読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ソウルヨガ

主流秩序、DV,スピシン主義、フェミ、あれこれ

予定通り

 

 

「記者の目 働き方改革 実行計画まとまる=阿部亮介(医療福祉部)」

https://mainichi.jp/articles/20170427/ddm/005/070/022000c

 

毎日新聞2017年4月27日 東京朝刊

 

労働者の視点欠いたまま

 

 「2017年が日本の働き方が変わった出発点として間違いなく記憶されるだろう」。安倍晋三首相は、働き方改革実行計画をまとめた3月28日の会議の場で、こう自画自賛した。罰則付きの残業時間の上限規制を初めて導入できたという点は一定の評価はできる。しかし私は、経済界の都合に合わせ、労働者視点の欠けた改革だったと言わざるを得ないと考える。

 

 働き方改革はそもそも、労働者のためというよりは、失速気味のアベノミクスを再加速させるために着手されたものだ。それは実行計画の冒頭に「日本経済再生に向けて最大のチャレンジは働き方改革である」と記されていることからも分かる。

 

 

 実行計画は、閣僚や有識者を交えた働き方改革実現会議で検討された。だが、中身を作ったのは主に内閣官房経団連だ。会議がスタートした昨年9月以降、首相官邸の了承を得た内閣官房が個別の政策について早くから経団連と折衝を重ねた。実行計画に盛り込む政策を、経団連が受け入れられるものとするためだ。これでは抜本的な改革は望めない。一方の当事者である労働組合(連合)への説明は後回しにされていた。

 

 実行計画の柱となった残業時間の上限規制と、非正規労働者の賃上げを目指す同一労働同一賃金の二つから、さらに改革の中身をみてみたい。

 

残業時間の上限規制に「抜け穴」

 

 残業時間の上限は月45時間、年360時間が原則。今回、注目されたのは繁忙期を含めた年間上限の「720時間」だ。だが、これには「法定休日」(労働基準法で定める週1日以上の休日)に働いた分は含まないという「抜け穴」がある。上限には繁忙期でも「月100時間未満」「2~6カ月の月平均がいずれも80時間以下」との規制もあり、こちらには法定休日に働いた分も含まれる。既にある過労死の労災認定基準(過労死ライン)を参考に決めたためだ。これにより事実上、過労死ラインの月80時間が上限となり、計算の上では年間960時間まで働かせることが可能になった。

 

 休日に働いた際の賃金の割増率は、残業の際の割増率25%より高い35%。企業は休日労働には抑制的になる、と政府は弁明する。しかし、平日に残業しても片付かない仕事を休日に持ち越すことは少なからずあるだろう。実際、私が取材した20代の男性は「法定休日に少なくとも月20時間は働いていた」と証言する。

 

 上限規制には適用除外の問題もある。導入開始から5年間は、運輸、建設、医師は規制の対象外となる。これは「政治力の強い業界の声が通った結果」(政府関係者)だ。さらに年間上限「720時間」の根拠も、かつて労働組合が主張した「750時間」を「多少下回る」(同)ことから編み出した数字で、哲学のない規制案になった。

 

 上限規制の政府案がまとまる前、過労死ラインぎりぎりまで働かせることが可能な案だ、ということが相次いで報道された。すると政府は急きょ、批判の矛先を分散させるため、経団連と連合のトップを引っ張り出し、成案をまとめる作業を労使の協議に丸投げした。

 

 繁忙期の月100時間を巡り、経団連は「100時間以下」、連合は「100時間未満」を主張。議論が行き詰まると、首相が裁定するという見え透いた演出に出た。「100時間未満」とすることでこれまで相手にしてこなかった連合に花を持たせた。事情を知る複数の関係者は「労使による合意にすり替え、批判をかわそうとした」と明かす。

 

非正規の大幅賃上げ期待薄

 

 一方「同一労働同一賃金」は15年、民主党や維新の党(いずれも当時)などの野党が主導し、実現に向けた議員立法として通常国会に提出したのが始まりだ。与党関係者は「まさか政府が同一労働同一賃金の実現を掲げるとは思わなかった。争点潰しだろう」と、当時を振り返る。

 

 安倍首相は当初「非正規という言葉をなくす」と意気込んでいた。しかし、計画に盛り込まれた成案は、同一労働同一賃金と言うには程遠く、通勤手当など各種手当を非正規労働者にも支払うよう求める内容だ。多少の処遇改善には役立っても、大幅な賃上げは期待できそうにない。当初掲げていた、非正規の賃金を正規の8割まで引き上げるという目標も盛り込まれなかった。正規と非正規の職務を明確に分けることで、待遇の差を正当化する「職務分離」が進み、格差が固定化される懸念すらある。

 

 労働基準法1条は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない」と定めている。今回の改革がこれを充足しているとは言い難い。長時間労働対策には、終業から次の始業までの間に一定の休息時間を取る「勤務間インターバル制度」が有効だと考える。実現会議でも議論に上ったが、経団連の反対で実行計画に導入を明記できず「努力義務」にとどまった。また労働者の4割を占めるまでになった非正規の人の賃金引き上げも急務だ。人間らしく生きられる真の働き方改革に向けて、実行計画に対し不断の見直しが求められている。

 

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

広告を非表示にする