ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

「10月7日」の前に起っていたことーー映画「ノー・アザー・ランド」

  • 「10月7日」の前に起っていたことーー映画「ノー・アザー・ランド」
  •  
  • 以下も「講義録」の一部。
  • ***

メディアでは平気で、「ハマスの攻撃(大虐殺)への報復として」というように、23,-25年の「イスラエルハマスパレスチナ)戦争」の始まりが、23年10月27日のように言っている。しかし、その把握自体が、非常に党派的で、客観性から言って歪んでいる。

先にもみたように、基本は、イスラエル建国以降、イスラエルがどんどん領土を広げ、パレスチナ人を追い出し、残虐なことを繰り返してきた流れがある。イスラエルはさまざまな人権侵害、そして入植という国際法違反の行為を続け、表向きは時々イスラエル批判が行われるが、米国はイスラエルを完全に支え、世界各国もこの悲惨な状態を自裁に改善できないままだった。とくに、パレスチナではユダヤ人のヨルダン川西岸への入植が進み、国際合意を大きく超える形でパレスチナイスラエルの入植地が広がり、またイスラエルによる分離壁の建設により人々の往来が制限されてきた。

パレスチナの人々の家や土地はイスラエルにより一方的に破壊、接収され、抗議をするパレスチナの人々は拘束され、ときどき銃で撃たれたりしている。2022年は44名、2023年は11月15日現在までに97名の子供が、イスラエル軍および入植者との対立で死亡している[1]。さらにイスラエルの入植者により、家屋の窓ガラスを割られるなどの嫌がらせや、暴力が発生するが、これらの行為が取り締まられることもなく容認されてきた。2023年6月には、イスラエル入植者により、パレスチナ人の家やモスク、学校が放火されるなどの事件がわずか1週間で310件も発生している。

ガザはイスラエルによる16年に及ぶ「包囲網(Blockage)」により、自由な人・物流の往来が制限され、65%の人々は貧困ライン以下で生活し、63%の人々が食糧不足(food insecurity)で苦しみ、ガザの経済は「崩壊寸前(near-collapse)」であった。穏健な手法ではイスラエル人の入植、暴力に対する抗議は聞き入られず、ガザの人々の生活は困難を極める一方、中東諸国はパレスチナ問題への関心を失っていく状況にあった。ガザは、「天井のない監獄(prison without ceiling)」とこれまで言われてきたが、人々は物理的にも精神的にも追い込まれた状況下にいる。このままでは状況打開の糸口はないと感じ、ハマスは行動を先鋭化していった。それが「10月7日の奇襲攻撃」となった。

私は非暴力主義を基本とするものであり、ハマスの無謀な攻撃が結果としても悲惨な状況をもたらしているので批判するが、イスラエルの暴力も批判するので、「ハマスが悪い」「始まりはハマスの10月27日の攻撃」というのは間違っていると認識する。

***

その、「10月7日」以前の状況を明確に伝えるドキュメント映画がある。

『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』(No Other Land、2024年製作、ノルウェーパレスチナ合作)である。第97回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した。2024年・第74回ベルリン国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞と観客賞も受賞した[2]

破壊される故郷を撮影するパレスチナ人青年と、彼の活動を支えるイスラエル人青年の友情を、2023年10月までの4年間にわたり記録したドキュメンタリーである。知識がない人にはわかりにくいこともあるだろうが、あまりにひどい「ヨルダン川西岸への入植の状況」が写し取られている。ニュースでは断片の情報・映像が見られるが、当事者が撮った実際の記録には、状況の全体の流れが示されているし、あらためて言葉がないほど、ひどいことをイスラエルがしていることが明確に記録されている。作りものではないので、スカッとする逆転劇があるわけではない。いつもながらのどよーんとした気持ちを抱えたまま映画を見終わるしかなかった。

こうした事実を知らないまま、イスラエルを支持する世界の多くの国や人々は、この犯罪に加担しているというしかない。いますぐ、国連やEUその他などが連携した国際的な軍事部隊をイスラエルパレスチナン尾国境に投入し、入植も、ガザ支配などもないようにし、早急にパレスチナ国家樹立をするしかない。だがそれをしないのだから、「報知」である。ウクライナには銀慈悲も軍備も訓練も大呂に投入しているのに、パレスチナにはそれをしないのは、差別である。

 

  • 映画「ノー・アザー・ランド」の希望

意義ある映画の内容を確認しながら、その意義を記しておきたい。

ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区マサーフェル・ヤッタで生まれ育ったバーセル・アドラーは、イスラエル軍による占領が進む故郷の様子を幼い頃からカメラに収め、世界へ向けて発信してきた。

そんな彼のもとに、自国政府の非人道的な行為に心を痛めるイスラエル人ジャーナリストのユバル・アブラハームが訪ねてくる。同じ思いで行動をともにし、パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えて対話を重ねるなかで、2人の間には友情が芽生えはじめる。しかしその間にも軍の破壊行為は過激さを増し、彼らが撮影する映像にも痛ましい犠牲者の姿が増えていく。

私は今までもドキュメント番組やnews特集などで、入植者とイスラエル軍のひどい蛮行を数多く見てきたが、執拗で継続的な嫌がらせと破壊と弾圧と殺人の状況の一部を写しとったこの映画には歴史的な価値があると思った。ずっと住んできた場所にあるパレスチナ人の家をつぶす。生活のなにもかもがある場をただ意味なく壊す。そしてその地に住めないようにするのだ。他にどこにいけというのか。井戸をセメントで埋め、学校や公園も重機で潰す。ただ普通に生活したいだけなのに、とつぜんやつらが来て家をつぶし、それを止めることができない、なぜならイスラエル軍兵士が銃をもって横にいるからだし、入植者も武器を持っているからだ。抵抗すればその場で殺されるのである。ありえないほどの状況である。テロで反撃したくなるのも分かるというものだ。ただ、不衛生な洞窟に居座ってその地を離れないという抵抗しかできない。

目の前で殴られたり、家をつぶされたりする苦悩と絶望が、。

彼等がしていることは国際法違反だし、人間としておかしいが、そう思うイスラエル人はここにはいない。イスラエル国内には、こうした蛮行に批判的な人もいる。しかし、イスラエルの主流は、こうしたひどいことをする人を止められない。それは大きく見て、イスラエル全体が犯罪的な国家になっているということだ。

戦争とは人間らしい人権御基準から見て、おかしなものなのである。そして戦争に準じる、占領や植民地主義的蛮行、ヘイト活動、移民排斥など全部おかしいな暴力なのである。そして入植という非合法な領地拡大ももちろん許されない暴力である。

ぜひ、軍隊や入植者(右翼思想の者たちがほとんど)の実態をみてほしい。あなたはこれを許すのか。そういう問いの前にいる[3]

お前の国がひどいことをしているとか、お前には帰るがあるとか、すぐにいなくなるだろう、簡単委は解決しないのにいい気なもんだ、というようなことをいわれて、通常なら気分が悪くなり離れる、関わらなくなる人が多いだろうが、イスラエル人ではあるが自分の頭で考え行動するユバルは、交流を続ける。イスラエル人クルーに対して、イスラエル軍人や入植者たちは、「お前は裏切り者だ」「任務の邪魔をするな」という罵声をあびせるのである。

私はここに、希望を見いだす。私たちは地球人として、国境(民族、国籍、立場)を越えて、主流秩序にとらわれることなく、関われるのである。マジョリティの中にいても、「嫌われる生き方」を選ぶことで、マイノリティになる、勇気ある人がいること、そこには、この講義で多くの思想家が示す「人としての道」の典型がある。

この作品は、バーセルとユバルを含む2人のパレスチナ人と2人のイスラエル人による映像作家兼活動家が共同で監督を務め、不条理な占領行為とそれに立ち向かう人々の姿を、当事者だからこそ撮影できる至近距離からの映像で描きだした。これが事実なのである。事実を知らないことを「無知」という。「オクトーバーセブン」からだけで考え、人質をとっているハマスが悪いというだけの話を受け入れている人は無知であり、人間としてダメである【主流秩序への加担】と、私は思う。

トランプも絡み、ウクライナと並んでガザ・ヨルダン西岸は世界の大問題なのだから、学生は、歴史を含め全体状況を学び、米国発の情報がいかない歪んでいるか認識してほしいと思う。米国内でも学生たちは、パレスチナ支援にたちがっている。米穀が皆イスラエルの非道を支持しているわけではない。被害者サイドと加害者サイドの人間でも、友情を持ているのである。○○人が大事なのではなく、地球人としてどう生きるかが大事なのである。

 

(C)2024 ANTIPODE FILMS. YABAYAY MEDIA

 

 

 

  • 【25年3月26日追記】「ノー・アザー・ランド」の監督への暴行と連行

イスラエルはこの映画への残虐な応答をした。アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したて注目がなされているにもかかわらず、この映画にかかわったものを脅し弾圧したのだ。信じられないほどの人権否定国であり、独裁的軍事国家である。

 パレスチナ自治区ヨルダン川西岸で25年3月24日、「ノー・アザー・ランド」の共同監督の一人でパレスチナ人のハムダン・バラル氏が、イスラエル人入植者らに暴行を受け、イスラエル軍に拘束された。西岸にある村を入植者の集団が襲い、バラル氏にも暴行を加えて頭部や腹部にけがを負わせた。現場にいた別の共同監督や目撃者の話として、AP通信などが伝えた[4]

 報道によると、西岸の村が入植者の集団に襲われた際に、バラル氏は頭や腹を負傷。救急車で搬送される途中でイスラエル兵に拘束、連行された。軍の基地に連れて行かれたようだという。

 バラル氏が拘束された際に近くにいた共同監督の一人、バセル・アドラ氏はAPに「アカデミー賞から戻ってきて以来、毎日私たちへの攻撃がある」と語った。「ノー・アザー・ランド」の別の共同監督、ユバル・アブラハムはX(旧ツイッター)に、布で顔を隠した集団が車のフロントガラスに石を投げつけてくる様子が映る動画を投稿し、「集団が共同監督のバラル氏(行方不明)をリンチした」と付記した。

 イスラエル軍は、この現場でイスラエル市民と「テロリスト」の間で投石が始まったことから軍と警察が制止し、パレスチナ人3人を拘束したと主張している。

 

+***

ほかに以下の映画も参照の事

もう一つ、ガザの実情、歴史を示すドキュメント映画。

2009年、イスラエルの侵攻直後のパレスチナガザ地区に足を踏み入れ、そこに生きる人々の姿を映し出したドキュメンタリー。

2008年12月末から2009年1月にかけて、イスラエルによるガザの大規模侵攻が起こる。監督のサミール・アブダラとケリディン・マブルークは、停戦の翌日にガザに入り、そこで両親や兄弟を失った子ども、目の前で家族を銃撃された男性、土地を奪われて逃げてきた人々などの証言を記録。

西洋の視点から単なる死亡者数という数字に還元されてしまう現地の人々を、顔のある個の人間として描いていく。また、パレスチナを代表する詩人マフムード・ダルウィーシュの詩が引用され、ガザの人々が生きてきた歴史と記憶を呼び起こしていく。

ガザの地で生きる人々の姿を丁寧に描き出し、同時にパレスチナ問題の背景にある西洋諸国のダブルスタンダードや構造的暴力を浮かび上がらせていく

タイトルの「ガザ=ストロフ(Gaza-strophe)」は、「ガザ(Gaza)」と「カタストロフ(Catastrophe)」をかけあわせたもので、1948年のイスラエル建国から続くパレスチナおよびガザの惨事(カタストロフ)を意味する。

映画の製作から10年以エル建国から続くパレスチナおよびガザの惨事(カタストロフ)を意味する。映画の製作から10年以上を経た2023年にもイスラエルによるガザ地区への軍事侵攻があり、変わらない状況が続く2024年10月、特集上映「パレスチナ映画特集」の上映作品として劇場公開。

2011年製作/92分/フランス・パレスチナ合作
原題または英題:Gaza-strophe, Palestine
配給:Shkran
劇場公開日:2024年10月11日


映画冒頭、「あと2回勝利すればガザからパレスチナ人を追い出すことが出来る」とユダヤ人のやり口をユーモアを交えて語る男性は、近年病院が爆撃されたことで必要な治療を受けられず亡くなったとのこと。

イスラエルパレスチナを殲滅しようとしているのは誇張でも何でも無い。
ガザの人々の、「なんとしてもこの土地にとどまる、家を壊されたらまた建てる、木を倒されたらまた植える」と繰り返す言葉の強さ。

幸いにも配給担当者のトーク付上映日に観賞することができた。
翻訳担当社の二口氏に、個人的に権力や財力があるわけでもない個人がこういう映画と見るたびに無力感に襲われるのだが、たとえ小さな個々人の意見や行動でも積み重なって国家を動かすことがあるように、1人1人出来ることを考えることが大切だという言葉に胸を打たれた。

なんとか全国上映迄こぎ着けて欲しい。「

 

 

[1]ハマスイスラエルの衝突 ――「勝者なき戦闘」をいかに解決するか?」

ハマスとイスラエルの衝突――「勝者なき戦闘」をいかに解決するか? | 記事一覧 | 国際情報ネットワークIINA 笹川平和財団

[2] 本編撮影後に起きたことが、スタッフのSNSで示されている。以下のメンバー4人の名前で検索するとでてくる。Basel Adra (パレスチナ人)、Rachel Szor (イスラエル人)、Hamdan Ballal (パレスチナ人)、Yuval Abraham (イスラエル人)

[3] 第7回講義で示される韓国映画『ソウルの春』や韓国TVドラマ『D.P』を見ても、私は改めて思うのが、軍隊というものを肯定する、「軍隊、軍人、政治家、学者」などは、私は大っ嫌いである。あなたはどうなのだろうか。

[4] 「「イスラエルが連行」報道 ドキュメンタリー映画監督」(朝日新聞、2025年3月25日)などより