- 「トランプもハリスも攻撃ばかりで投票したくない」「バイデン・ハリスのガザ政策に失望する若者たち」というNHK番組・三牧氏のスタンスこそが問題
NHK「クローズアップ現代 アメリカ Z世代の選択」【24年10月30日放送】を見た。Z世代の4割が無党派で、選挙結果に大きな影響を及ぼすという特集で、民主党支持の若い支持者も、ガザ政策でハリスに失望しているとか言っているし、投票先を決めていない無党派・中間層の若者も、どっちもどっちだ、お互い対立ばかししていて辟易するとか言ってて「投票しない」という選択をするなどとと言っていた。若者に関心を持ってもらおうと、人気あるインフルエンサーがトランプをinterviewして、それをみてトランプに親しみを感じて投票するとか言っていて、レベルが低すぎる感じがあふれていた。
それがある面の現実だというのは分かるが、番組全体としても、コメンテーターとして出ている三牧聖子(同志社大学教員) 氏の発言を聞いていても、ハリスがバイデン政権のどこを変えるのか不明で支持率が低下しているとか、米国メディアでいっているような浅い情報ばかりでいわゆる中立主義で、Z世代はこう思っているとか断片的にいうだけで、トランプ支持者的状況の問題や構造を深く分析する視点がなかった。新しい視点がなく、情報の寄せ集めでしかなかった。
特に白人男性が「自分たちは差別されている。マイノリティの特別扱いにトランプ氏が反対しているので支持する」という話を示して、まるで、トランプ側にもいい面があるかのように示していた。
これは非常に主流秩序に沿って、視聴者からも政治家からも批判されない番組づくりである。
だがこの講義では、私は自分の見解を示しすし、群集心理の問題や第9回で詳しく示す愛国主義等の観点から、明確にトランプの方に多くの問題があり、そうであるにもかかわらず支持率が拮抗していることをどう考えるかのつっこんだ分析や評価が必要なのであるが、それがなかった。
この番組の問題点の典型は、Z世代でもガザの人権問題や移民政策に怒ってバイデン・民主党に失望しているのは一部であるのに、まるで多くがそうであるかのように政治意識が高いかのように言っている。Z世代は人権に敏感で民主党に批判的になり、ハリスに投票しないといって、「どちらの党もダメだ、ハリスもトランプ批判ばかりだと批判しているという。これではハリス批判に加担していて、トランプの問題が相対的に消されてしまっている。寛容さをなくしている原因はどっちにも同程度にあるのではなく、主としてトランプ側にあることを隠している。しかも、若者で「どっちにも投票しない」というのは、あまりにも幼くナイーブで、人権意識が高くて本当にガザのこと、イスラエル政策のこと、移民の事、貧乏人の事、LGBTQや女性のことを考えるなら、トランプを勝たしてはいけないので、まともな認識能力がある若者は、「完全にイスラエル・ネタニヤフ政権支持」のトランプを勝たせないないためにも、全く不十分でも米国政治の中ではハリスに投票する方がましと考えるのである。
そこを隠しているところが、今回の番組の最大の欠点であった。
しかも矛盾だらけであるのは、一方では、Z世代の若者を取材して、トランプが強そう、楽しそう、親しみある、自分が経済的に苦しいからとトランプを支持すると言う若者も多いというのだ。ここでのZ世代の者たちは、ガザの状況とか戦争とか、移民問題に敏感なのではなく逆なのである。
それなのに三牧氏は何度も「Z世代は人権、戦争に敏感」と言ってひとくくりに扱っている。矛盾したまま、明確な状況分析を示さず、結論はどっちも寛容ではないから、対立せず寛容になるべきだという、「どっちもどっち論」で終わっている。
私ももちろん、第9回で示すように、完全にバイデン政権のイスラエル擁護(ウクライナ武器供与)などには怒りの気持ちが十分にあるが、米国の現実政治のことをしているので、トランプというモンスターでありファシスト的な人物に勝たせないためには、不十分でも、民主党・ハリスを勝たせるのがベターと判断する。そこを明確にしないで、トランプにも良いところがあるかのような印象をもたらす一方、ハリス側にも寛容さがない、ガザ支援していない、と言って、中立主義で終わる番組作りは、まさに、事なかれ主義であり、日本のメディアの主流秩序従属的なダメさ、学者のダメさをあらわしていたと思う。
人権に敏感なら、「どっちもダメだから投票しない」ではなく、「明確に人権を軽視し、反移民がひどく、ガザ攻撃するイスラエルを(バイデン政権以上に)強く強く支持するトランプ」を批判し、勝たせないべきなのである。そこが分かっていない若者を批判すべきなのである。そうした明確なことを言わない、ぬるい番組であった。
トランプを支持したり、「投票にいかない」という“幼な過ぎる”若者のダメなレベルに寄り添うだけの、表面的な認識であった。大人としての、専門家としての学識と経験に基づく現実主義的な深い判断からの分析と提言がなかった。何もかもが付け焼刃で浅すぎる。
なお、私は第3回講義でも示したように、過剰な対立による批判合戦を肯定しているわけではなく、まさに、異なるものが耳を傾け合い、共存し、議論はすべきとおもっていおり、相手をつぶすような暴力を否定する「ダイバーシティ=平非暴力主義・和共存」路線者であり、慈悲や寛容の精神こそがスピリチュアリティとおもっている。だがそのためには、ブラックバスの様に他の魚を食う存在、つまり差別する自由はない、暴力で相手をつぶしてはならないと明確にすべきで、そうした点が分かっていない「暴力肯定主義者トランプ」を明確に批判しないで、どっちもどっちで終わらせるのは、ダイバーシティに反すると考える。番組にはそうした思想も主張も全くなかった。
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なお、私は、上記「NHK・クローズアップ現代」での三牧氏のスタンス・発言を批判したが、三牧氏が他のところでまともな発言をしているのを見たことがあるし、Z世代の中の人権意識が高い若者(ガザに悲劇に怒りを持って政府を批判する者たち)に期待している面には共感している。彼女の、「例外主義(exceptionalism)」的な観念に囚われず、新たなアイデンティティや世界との関わり方を模索する多様性の世代に期待する、イスラエル支持の姿勢を捨ててパスチナ人の命と権利を擁護すべきというスタンスには賛同する。