- 講義録の一部紹介。
- 「北欧モデルは無理」と言う論の矛盾
池田信夫氏は、『スウェーデン・パラドックス』と言う本の紹介を兼ねての意見表明[1]において、北欧モデルの導入は日本には無理と言う。これは、日本の現状を変えられないという感覚に満ちた意見であり、ではどうすればいいかが示されないままの批判に過ぎない。確かに日本が北欧型の社会民主主義的な社会に変わるのはむつかしい状況はいくらでも言えるが、何とか方向をそっちの方に変えていく大きな改革の展望は必要である。それなしに、「いい解決」などないのに、そこを言わずに、ただ「改革できない」というだけである。
たとえば、典型は、北欧は労働汲む愛の組織率が高いが、日本は低いから無理だという。では労働組合が変わり、、組織率をあげてちゃんと陳儀ナップの茶目に運動すればばいいのであるが、それを望まず、ただ「無理だ」と言うだけである。こういう人がは実は、労働組合運動を批判的に見ている人物なので、北欧型にならないとわかっている時だけ、日本の労働運動の低調さを「指摘する・嘆く」のである。客観的に見れば、「では池田氏は、日本も労働組合率が高くなればいいという立場の表明とながそうなんか」というと、そうではないと考えられる。だが彼はそんなことは望まず、昔からいっているように、組合を批判するスタンスなのである。矛盾である。だから素直に、北欧型社民主義への改革を考えられず、ただ、日本は無理だというだけなのである。つまり真の有効な改革の足引っ張りをする役割を買っているだけの人物である。
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スウェーデン・パラドックス―高福祉・高競争力経済の真実
著者:湯元 健治
日本経済新聞出版社(2010-11-19)
神野直彦氏は、日本をスウェーデンのような「高福祉・高負担」の国家にするのが持論で、私もそうである。
だが池田氏は、るスウェーデンの実態を調査した「スウェーデン・パラドクス」野紹介をしながら、次のようなことを言うので見ておこう。
スウェーデン社会は、企業の倒産や労働者の解雇を国が救済することはなく、体力の弱い企業は淘汰されるため生産性も高い。その結果、世界経済フォーラムの国際競争力ランキングでは第2位になったと紹介したうえで、1990年代の金融危機のあとGDPの4%以上の公的資金を投入して銀行の資産の22%を国有化して抜本的な再構築を行ない、経済を立て直した、財政も黒字化したという。これは事実である。
そしてスウェーデンの成長率が上がった最大の理由は、産業の中心が製造業からサービス業・知識集約型経済に変わるのに対応して労働人口の移動を促進したことだとし、それに対して日本はそれができていないという。これも事実だ。
ういう労働移動を伴う。産構造の転換できたのは、解雇が容易である代わりに産業別労組を通じて転職が容易で、それを政府が職業訓練などで支援する積極的労働市場政策をとったためだ。これは「解雇が容易」という言葉以外は事実である。スウェーデンの国民負担率は64.8%にものぼるが、重税感は少ない。それはアドホックな補助金が少なく所得再分配が中心なので、負担と給付の関係が透明だからである。年金は確定拠出型で、所得の高い人は高い給付を受ける。財源は地方政府に委譲され、税率は地方議会で決められるので、高い税率も自分達で選んだものだ。
だから日本もその方向で改革すべきと言うならわかるが、池田氏はそうは言わず、日本のように人口が大きく地域間の利害対立が大きい国では、思い切った政策がとれないから無理と言う。だが、どの国でも利害対立はあるが、そこを調整していきながら整備し改革を進めるのが政治である。池田氏は政治が機能しないと言っているだけで、何も言えていない。人口を言うなら、米国含め、中国もインドもどの国も改革できないというようなもので、それは現実ではない。人口規模にかかわらず、政治的リーダーシップの問題である。
2つ目に池田氏は、上記したように、スウェーデンは組織率77%の産業別労組が労働者をサポートしているので、失業を恐れる必要がないとし、90年代の金融危機で失業率が10%を超えたときも、自殺率は下がったとはいう。労使交渉で同一労働・同一賃金が決まる(そこそこ高い賃金をどの企業も払わなければならない)ので、効率の悪い企業は高い賃金を払えなくて淘汰されることが競争的な圧力になっている。
そこを認めたうえで、池田氏は急に、「日本で18%に低下した労組の組織率を高めることは不可能であり、同一労働・同一賃金を法的に規制することも望ましくない。」という。
これは論理的な意見ではない。なぜ不可能なのか。なぜ「同一労働・同一賃金を法的に規制することも望ましくない」というのか。ただ自分の感覚・立場が、それは好ましくなと思っているだけである。北欧のような改革がいいと言っている面がありながら、そんな改革はしたくないと言っているのである。
だから池田氏は、日本では不可能と言うことを説得的に言えていない。この程度なのである。
園うえで、ただ、日本の支配層、経営者層、自民党的な勢力は、雇用の規制緩和をしたいので、そこだけは北欧をまねようという。バカかと思う。北欧の積極的な労働市場政策は、大きな意味の雇用の保障、労働者の利益、高い税金負担、社会的連帯、高い賃金、産業業別の賃金水準などとセットなのである。連帯は嫌だ、増税は嫌だ、賃上げは嫌だ、社民主義は嫌だ、同一労働同一賃金は嫌だ、でも解雇規制だけは自由化したいと言っているだけである。
「北欧の真似はできない」という意見はこの程度のものである。