ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

スーザン・ギルマン『うまくいっている女の、かなり冴えた考え方』

 

むかしの文章を主流秩序の電子書籍にいれようと思っていたら、以下のような文章を見つけました。

 

14年前(2002年9月)にあるところに載せた小文です。

 

Let yourself go. (遠慮しないで自由になって)
                               イダ・ヒロ
待ってたぜーこんな本!!ってのが、出ました。フェミでシングル単位感覚がほーんともうパップパップと溢れている本。
スーザン・ギルマン著『うまくいっている女の、かなり冴えた考え方』PHP出版、です。

 

小気味いい。自由でエッチで、皮肉屋で、ユーモアがあって、欲望に忠実で、前向きで明るくて、生意気でパワフルで、女に優しくて、バカなペニスもちに負けてない。サラパレツキーの女探偵、ヴィクを思い出す。こんな友達が欲しい。LPCの感じに近い。

 

ニューヨーカーっぽい。『SEX AND THE CITY』に少し近い。『フレンズ』を笑える感じも少し。フツーの言葉で消化したフェミを語っている。もちろん全部が「正しい」とか「意見が同じ」ってわけじゃない。でもそんなの、とーぜんじゃん。

 

どんな内容か、少し、紹介しよう。

男に媚びた時代遅れの雑誌を読まされていることに怒っている著者のスーザンは、女性がうまく世渡りするための実用的なアドバイスと、笑いが大事と考えている。


だから型破りな、元気の出る、気の利いた次世代の女性の生きる実用的ルール、底力を引き出す知的なマニフェストを作ろうとしたわけ。それがこの本。それも、夫探しやオーガズムだけでなく、恋やお金、友達、セックス、健康、ダイエット、食事、仕事、家族、セクハラ、信仰、政治、スポーツなど、全般にわたって語った本。

 

仕事では、もっと要求しよう、稼ごうという。男を捕まえるように、つんとすまして、ミステリアスに構え、相手の出方を待ち、自分を高く売ること。相手がちゃんと扱わないならNOをいうこと。歩ける靴を履き、やたらに大きなバッグを持ち歩かず、服のためにダイエットや整形手術を考えず、占い師に仕事の相談はしない。物体に謝らず、トイレでも我慢しない。そんな風になろうって。


20代は仕事では基本的に最悪で当然で、経験の時期。惨めな仕事にしがみつく必要はないが、一挙に理想的で創造的なことはできない。泣き言を言わずに下済みから学ぼう。

友達では、恋人の次というような残り物扱いせず、女友達の悪口は言わないようにし、自分や仲間を古い価値観で袋叩きにするのを止め、友達の彼氏には手を出さず、自画自賛しあい、「魔女連盟」とか「お茶とホットケーキ売春団」といった名の女のネットワークを作ろうという。

 

知らない奴との初デートは、就職面接と美人コンテストとスピーチ大会をあわせたような淘汰のプロセスもんで、リスクあるから疲れて嫌って当然。愛国的軍事雑誌を読むような奴とか、絶対避けるべき男はいるけど、そうでないならチャレンジするしかないが、デートの本当の目的は、誰かステキな王子様に出会うことではなくて、友達に話す笑いの種を見つけることだし、バカから何かを学ぶことにある。

 

男なしでイケるのは「あばずれ」とされるが、オナニーは自分とのふれあいを深め、自分の体を知り、コントロールできることで、大好きな人とのセックスだ。91歳のおばあちゃんがいうには「わしらに自分の体を触って欲しくなかったら、神様は腕をもっと短く作っただろうよ」。オナニーのことを、「指を歩かせる」とかのほかに、「ボタンを押す」「共和党に入れる」とか、いいかえちゃおう。

 

女性のセックスの理由を多くの人は、①愛し合っているから、②赤ちゃんを作るため、③あばずれだから、④ほとんど意識がないから(わけがわからず)の4つとしか考えてないし、「寝ない理由」を「責任感があるから、純潔だから、慎み深いから」とみている。でも、セックスの本当の理由は、無数にある。自己確認、人類学的興味、懐柔、注意を払ってもらうため、赤ちゃん、お金、カタルシス、話のネタ、しゃれたおもちゃ、落ち込み、ダイエット、捨てられないため、酒酔い、断るよりラク、逃避、興奮、空想、恐怖、大人ぶる、元気を感じたい、求められたい、プレゼントをもらうため、美容、お礼、就職、親密さ、愛、仲直り、人に好かれたいから、メロドラマ、哀れみ、ナチュラルハイ、郷愁、ヒマ、友達からのプレッシャー、相手がホットだから、抱きしめて欲しいから、人を喜ばすため、パワーを感じるため、証明、反動、復習、自己教育、スポーツ、親へのあてつけ、バイブの電池切れ、楽しいし気持ちよくなれるから、などなど。

 

「独身女はみんなみじめ」とか「いい男は若くてかわいい子がお好き」「真の愛は瞬時のもの。運命の人に出会えばすぐわかる」「男の子は好きな子をいじめる」「バレンタインデーを一人で過ごす人には価値がなく、哀れみに値する」「レズビアンは楽」「ストレートは楽」「愛は真の恵みである」なんていう、恋愛の神話はぜーんぶまちがっている。

 

なーんて話がこの後もいろいろ続くんだけど、こんな要約じゃ、この本の面白さは伝わらない。その語り口の楽しさにあるんだから。

 

で、その語り口のうしろに見え隠れするちゃんとした思いが僕は好きだ。「アメリカ文化はますますビジュアル化してるけど、その利にあずかるべきは、モデルじゃなくて、カメラ やコンピューターのうしろにいる女たち。」

「某有名女子大の女子大生たちが『プレイボーイ』にヌードを出したこと。動機は何かって? 決まってるじゃない。知能が高いだけじゃないことを世の中に知らせるため。『頭がいいだけじゃないのよ』って。いやーね。私たち聡明な女神は『脱がないと、単なる天才数学者じゃないとわかってもらえない』なんて女に思わせる風潮に疑問をもたないと。」

 

「女の最大の武器が本当に「美しさと性的魅力」なら、「お金を返して」といいたいわ。だって何世紀もの間、女は・・かなりバカらしいことを信じさせられてきたんだもん。纏足したり、真鍮の輪をはめて首を長くしたり、豊胸手術をしたり、「女の武器」を磨くためにどれだけ体を痛めつけてきたことか。それで何か得るものがあった?お給料が上がった? 政治に声を反映できた?洗濯を手伝ってもらえた? もっといえば、それで世の中はよくなったかしら?人種差別がなくなった?平和が訪れた?確かに美しさには男をそそる力はあるけど、それは箱入りドーナツにだってある。私たち、もっと望みを高くもたない?賞味期間をもう少し長くしてさ。」

 

「若いストレートの女性たちが、今こぞってフェミニストバッシングに走るのはなぜだろう?」「アフリカ系アメリカ人は『あらー、どうしましょ。白人に嫌われちゃう』なんていって、人種差別についての発言を控えたりしない。・・・でもストレートの女たちは違う。『フェミニストだって言ったら、男に愛されない』と本気で思うのだ」

 

僕は、最近〈たましい〉を大事にしたいと考えてるんだけど、そこでも自分で押さえておきたいと思っているのが、「俗、闇、悪、笑いの大事さ」ってこと。きれいな正義を語るいい人になんかなりたくねーと思って、そのバランスを探してる。で、このスーザンの本では、そのあたりのバランスがいい感じなんだよね。

「いい人」でいるなんてダメだー、ペニス・ジョークいいじゃん、ポリティカルコレクトネスというガードルは窮屈、アラニス・モリセットのように大声で怒りを表明すればいいじゃないかって。型――いい子であれ悪い子であれ――にはまることを拒否し、自分らしくある勇気をもっている人が魅力的だって。

 

「自分の問題を笑い飛ばせることほど、革命的なことはない。ユーモアは――いつもそうあるべきなんだけど――私たちの究極的な力の道具、私たちの第一の武器だ。革新的プリマドンナにとって、自分たちのことや世の中のことをくそまじめに考えることほど、命取りになることはない。はっきりいえば、自分の存在に、アホらしさのきらめきや、喜劇性が見えない人には、何かを守ったり、治めたりする仕事は向かない」

 

 

楽しい語り口の一端を少し紹介しておくと・・・
女・子どもは、生意気だ、大口を叩くなと家族・親戚から抑圧されてきたけど、次のように反撃してやろうと例示されたものは、こんな感じ。

 

「まだ結婚しないの?」 ⇒ 「そ、やりまくっている」
「太ったわね」 ⇒ 「いいセックスしてるからね」


「それで、いつ、ちゃんとした仕事につく気なの」 ⇒ 「エロチックダンスのどこが、ちゃんとしてないの」


「もう若くないんだから」 ⇒「げっ。それが悪いことみたいな言い方じゃん。」
「もう若くないんだから」 ⇒「だから愛人はみな年下なの」


「もう若くないんだから」 ⇒「そうね。でも叔父さんがその勢いでふけていったら、すぐおむつに逆戻りだね。」


「孫の顔はいつ見られるのかしら?」 ⇒ 「さあね。お母さん、いつ腰骨折るの?」

 

キャリアウーマンが、「どうして子どもを作らないの?」と聞かれたら、「あなたの子どもを雇っているから」と。

 

「私達は、これまでと違った方法で、勇気を出して、自分のすることに責任をとらないといけない。でもそれがどうだっていうの? 大人らしく責任をとることよりすばらしいことが、他に何かある?」

 

これが、「うまくいってる女の、かなり冴えた考え方」。

いい題だよね。ここでの紹介の100倍は面白いから読んでみて!

 

なお、類似傾向で少しカタメのいい本は、『シングルという生き方』カルメン・アルボルク著(水声社)。これもおすすめ。