沖縄の反基地運動を揶揄し、偽情報を流した右翼番組が裁判で敗訴した。それなのにその偽情報を24年に、漫画の「島耕作」で「辺野古抗議に日当」と再び流してしまった。著者の無知さ、あるいは右翼性が出た事件である。
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東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)が放送したバラエティー・情報番組「ニュース女子」で名誉を傷つけられたとして、市民団体共同代表の辛淑玉(シンスゴ)さんが制作会社のDHCテレビジョンなどに1100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(渡部勇次裁判長)は3日、制作会社に対して550万円の支払いとウェブサイトへの謝罪文の掲載を命じた1審・東京地裁判決(2021年9月)を支持し、同社側の控訴を棄却した【22年6月】。
番組は17年、建設反対運動の参加者を「テロリスト」などと表現し、出演者が、市民団体が反対運動の参加者に日当5万円を支払っているという趣旨の発言をした。高裁は5万円の支給対象が16人にとどまり、反対運動の現状発信を依頼したものだとし「原告が参加者を組織的に雇って反対運動を扇動しているとは認められない」と指摘。「テロリスト」などの表現について「重要な部分の真実性が証明されているとは認めがたい」と述べた。
また、辛さんは訴訟で、番組司会の長谷川幸洋・元東京新聞論説副主幹にも賠償を求めていたが、高裁は1審に続き「企画、編集に関与していない」として賠償責任を否定した。 この番組を巡っては、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会が18年3月、辛さんへの人権侵害を認定。TOKYO MXが同年7月に謝罪していた。
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以上の状況であるのに、漫画の「島耕作」の作者・弘兼憲史氏は、24年10月17日発売の「モーニング」に掲載している「社外取締役 島耕作」の中で、名護市辺野古の新基地建設に抗議する側が、日当をもらっていると表現するシーンを描いた
「島耕作」で「辺野古抗議に日当」 SNSなどで批判の声 市民団体「県民愚弄」 沖縄
講談社が17日に発売した漫画雑誌「モーニング」に掲載されている人気作品「社外取締役 島耕作」の中で、名護市辺野古の新基地建設に抗議する側が、日当をもらっていると表現するシーンが描かれていた。X(旧ツイッター)では「根拠を示すべき」「デマだ」などと指摘するコメントとともに広く拡散されている。 【写真】辺野古抗議は「プロ市民」? 抗議活動する沖縄平和運動センターの山城博治さんは、市民が日当をもらっているなどの事実を否定し「工事が始まってもう10年。もし日当をもらっていたら今ごろ豪邸が建っている。県民愚弄(ぐろう)もはなはだしい。作者に抗議したい」と話した。本紙取材でもそのような事実は確認されていない。 作者は弘兼憲史さん。画業50周年として、今回のモーニングは島耕作が表紙になっている。漫画では、主人公の島耕作らが飲食をしながら辺野古の埋め立て現場を見渡す場面が描かれている。登場人物の女性が辺野古の埋め立て工事について説明するシーンで「抗議する側もアルバイトでやっている人がたくさんいますよ。私も一日いくらの日当で雇われたことがありました」と説明している。 漫画はフィクションで、実在の人物や団体名とは関係ないとしているものの、「辺野古埋め立て地」や「普天間飛行場」など具体的な固有名詞が出てきており、名護市辺野古の新基地建設現場を描いていることは明らかだ。 ノンフィクションライターの安田浩一さんは「反対運動が金で動いているという言説はさんざん出回った手あかにまみれたデマで、その後もずっと否定され続けている。影響力がある商業媒体に掲載されることで、さらにデマが広がる。本当に悪質だ。各地で市民運動に取り組んでいる人たちへの冒とくだ」と強く批判した。琉球新報社は講談社に対して見解を求めている。
琉球新報社