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韓国の労働運動と映画 --- 『明日へ』 を観た

 

 

映画『明日へ』(韓国2014年、原題「カート」を先日観ました。

韓国のスーパーマーケット労働者の解雇に反対する闘いの話で、実話に基づくものです。

 

私のブログで紹介したドキュメント映画「外泊」(Weabak、キム・ミレ監督、2009年)、ありましたよね。あれの商業映画版です。

 

韓国の大型スーパーで女性労働者500人がカウンターに座り込み闘った。その後1年以上も続いた泊り込み闘争のドキュメンタリー映画。

其れは家庭でのジェンダー役割に縛られた女性が「外泊」するというジェンダー自立の面もあった運動で、其れを写し取った映画でした。

逮捕されたり、追い出されたりしてもまた店の前にテントを張って抗議を続け、じょじょに脱落者が出ていくも、その中で多くの人が自分の生き方を考えていきます。連れ戻しに来る夫との関係を考えます。

 

あのドキュメントに比べれば、「明日へ」は作り物めいて、外泊というタイトルの意味するものが「明日へ」では抜けていましたが、でも感動的ないい映画でした。

 

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韓国の労働運動の映画としてはドキュメンタリー「塩花の木々~希望のバスに乗る」(オ・ソヨン監督)もありました。(これもブログに書きました)

 

※「希望のバス」について  韓国の大手企業の一つである造船会社「韓進(ハンジン)重工業」では、10年以上にわたり整理解雇が行われていた。解雇通告を受けた労働者たちは闘争を続けたが、会社の不誠実な対応は続き、自殺者は20数名にのぼった。  2011年1月6日、一人の女性労働者が高さ35mのクレーンに登り、そのまま立てこもる。彼女の名前はキム・ジンスク。目的は400名の労働者の整理解雇撤回を社会にアピールすることだった。しかし、報道もされず、会社は整理解雇をし続けた。  そんな孤独な闘いの中、彼女のクレーン上からの叫びは、ツイッター等を通じて多くの人々に伝わり、支援の輪が広がっていった。  そして、150日以上に及ぶ日々を過ごしていた頃、「整理解雇と非正規職のない社会をめざす『希望のバス』と呼ばれる連帯行動が取り組まれ、韓国全土から市民が籠城現場に駆けつけた。  2011年11月10日、会社からの暫定合意案が労働組合で可決され、キム・ジンスクさんは309日ぶりに、自らの足で、クレーンから降りた。

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ところで、最近、韓国のテレビドラマで労働運動を扱った面白いもの(組合のオルグが主人公のドラマ『錐』)があると知りました。

観てみたいですねー。

 

ハンギョレ日本語版で紹介されています。

http://japan.hani.co.kr/arti/opinion/22565.html

労働基準法の教育が求められる韓国社会

2015.11.20 22:38修正 : 2015.11.21 07:35

 

 最近テレビで放映中の『錐』というドラマが話題だ。韓国のドラマの現実から見る時、労働組合という素材を前面に立てた製作陣と出演者に対し、まず拍手を送りたい。こうしたドラマによる挑戦は、韓国社会で意味ある疎通の機会を生むだろう。

 

 『錐』は、外国系の大型スーパーで起きた労働組合に関する話だ。 生活の現場で繰り広げられる不当な「甲(カプ)チル」(優越的地位を象徴する「甲」の横暴を指す)に怒った人々が、労働組合を作り会社の不法行為に対抗して戦う過程を見せてくれる。

 

このドラマが語る労働人権運動の現実と生に対する通察は、すでにウェブ漫画のときから語録という形で広く話題になっていた。 本社はフランスなのに労働組合に対する拒否感を露わにする現象について尋ねると、「ここではそうしてもいい。ここでは法を破っても処罰されず悪く言う人もいないし、そうすれば儲かるのに、一体どこの聖人君子が敢えて守らなくてもよい法を守って損を被ろうとするか」とこのドラマは答えている。

 

 またドラマの主人公とも言えるク・ゴシン労務士は「こんなことは学校で教えるべきなのに、ドイツでは小学校で模擬労使交渉を1年に6回やるそうです。要求案の作成、広報物の製作、署名運動、演説文の作成まで」と言って韓国の現実を訴える。

 

 韓国の若者が社会に一歩を踏み出す前に学ぶ労働法関連内容と言えば、皆無と言っても過言でない。 バイトの求人・求職を事業内容とする会社の最低賃金についての公告が世の話題になったくらいなのだから。 この地で生きる市民の大半が労働者、あるいは労働者の家族であるという現実の中で、青少年が憲法に明示された労働三権労働基準法など労働者の基本的な権利について何も学べずに社会に出て行くのである。

労働人権教育は若者の雇用創出と同様に至急かつ重要な問題だ。

 

 もちろんこれまで労働人権教育を取り入れようとする試みがなかったわけではない。 2010年国家人権委員会は中高の教科課程に労働基本権及び男女雇用平等に関する権利などの内容を必須教育課程に含めることを勧告した。 2011年当時ソウル市教育長も使用者の不当労働行為に対応する方法などを含む労働人権教育を実施すると明らかにしたが、政府の意志が不足して竜頭蛇尾で終った事例もある。

 

 歴史教科書国定化推進問題に劣らず、下半期に予定された労働法の改訂は韓国社会のもう一つの核心争点になるだろう。 歴史教育が重要であることと同じくらい労働関係法教育は重要であるということが私たち皆に深く認識されなければならない。 歴史教科書国定化推進と、青少年教育全般において労働人権教科課程が排除されているというこの二つの事実は、生と現実を分離しようという同じ思考から出た別の現象だ。それは私たちの心をねじ曲げて、「市民」ではない「臣民」を育成するという同じ結果を作り出すだろう。 自らの権利と自らの歴史をきちんと知らない民主市民というものは考え難い。

 

 ドラマ『錐』は、視聴者を学校でも教わらなかった労働基準法労働組合というものに向い合わせる。 労働する生の権利と労働組合という「共にする生」の可能性を、再び呼び起こしているのである。ク・ゴシン労務士は言う。

 「人間に対する尊重は恐れから出てくる」と。

「生きている人間は奪われれば怒り、殴られれば立ち向かってくる」のだと。

その恐れは、自らの権利をきちんと知り、且つそれを守ろうとする人に対するものだ。 学校の教育課程における労働基準法教育は、自ら尊重され得る生の方式を教えることだ。 ドラマ『錐』と韓国社会の若い“錐たち”の健闘を望む。

 

チョン・ジョンフン弁護士(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-11-17 18:47 http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/717817.html 訳A.K(1634字)