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日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その1 

日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その1 

 

 

ソウルで「日本軍「慰安婦」資料の現在と未来国際コンファレンス」があったそうで、そこで小林久公さんが発表したレポートを知りました。

とてもまともなものと思いますので、紹介しておきます(掲載の許可を得ました)。

 

長いので、4

回にわたって載せます

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日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 

                   小林 久公 

(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動 資料チーム)

 

                                 Japan National Movement for resolution of "Comfort Women"Issue

Member of a material team Hisatomo Kobayashi

 

1. はじめに

 

 (1) 私の問題提起

 

 日本軍「慰安婦」被害者が、その損害賠償と謝罪、名誉回復と再発防止を求めているのは日本政府に対してであり、その求めに応じて日本軍「慰安婦」問題を解決する責任が日本政府にあると私は考えている。

 その解決の前提が、被害者に対してその加害事実を認めて謝罪し賠償することである。問題解決は、被害者がそれを受け入れることができるかどうかにかかっている。

 日本軍「慰安婦」問題の解決が求められてから四半世紀を過ぎた現在も、日本政府はこの問題を解決できないでいる。その原因は、日本政府が加害事実をしっかりと認定しないでいるところにある。

 

 この四半世紀、多くの研究者によって「慰安婦」関係資料の調査・研究が進められてきたが、残念ながら、それらの成果は、日本政府の事実認定に生かされていない。日本政府は、それらの資料を無いものとする独特の立場を一貫して貫いている。

 

 この状況を打破して、しっかりした事実認定を日本政府にさせるためには、各国、各団体などが収集している資料と、日本政府が収集している資料を相互に共有し、事実認定の共有の基礎をつくることが必要である。

 

2014年に「第12回日本軍『慰安婦』問題アジア連帯会議」が「日本政府への提言」とともに500点を超える資料を日本政府に渡し、その共有を図ろうとしたことがあるが、日本政府は「市民からの資料提供は、受け取れない」として返却してきた経緯がある。

 

 この経験を踏まえるならば、国と国との関係として事実認定の共有化を図るための相互の資料提供関係を作り上げることが望ましいと考えられ、この間、収集、発掘された資料について、各国政府を通して日本政府に提供し、また、日本政府が収集した資料についても各国政府を通して入手することが大切である。このことは、資料のデータベース化による共有システムの構築とは別に、「慰安婦」問題解決のために必要な取組として、本カンファレンスで、そのような取組み方向が確認されることを期待している。以下に、そのための論を展開する。

 

 

 (2) 日本軍「慰安婦」問題解決の基本

 

繰り返しになるが、日本軍「慰安婦」被害者は、日本政府に「日本がやったことを認めよ」、「謝罪し賠償せよ」と求めているのであり、日本軍「慰安婦」問題解決の基本は、日本政府が「慰安婦」被害者に対して、その加害事実を認め、謝罪し賠償し、再発防止の措置を約束することが基本原則であると考えている。

 

 日本政府は長い間、国と国との紛争の解決については相互に交渉主体とし認めてきたが、他国に対する個人請求権の存在は認めながらも、国際関係での国と個人との当時者同士の関係を裁判上でしか認めていないように思われる。だが、日本軍「慰安婦」問題は、国が犯した人権侵害をその被害者に対して謝罪し賠償する問題である。そこに難しさはあるが、世界の趨勢は個人と国の関係を認める方向に動いていることを日本政府は知るべきである。

 

 本論の9で扱っている韓国政府が「慰安婦」問題の新方針として打ち出した「日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する」との立場は貴重なものである。

 とりわけ、加害の事実認定なしに、謝罪も賠償も成り立たないのであるから、日本政府の日本軍「慰安婦」問題に対するしっかりした事実認定こそが問題解決の基本となる。

しかし、これまでの「河野談話」、アジア女性基金(国民基金)の「お詫びの手紙」、「2015年の「日韓合意」の事実認定では、責任の所在が曖昧なために解決に至ることができなかったものと私は考えている。

 

(3) 日韓両国政府に欠けている視点

 

 韓国の文在寅大統領は、昨年12月28日に声明を発表し「2015年韓日両国間の慰安婦合意は手続き的にも内容的にも重大な欠陥があった」、「これは歴史問題の解決にあって確立された国際社会の普遍的な原則に違反しているだけでなく、何よりも被害当事者と国民が排除された政治的な合意だった」と述べた。

 

 これに対し日本の河野外務大臣は「韓国政府が同報告書に基づいて,既に実施に移されている合意を変更しようとするのであれば,日韓関係がマネージ不能となり,断じて受け入れられません」との談話を発表した。[i]

 

そして本年1月4日には、韓国大統領は「慰安婦」被害者を招き「公式合意だった事実は否定できないが、合意で慰安婦問題が解決したと受け止めることはできない」と述べた。[ii]

 この日韓両国政府のやり取りに基本的に欠けていることがある、両国政府が日本軍「慰安婦」問題に対するしっかりした事実認定をしないままでいることである。文在寅大統領は「確立された国際社会の普遍的な原則」と述べているが、その普遍的原則こそがしっかりした事実認定を前提にしているものである。

 

 日韓両国で、日本軍「慰安婦」問題の事実認定を共有化する作業が必要であり、そのための「慰安婦」関係資料の情報共有が両国政府に期待されるところである。

 

(4) 日本政府の事実認定の問題点

 

日本政府の日本軍「慰安婦」問題についての事実認定は、1993年8月4日の「慰安婦関係調査結果発表に関する河野内閣官房長官談話」(以下、河野談話と言う)に示されている。この河野談話は、現在の安倍政権を含め歴代内閣が継承している。そこには次のような事実認定がなされている。[iii]

 

①「長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた」

 

②「慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送

については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した

 

③「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加

担したこともあったことが明らかになった」

 

④「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」。

 

⑤「戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた

 

 この日本政府の事実認定は、「慰安」の募集が本人たちの意思に反した強制的なものであり「甘言、強圧」などの違法手段で行われていたことまでは認めている。「慰安所」での生活も強制的な状況の下での痛ましいものであったことも認めている。

 だが、この河野談話の事実認定は、「慰安婦」被害者とその支援者たちには受け入れられるものとならなかった。その主な理由は、日本軍と日本政府の主体としての責任を曖昧にする「軍の関与」のもとに行われたとの不十分な事実認定にある。

 

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[i] 日本外務省のホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_003587.html

[ii] 朝日新聞2018年1月4日18時 https://www.asahi.com/articles/ASL145DN5L14UHBI013.html 

[iii] 日本外務省のホームページ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/taisen/kono.html