年の死刑確定へ
NHK 6月16日 15時09分


6年前、宮城県石巻市で男女3人を刃物で刺し、2人を殺害した罪に問われた当時18歳の元少年に対し、最高裁判所は「少年とはいえ、深い犯罪性に根ざした犯行で刑事責任は極めて重大だ」として、上告を退ける判決を言い渡し、死刑が確定することになりました。裁判員が審理した少年事件で死刑が確定するのは初めてです。

平成22年2月、宮城県石巻市で、当時18歳だった千葉祐太郎被告(24)が交際相手だった女性の実家に押し入り、20歳の姉と18歳の友人を刃物で刺して殺害し、その場にいた男性にも大けがを負わせたうえ、女性を車で連れ去ったとして、殺人などの罪に問われました。

1審の仙台地方裁判所と2審の仙台高等裁判所は、いずれも死刑を言い渡し、弁護側が「事件当時は未熟で、更生の可能性がある」として上告していました。

16日の判決で最高裁判所第1小法廷の大谷直人裁判長は「交際相手を連れ去るため、邪魔をする者は殺害すると思い定めて襲っていて、身勝手極まりない動機にくむべき余地はない」と指摘しました。そのうえで、「無抵抗で命乞いをする被害者を繰り返し刺すなど殺害行為は冷酷かつ残忍で、当時18歳7か月の少年とはいえ、深い犯罪性に根ざした犯行だ。被告が一定の反省の念や謝罪の意思を表明していることなどを考慮しても刑事責任は極めて重大だ」として、上告を退け、死刑が確定することになりました。

裁判員が審理した少年事件で死刑が確定するのは初めてです。


NHKは少年事件について、立ち直りを重視する少年法の趣旨に沿って原則、匿名で報道しています。今回の事件が女性2人の命を奪い、もう1人に大けがをさせた凶悪で重大な犯罪で社会の関心が高いことや、16日の判決で元少年の死刑が確定することになり、社会復帰して更生する可能性が事実上なくなったと考えられることなどから、実名で報道しました。


弁護士「極めて残念」


弁護団長の守屋克彦弁護士は「主張が認められず、極めて残念だ。選挙権年齢の引き下げに合わせて、18歳以上の少年の刑事責任がこれまでどおりでいいのか議論となるなかで、非常に厳しい結論だ。犯行の結果に重きを置いた結論で、更生の可能性を低く見る傾向が強まるのではないか」と話しました。

また、草場裕之弁護士は「被告は死刑を受け入れる気持ちがあるが、事件の事実関係についての自分の主張を裁判所に認めてもらえなかったことに納得していない。おそらく再審=裁判のやり直しを希望するだろう」と話していました。


元裁判官「十分な時間と労力かけ死刑検討を」


多くの刑事裁判を担当した元裁判官の門野博さんは「犯行の悪質さや、結果の重大性などには言及しているものの、元少年が更生する可能性に対する検討や、過去の同じような事件との比較などが十分に行われたとは言えないと思われる点が残念だった」と話しています。

 

そのうえで、「今回の判決が少年事件の厳罰化を進める可能性がないとは言えない。重い刑が予想される事件で、裁判員に短期間で結論を求めるのは厳しい選択を迫ることになる。死刑は究極の刑罰なので、裁判員には短期間の審理ではなく、十分な時間と労力をかけて死刑でならなければならないのかどうかを徹底して検討してほしい」と求めました。


1審で裁判員務めた男性は


6年前の1審で裁判員を務めた仙台市の30代の男性は最高裁判所の判決を受けて、「当時関わった私たちが思い悩んで出した結論で、民意を反映してもらい、よかったと思っている」と話しました。

その一方で、「被害者や加害者の家族や友人のことを考えると何が正解か分からない。裁判で加害者の母親が『自分の大切な息子です』と言ったときは心に来るものがあった。事件のことを何かのきっかけで思い出すこともあると思う」と複雑な心境を述べました。

 

また、被告に対しては、「死刑ということになって、もう一度亡くなられた2人の女性と、けがをした男性、それに被害者家族のことを思い出し、今一度自分の行った行為を思い返してほしい」と話していました。


元少年の境遇 どこまで考慮するか焦点


裁判では当時少年だった被告の境遇を踏まえて、刑を軽くすべきかどうかが争われました。

被告の育った環境が焦点となった2審の判決によりますと、千葉祐太郎被告は、小学校低学年のころから母親に暴力を受け、食事を与えられないときもありました。

その後、祖母に引き取られ高校に進学しましたが、ほかの生徒に暴力を振るったことをきっかけに退学し、事件の1年前には母親を殴るなどして大けがをさせました。

さらに交際相手だった女性にもたびたび暴力をふるうようになり、女性が実家に帰ったところ、被告が押し入り、今回の事件が起きました。

 

弁護側は「精神的に未熟だったことや、更生できる可能性を十分に考慮すべきだ」と訴えましたが、2審の判決では「被告の暴力的な性格は成育環境に由来する面もあるが、本人の更生への意欲の乏しさも関係している」として、重視できないという判断が示されました。
少年事件の裁判 厳罰化の傾向


少年事件の裁判は厳罰化の傾向が続き、最近では少年法の保護の対象になる年齢を引き下げることも議論されています。

罪を犯した20歳未満の少年の取り扱いは少年法で定められ、成人に比べて未熟だとされることなどから、成人より刑を軽くする規定などが設けられています。

 

しかし、少年による凶悪な事件が相次いだことを受けて、平成12年に少年法が改正され、刑罰を科す対象の年齢が引き下げられたほか、重大な事件を起こした16歳以上の少年は原則、起訴されるようになりました。

また、平成18年には山口県光市で主婦と幼い娘が殺害された事件で、最高裁判所が「少年というだけでは死刑を避ける決定的な理由にならない」という判断を示し、厳罰化の流れを決定づけました。

 

その後、大阪、愛知、岐阜で起きた少年グループによる殺人事件で、元少年3人の死刑が確定したほか、山口県光市の事件でも元少年の死刑が確定しました。

また、最近では、選挙権年齢の引き下げを踏まえて、法務省少年法の保護の対象を18歳未満に引き下げる必要があるかどうか検討する勉強会を設けるなど対象年齢の議論も行われています。

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