ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

アナンド・ギリダラダス「二つのアメリカの物語」と主流秩序

 

 

大学の講義で、主流秩序に対抗する道を見つけるヒントとして、アナンド・ギリダラダス「二つのアメリカの物語」をみてもらった。

 

TEDでのスピーチ。同時多発テロの10日後にテキサスのコンビニで起きた衝撃的な襲撃事件は、被害者と加害者である2人の男の人生を狂わせた。だがその後の展開には希望があった。『The True American』の著者アナンド・ギリダラダスが、この驚くべき話をまとめ、このTEDで語った。

 

これは、主流秩序の上位にいる私やあなたには、この構造に加担している責任があるといい、レイスデンとマークから何を学ぶか、あなたは何をしていくかと私たちに問うている。格差、分断、主流秩序の社会において私たちはどう生きるのかという話とみれる。

ここで言う「道徳的」というのがスピリチュアリティの観点ということ。

 

分断された格差社会2つの米国において、トランプに代表される排外主義的敵対、テロ国家をたたけ、 軍事力でたたけ、敵をやっつけろ、という気分が拡大している。そのなかで敵対する二人であるにもかかわらず、加害者の死刑を阻止する被害者レイスデン。

コンビニで衝突したのは移民と貧困白人。加害者の子どもにやり直すチャンスを与える被害者、その精神はスピリチュアリティなもの。

貴方が主流秩序の上位なら問題の一端を担ている可能性がある。私たちの世代に課された倫理的課題は、分断された社会を不再び統合することではないか。繁栄する米国に属する一人一人が担う倫理的課題。

 

以下、彼の話の内容のポイントをまとめた

 

アナンド・ギリダラダス「二つのアメリカの物語」

http://digitalcast.jp/v/22192/

 

 

内容:ポイント

ダラスのタイヤ店とストリップ劇場に囲まれた 小さな地区のコンビニエンスストアでレジを打っていたバングラデシュ移民、レイスデン・ブーヤンは 祖国では 空軍将校という地位にあった人物。9月21日、刺青の白人男マーク・ストロマンがコンビニにきて同時多発テロの報復としてショットガンでレイスデンを撃った。レイスデンは命はとりとめたものの、入院した翌日 病院から退院させられ、右目を失い 婚約者も失い、家も仕事も失った。顔中に金属片が刺さっていて話すこともできない中、健康保険に入っていなかったので病院から追い出され、ホームレスとなり 救急車への電話代も含めて 6万ドルの治療費が借金として残った。

 

数年経ち 彼は何とか生き延びながら、神の恩に報いるため そして 新たな人生に値する人間になるために 何ができるかと考え続けていた。そして彼は「これは 誰もがチャンスに値しないと思う人間に訪れた ― 第2のチャンスなんだ」と信じるようになった。

アメリカは2つの別々の社会 すなわち ― 夢の社会と恐怖の社会とに断絶している社会で、この事件は、2つのアメリカがぶつかった事件だった。。

レイスデンはテレマーケティングの仕事を見つけ、 後にイタリア料理店オリーブ・ガーデンの ウエーターになった。数か月間で レイスデンはオリーブ・ガーデンの アルコール販売で一番の売り上げを誇るようになり、データペース管理を教えた男性を見つけ パートタイムのITの仕事を得て、その後最終的にダラスの一流IT企業に落ち着き、年収数十万ドルを稼げるようになった。

 

彼はこう考えた。 幸運にもアメリカに生まれたのに 自分が得たような第2のチャンスを手に入れられない人がたくさんいると。 彼はオリーブ・ガーデンで それを目の当たりにしていた。彼の同僚の多くは 子どもの頃 恐ろしい体験、家庭崩壊や無秩序 薬物中毒や犯罪などに囲まれていた。裁判の時 自分を撃った男もアメリカの貧しい地域で育ち 同じような経験があったと知った。

 

遠目にはマーク・ストロマンは、パーティを楽しみ、前の晩にどんなにドラッグや 喧嘩をしても 必ず出勤する普通にまじめな男だった。だが 彼もまた アメリカの若者たちの 希望を打ち砕く 3つの関門――悪い両親 悪い学校 悪い刑務所――を経て育っていた貧しい白人だった。

彼が子どもの頃 母親は「お前を中絶するのに 50ドル足りなかった」悔しそうに言った。彼は時々学校に行っては 同級生に いきなりナイフを 突きつけるような子供だった。髭が生える前に逮捕され 少年院や刑務所に送られ、彼は にわか白人至上主義者になった。近所の多くの子どもと同様 父親は麻薬漬けで 不在がちだった。そして2011年に「反ジハード」で3人を撃ち死刑囚となった。撃たれた3人のうち生き延びたのはレイスデンだけだった。

 

だがストロマンは、死刑囚監房でまともな人とはじめてかかわるようになり、更生していく。 牧師やジャーナリスト ヨーロッパのペンパルなどが話を聞いてくれ 一緒に祈り 彼が自問自答するのを手伝ってくれた。 彼は内省を通して向上し ついに自分の人生を決定づけた 憎悪と向き合った。ホロコーストの生存者 ヴィクトール・フランクルの本を読み 自分のかぎ十字の刺青を悔やんだ。犯罪を起こしてから10年目の 2011年のある日、銃撃の唯一の生存者が 自分の命を救うために戦っているということを知る。

 

銃撃事件から8年後 2009年の後半に レイスデンはメッカ巡礼に行き、群衆の中で 彼は湧き起る感謝とともに 義務も感じた。2001年 死に瀕していたあの時 もし助かったら 生涯をかけて人類に尽くすと 神に約束したことを思い出した。その後は自分の人生を 再び築くので精一杯だったが、よくよく考えた上で 報恩の方法として イスラム世界と西洋世界の間の 報復の連鎖を断つ 手助けをする決意をした。っしてイスラムと慈悲の教義の名の下に 公にストロマンを許すことにし、死刑執行の中止を求めて テキサス州とリック・ペリー州知事を 相手取って訴訟を起こした。

 

ただレイスデンの慈悲は信仰だけで 生じたものではなく、「傷ついたアメリカ」の問題を考えたからでもあった。新たなアメリカ市民である彼が 確信するようになったのは ストロマンは「傷ついたアメリカ」の落とし子で 薬殺すれば済む問題ではない、アメリカのこの分断構造こそ何とかしないといけないと考えたからであった。レイスデンは「自分は 言わばアメリカの養子だが 自分が受けた慈悲を アメリカ生まれの ストロマンにも与えて欲しい」と訴えた。ストロマンはアメリカ生まれの 白人という特権を持ちながら、 対極にある 傷ついた社会の住民だった。襲撃され ホームレスになったにもかかわらず、夢を持って努力し 明日は今日の上に築かれると信じることのできた移民が、この絶望に屈した白人のことを考えた。

 

アメリカは先進国の中で 最も成功した国であると同時に 最も失敗した国でもある。世界最高の会社を次々と起業する一方で 飢えている子どもは 記録的な数にのぼる。大多数の平均余命が短くなる一方で 世界でも最高の病院を築いている。現代のアメリカは まるで 元気で若々しい肉体が 脳卒中に襲われたような状態。 半身からは 生気が奪われ 残りの半身だけが 心配になるほど健康なのだ。

 

2011年7月20日 ストロマンの死刑が執行されたが、その数時間前、2人の男は 事件以来 2度目の言葉を交わした。

レイスデン「マーク 私が 最も哀れみ深く 慈悲深い神に 祈っていることを知ってほしい 私はあなたを許すし 憎んでもいない 憎んだことなどなかった」

ストロマン「あなたは素晴らしい人だ 心から感謝するよ ありがとう 兄弟」

 

さらに驚くべきことに 処刑後 レイスデンはストロマンの長女 アンバーに手を差し伸べた。 前科があり薬物依存の彼女に第2のチャンスを つかんで欲しいと思い、支援を申し出、「君は父親を失ったかもしれないが おじさんを得たんだよ」と 彼女に言った。

 

自分は99%の1人だと 安心しないでほしい。もし近所に高級スーパーがあるなら、 軍隊で務めた家族がいないなら、 時給ではなく年俸をもらっているなら、 知り合いが ほとんど大卒なら、覚せい剤を使っている知り合いがいないなら、 離婚歴がないなら、 あなたが犯罪歴のあるアメリカ人 6,500万人の1人ではないなら・・・ あなたがこのすべて もしくは一部に当てはまるとしたら、 自分が今 起きている問題に 気づいておらず 問題の一端を担っている 可能性を認めるべきだ。

 

私の世代の道徳的な課題は この2つのアメリカを 再び結びつけ 分裂するのではなく もう一度 1つになることを目指すことだ。これは課税や減税の問題ではなく、ツイートやアプリで何とかできることでもなく、私たち一人ひとりが レイスデンと同じように 疲弊したアメリカを 自分の問題として引き受けるという 道徳的な課題なのだ。

 

他の地域の実態を知り 希望や悲しみを証言することで レイスデンのように 自分たちに何ができるか問うていこう。あなたには何ができるか? 私たちには何ができるでしょう? より慈悲に満ちた国にするには どうしたらいいのでしょうか?

 

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