- フェミ作品:韓国ドラマ「おつかれさま」(英題:When Life Gives You Tangerines)
2025年の最新作だが、とても面白く、フェミ的である。1950年代の済州(チェジュ)島から2025年のソウルまで、主人公ふたりとその周囲の人々の4世代にわたる人生を、ジェンダー・家族問題として描く作品だが、その描き方が独自でセンスがとてもいい。
宣伝HPには「済州島に生きる気丈な少女と誠実な少年。挫折と成功を繰り返し生きていくふたりの人生の物語は、世代を超えても続いていく力が愛にはあると教えてくれる。」とあるが、それだけでは収まらない、かなり力量ある製作者の作品だと感じた。
メインは“海女の娘”と“魚屋の息子”の壮大な一代記ということなのだが、私は特に、主人公エスンの母親の描き方がいいと思った。エスンが早くに父親を亡くしたあと、海女をして何とか生きていた母親も肺を患って若くして命を落とすが、その具骨で愛情深い生きざまがじわじわと沁みてくる。美しくもなく貧乏で、荒い性格で、でも、エスンを大学に行かせるために必死で働くが、潜水病を発症し、29歳で心を残りを抱えて死んでいく。こうして貧しい時代に女性たちは必至で生き抜いてきたのだということを典型的に伝えてくれる。
又エスンの夫になる彼、グァンシクの一途さ、愚直さも、フェミの精神を伝えてくれる。通常なら、いら立って怒ったり、DVしたり、離れたり、酒に逃げたりする。だがそれは安易である。低いレベルの作品の展開は、レベルの低い人が出てきて間違った対応をとるし、偶然性の乱用がある。それはドラマ制作では予定調和である。たとえば、ダメな脚本は、崖から落ちても殺されても撃たれても、都合よく人が死んでいなかったり、大事なことが盗み聞き出来たり、実は過去に関係があったなど偶然が功を奏したり、ちゃんと相手を抑制しないから反撃をくらったり、嫉妬束縛、人間不信の言動が多い。つまり間違った対応をとるからそうなるというはなしの進め方は、間違った対応を取らないと違う展開になるので、レベルの低い展開となる。
だが、視聴者も納得できるレベルの高い作品はそういう安易な手法はとらない。良い人ややさしい人が、全力で、細心の注意も払い、合理的で、頑張った、そういう中の選択や試みがあってもそれでもうまくいかないことはある。そういういいひとや合理的である人の、それでもうまくいかないような事や非合理や不条理やその中での展開にこそ、説得力や次の時代を切り開く希望がでてくる。
この「おつかれさま」というドラマは後者のレベルだから、安心してみていられる。それは、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」のようなレベルの、ちゃんと生きる人たちの話のイメージと重なる。
で、すこし調べると、監督キム・ウォンソクは、なんと「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」「ミセン-未生-」「シグナル」の監督だった。そして脚本は、「椿の花咲く頃」のイム・サンチュンだった。つまり私がすばらしいと思った作品を作ってきた人たちだったので、このドラマの、私の感性とのレベルの合致度に納得した。
しかも主人公オ・エスンを演じる主演が、「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」IUであり、「ボーイフレンド」に出ていたパク・ボゴムも主演である。まあ韓国ドラマ、ベスト10に入れてもいいレベルのいい作品である。
なお、英題「When Life Gives You Tangerines」の意味は、「人生があなたにミカンを与えるとき」という感じだろう。「みかん」の意味は・・ということである。「人生で苦難にぶつかった時」を意味する「When life gives your lemons(,make lemonade.)」の「レモン」を、済州島の特産物「みかん」に置き換えたもので、レモンよりも甘さがあるところに希望が示されているという事だろう。