安倍昭恵夫人や前川喜平・前文部科学事務次官らの証人喚問をすればいいのにかたくなに逃げる政府・自民党。
その理屈のひとつが、「前川さんが辞めた後に、ああだこうだと言うのはひきょうな話。すでに色んなところで(考えを)発しているから、いまさら国会で聞くようなことではない」(自民の下村博文幹事長代行)というもの。
京都産業大学を落として加計学園に決めるように裏で動いたくせに嘘を言っている萩生田光一官房副長官は、
「都議選の前に党都連役員の私に少しでもダメージがあれば、自民党にダメージを与えることができるという政局で、難癖をつけられている」といい、下村氏も「自民に対するマイナスイメージをつくろうという野党の魂胆としか思えない」といっている。
安倍晋三首相も6月1日、ニッポン放送の番組収録で、前川喜平前文部科学事務次官を厳しく批判し、「私の意向かどうかは、確かめようと思えば確かめられる。次官であれば『どうなんですか』と大臣と一緒に私のところに来ればいい」、「行政がゆがめられた」と主張していることに対しては、「なんでそこで反対しなかったか、不思議でしようがない」と述べた。
だが、「辞めた後に、ああだこうだと言うのはひきょう」というのはほんとうだろうか?
じつは、そのようなことを言うのは、内部告発制度や労働現場・労働運動を全く知らない無知・素人の意見に過ぎない。
以下簡単に説明しておく。
会社に在籍しているときに労働にかかわる権利を言えない人は多い。有給休暇でさえそうだ。解雇されるときでさえ抵抗できずにやめてしまう人は多い。会社の不正を知ったとき、未払い賃金、パワハラ、セクハラなどがあっても、みんな、なかなかその場ですぐにはいえない。言えたらいいが、報復もある、握りつぶされる、解雇される、少なくとも職場に居づらくなると思ってなかなか言えない人が多い。それが現実だ。バイト学生でさえ、バイトのときに言えない。
それで、有給休暇ならやめる直前に有給を使う権利をようやく申し出られるという人が多い。何も言わずにやめる人の方が多いが。
その他なら、やめてから、過去の労働問題にようやく抗議・文句をいっていけるというひとがまあまあいる。労働債権は二年は法律で保証されている。追い詰められてそのとき話すすべもなく、会社にやられて、いいなりになってしまう、でも、少し時間がたってようやく、おかしい、悔しい、このままじゃいやだと思って権利を主張していけるということがある。在籍中に抗議したり組合を通じて交渉してもいいが、会社をやめてからでも2年以内なら十分、権利回復はしていける。
つまり辞めてから権利を主張するとか、思い切った「パワハラされていた」と真実を言う、「会社に不正があった」と告発するというようなことはよくあることで、其れは全くおかしなことではない。卑怯なことでもない。社会的に遅すぎるということもないし、ちゃんと認められる手続き方法だ。
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元次官の前川さんが、現役次官だったときに安倍政権のごり押し―――加計学園だけでなくほかの人事でも不正が多くあったことを前川氏は言い始めている―――に対しておかしいといって抵抗すれば、それはそれでよかったとおもうが、
やめたあとに事実を語ってもいい。
言わないよりずっといい。
辞めてからでも言うことは勇気が必要なことだ。言えばつぶされる。たたかれる。実際、読売新聞に「醜聞」を書かれて菅などから何度も個人攻撃された。
いま社会問題になっていることだからこそ、今こそいうべきなのだ。言わないことこそ真実を隠す酷い行動となる。「卑怯」というなら、加計学園問題が世間で問題になっている時に、何も言わないことのほうだ。今言うことは卑怯の逆で、真実を言うのだから勇気ある「社会正義にかなう行為」である。
だから政権側・自民党などがいう「辞めた後に、ああだこうだと言うのはひきょう」というのは、まったく正しくない。
「前川氏が辞めてから言うのは卑怯」というのは、公益通報制度/内部告発が、まったくわかっていない対応だ。わかっていないどころか、もっともなくさなくてはならない「隠ぺいの姿勢」そのものだ。公益通報制度/内部告発エイドが闘おうとする相手側そのもの態度を政府は取っている。
まず基礎知識
公益通報(内部告発)とは、会社・組織の内部の人間が、会社の法律違反行為を、しかるべき機関に通報すること。公益通報の対象となる「会社の法律違反行為」には、「国民の生命、身体、財産等の保護にかかわる法律」として定められた413の法律が含まれる。
また、公益通報をする機関には、事業者内部(労務提供先)行政機関(処分等の権限を有する行政機関)その他の事業者外部(被害の拡大防止等のために必要と認められる者)の3つがある。
このような公益通報は、会社の不法行為が明るみに出ることによって、国民全体に利益をもたらすとされている。しかし、公益通報者にとっては、自分の会社から報復される可能性もある危険な行為である。そのため、公益者を保護する観点から2004年、「公益通報者保護法」が制定された。(https://kotobank.jp/word/%E5%85%AC%E7%9B%8A%E9%80%9A%E5%A0%B1-3247)
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つまり公益通報(内部告発)において、会社を辞めた後にしかるべき機関に通報することは全く正当なことであって、辞める前でないとだめということは全くない。もちろん卑怯なことではなく、国民全体に利益をもたらす「よいこと」である。だから報復されてはいけないのであり、公益者を保護するよう法律が作られている(全く不十分だが)。
ところが菅や下村、その他政権・自民は、この公益通報(内部告発)の制度の在り方に真っ向から反対する立場をとり、真実を隠蔽し、通報するものを攻撃し、卑怯と言い、無視し、あげくのはてに守秘義務違反になるぞと脅している。
(もちろん、今回の加計学園の種類など、公益通報者としての保護対象になるようなものではないが、それでも精神は関係するので書いた。今回の文書は、たんなる政策決定過程の文書であり公開しても何の問題もないものである)
嗤えるではないか。まったく時代に逆行して、愚かなむかしの政治をしている。
それが現実・現状だという悲劇が安倍政権なのだが、それでいいということはもちろんない。
この内部告発制度を否定する愚かな動きの権化となったばかが、義家・文科省副大臣だ。
文科省で調査を再度する前に、情報だしたら国家公務員法違反(守秘義務違反)での処分がありうるぞと脅しの発言をしたのだ。
本当のことを外部にばらしたら、ただじゃおかないぞ!という、典型的な内部告発をおさえこむ脅しをした。口止め圧力をかけた。(正しくは、こんどのようなメールの公開では国家公務員法違反にはあたらないのに)
嗤えるのは、それがいかに時代錯誤かも自覚がないほど義家がおろかだったということ。他人に言われた通り、「感情で対応してはいけない。法律を説明しただけ」とかいって馬鹿なことを言ってしまった。
主流秩序に従属するヤンキーだった。
義家副大臣は、いまでも発言を撤回していない。下村大臣は、ほんとうのことを書いた文科省出身の内閣府若手職員が嘘を言っているといって責任を押し付けるような発言をしている。愚かすぎる。
ここは全体主義国家か。
安倍首相が、前川氏に「げ根木のときに自分お所に来ればよかったではない、と批判したが、行っていればつぶされた、握りうぶされたであろう。握りつぶされないために、外部に言うことが大事だ、逃げた後に告発してもいいというのが、内部告発制度の設計思想である。
未だ国民は4割前後も安倍政権を支持している。
もっと賢くなってせめて安倍に騙されないようになってほしい。
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