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日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その4 

日本政府が認定した日本軍「慰安婦」関係資料の範囲と境界 その4 

 

8. 日本政府が、閣議決定で認めた 19簿冊182点の文書に存在する記述

 

 この度の紙智子議員の質問主意書での「記述の確認が」が原文と完全に一致するものではなかったにせよ「御指摘のような記述がされている」と閣議決定答弁書で確認した意義は大きい。以下に「完全に一致する記述」を紹介する。この記述が何を物語っているのか、真実は何かを広く国際社会が知る必要がある。

 

これらの記述に対して日本政府の副長官補室審議官は「個別の資料の評価はしていない。全体として見ると、強制連行を直接示すような記述は見当たらない」と述べている。[i]

 

 これらの記述を確認しながらも「強制連行を直接示すような記述は見当たらない」と日本政府が言い続けるならば、それは国際社会で恥をさらし続けるだけであろう。しかし、これらの文書入手した以降今日まで、日本政府は「強制連行を示す文書は無い」と公式に発言することをしていない。もしかしたら、きちんとした訂正をせずに口をつぐんだままでいることにしたのかも知れない。

 

 

(1)(政府の通し番号29の2)「桂林市民九名の(桂林市内に於ける日本軍残虐行為)宣誓供述書広西省」に「偽組織人員を利用し工場の設立を宣伝し四方より女工を招致し、麗澤門外に連れ行き強迫して妓女として獣の如き軍隊の淫楽に供した」との記述がある。これは誘拐罪の記述である。

 

 

(2) (政府の通し番号30の2)ブリラグ・フエルナンの宣誓供述書に「各地ではフランス人女子に対        する凌辱行為も若干行われました。ある婦人と十四歳になるその妹とは、強制的に数週間、約五十名の日本兵と雑居させられ、その虐待と暴行を受けました。その一人は発狂しました。彼女達は二人ともその後処刑されました。また別の例では(中略)更にまた数地方では原住民婦女子は売淫行為を強制されました」との記述がある。これは18歳と14歳のフランス人姉妹を全裸のまま兵舎に数週間置き奴隷状態にしていたことを示す記述である。

 

(3) (政府の通し番号31の12)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第25号事件(1名)」の法務省面接調査でバリ島海軍第三警備隊特別警察隊長からの聞き取りとして「私の一番恐れていた事件は、慰安所事件であった。これは慰安婦の中には、スラバヤから蘭軍下士官の妻君五人の外、現地人七十人位をバリ島に連れて来た件である。(中略)この外にも、戦中の前後約四カ年間に二百人位の婦女を慰安婦として奥山部隊の命により、バリ島に連れ込んだ。私は終戦後、軍需部、施設部に強硬談判して、約七十万円を本件の工作費として貰い受け各村長を介して住民の懐柔工作に使った。これが完全に効を奏したと見え、一番心配した慰安所の件は一件も訴えが出なかった」との記述がある。これは、部隊(軍)の命令により「慰安婦」を連行した記述である、

 

(4) (政府の通し番号33の1)「BC級(オランダ裁判関係)ポンチャナック裁判・第13号事件(13名)」の起訴状に「本被告は(中略)特警隊が強制売淫をなさしむる目的を以て彼女等の意志に基かずして少女婦人を拉致せるを黙認せり。(中略)又本被告は〇〇に対しカタバンの少女・婦人等をポンチャナックに連れ来り慰安所に入所せしむべく命じたり。其の命により二十名の少女・婦人等は自己の意志に基かずして(中略)慰安所に入所せしめられたる上強制的に淫売婦たらしめたり」との記述がある。と、女性たちを性奴隷状態に置いていたことの記述である。

 

  (政府の通し番号33の3の2)同事件の判決文に「第一被告は「ポンチャナック」警備隊長兼特警隊長としTKTに依り犯罪行為が行われたることを知りいたる上、多くの場合之に自ら命令を与 えたり(処刑、及慰安所用に婦女を探すこと)」との記述がある。

 

   同判決文に「斯る最大級の野蛮なる振舞いをしても住民を絶えず恐怖におののかしむるには未だ足りずとて、敵は婦女子を慰安所にいれて之に売淫を強制することに依り犯罪を重ねたり」との記述がある。

 

(5) (政府の通し番号35の2)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第69号事件(12名)」「婦女達は交互にこの手術台に乗せられ一番検査に都合の良いやうな恰好をした。之を眺めているものが見て、大声で笑ひたてた。恐れと痛みから台から降りやうとすると、手荒く取扱はれた(中略)此の時〇〇の行動も極めて唾棄すべきものがあった。即ち、彼は煙草の火で陰毛や大腿部を焼いたりして、皆で大笑ひの種にした。(中略)三名の娘が失神したが、名は憶へていない。此の三名は正気づかせる為に打ち殴られたり、大声で怒鳴られたりした。(中略)既に第一日目である日曜日の午前中に十八名~二十名の客がとられ、その上に夜間にも「仕事」があった。月曜日の朝には既に数名の娘は起き上れず、歩けもしなかった。(中略)B姉妹は逃げ出して終った。然し、彼女達は火曜日の朝には警察の手に依って捕った。送り帰されて来てから、彼女等は裸にされ、洗濯夾を乳首につけられて、便所の掃除をさせられ、通りがかりの日本人達から侮辱された。」との記述がある。読むに堪えない悲惨な実態で在り、まさに性奴隷の実態を記述している。

 

 

(6) (政府の通し番号35の36)前記第69号事件の判決に「被告は(中略)婦女子を抑留所より連行し之を慰安所に入れることが ―たとえそれが自由意志にて行はれたにせよ― 人道及び国 際条約の侵反行為なりと悟る程には本件を深く考えざりき。(中略)(日本人)自らが設けたる抑留所の非人道的な悪状況(食料、宿舎)を利用して抑留所より志望者を募集すること自体が既に道義と人道に反する行為なるも、本件の場合はそれと共に又戦争の法規慣習に対する違反行為なり。更に「兵站係将校」をも兼務しありたる被告は、斯かる計画を是認し、その計画作成に協力し、更に、本計画が如何に実行され、又その結果開設されたる慰安所が如何に経営せられたるやの監督を全く行はざりし事実に依り、犯罪行為に責任を負はざるべからず。(中略)被告は高級将校として和蘭人婦女子が一般的に、又、主義として日本人の慰安所慰安婦として働くために抑留所を離るることを欲さざること及び斯かることは偽瞞乃至暴力を用ひて始めて可能なることを当然知りいたる筈なり。(中略)被告〇〇を「強制売淫の為の婦女子の連行」、「売淫の強制」、「強姦」なる戦犯行為に依り懲役15年に判決す」との記述がある。部隊(軍)が組織的に実施していたことを示しており、それが国際法に違反した犯罪行為であるとの判決文書である。

 

 

(7)(政府の通し番号36の74)「BC級(オランダ裁判関係)バタビア裁判・第106号事件(1名)」の〇〇中将に対する「判決文」に「次の部下が下記の刑に処せられていることを考慮し、即ち

   1 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制及び強姦罪で死刑

   2 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制罪で懲役十年

   3 被逮捕者の悪待遇罪で懲役七年

   4 被逮捕者の悪待遇及び強姦罪で懲役十六年

   5 強制売春の為の婦女子のら致罪で懲役二年

   6 売春強制罪で懲役二十年

   7 売春強制罪で懲役十年

   8 売春強制罪で懲役十五年

   9 売春強制罪で懲役七年

   10 強制売春の為の婦女子のら致、売春強制、強姦罪で懲役十五年

(中略)この本人の自由意志に反してキャンプから連れてきた婦女子を遊女屋に入れることを容認したと言うことは、婦女及び娘達は、自己の意志に反してスマランの遊女屋に入れられたものであり、又、〇〇一味に対する事件の審理の際にも既に明らかにされた如く、彼女らは、如何なる条件の下にも遊女屋を出ることは許されず監禁され上記判決に証拠充分と認められ且つ本件においても右判決に基いて確実と見られている如く或は強姦或は悪待遇で売春を強制されたことが判明している故に、同時に彼の部下が犯した「売春強制」、「被逮捕者の悪待遇」及び「強姦」と言う戦争犯罪を容認したと言うことにもなることを考慮し(中略)本判決の頭初に掲げた被告人〇〇に対し、起訴事実のうち、証拠不充分のものについては無罪を、証拠充分のものについては「売春の強制」、「強姦」、「監禁した者の悪待遇」なる戦争犯罪に有罪を宣告し、よって懲役十二年の刑に処す」との記述がある。日本がサンフランシスコ条約で受け入れた裁判の判決であり、女性たちを強制連行し、性奴隷としていたことを認定している判決文である。

 

9. 韓国政府の新方針

 

 本年1月9日、韓国康京和(カンギョンファ)外交省長官が「2015年の日韓慰安婦合意に関する新方針」を発表した。報道によるとその内容は以下のものである。[ii]

 

 一、韓国政府は慰安婦被害者の方々の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けてあらゆる努力を尽くす

 

 二、この過程で、被害者や関係団体、国民の意見を幅広く反映しながら、被害者中心の措置を模索する。日本政府が拠出した「和解・癒やし財団」への基金10億円については韓国政府の予算で充当し、この基金の今後の処理方法は日本政府と協議する。財団の今後の運営に関しては、当該省庁で被害者や関連団体、国民の意見を幅広く反映しながら、後続措置を用意する

 

 三、被害当事者たちの意思をきちんと反映していない2015年の合意では、慰安婦問題を本当に解決することはできない

 

 四、2015年の合意が両国間の公式合意だったという事実は否定できない。韓国政府は合意に関して日本政府に再交渉は求めない。ただ、日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのまま認め、被害者の名誉と尊厳の回復と心の傷の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する。被害者の女性が一様に願うのは、自発的で心がこもった謝罪である

 

 五、韓国政府は、真実と原則に立脚して歴史問題を扱っていく。歴史問題を賢明に解決するための努力を傾けると同時に、両国間の未来志向的な協力のために努力していく

 本日述べた内容が被害者の皆さんの思いをすべて満たすとは考えていない。この点について深くおわびを申し上げる。今後も政府は真摯(しんし)に被害者の皆さんの意見に耳を傾け、追加的な後続措置をまとめていく。

 

 この韓国政府の新方針について「慰安婦」被害者支援団体の挺身隊問題対策協議会(挺対協)は「『合意は慰安婦問題の解決ではないことを政府が正式に宣言し、日本政府の拠出金10億円を(韓国の)政府予算で負担する方向は歓迎するが、日本政府の自発的な措置だけを期待することは矛盾』と指摘。

外交問題との理由で法的責任を問わず、政府にできる措置だけを取るという態度は受け入れられない」と強調した。その上で、合意に基づいて設立された慰安婦被害者支援財団「和解・癒やし財団」の解散を求めた』とされている。[iii]

 

 

日本政府はこの韓国の新方針に抗議している。「日韓慰安婦合意をめぐり韓国政府が新方針を打ち出したことを受け、外務省の金杉憲治アジア大洋州局長は9日午後、在日韓国大使館の李熙燮(イヒソプ)公使を同省に呼んで抗議した。

 

抗議に先立ち、河野太郎外相は『日韓合意で慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認したにもかかわらず、韓国側が日本側に対して更なる措置を求めることはまったく受け入れられない』と反論。韓国政府に合意の履行を改めて求めた。

 

 韓国の康京和(カンギョンファ)外相は9日、合意について日本側に再交渉を求めないとする一方、元慰安婦の名誉回復などのため努力するよう期待する考えを明らかにした。これについて、河野氏は『合意は国と国との約束であり、政権が変わっても責任を持って実施されなければならない。合意の着実な履行は国際社会に対する両国の責務だ』と強調した。

 

 また、日本政府が元慰安婦への支援事業のために拠出した10億円について、韓国側が政府予算で補塡(ほてん)すると発表したことについて、河野氏は『発表以上のことをまだ承知していない』としつつ、韓国側に説明を求める考えも示した。

 ただ、韓国側は『合意に関して日本政府に再交渉は求めない』としており、両政府の立場は平行線をたどっている。日本政府は韓国側の今後の対応を注視する構えだ。」[iv]

 

 

10.  日本軍「慰安婦」問題の早期解決は可能

 

 

 日本政府が日本軍「慰安婦」問題を解決する気になれば早期の解決は可能である。残されている壁は、日本政府がその気になるかどうかの政策選択の壁でしかない。

 

国際社会では、被害者が告発する「日本がやった」ことを証明する資料は山ほど発見され収集されている。日本政府は、それに目をつむり問題を解決しようとしていないだけである。

 

例えば「「新たに見つかった資料の中に『軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述』のある文書があることが判明した。また、日本軍が「慰安所」を設置し、管理、運営していたことも明らかになった。更に、そこでの生活は、まさに性奴隷的な状況であり、「慰安婦」問題は,多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり,かかる観点から,日本政府は責任を痛感している。

 

日本国の内閣総理大臣が改めて,慰安婦として数多の苦痛を経験され,心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し,心からおわびと反省の気持ちを表明する。」と発表することで解決に一歩近づくことが出来るのではないかと思われる。

この度、日本政府が閣議決定で「慰安婦」に対する強制の記述を認めた意義は大きい。

 

累次述べてきた通り、悲なしいかな我が日本政府はトリックを使い、有るものを無いと言うとんでもない政府である。私たちは、そのような政府を相手にしているのである。

 

より一層、日本政府に対し、しっかりとした加害事実の認定を求める国際社会の取組みを進めるとともに、その日本政府が、選挙で選ばれた人々によって構成されていることも指摘しておきたい。

 

そして、日本政府が解決する気になるための取組みを日本人の一人として行うことの重要性を改めてここに自覚していることを申し述べ、このレポートの終わりとする。

以上

 

 

 

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[i] 東京新聞 2017年04月17日(夕刊) 、共同通信配信、

[ii] 朝日新聞 2018年1月10日 https://www.asahi.com/articles/ASL194RPYL19UHBI00Y.html

[iii] 聯合ニュース 2018/01/09 16:39 http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2018/01/09/0400000000AJP20180109004700882.HTML

[iv] 朝日新聞 2018年1月9日18時48分https://www.asahi.com/articles/ASL195PXNL19UTFK01M.html 

 

                                     (2018年2月27日)

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連絡先 小林 久公 (KOBAYASI HISATOMO)