ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

トランプ現象って、橋下維新現象と同じ――トランプ以上に、橋下や安倍はだますのがうまいペテン師である。

 


トランプはとんでもない右翼的な単純な主張の持ち主だ。だがテレビで受けるためにはそうした極端なことを言えばいいと考えてやってきた人間だ。
そしてそれが受ける土壌は、共和党が長年民主党を批判して、単純な排外主義的メッセージを大衆に投げかけてきたために、つくられたものだ。


だから共和党の他の候補者も実は似たり寄ったりでしかない。
そもそもブッシュがどれほどひどかった?
レーガンがどれほどひどかった?


で メディアは主流秩序に沿って大衆を誘導してきた。オバマを批判して、オレンジパーティー的、宗教右派的主張をあおってきた。

 

だが閉塞社会ではそうした単純なメッセージが受ける。

 

それは日本でもこの間、ずっとそうだったではないか。
小泉人気は何だった? 公務員批判をして自民党をぶっ潰すといって、結局具体的には郵政民営化すればすべてよくなるといって選挙に勝って、新自由主義を進めただけじゃないか。格差拡大させただけ。
続く各首相、安倍も同じ路線で、中国、韓国、朝鮮、民主党、小沢、など「外敵」作って攻撃するだけで、民営化でよくなるといって、金バラマキながら成長神話に乗り続けているだけ。格差拡大、大企業優先、自己責任論、規制緩和ばかり。教科書やメディアを監視し、政府の意見を洗脳しようとしているだけ。政府への異論を抑圧する監視社会化が進んでいる。

慰安婦問題でも真実に目を向けず、世界が間違っていると強弁して、ナショナリズムを強化し続けている。


橋下・維新も公務員批判・反対派攻撃で人気を得ただけ。政敵を口汚くののしって人気を得て、まさにトランプと同じだった。
石原都知事も無茶を言って人気を得ていた。

 

つまり橋下、安倍、小泉、石原の人気は、まさに、トランプと同じものだった。敵を作って、不満をそこに向けさせ、大衆を単純な言葉であおって選挙で勝つ戦略。トランプと同類のペテン師であった。だから後には何も残らないのに、一時的に異常に人気が出ていた

 

だから私は、トランプはとんでもない男だが、トランプだけを特別視するのがおかしいと思ってきた。そんな中、以下のクルーグマンのコラムは、日本のマスメディアが全然捉えていないことの本質の一部をついているとおもった

 

日本のメディアは、海外の事象を自分に引き付けて、自分にも似た面があるととらえない。しかし知性ある人は全く同じではなくても、問題の共通性があることを認めて、自戒に使っていく。

 

中国や韓国のナショナリスト、右翼を見て、それはまさに日本のうつし絵だと見ないといけない。
向こうが挑発的だというとき、日本が向こうに挑発的にしていること――首相の靖国参拝慰安婦問題否定、竹島尖閣列島の国有化や領土宣言、憲法9条を変えて集団的自衛権を進めること、国旗国歌の強制、教育基本法を変え道徳教育を強制、など――を振り返ることができるかどうか。世界のアニマルライツ擁護の動きに、感情的ナショナリズム的に反応するだけで、思考を停止している日本を冷静に振り返られないのも同じ問題だ。

 

暴力には暴力でという相互応酬をしているのはどちらも愚かである。
どっちもマッチポンプ的に軍事国家にしていけるという、自作自演的な戦略である。その意味で、外国と日本の右翼(軍事大国志向派)は手をつないでいる。

 

情けないのは、毎日や朝日というようなメディアまでが、大事な問題では主流秩序に従属し、ナショナリズム的になり、維新や安倍に真に対抗できないことだ。

 

ペテン師はだれなのか。橋下、安倍、小泉、石原である。トランプだけではない。
トランプを馬鹿にしながら、橋下や安倍を支持するのは馬鹿である。逆に言えば、トランプ以上に、橋下や安倍はだますのがうまいペテン師である。米国共和党はペテン師的にふるまってきて、今の状況を招いた。それはまさに自民党と重なる。オバマを批判し、反対ばかりで馬鹿なことを言う共和党は、穏健派というようなバランスのとれた主張をもう受け付けなくなっていて自壊し始めている。自民党も、もはや昔の未だ戦争の実態を知って一定の抑制をもっていた保守中道が声をあげられなくなり、馬鹿な極右的なことを言い、集団的自衛権などを言って憲法をないがしろにしろと叫ぶナチスヒトラー並みのレベルの輩が中心になっている。共和党と自民党、とても似ている。気づくと、馬鹿な主張が中心になっている。トランプととても似ている。


以下はそのことを指摘している。だが多くの人は気づいてさえいない。

 

なお、橋下でも小泉でも、勢い余って既成の主流秩序を揺るがすことを言う場合がある。そのようなとき、たたかれたり排除されたりする。安倍はその点、主流秩序にピッタリ寄り添う。トランプはクルーグマンが言うように今のままでは主流秩序に敵対する面があるからホリエモンのように排除されるだろうが、橋下は安倍にすり寄って延命を図り、安倍と橋下は手をつないでヒトラーになっていくだろう。

トランプだって、側近たちがつけば、ブッシュ並みの政治家として十分大統領はやれる。レーガンだってやれたんだから。その側近さえ受け入れれば。

 

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クルーグマンコラム@NYタイムズ)トランプ現象 ペテン師は誰なのか
朝日新聞 2016年3月11日05時00分

 

 米共和党は、内政に関して、ばかげたことを言う人物を大統領候補に指名しようとしている。外交政策はいじめとけんかだと考え、人種間・民族間の憎悪を冷笑的に利用して政治的優位に立とうとする人物だ。


 だが、予備選の行方がどうなろうと、必ずそれは起きることになっていた。唯一のニュースは、その候補者がおそらく ドナルド・トランプ氏だろうということだ。
 共和党の既成勢力は、トランプ氏をペテン師だと非難する。確かにそうだ。しかしトランプ氏は、彼を阻止しようとする既成勢力以上のペテン師なのだろうか? 実はそうでもない。

 

 そう非難する人たちを見ると、自己認識がこれほど欠落するなんて本当にあり得るのか、と思わずにはいられない。
    *
 トランプ氏は「ペテン師」だと(共和党候補指名を争う)マルコ・ルビオ氏は言う。だが、そのルビオ氏は、55歳以上の米国人への年金給付を全く削減せずに、巨額の減税や大幅な軍備増強、財政の均衡を図ると約束する人物だ。

 ポール・ライアン下院議長は、共和党は「リンカーンの政党」なのだから、「偏執に基づくあらゆる集団や主張を排斥すべきだ」と明言した。彼は、ニクソン元大統領の(公民権法に反感を持つ白人保守層などを取り込んだ)「南部戦略」を聞いたことがないのだろうか? ロナルド・レーガン元大統領が言及した(不正受給で高級車を乗り回しているという架空の)「福祉の女王」や、食料配給券を使ってぜいたくする「がっちり野郎」の話は知らないのか?

 

 言い換えよう。米南部の白人が9割近く共和党に投票するのには理由があるのだ。それは、彼らが自由至上主義の原則に哲学的に傾倒しているからではない。

 それから、外交政策。これは、トランプ氏が対立候補に比べればどちらかと言えば分別のある、いや、もっと正確に言うと、無分別さが少ない分野だ。彼は拷問を問題にしていないが、同党で誰が問題にすると言うんだ? 彼は好戦的ではあるが、ルビオ氏と違って、新保守主義者(ネオコン)つまりイラク戦争の大失敗の責任を負う人々から気に入られているわけではない。みんな知ってはいるが、右派なら誰も認めないはずのことまで口にしている――ブッシュ政権は故意に米国をあの悲惨な戦争へと欺き導いたのだ、と。

 

 ああそれから、それが何を意味するのかをどうやら知りもせず、市民を「じゅうたん爆撃」したがっているようなのは、トランプ氏ではなく、(共和党候補指名を争う)テッド・クルーズ氏だ。
    *
 実際、共和党の既成勢力がトランプ氏をこれほど怖がっているのはなぜか、不思議に思わずにはいられないだろう。彼はペテン師だが、でもみんなそうなのだ。で、このペテンはなぜその他すべてと違うのか?

 

 お答えすると、既成勢力がトランプ氏に手を焼いているのは、彼がペテンを働くからではなく、彼がペテンを妨害しているからではないだろうか。

 

 第1に、共和党が国政選挙でいつもうまくやってのけるペテンがある。米国の問題に誠実に取り組もうとしている、まじめで成熟した政党だ、と見せかけるのである。
実際は、そんな成熟した政党はとうの昔に死んでいる。最近はどこをとっても呪術経済学とネオコンの幻想ばかりだ。それでも既成勢力はうわべを保ちたいのだが、それに一役買うのを拒む人物が指名候補になれば、難しくなるだろう。

 

 私の予想では、仮にトランプ氏が候補に指名されても、思慮深い保守派を自称する有識者たちはあごをなでながら、慎重な熟考をうまく装ったあとで、(民主党有力候補の)ヒラリー・クリントン氏の人格上の欠点を考えればトランプ氏はより良い選択だった、とか何とかいうのではないか。自称・中道派は今まで通り、両党とも同じくらい悪いと主張する方法を見いだすだろう。だが、どちらも著しく不自然に見えることだろう。

 

 同じくらい重要なのは、トランプ現象は共和党の既成勢力が支持基盤に対して働いていたペテンに脅威となることだ。私が言うのは、「あの連中」のせいにして白人有権者が大きな政府を嫌うように導くものの実際の政策はどれも献金層に報いるものばかりだという「おとり商法」のことだ。

 

 トランプ氏は、政策パッケージ全体を受け入れる必要はないと支持基盤に伝えた。それが本当のスローガンだとみんな知っているだろうが、米国を再び白人の国にすると約束する一方で、同時に、社会保障制度と高齢者医療制度を保護すると約束し、富裕層への増税をほのめかす(だが実際に提案しているわけではない)。
激怒した共和党の既成勢力は、彼は真の保守派ではないとしどろもどろだが、結局のところ同党の投票者の多くも真の保守派ではないのだ。

 

 はっきり言えば、トランプ政権は想像するだけで恐ろしい。皆さんもそうだろう。だが、ルビオ大統領が戦争屋の仲間に囲まれてホワイトハウスのいすに座っていると想像するのも同じように恐ろしい。「スペインの異端審問」を復活させたがっているようなクルーズ大統領も同様だ。

 

 私の見るところ、我々はトランプ氏の人気上昇を歓迎すべきである。そう、彼はペテン師だ。だが、ほかの人たちのペテンを告発する役割も事実上、担っている。信じがたいだろうが、この奇妙で厄介な時代に一歩前進を意味するのである。
 (NYタイムズ、3月4日付、抄訳)
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 Paul Krugman 1953年生まれ。米プリンストン大名誉教授。2008年にノーベル経済学賞受賞