ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

「じぶん個人からの社会運動の観点」の欠如

他の問題でもそうだが、ジェンダー平等においても、まず自分から身近な問題に敏感になり、旧来のジェンダー秩序に対して異なる態度をとっていく人が増えていくことが、運動の大事な中身だ。

この点で以下の朝日の特集はまだ表面をなぞっただけでこの次が待たれる記事だった。 CMとジェンダーというのはずっとやってきた。その導入の問題提起は前から言われてきた。 いかに従来のジェンダー秩序を揺るがしたり壊すようなものを作っていくか、じぶんの生活で主流秩序とちがうスタンスでいきていくかを課題とするような、そのような表現が増えるかどうかがカギだ。

異論や賛否の意見が出て検討が増えて、議論が起こり、それを通じて一人の意識が変わっていく、そういう人が増えていくことに意義がある。

とするなら、特に壇蜜さんの宮城アピールは今の主流秩序にそったありがちなもので、特段問題というより、こんなものだらけというようなものだが、当然議論になっていい。行政が税金を使って作るときに、ジェンダー平等をすすめる立場ではないか、それに反していると追及していくことは当然ありうる。そこに真摯に向き合わない行政は糾弾されなくてはならない。 だが、村井嘉浩知事の「可もなく不可もなくというようなものは関心を呼ばない。リスクを負っても皆さんに見ていただくものを、と思った」「どんどん厳しいことを言って、(動画への)アクセス数を増やしていただきたい」という発言、そして県観光課の担当者の「『表現が刺激的すぎる』などの批判も多く寄せられていますが、話題となったことで、多くの方に見ていただいているとプラスに受け止めている」という発言には、何ら批判的な意見のなかに何か大事なものがあるのではないかという、聞いていくという姿勢がなく、もっと前向きな表現を探ろうとする姿勢がない点で確信犯的に反フェミニズムの立場を宣言しているようなものであり、主流秩序を強化している。 これを糾弾しないままなら、その程度の日本社会、国民ということだろう。

********

「CM炎上、ジェンダー表現なぜズレる メディアの男女像」@朝日新聞デジタル http://digital.asahi.com/articles/ASK7D7KGDK7DULBJ010.html

2017年7月17日05時03分

 記事やテレビ番組、CMでの男女の描かれ方が批判を浴び、作品や表現の撤回に追い込まれる例が珍しくなくなりました。メディアのジェンダー表現と、社会のイメージにずれが生じているのでしょうか。おむつの動画広告に描かれた育児風景を巡る批判を紹介した5月の記事への意見や、同月に開かれたシンポジウムでの議論を元に考えます。

■育児風景 動画が論議

 批判の対象になったのは、日用品メーカー「ユニ・チャーム」の紙おむつの宣伝動画です。1人で赤ちゃんを世話する「ワンオペ育児」の母親の様子を映し出しました。夜泣きで起こされたり、片手でおにぎりをほおばりながらだっこしたり、泣きやまない赤ちゃんを前に途方に暮れたり。最後は、母親の笑顔と「その時間が、いつか宝物になる」という言葉で締めくくられます。

 動画を見た「ワンオペ育児」経験者の間では、意見が分かれました。

 「母親1人で子育てにうろたえる時間もある、というところに焦点をあてているだけ」。そう受け止めた兵庫県川西市の自営業の女性(57)は、3人の育児をほとんど1人でしたそうです。「これこそ炎上するかもしれないが」と前置きして、「今のイクメンの風潮、どうなんでしょう。男女が対等でなければと思いすぎる人ほど、実際には幸せになっていないように思う。私は3人の子どもに恵まれ、夫に『守られ』、大変幸せな人生でした」と言います。

 茨城県神栖市のパート女性(47)は「まだまだ子育ては女性にかかる負担が重く、1人で悩んで闘っている人も多い。美化するより、現状への訴えとして良いと思った」と評価します。夫(52)は残業や単身赴任などでほとんど家におらず、3人の育児を1人で担ってきました。夫が勤める会社が一家だんらんの様子を描くCMを流した時は、いたたまれなくなったそうです。

 娘2人を育てた東京都調布市の女性(59)は「動画を見て一瞬で(育児していた)30年前の気持ちに戻り、悲しさがよみがえった」。女性が子どもを産んだ途端、夫(64)から、母親として必要な技術と知識と能力を持ったと勘違いされた、と振り返ります。「わたし1人で育児を頑張れば頑張るほど、夫は普段通りの生活を送ることができ、自分の妻は育児と家事を両立できていると安心し、ますますワンオペ育児が進みました」

 だからワンオペ育児を「宝物」という動画の趣旨には賛同できないと言います。「母親にひとりぼっちで小さな命を育てさせることを『生きがい』とすり替え、子育ての責任と実働を母親だけに丸投げしているという本質を、社会から隠してしまっている」

■繰り返される広告への批判

 ツイッターが普及した2011~12年ごろから、特に広告の表現をめぐってSNS上で批判が繰り返されてきました。

 例えば、調味料や洗剤などのCMで家事や育児のシーンに女性だけ、という風景が肯定的に描かれていることに、疑問の声が上がるようになりました。14年ごろになると「炎上」を受け、発信元の自治体や企業が広告や動画を取り下げるケースが目立つようになりました。男性上司が女性部下の容姿を比べるシーンが「セクハラだ」と指摘されたファッションビル「ルミネ」の動画(15年3月)、25歳の誕生日を迎えた女性に友人の女性2人が「今日からあんたは女の子じゃない」と言う資生堂の動画(昨年10月)などが削除されています。

 今月もサントリー第3のビール「頂(いただき)」の動画シリーズ「絶頂うまい出張」が、公開とほぼ同時に炎上。出張先の店で出会う女性たちが「お酒飲みながらしゃぶるのがうみゃあ」「コックゥ~ん!しちゃった……」と話す場面が、「女性を男性の都合のいい性的な対象としてしか見ていない」と批判され、翌日削除されました。同社広報は「ご当地グルメや方言で魅力を伝えたかった。一部の方々がご気分を害されたことはおわびしたい」としています。

 今月5日から公開されている宮城県仙台市などによる観光キャンペーンのPR動画「涼(りょう)・宮城(ぐうじょう)の夏」には、「アダルトビデオみたいで悪趣味だ」といった批判も寄せられています。

 タレントの壇蜜さんが夏バテ気味のゆるキャラを涼しい宮城に連れて行き、ウミガメに乗って県内を旅するという設定。たびたび壇蜜さんの唇のアップが映し出され、「ぷっくり膨らんだ、ず・ん・だ」「肉汁とろっとろ、牛のし・た」「え、おかわり? もう~、欲しがりなんですから」と特産品が紹介され、「あっという間にイケちゃう・・・」という言葉で終わります。

 批判について、同県の村井嘉浩知事は10日の定例記者会見で「可もなく不可もなくというようなものは関心を呼ばない。リスクを負っても皆さんに見ていただくものを、と思った」「どんどん厳しいことを言って、(動画への)アクセス数を増やしていただきたい」。県観光課の担当者も「『表現が刺激的すぎる』などの批判も多く寄せられていますが、話題となったことで、多くの方に見ていただいているとプラスに受け止めている」と話しました。

 海外でも「炎上」になるケースがある一方、従来型の男女像にとらわれない描き方も広がっています。

 マイクロソフト社が16年3月に公開した動画「きみは何を作る?」では、知られざる女性科学者たちの功績を紹介。米航空会社ジェットブルーは母の日に合わせた動画で、機内で赤ちゃんが泣くと次回の搭乗で料金が割引になる設定で、子連れ客を応援するCMを流しました。また、今年2月、米国で最も年間視聴率が高いとされる「スーパーボウル」のテレビ中継のCMで、ドイツの自動車メーカーアウディが男女の賃金格差をテーマにした「Daughter(娘)」を放映。同社の賃金格差解消の取り組みをPRし、動画サイトのユーチューブで1200万回以上再生されました。

■新しい表現 探る作り手

 発信者自身もメディア表現を問い直し始めています。東京大学で5月、「メディアと表現について考えるシンポジウム」が開かれました。

 共働きの子育て世帯向けに情報を発信している「日経DUAL」の羽生祥子編集長は、パソコンに「ママ」と入力すると「パパ」と変換されるシステムを編集部で使ってみた体験を紹介しました。すると、「パパが毎日ご飯を作って、パパが子どもの担任の先生と話し合って、さあ、明日からもパパが頑張って!」と、記事がまるで父親ばかりに頑張るよう促す内容になって驚いたそうです。「男女を入れ替えてみることで、おかしさに気づくことがある。そういう草の根運動を日々やっています」

 メディアでの表現は、私たちの暮らしとも深く関わっています。

 タレント、エッセイストの小島慶子さんは、テレビ番組で出演者の容姿や性的指向について「ブスとかオネエとか、『(使うのは)あり』という製作現場の理屈が、本当に社会に共有されているのか」と疑問を呈しました。「メディアでの会話は学校や職場で再生産され、番組と同じ文脈で使われるとは限らない。いじめやハラスメントにもなる。誰にとっても心地よい社会になるために、どんな表現がふさわしいのか、考えることをやめず、探っていきたい」 メディア企業だけの問題ではありません。「子育て支援の冊子には母子だけの写真が使われる一方で、イクメンイベントは花盛り」。ジャーナリストの白河桃子さんは、自治体の発信にみられる典型的な問題点を指摘しました。ある県の婚活ガイド本には「女性は受け身の性」などと書かれていて、回収騒動に。イクメンの指南書では、妻が働くという設定がない事例もあったそうです。企業や自治体から炎上防止の助言役を頼まれることも増えたといい、「どうすればみんなが不快にならないコンテンツの発信やチェック機能がもてるのか、考えたい」と呼びかけました。

 一方で、多様性への配慮は表現の自由を狭めることにつながらないでしょうか。ニュースサイト「ハフポスト日本版」の竹下隆一郎編集長は「逆に表現の幅を広げるのでは。言っていいこと、やっていいことが変わってきた中で、格闘し、新しい表現をする。作り手の腕の見せどころだ」と述べました。

■美化が現実を固定する 大妻女子大・田中東子准教授

 メディアのジェンダー表現に「ノー」が突きつけられる背景について、大妻女子大の田中東子准教授(メディア文化論)に聞きました。

     ◇

 「炎上」の背景の一つに、女性が直面する現実を美化することで、それを変革するのではなく、保持する機能を果たしてしまうという構図があります。作り手は女性を好意的に表現しているつもりなのに、受け手の女性は「ワンオペ育児」のつらい現実を突きつけられたり、努力しているのに「もっと頑張れ」と言われたりしているように感じてしまう。

 一方、今月問題になった二つの事例は、制作者側の「炎上してでも注目されたい」という意図すら感じてしまいます。短期的に見ればアクセス数が増えて成功、かもしれませんが、ネット動画は世界中から見られる。一企業や自治体の問題にとどまらず、「こういう表現が通用する国なんだ」と受け取られ、日本のイメージ低下にもつながりかねません。

 欧米では広告にフェミニズムの視点を採り入れたフェムバタイジング(femvertising)という造語が注目され、新しい女性イメージを提示する表現が次々と生み出されています。日本でも表現のあり方についてまだまだ思考する余地があるのではないでしょうか。(聞き手・三島あずさ)

     ◇

 今回「ジェンダーとメディア」というテーマを皆さんと議論したいと思ったのは、わたし自身の悩みからです。慣れ親しんできた価値判断、記事の切り口や文中表現について、本当にこんな書き方を続けていていいのかと、数年前から思い始めたのです。一つが、性別を巡る表現や切り口でした。今週中にも同じテーマで朝日新聞デジタルのアンケートを始めます。新聞も含め、メディアが発信する表現のありようを一緒に考えられたらと思います。(錦光山雅子)