ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

『バッドガイズ』は獣を人間にしていく教育物語

這い上がろうとすることへの温かいまなざし

 

韓国ドラマ『バッドガイズ』(全11話)、とてもよかった。

 

過去に凶悪犯罪を犯した奴らを集結させ、より大きな組織や悪人たちを潰す計画で集められた者たちのドラマ。

警察庁長のナム・グヒョン(カン・シニル)は、無差別事件を捜査していた警察官の息子が命をおとした事に、ショックを受け、停職中である刑事オ・グタク(キム・サンジュン)に戻ってくるようにと促し、過剰捜査で"狂犬"とのコードネームを持つ彼に、息子の命を奪った犯人を連行するように命じる。

それを受け入れたグタクは、パートナーとなる警部ユ・ミヨン(カン・イェウォン)に服役中の3人の罪人をつれてくるようにと告げる。

その3人というのは、ソウルの悪組織の行動隊長パク・ウンチョル(マ・ドンソク)、卓越した肉体と頭脳を持つ殺し屋チョン・テス(チョ・ドンヒョク)、サイコパスで最年少の犯罪者として捕らえられているイ・ジョンムン(パク・ヘジン)。

ウンチョルの腕力、テスの技、ジョンムンの頭脳があれば、逮捕できない犯罪者はいないとグタクはもくろんでいた。グタクは、犯人を捕まえた者は減刑すると促す。

3人は手を貸すことを決め、それ以降、法秩序をも度外視した捜査で数々の難事件の犯人らと対立していく。 その中で3人はじょじょに人間性に目覚めていくが、この計画には隠された大きな背景があった。

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特に好きなのが第7話の、殺し屋チョン・テスが、殺し屋兄弟ジョンソクと闘い、ついに彼の腹を突き刺した場面の会話。

 

ジョンソク「早くナイフを回せ」

テス「もう人を殺せない。大切な人を奪われる悲しみや苦しみを知ってしまったから。それに俺のことを知っている師匠や弟分のヒョヌが亡くなり、お前まで死んだら、俺は天涯孤独になる。俺を一人にしないでくれ」

ジョンソク「俺を生かせばまたお前の命を狙うことになる。それでもいいのか。師匠やヒョヌ、それにお前まで、なぜそんなに変わってしまったんだ。俺は相変わらず泥水の中で生きているというのに、お前たちは泥水から出ようとしている。なぜだ?教えてくれ。どうしてだーー!」

 

【回想シーン】

(ヒョヌを殺す場面で)

ジョンソク「殺し屋をやめようと思うのは女のせいか」

ヒョヌ「彼女に出会って俺が変わったんじゃない。俺が変わって彼女に出会えたんだ。だからジョンソクさんも、もう殺しはやめてくれ。ジョンソクさん、やめてくれ」

 ***

師匠「手に着いた血は流すことはできるが、“頭に着いた血”=罪悪感は消すことができないんだ」 

回想終り

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ジョンソク「早くここから去れ!俺はもう引き返せない」

(そういってジョンソクは自らナイフを自分に深く突き刺すように動く)

(呻き叫ぶテス。慟哭)

(一人になったテスは、自分が殺し屋のときに殺した男の妻のところに行く。殺したことの意味、重さ、取り返しのつかなさ、それらを身に染みて感じ、崩れ落ちるテス)

 

ジョンソクは、死の直前になってようやく、師匠たちの言葉の意味が分かったのだ。それは後悔だれけの、しかしわかってよかった幸せな最期だったといえよう。

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また第5回もよかった。

 

会社で理不尽なことをされた者が復讐にその会社の重役に連続殺人を犯す。

その犯人に対して、サイコパスと言われているイ・ジョンムンが言う。

 

「犯行動機はわかっている。社長の罪を隠すために非正規の者たち20人が不当に解雇されたことだ。

だがらって関係ない人を巻き添えにするな。お前は首にされて金に困り、妻を病気で亡くし、娘を養子に出した。だがいくら恨んでいても、このやり方は間違っている。

おもえが殺した人間はどんな人たちだったと?

チョウ・ヨンソン、46歳。認知症の母親と暮らす、日雇いの清掃員。

キム・チョムギ、57歳。娘の学費のためにバスの運転手をしている。

45歳のパク・サンギョンは、リストラされた。

キム・ミジョンは数日後に結婚式を挙げる予定だった。

34歳のチェ・ジュンソクは、病気で亡くなった子供の葬式を終えて帰る途中だった。お前のように。

どうしても誰かを殺したいなら、俺を殺せ。生きている意味のない俺を殺せばいい。

弱者ばかりが死んでいく。悪い奴らは大勢いるのに、なぜ似た者同士で傷つけあう?なぜだ?撃て!。早く撃て!」

 

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そして最終回。

一番悪い奴がわかり、最後の闘いで自分は死ぬかもしれない。その前にどうしてもやっておかなくてはいけないことがある。テスは自分が殺した男の妻で思いを寄せている女性の所に行く。

「いい父親であり、いい夫でした。それまでの人生で一度も人に迷惑をかけたことがない人をどうして殺したのかを聞きたい。」「謝罪を受け入れることは絶対にできない。ただ聞きたい。なぜ殺したか」

「そういわれていたので、それに応えるために来ました。

貴方の夫を殺したのは私です。事故に見せかけて殺しました。」・・・・妻の慟哭

 

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この物語は、人を殺す、犯罪を犯すということの本当の“意味”を獣たちに感じさせる物語。教育の物語。そして人を人にしていく物語。

仲間というものを知っていく。より悪い奴らの犯罪を見て怒りを持っていく。正義を行うことのすがすがしさを味わう。被害者の悲しみを学んでいく。

弱きもの、ダメなもの、ろくでなしたちが、這い上がろうとすることへの温かいまなざしを持っている。

 

いい物語だった。