ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

NHK・クローズアップ現代+「“少女像”問題」のひどさを確認するーーその3

 


●奥園「日本側は、法的にはもう解決済みなんだけれども、それを踏まえたうえで、当事者の人々をどう実質的に救済するかということ」でうごいているのに、韓国は正義に拘(こだわ)って現実的解決を遠のかせていて幼稚というような趣旨の批判を展開。それをうけてNHK女性アナが「正義の名によって当事者の思いが置き去りにされている(犠牲にされている)ことですね」という主旨でまとめる。


→ 典型的な、自己中の視点での問題の立て方での議論。
法的に可決済みということに固執しているころを「どうしようもない与件」とするのが間違い。
国が国家賠償するのが正義にかなうというのは当然の要求。なのに、この奥園氏は、それは現実的ではないという日本政府側の立場でしか考えない。悪いのは韓国側であるという典型的な自分が正義=己中発想。


もうひとつは、奥園氏の意見には、日本社会にある「正論ではなく現実的に」という主流秩序従属の発想がよく出ている。正義・人権ということが異常に軽視され、「それはタテマエに過ぎない」という扱いにしている。

 

泥棒が、「これは泥棒ではない」といったうえで、金をすこし返すから問題ないという書類にサインしろと言っているようなもの。現実的解決を目指すならそれもあるよねという発想。
泥棒したことを謝罪すればいいのに、いや現実的にそこにこだわらずに、泥棒が金を返すといっているんだから、これにサインしなさいよと言っている。泥棒の味方の弁護士さんの詭弁的な説得ですね。いま直ぐにこれにサインしないとあなたが生きているうちにお金もどりませんよ、かえって不利になりますよ、とおどしている、恥ずべき発想だ。

 

「高齢だ、時間との闘いだ」というなら今すぐ、合意反対側が求める点を踏まえた新しい合意文書を作ればいい。それはメンツをすてて、真の意味での未来志向で接すれば直ぐにできることだ。
ただ安倍政権はイデオロギー^的にそうしないというだけなのだ。日本の過去の歴史が間違っていたということを認めたくない。教育勅語は復活させたいし、天皇制を守り、戦争ができる強い国にしたいという思いから、「恥ずべき日本の歴史」を認めたくないと居直っているのだ。


性暴力を軽視して、慰安婦問題ごときで日本を恥さらしにしたくない、そんなことでいつまでもガーガーいうなと思っている。産経新聞が言うように右翼的な歴史の評価戦争を行っているのだ。だから日本会議などはこの慰安婦問題に拘泥(こうでい)している。
慰安婦の命の時間を利用して引きのばし、死ぬのを待っているのは日本側右翼側である。恥ずかしことだ。

 

運動する側の精神は、正義を捨てて金を受けるようなみじめな解決を受け入れるのではなく闘い続けて死にたいと思うようなものだ。金が目当てじゃない、尊厳をかけた戦いだ、誇りを持って生きるとはそういうことだ。

 

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●NHK アナウンサー「当事者の思いとは異なる形で少女像が設置されている」とまとめる

 

→何を勝手にゆがんだことを言っているのかと思う。非常に日本的右翼的な立場からの根拠なき決めつけ。

上記証言でも一人しか少女像については触れていない。お金を受け取った34人にちゃんと聞いたわけでもないのに、決めつけている。少女像のことはお金に比べてより一層、多くの人が撤去賛成とは言わないだろうと思われるのに、急に決めつけて話を進めている。非常におかしい。視聴者を騙す番組つくりである。

 

しかもナヌムの家にいる人を含め運動側の思いもまた当事者の思いのひとつである。少女像の意味や意義を全く語らず、検討もせず、まるで「少女像設置はむちゃくちゃなことの象徴」のような扱いをしている。


しかもこの番組のながれとしても、必然的な流れではなく、唐突に少女像に焦点を当てているのも、恣意的すぎる。この番組がいかに誘導的に、最初に決めた結論に導こうとしているかを示している。

 

日韓合意では「撤去させるよう適切に努力する」とあった。それ自体おかしいが、素直に見れば「努力する」と書いていあるだけ。だから韓国政府側はこれを重視していなかった。しかし日本側はこれを重視していて、この規定を入れることで後々使えると踏んですべりこませた。当時日本では、10億の金を出すのと引き換えだ、少女像撤去が金支出の前提だと報道されていた。


いま、日本は金を出して「日本は合意を誠実に履行したのだから韓国も合意通り、少女像を撤去しろ」と言っている。しかし韓国政府は、この問題は「努力する」ということであいまいにできたと思っていて、国民が反対するから難しいとい立場で留まっている。

その中でのパククネ大統領の罷免なので、日韓合意自体が死文化しており、少女像撤去はむつかしい状況。韓国国内でも慰安婦像少女像は30体以上が設置され増えている。
なのに日本は状況がわかっておらず、「約束したじゃないか」「またプサンに設置した」と怒っている愚かな状況。

 

私のブログで簡単に示したように、そもそも慰安婦像の意味を理解しなくてはならない。
「ブログ:慰安婦問題と慰安婦像」
http://hiroponkun.hatenablog.com/entry/2017/03/13/170030

 

両国の友好と平和のしるしとして、慰安婦問題を忘れないという姿勢で臨むのがいいと思うので、教科書に書いたり、教育していくことが必要と思うし、慰安婦像を立てて忘れないようにするのがいいと思う。
慰安婦像が世界各地にあっても何の問題もない。広島の「同じ過ちは二度としません」という平和の誓いのモニュメントと同じ性質のものだ。
そして慰安婦像は、恥ずべき日韓合意など、ひどいことが行われている中で、適切な解決の方向に運動を進めていく象徴ともなっている。不当な「合意」への闘いの象徴であり、まともなものだ。歴史は、弱者の側からの闘いの歴史でもある。私は弱者の運動側に立つので、運動として慰安婦像を建立することに賛成する。

 

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少なくともNHKの番組内で、こうした運動側からの「少女像の意義」が語られればいいのだが、全く紹介されずに、ただ意味が分からない、エキセントリックな運動の象徴のように扱われている。
これではこの番組は偏向番組と言われても仕方ない。

 

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日韓合意で少女像を撤去するとしたのに、なぜそれができないのか。その背景を探るといって映像。
大統領批判の運動が盛り上がっていることの紹介。
慰安婦像設置した学生のことばの紹介。「被害者は金や慰めを求めているのではなく、この問題の事実を歴史的・法的に認めることを求めています」
少女像を設置して「日韓合意は全面、無効だ」とシュプレヒコールする学生たちの映像。
それに対し地元自治体が設置を認めず強制撤去した。それがニュースになり全国から批判が殺到し、結局少女像が再度設置されることになった。という経緯の説明の映像。
この後、日韓合意の韓国世論の紹介。合意を破棄すべきが59.0%、維持すべきが25.5%。になっていると。
日本政府が大使一次帰国などの対抗措置。菅官房長官が、日韓合意を責任持って遂行すべきと声明。
韓国政府は、合意を遂行したい、少女像撤去したいと思っているが、大統領選をにらんだ野党は世論に迎合する動きを強めていると番組では紹介。

 

 

→ 「世論に迎合」とはよくも、NHK番組で言ったものだ。迎合とは「正しい態度ではないが、強いもの多数のものに媚びへつらって従う、賛成する」というような意味を含む非常に強い言葉だ。どうしてこんな言葉まで使えたのか、NHKのなかで、番組内容チェック機能が全く働いていないようだ。

 

韓国の世論(合意反対、少女像設置)の動きのなかにある「まともな意味」を受け取ろうともせず、いちおう反対派の言い分をほんの一瞬、少しだけ流しつつも、全くそれを受け流して、番組全体は、「慰安婦当事者の思いを無視して少女像を設置する野党、反政府勢力の政治的な運動だ」という見取り図で構成されている。


一貫して日韓合意のマイナス面が無視されている。
そしてこんな酷い合意を押し込んだのに、日本が被害者面している。「ぼくちゃんは約束を守っているのに、向こうは約束をまもってくれない」

 

じつはこれが日本政府の最初からの戦略であった。だから10億円を出して、「こっちは誠実に出しているのに」という被害者の演技ができると読んだのだ。
「韓国政府でこれに合意した政治家と役人」が批判されるのは当然だ。
バカな韓国政治家が日本に騙された、ということだ。

 

 

●「LOVE JAPAN」と書いた紙をもって「もう憎しみあうのはやめましょう。」という、少女像の前に現れた一人の韓国人男性の紹介。
それに対して、少女像を設置した運動側の学生が詰め寄ります。
「少女像の横に立たないでください。」「恥ずかしくないんですか」
こうした中、韓国のメディアのなかには冷静さを呼びかけるものが出てきたと紹介。
「韓国だけが日本との関係において過去から一歩も抜け出せていない」という「韓国経済新聞」社説を紹介。「選挙戦を控えた政治のなかで、極端な主張が数多くなされ、それがそのまま報道されていると警鐘を鳴らしている」と。
特派員も「元慰安婦たちを置き去りにした「合意破棄の主張」は無責任だとする論調がメディアのなかでも増えつつある」といった。

 

→ 韓国でも徐々に合意破棄の運動とは違う意見が大きくなっていると紹介しているが、バランスを欠いている。非常に日本の主観的願望が入ったまとめ方だ。
まず慰安婦像前に来た「LOVE JAPAN」と書いた紙持った男性は、全く正体不明であり、非常に例外的だろう。こうした人がたくさんいるわけではない。そうした人も一部いるだろうが、この例外的な正体不明の人を番組冒頭とここで、合計2回使って、ことさら大きく印象を与えるように取り上げるのは、都合のいいところを使っているという面がある。


またメディアでももちろん色々な論調はあるだろう。しかし日本で産経新聞がこう書いているということを紹介して、それがおおきな動きだとは言えないように、ほんの一部のメディアを取り上げてそれがかなり大きい意見のように言うのは、主観的誘導的だだ。その逆の論調の根強さを見ていくのが公平だろう。


日本の番組で、自分たちの方が正しいと思わせるように作られた番組は、内向きで、自己満足的で、およそ公平なジャーナリスムの作品とはいえない。まるで冷静な人は韓国でも「日韓合意に賛成している」かのようにもっていくのは、偏向した番組作りといえる。

 


●「和解・癒し財団」の紹介。世論に動じず、元慰安婦に寄り添う活動が大事だとしています。そこのメンバーのことば「厳しい批判がある中で34人が受け取った。元慰安婦は満足はしていないものの、(お金をもらって)ありがたいと思っています」

 

→「和解・癒し財団」をめっやめちゃ美化して紹介している。「和解・癒し財団」は、韓国政府が結んでしまった「日韓合意」を何とか遂行するために無理してその路線を踏襲し実行するところ。まさに政府の一部でしかない。そこを美化するというのは、多くの運動や国民に反している、一部の方を持ち上げているということ。
「和解・癒やし財団」の活動については、元慰安婦キム・ボクトゥクさんが知らない間に財団から現金が支給されたというようなことも暴露されているし、韓国政府関係者が被害者や家族に電話をかけ、食事や支援金をちらつかせて財団の発足式に誘おうとしたというような問題も指摘されている。しかしそういうことは今回の番組では全く扱われていない。

 

報道やルポは、少数派を取り上げることも大事だが、日本に真実を伝えるというなら、いかにこうした韓国政府「和解・癒し財団」の対場が政治的で、日本に都合よい方向で幕引きを図っているか、多くの国民からは支持されていないかも伝えないといけない。

 

運動側からすれば、「和解・癒し財団」は金で当事者とその家族に接して、なんとか体裁を取り繕うとしている、慰安婦の人たちの間に分断を持ち込み、こんなひどい合意で事を終わらせようとしている、韓国政府と日本政府の手先だと見えるだろう。

 

慰安婦の方に寄り添うとはどういうことか。
言葉だけで美化するのは欺瞞だろう。
韓国の反合意の運動側こそ、よりそっているという見方もできる。
「和解・癒し財団」のやっていること自体が、寄り添えていないともいえる。
つまり少なくとも多様な見方や立場があるといえる。

それなのにNHKはもろ手を挙げてこの「和解・癒し財団」側を賛美し、反合意運動側を糾弾的に扱っている。悪質な偏向番組であるというしかない。

 

つづく