ソウルヨガ

主流秩序、DV,スピシン主義、フェミ、あれこれ

『新版  働くときの完全装備  15歳からまなぶ労働者の権利』出版

 


『新版  働くときの完全装備  15歳からまなぶ労働者の権利』ができました。


解放出版社から1800円です。旧版を大幅に作り替えました。そのことは以下の「改訂にあたって」で書いてあります。
私の「おわりに」も紹介しておきます。


高校生、大学生にわかるようにわかりやすく書いています。類書と違うのは見ていただけたら分かります。今回、「労働者の権利」実現への具体的ポイント」で書いたように、ユニオンでの実際の交渉を踏まえているところが特徴です。

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目次
新版・<働く>ときの完全装備  

はじめに
改訂にあたって
労働法と生活保護法の基礎知識
コラム1
■教材・導入編
教材1 仕事オークション  
教材2 労働法カードを使って 
教材3 労働法○×クイズ 

■教材・ロールプレイ編
教材4 未払い賃金を取り戻そう 
コラム2  最低賃金 
教材5 有給休暇を取ろう 
教材6 不当解雇を撤回させよう 
コラム3 ある女性労働者の闘い  
教材7 団体交渉をやってみよう 
教材8 雇い止めを撤回させよう 
コラム4 職場の人格支配(ブラック企業バイト) 
教材9 辞めたいのに辞めさせてくれない
教材10 派遣だからって簡単にクビ?
コラム5 「労働者の権利」実現への具体的ポイント
教材11 パートだからって安すぎる! 
コラム6 同一価値労働同一賃金 
教材12 セクハラを許さない職場に 
コラム7 履歴書と職場の差別 
教材13 パワハラにやられっぱなしにならない 
コラム8 レイシャル・ハラスメント /コラム9 LGBTと職場 
教材14) 労働基準監督署に行ってみよう 
コラム10 非常勤公務員労働の問題
教材15 労災保険を利用しよう 
教材16 雇用保険をちゃんと使おう 
教材17 生活保護のことを知っておこう 
コラム11 水商売・セックスワーク・AV強要 
コラム12 若者の政治参加
オススメの教材・資料 
おわりに   

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おわりに  2016年版

 

 格差問題・貧困問題を少し学んでも、非正規とかになったら怖いと思って、だからこそ就活を頑張っていい会社で正社員になりたいと思うようなことをもたらしていることがあります。「努力しても差がつかない『結果の平等』になったら私は働かない。競争があるからこそ頑張れるし成長できる。頑張ったものが儲けられるのは良いことだし、経営者はボランティアのために会社を開いたのではない。格差是正は、まじめに働いている人への不公平になる」というような意見を書く学生たちがたくさんいます。キャリア教育がそういう意見を再生産するようなものになっていいものでしょうか。

私は、いい大学に行き、いい会社に入り、いい給料をもらい、いい人と結婚して物質的に裕福な生活を送るということを目指す価値観によって人が序列化されている社会を「主流秩序社会」と呼んでいます。多くの学生さんはこの秩序への適応ばかりを考えています。サバイバルの具体策は教えられず、したがってやりがいある自己実現できる仕事に就けないのは自己責任だというような価値観をもってしまっています。

能力を個人のものとだけ見て、みなで幸せになるとか、みなのために貢献するのが自分のしたいことと思うような思考回路と感性が奪われている人が多いです。

主流秩序に沿わない生き方があってもいいんじゃないか、できるんじゃないかと思っていないのです。私は何とかそこに、本当に主流秩序への適応しかないのかな?と問いを投げかけています。

労働者の権利教育が、そうした自分の生き方を見直すものになればいいなと思っています。

こうした私の教育スタンスは、拙著『閉塞社会の秘密──主流秩序の囚われ』(アットワークス、2015年)、「すべての子どもたちに『労働者の権利』教育を」(労働教育センター刊『女も男も』117号、2011年)、拙稿「“エリートでない者”がエンパワメントされる教育」岩川直樹・伊田広行編著『貧困と学力』(明石書店2007年)に書いてあります。よかったら参考にしてください。
伊田広行
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改訂にあたって

本書を出版してから6年間が経ちました。本書の特徴は共著者であるお二人が「ユニオンぼちぼち」の活動を通して得られた経験を教材に落とし込んでいることです。ロールプレイ編では団体交渉や生活保護申請の場面も設定するなど、とても実践的で多くの学校で活用されてきました。

この6年間で、労働にかかわる2つの新たな動きがありました。一つは「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」等の労働法の改訂ですが、非正規労働者の権利擁護と固定化にかかわる問題を抱えています。改訂された内容については、各教材に反映させていますが、解説部分でも簡単に触れていますので参照してください。

もう一つは、ブラックバイト(学生が学生らしい生活を送れなくしてしまうアルバイト)に対して、首都圏や関西をはじめ各地で学生ユニオンが結成され、若者が自らや仲間の権利擁護のために声をあげるようになったことです。

この動きに後押しされる形で、厚労省が昨年は大学生、今年は高校生に「アルバイトに関する意識等調査」を実施し、その結果を踏まえ、7月に文部科学省と連携し、高校生アルバイトの多い業界団体に「高校生等のアルバイトの労働条件の確保について」という要請を出しています。要請内容は「労働契約の締結の際の労働条件の明示、賃金の適正な支払い、休憩時間の付与、満18差未満の時間外・休日・深夜労働の禁止等の労働基準関係法令を遵守すること、そして高校生等の本分である学業とアルバイトの適切な両立のため、シフト設定などの課題へ配慮すること」です。本来は、給付型の奨学金を大幅に拡充するなど、学生が学業に専念できる環境を整えることが国の責務と考えられますが、学生のアルバイトにおいて業界団体に特段の要請を出したことは、「15歳から学ぶ労働者の権利」とした本書の実践的な意義が再確認されたのだと思います。特に、高校で本書を活用されるときは、次の2点の確認が必要です。

 

◆年少者の保護規定
 高校生等の18歳未満の労働者には、年少者に対する保護規定があります。労働時間は36協定を結んだとしても、原則として1週40時間、1日8時間を超えての時間外労働は禁止です。(変形労働時間制の場合は例外があります。)そして、午後10時から午前5時までの深夜労働も原則禁止されています。(交替制の場合は例外があります。)また、法定休日の労働も禁止されています。(休日の振替は同一週なら可能です。)その他、危険な業務や有害な業務(安全・衛生・福祉上)、重量物を取り扱う業務とされる労働は禁止されています。有害な業務の中には、酒席に侍する業務も含まれます。しかし様々な事情から、禁止された業務に就き、さらに違法な状態で働かせられ、死亡事故など深刻な事態に陥るケースがあります。訴えがあった場合は、何よりも問題の解決を優先することが大切です。その場合は、他の相談機関との連携も必要です。

◆学業とアルバイトの両立
 採用時に合意した以上のシフト勤務(勤務割表により、勤務日・勤務時間が特定されたもの)を入れる場合など、労働条件を変更する場合には、事前に労働者の同意が必要です。逆に、労働時間が確定した後に、シフト勤務を一方的に減らし休業させた場合には、平均賃金の6割以上の休業手当が支払われなければなりません。また、学生が試験準備や試験期間中など、学業に時間を割く必要がある場合は、本人の意向を尊重し、シフト設定を配慮される必要があります。

次に、本書の活用事例(主に高校)を紹介し、この度の改訂について書きます。非正規労働者の割合が年々増加する中で、高校でも危機感が広がり、労働者の権利を学習する高校が増えてきました。まず、教材2の労働法カードを使って、グループワークで労働法を学びます。カードをグループ数だけ準備するのが大変ですが、高校生にとってはカードゲームを楽しむように、対話しながら学習できるので好評です。

次に、アルバイトをしている生徒が多い学校では生徒のアルバイトについてのアンケートを通して実態を把握し、そこででてきた問題に該当するロールプレイ教材を選んで学習を深め、実践力を高めていくという事例が多いようです。アルバイトしている生徒が少ない学校では、ブラックバイトを扱った視聴覚教材(NHKオトナへノベル「ブラックバイトに負けない!」など)を観てからロールプレイ教材を学習している学校もあります。改訂前のロールプレイ教材は1テーマを2時間かけて学習する構成にしていますが、1テーマを1時間で学習するように改訂しました。また、学生のアルバイトでもよくある事例「辞めたいのに辞められない」と「パワハラ」教材を追加しています。

 

特に、「パワハラ」教材は労働者をアルバイト大学生にし、シフト設定の問題もロールプレイに入れています。また、コラムに「最低賃金」「同一労働同一賃金」「履歴書と職場の差別」「レイシャル・ハラスメント」「LGBTと職場」「水商売・セックスワーク・AV強要」など、近年労働現場で起こっている事象を追加しました。学習の際に、生徒に紹介するなどして活用して欲しいと思います。

最後に、本書の改訂にあたり、法律家の立場から内容をチェックしていただいた浅野直樹さん、再び辛抱強く書き手を導いてくださった解放出版社の加藤登美子さんほか、ご協力いただいた方々に心から感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。
肥下彰男