ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

主流秩序に対する3つの道、間接介入」のはなしが、最近「第3者介入」としてまとめられ

  • 「主流秩序に対する3つの道、間接介入」のはな滋賀、最近「第3者介入」としてまとめられた

 

私はっずっと、主体的にこの社会の差別や不正にどうあなたは向かうかを考える講義をしてきました。その中で、主流秩序という概念を生み出して、「主流秩序への3つの道(態度、スタンス)」という形でまとめていく講義をしてきて、その一例として、セクハラを見たときにどうするか、という問に対して具体的に「自分の身を守りながら介入する様々な方法」を紹介したり、考えてもらうようにしてきました。

講義では、カツアゲシーンの動画を見てどう介入するか、ということを入口にやってきました。その紹介はすでに著作で示しています。

拙著 ●『はじめて学ぶ主流秩序論』(Kindle 版 2018 年 9 月、増補・オンデマンド印刷書籍版 2019 年 2 月)

●『アドラー心理学で学ぶジェンダー論 ―― 主流秩序の視点からの新しいアプローチ』(Kindle 版 2018 年 9 月、オンデマンド印刷書籍版 2019 年 1 月)

 

講義でも最近の動画を紹介してきました。

◆性暴力にたいしてできること・・傍観者にならないために

https://m.huffingtonpost.jp/amp/entry/story_jp_5f83cc6ec5b6e6d033a458a4/?__twitter_impression=true

 

◆「痴漢、マジやめて  みてみぬふりをやめよう」 5分(未来スイッチ)

 

さて、そういうことを20年ほど前から具体化してきたのですが、最近、ネットで自分ができる介入をしようという情報が出てきて、今回、京都市が作成したパンフでは「やってみよう、第3者介入」(=5D)としてコンパクトにまとめています。

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この京都市パンフが分かりやすくまとまっているので、講義の補足資料として配布しました。京都市男女共同参画課(財団法人:京都市男女共同参画協議会)は、毎回、積極的なテーマでパンフづくりをしていると思います。

ネットでも以下のところで見れます。おすすめです。

なお、そばに寄り添って介入・支援する人の事――「バイスタンダー」―を、すこし前は「『行動する傍観者』といった少し間違った翻訳が見られましたが、傍観者と訳してはだめで、今回の様に「第3者」と訳すのはいいなと思いました。そしてそのひとが積極的にかかわることを「第3者介入」というのはいいと思います。

バイスタンダーとは、事件現場・救急現場などに居合わせた方のことをいい、このバイスタンダーにより行われる「何かしらの援助」行為が人を助けたりします。何もしないと傍観者となります。

 

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男女共同参画通信』56号 「やってみよう、“第三者介入”」を発行しました! 

https://www.wings-kyoto.jp/topics/tp-sankaku2310.html


年2回発行のウィングス京都の啓発冊子『男女共同参画通信』。
最新号の特集は「やってみよう、“第三者介入”」。

日常のふとした場面にひそむ、ハラスメントや暴力。被害が起こっている、または起こりそうな場面で、その場に居合わせた第三者がそれをはばむ行動をすることを、「第三者介入」と呼びます。
誰かのピンチに寄り添うこのアクションについて理解し、いざというときに行動できるようになるためのヒントを集めました。「こんな時、あなたならどうする?」。自分自身に問いかけながら、周りの人と話し合いながら、学びを深める一冊です。

ウィングス京都、市役所の案内所、区役所・支所ほかで順次配布予定。
*PDFでもご覧いただけます。

https://www.wings-kyoto.jp/publish/.assets/vol56.pdf

 

【内容】
●p.1~2:日常の“ドキッ!”っとする場面を見かけたら…
 こんな時、あなたならどうする?
●p.3~4:キーワードは5つの「D」 身近なあなたができる“第三者介入”を知ろう!
●p.5:第三者介入への“迷い”をのりこえる5つのヒント
●p.6:大学生の挑戦 第三者介入がコミュニティを変える!
●“第三者介入”に役立つ!コンテンツガイド 

セクハラと戦う時は 個人加盟ユニオンを使おう

講義録の一部紹介

 

  • 第3者が、セクハラを見たときにできること

 

いじめやパワハラでも同じだが、セクハラでも、直接の加害者だけでなく、傍観者がいることこそ問題である。それに対して、傍観者ではなく、第3者が黙っているのでなく、何かできることをしていく人が多ければ、セクハラは減っていくし、被害者は声を出しやすくなる。いまの日本社会では自分に被害が来るのが怖くて触らぬ神に祟りなしが多い。しかし自分を安全にしながらでもできることがあると知れば、少しは動ける人は実は多い。セクハラを許さない社会にしていくには、そういう教育が必要だ。

ここでは『主流秩序にいかに囚われているか―――学生たちの実態と本音、そして少しの突破』(電子書籍、2016年3月発行)に紹介したような、カツアゲ等を目撃したときにできること――直接介入と間接介入――があるのだと教える教育を、セクハラ目撃を例に単に書いておこう。

直接介入

 「今のはセクハラです」と言ってその場でセクハラ行為をした人に言う。すぐに止める。謝らせる。
すぐに録音し、証拠をとりました、これを人事部などに持ち込み処分を要請します、などという、など。

 

 

 間接介入 

●近くの人に小さな声で「これってセクハラだよね」と言う。
●近くの人に、「誰か呼んできて」と言ってしっかりした人、頼りになる人を呼んできてもらう。あるいは自分で呼びに行く。誰か証人になるとか、目撃者を増やすように、ほかの人を呼んでくる。
●証拠を残す。ひっそりと録音する/映像を撮る。メモをとる。
●周りの人と一緒に、少しセクハラ状況を変えるように、正面からセクハラだと批判するのではなく、ずらす、ごまかす、冗談のように「奥さんがしっとしますよ」とか「ちょっとやりすぎですよー」とか「それをぼくがやったらなぐられますよー」とかへらへらという。
●何か別の話を被害者あるいは加害者にはなしかけて、セクハラ状況を変える。加害者と被害者の間に物理的に入っていく。そしてお酒くださーいとか、まったく違う話をするとか、急に歌いだすとか、意表を突いた行動をとる。その中に、加害者にお酒をつぐとか、コーヒーいれるとか、お酒をこぼして素っ頓狂な声で謝るとか、テレビをつけるとか、サッカーの話をしだすとかトイレに誘うとか、もある。
●「不愉快なので帰ります」という。あるいはそこまで言えないので「あの、ちょっと、なんかしんどい感じなので、帰りますけど、Aさんも帰りません?」という。
●その場にいる人(加害者や被害者含む)に聞こえるように、「違うかもしれないけど、これってビミョーにセクハラっぽいような感じもしますけど・・・ね違うとは思うんですけど。。私、そのあたり詳しい人を知っているので、相談してみようと思うんですけど。会社の人事にも聞いてみようかな」という。

●「さあさあ、仕事しましょう」「さあさあ、食べましょう、乾杯しましょう」という。 

●セクハラ被害者の相談に乗る。一緒に記録を作る。そして一緒に相談先に行く。(職場関係の場合、コミュニティユニオンが一番実践的でよい)

●被害者の希望で、気持ちを聞く。その場合も共感的に聴く。被害者とともに、その人なりの解決策を一緒に考える。
●次回同じ様なシチュエーションの時に何ができるかを被害者と一緒に考えたり、相談にいって聞いて決めていく。

 

こうしたこともあるよ、ほかにあるかな、自分にできそうなことはあるかな、ということを日頃から考えておくような教育が重要である。こういうことを具体的に知ると、多くの生徒は『これぐらいなら自分にもできそう』とわかってくる。日ごろからそうした意識を醸成していざというときに動ける人を増やすことこそ真の人権教育である。本稿のようなスタンスで活動している先生も一部はいるが、多くはそうなっていない。実際のいじめに役立たない人権教育など無意味だ。

日大アメフト事件で違法タックルをしたM君は、大学関係者から真実を話すなと脅されても、自分の人生の今後を危険にさらしてでも、実名と顔を出して真実を語った。それによって事態は大きく展開した。財務省でのセクハラやモリカケ問題で真実隠蔽のために口をつぐむ官僚たちと正反対である。このM君のスタイルに希望があり、教育の目標がある。強大な圧力がある中でも自分は何をすべきかを自分で考える力をつけるということだ。

日本の教育で足りないのは、権利を守るために戦う主体になるための「実践的に身を守るノウハウ教育」である。ユニオンに入って交渉するということを教えない、証拠を残すということを教えない、相談するということの重要さを教えないということに加えて、このように、「知らないふりをする」「真実に口をつぐむ」をしないためにできることをする人間を養成するという教育を広げていくことで、反セクハラ運動が広がらないような社会も変わっていくだろう。

本稿は紙幅の関係でほんの一部だけを書いた。私のこうしたスタンスに関心がある人はぜひ私の主流秩序論にかかわる諸著作を見ていただきたい。

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  • セクハラと戦う時には「個人加盟ユニオン」を使おう

上記したように、日本では「権利のために闘う」ということを教えない状況であるが、個人加盟ユニオンは頑張っている。これを皆がもっと知って連帯して闘っていくことが必要である。

これについては拙著『働くときの完全装備』を見てほしいが、ここでは、最近のユニオンの戦いの一例を紹介しておこう。みなさんは、働いて何か問題にぶつかったら地域の個人加盟ユニオンに相談するというルートを知っておいてほしい。

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以下は、個人加盟ユニンの一つ、「女性ユニオン東京」がセクハラ事件で闘っている情報である。

女性ユニオン東京の機関誌『ファイト!』VOL320(2024/7/31号)、VOL321(2024/9/28号)へ寄稿された記事を転載。

出所:女性ユニオン東京のHP

セクハラ・パワハラ許さない!F不動産分会立ち上げ!

https://www.w-union.org/post/findhomebunkai

「Findホーム」でのハラスメント経緯

VOL320(2024/7/31号)

 2022年12月に不動産会社F不動産に営業事務として入社。

 入社当初から上司3人が事務所内で喫煙、その場にいない人の悪口や関係会社への暴言、幼稚な下ネタが日常的に繰り返され、普通の会社ではないことに気付き、同僚と一緒に社長に直接相談するも改善されることはなかった。

 さらにこの社長への相談が、社長に告げ口したと捉えられ関係が悪化し、一緒に相談した同僚へのいじめがエスカレートして、同僚は心を病んで退職。私自身も既に限界はきていたが入社したばかりで、辞めたら転職に不利になると思い我慢する道を選んだ。

 上司3人の行動は日を追うごとにひどくなり、深夜に業務連絡をするグループLINEに業務とは全く関係のない上司の性器写真、社長が男性社員の乳首を舐め回す動画、キャバ嬢の写真などが大量に送られてくることに。

 耐えきれず抗議したが、陰で「うるさいくそ女」などと言われ、いづらくしてやめさせてやろうなどの発言を上司3人がしていた。宴会の席では、上司から胸を触っていいかと聞かれ断ると手を無理矢理舐められたこともあった。

私以外の同僚も同じ上司から胸を触られたり、手にキスをされておりセクハラの常習犯だった。度重なるセクハラやパワハラが原因で体調不良になり休職においこまれた

F不動産分会結成!

 女性ユニオン東京を紹介してもらい、退職した仲間と協力してF不動産分会を結成し団体交渉を申し込んだ。1回目の団交は、会社側の弁護士による事実確認が十分にできておらず、次回にむけて調査の上、2回目の団交の日時を提案となる。

 手を舐めた件や、陰部の写真に関しては、内容を確認しており、認めるものの法律上慰謝料を請求できる案件ではないと認識していると開き直った強弁をしていた。

 加害者は今も別の社員に強く当たるなど全く反省していない様子。どうすれば本当の意味での制裁をあたえられるか、加害が組織的であり、こんな加害会社はあってはならない。

 私以外に退職に追い込まれた方もたくさんいるので何もできなかった仲間の分まで、諦めずに頑張りたい。

 

【分会報告 セクハラ・パワハラ会社を許さない F不動産分会立ち上げ!】

分会とは?

 職場単位で分会を作って団体交渉を継続することで長期的な職場環境の改善が可能です。同じ職場の仲間同士で集まって労働相談をしてみませんか?

このたたかいを応援してくれる人は、ぜひ女性ユニオン東京へ集まってください。

 

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VOL321(2024/9/28号)第三回団体交渉

被害事実の一覧表を提出、会社側は一度認めた事実含め「覚えていない」

 第三回団体交渉が行われました。会社側が性加害の全貌を把握しておらず再々調査となったため、分会は作成した2ページにもわたる「被害事実」の一覧表を送りました。

 それを受けて、団交前日に会社側から「調査結果」なる書面が送られてきました。

会社が認めた被害事実は、

大半がすでに問題として訴えていたものー例えば部長の私物が毎のように大量に送られてきて、その受理や段ボールのごみ処理をさせられること、職場で取引先の悪口や入社希望者の容姿について揶揄していた等。

複数の証言が明確であるものー例えば・社長が、飲み会の席で、主任(男性)の身体をいじっていた。課長が、取引に対する暴言を述べたなど。

業務上のグループLINEでのやりとりなど証拠が歴然としているものーわいせつ画像やわいせつスタンプの投稿、女性社員の画像を編集した等。

であり、他の人がいないすきを狙って行われた身体的接触については前回と同じく「泥酔していて覚えていない」との回答でした。

 証拠がないものについて、全て覚えていないと回答していて、本当に許せない会社です。

 本人が一度認めていた事実でさえ、「覚えていない」として事実は確認できなかったと平然と回答しています。

 団体交渉に参加した幹部取締役も、かつて課長がその現場を「見ていた」と発言するのを、社長と幹部取締役も聞いていたのに、「覚えてない」と発言しており、会社ぐるみで性加害を隠蔽しています。

加害者がヒアリングする疑わしい「調査」

 聞き取り調査についても、加害者の一人である社長が、加害行為を行なった3人にヒアリングしたことが団体交渉で明らかになり、組合の仲間を唖然とさせました。

 これでは真実が全く明らかになりません。それどころか本気で調査しようとしているのか、疑わしくなります。

 その結果、次回団交までに再度調査をすることになりました。このように組織ぐるみの性加害の全貌を明らかにできないまま、団体交渉を申し入れてから、半年が経過してしまいました。

 会社の不誠実な対応のせいで、私の体調は改善するどころかますます悪くなり、全身に蕁麻疹が出てしまい、今もあまり家から出られない状態が続いています。

 次回団体交渉では、真実を明らかにすることを心の底から祈っています。

 

 

兵庫県知事選の結果に関して、其の2

これから大事なことは、県の職員が、亡くなったAさんの意思(告発)を継いで、勇気をもって真実を言って戦っていくかどうかである。

だが多くの公務員はこれまでと同じく、長いものに巻かれて、沈黙し、自分に火の粉がかからないように息をひそめるのだろう。

百条委員会だけでなく、公益通報に対してつぶしにかかった行為にかかわる県の職員やその真実を見ていた職員が、沈黙しないこと、また補助金がらみの銀行の行員とか、とにかく関連した人々が 主流秩序にどう向かうかが試される。

 

タテマエで、みな、攻撃されないように、選挙結果を受け止めなければならないとか、兵庫県民の賢い選択だとか言っている。

それは事実ではない。選挙民、世間に媚びている。

ポピュリズム政治、選挙の問題、群衆化、を批判的にみないといけない。イメージで簡単いうごかされる大衆の状況。

群集の熱狂は、トランプ共和党で、USA!USA!と言うのと同じで、それを、それでいいのだという人とは、私は意見を異にする。

兵庫県知事選結果について

兵庫県知事選について

トランプ勝利に関しては、別に又書くが、同じ問題が兵庫県知事選でも起こった。

ハリスが負けたことはハリス・民主党が言っていたことが間違いということを意味しないが、そこが分かっていない人が多い。

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この「公益通報つぶし」の問題自体は講義レジメ・第14回資料にいれているのだが、斉藤知事が選挙で再選を果たしたのはまさにトランプ勝利と同じ構図である。

人権とダイバーシティを考えるうえで、第7回講義の「群衆論」を学ぶことの重要性がますます高まっているし、今回レジメ資料に出したゲッペルスプロパガンダも学んでほしい。

 

県知事選 

当確の斎藤前知事 顔真っ赤に感謝の第一声 事務所前は身動きできないほど人だかり スマホの嵐、まるで優勝パレード

 斎藤氏が事務所前に姿を見せると、「おめでとう!」「おめでとうございます!」と声があがり、手を振って応えるなど、優勝パレードのような様相。「斎藤!斎藤!斎藤!」コールもわき起こり、嵐のようなスマホのフラッシュが。身動きもとれないほどの盛り上がりとなった。

 

ネットの以下のような陰謀論系の影響が今回も大きな影響を与えた。FOXニュースやトランプ支持のネット番組しか見ないで、熱狂的にトランプを支持する者たちと同じである。

トランプ当選において、イーロンマスク、Xによるフェイク情報が大きな一因であるように、今回もネットのフェイク情報が大きなうねりを起こした。ゲッペルスが当時の最新メディアを使ったのと似ている。

 

伊田が「陰謀論」系、フェイクニュース系と思うもの  一例

*"【黒幕がヤバすぎた 】卑怯な手口で斉藤降ろしを放送。稲村和美のヤラセが発覚し、大炎上に【立花孝志 斎藤元彦 斎藤知事 NHK党】

https://youtu.be/eGoBzBXZDqQ?si=NFDNum-tnwfuYq7a 

https://youtu.be/eGoBzBXZDqQ?si=yr1mmr18DLQX45Vs

 

実名報道!民主主義を揺るがす事態が兵庫県で起きている!わかりやすくまとめました! #斎藤元彦 #兵庫県知事選 

https://youtu.be/1NT56u4jaBY?si=gEtOiFkFq4q_TJdG

(ここに最初に出ている「ひまそらあかね」というのは、第3回講義で示したColabo攻撃をしている極右のユーチューバーです)

 

かんたんな確認

兵庫県知事選をどう見るかですが、私のスタンスは人権や公益通報制度への態度を重視した見解です。世の中には、週刊誌やネットに、反知事派の陰謀だ、闇の勢力がいる、オールドメディアなどが一体となって、改革勢力であった斉藤知事を陥れたというような見解があり、それを信じる人が一定いるので、まさに、トランプ支持者的状況、フェイクニュースを見抜けない人がいる問題、の一例と考えています。

 

私は本県民局長Aさんを聖人とみているのではないし、旧知事派などの勢力との政治的闘争の面があるのも全否定はしません。私は、斉藤知事勢力を追い落とそうとする勢力が、完全に正義の側で、清廉潔白だと言いたいのではありません。ほとんどの政治は裏で汚い政治闘争や利権が絡んでいます。

でもだからといって斉藤知事たちがしたことを容認することはできません。斉藤知事派のしたことを免罪するものではないし、闇の勢力だというような陰謀論が正しいわけでもありません。だからAさんの個人的な問題で脅して、彼を追い込み自殺に至らしめたことを含め、斉藤知事派の不正を告発したこと自体は私は正当であると認識しています。

Aさんの「個人的な問題」をことさらさらそうとしているが――維新の政治家や4人組等はそこを百条委員会で出すぞと言って脅して回った――、そこを出すべきでないというメディアや政治家などに対して、「マスメディアは真実の隠蔽をしている」という攻撃をするのも、陰謀論的、スキャンダラス主義で全くひどいと思う。斉藤知事勢力の公益通報つぶしを軽視する「人権感覚のなさ」――主流秩序における異論表出・告発の重要性の問題――が中心的問題であると私は考えます。

私は人権論を、主流秩序論として、展開しているので、その視点で、講義録録をつくっていますし、その一部をブログに載せました。私は本当に、ネットでの状況や斉藤知事を応援する人が多くいること、分断状況は、トランプ問題と同じ構造と思いますが、どうなのでしょうか。

今回もまさに、ル・ボンの群衆ですね。

大統領選、選挙結果が出る前に言っておくべきこと 【11月5日】

 「大統領選、選挙結果が出る前に言っておくべきこと 【11月5日】」

 

昨日の続きを書いておきました。ご参考までに。

 

https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:9c84a278-da9f-427b-942b-41d8d1cb3b8b

 

 

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24年米国大統領選を前にして(11月4日)

2024年米国大統領選を前にして

                    2024年11月4日 イダヒロユキ

  • はじめに

米穀大統領選直前である。ハリスが勝つか、トランプが勝つか、微妙なところとみられているが、どちらが勝とうと、今言えることがあり、私たちはどう考えたらいいか、どうすべきかは明白であると考える。そのことを少しメモっておきたい。

まず第1に、ハリスが勝つことが望ましい。第2に、どちらが勝とうが、接戦であることが嘆かわしい。第3に、トランプが勝ってもそれはトランプの主張が正しいということにはならない。第4にメディアの在り方の問題点があるということである。第5に、どちらが勝とうが、米国内の分断と対立が激化すること、特にとランプが負ければ、暴力的事件が起こり、ことによれば非常に内戦的な状況になるかもしれないという問題である。第6に私たちは、トランプ勢力がもたらしたこの分断と対立状況を終わらせること、そのためにも人権侵害や暴力主義には毅然と反対し、徹底的に思想闘争をすると同時に、非暴力主義の思想でこれから寛容と慈悲の態度――非暴力による平和共存、ダイバーシティ社会形成のスタンス――で生きていく必要があるということである。

以下簡単にこの点を確認し、関連の話題について過去に書いたものも付け加えておきたい。

続きは、以下の場所に記している。

https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:7f12efca-8980-4e2f-9a06-44cf89b83f55

 

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公益通報者つぶし問題⑤ーー主流秩序の観点から

  • まとめ:知事のパワハラなどの問題に対してAさんによる内部告発があった事件でのかかわりの整理

まとめとして原点に立ち戻ろう。

まず、斉藤知事やその取り巻き4人組の姿勢は、内部通報・公益通報制度云々の前に、人間として、理性や謙虚さや人権感覚がなく、パワハラ的であると言える。斉藤知事の態度・言い訳を見ていると、パワハラ加害者・DV加害者の特徴がみてとれる。

慢な人、上に立ち権力的で、「下」にパワハラ的にふるまう人やDV 加害者の特徴をあげてみよう。すなわち、自己中で自分の論理だけで押し通す。自分は正しくて絶対に間違いを認めたくない 。負けるのは絶対にダメ、負けたら終わりと思っている。官僚の無謬性と同じく、内心、おかしいと思っても個人の意識を消して、組織として「間違いを認めない」と決めたらあとは何も考えず、屁理屈でもゴマカシでも、時間延ばしを使っても言い逃れする。

 

斉藤知事を見ていると、これと似ていると感じる。本当に正しいかどうかではなく、ただただ、自分を正しいと屁理屈を使ってでも自己正当化してプライドを保つ、生き残るという生き方である。必死で取り繕い、なんとしてでもここを切り抜けるということだけを考えていて、「自分が間違っていることを認めることが人間として素晴らしいとか、責任を取るのが人間として上等」とかそういうことが全くわからない人なのである。人が死んだことに心を痛めたり、苦痛を感じたりするのではなく 自己保身だけを考える人である。

ヒトラー側近の、ゲッペルスがそうであった。政治闘争や戦争で勝てばいいが、負ければ(敵を殺してきたので)自分は殺される(リンチで処刑される)と思って、プロパガンダで大衆を戦争する道を突っ走り続けたのである。その瀬戸際感覚は、独裁者に共通であろう。プーチンイスラエルのネタニヤフもそう思っているだろう。

だから何としても結局、反対勢力をつぶし、権力を維持し続けることが第一優先課題として大事なのである。 絶対に負けられないと思っている。自分が悪いことをしたなどと考えてはだめなのである。だから人間として正しいか間違っているかではなく、ただ勝ち続けることだけが生存戦略だったのである。

こう見てみると斉藤知事たちが、Aさんを「誹謗中傷・嘘八百を言う、公務員として失格の人」というレッテルを張ってつぶした理由がよくわかる。少し言い換えれば、第3者が、告発内容を公平に調査すべきであったのに、「誹謗中傷性の高い文書だ」と歪んで認識してスタートさせてしまったのは、「認識」の担い手が、文書の内容と無関係の第三者ではなく、斎藤知事自身やその取り巻きの副知事、総務部長ら、あの文書で告発の矛先を突き付けられている当人たちだったからである。

問題の中心の、公益通報制度については、不正を告発した人が懲戒処分されないように守ることで、組織内部の不正を言えるようにしようという制度である。その根幹を今回は、完全否定したのである。公益通報者保護法の趣旨を逸脱していたのはあきらかで、むしろ、積極的に「通報者つぶし」をしたのであるから悪質性は高い。告発者を見つけ出し、「でっち上げの理由」で早期処分し、もともとの告発を握りつぶそうとした悪質な事件である。

握りつぶしたのは、自分が不正をしていた面々であった。不正がばれるのを恐れ、正直な告発者を粛清したのである。しかも最高権力者である知事は、人事部に仕事としてこの不正に加担させたのである。Aさんを追い詰めてつぶすように指示したのである。知事とは独立した機関が公平に調査すべきなのに、知事は自分の部下に、真実の調査でなく、不正を隠蔽する方向で、Aさんを逆につぶすように事実上命令したのである。それに従って抗わない、県の職員たちも知事の味方をした維新議員も情けないし、大きな責任があるが、そもそも部下に不正的なことを指図する知事は異常で悪質である。

Aさんは、知事の意向をくんだ副知事や維新議員などが攻撃的にきて、世間にAさんが犯罪者のように広報され、自殺して抗議するしかないところまで追い詰められた。他の職員Bさんも不正に加担させられ自殺した。

今回、ようやく事件の全貌があきらかになって来たが、多くの職員はこの不正に積極的に加担し、また一部は積極的な加担ではないにせよ沈黙してきた。主流秩序を前にして、どう生きるのか、そういう教育が日本でなされていない中で、このような腐った空気が充満している社会になってきているのである。

以下、主流秩序への加担や抵抗の程度/スタンスという角度で誰がどうであったのか、まとめておこう。

私はこうしたことに加担する人物の家族も、立場や生き方が問われると思う。家族内でちゃんと話し合うべきである。犯罪に加担した親は反省し、パートナーや子供たちにどういう生き方をすべきなのか、総括し、謝罪し、話し合う責任がある。家族だから、「お父さん(お母さん)の味方」「悪いことしてないと信じる」などと言って深く追及も考えもしないような家族でいいのか、問われている。

 

主流秩序への積極的加担

斎藤知事・・・・・・内部告発内容を全否定してAさんを嘘つき呼ばわりし攻撃、処分。パワハラも受け止め方次第だ、コミュニケーション不足だという誤まった認識を振りまき続けている責任も重い。

片山安孝・副知事・・・・自分も告発された側なのに知事の側に立って「調査」してAさん処分に積極加担

“4人組”、“牛タン倶楽部”と言われた知事側近グループ・・・・・元副知事、片山安孝氏、前総務部長の井ノ本知明氏、前理事の小橋浩一氏、産業労働部の原田剛治氏

兵庫県の藤原正広弁護士(兵庫県特別弁護士)・・・公益通報に当たらないと間違った指示をした人物

Aさんを追い詰める動きをした維新の議員たち、斉藤知事を応援して当選させ、その横暴ぶりを放置していた維新や自民の県会議員たち

県職員局や県人事課、その他関係職員・・・・知事の側に立って「調査」してAさん処分に加担、内部通報制度に違反している活動をした者たち

知事を担いで当選させて、この件でも知事擁護に回り、Aさんを追い詰めた維新の議員たち

公益通報担当部署・・・不十分な調査でお茶を濁し、実態解明を避けた。公益通報制度の通報者用語をせず、犯人探しへの批判もしていない。

元総務部長や次長級の職員ら15人で構成される綱紀委員会で、反対意見を言った3人を除く172人の職員・不当な処分に賛成した

知事とそのとりまき幹部から不当なことを命令されて、それに従った人たち、自分がかかわったのに沈黙している人たち

片山副知事の取り調べに加担したX氏(Aさんをだまして情報を聞き出した)

パレードのキックバックに加担して沈黙している金融機関

 

主流秩序への消極的加担

知事・副知事などのパワハラなどの諸問題【7つの告発内容】を見ているのに黙っている県の職員たちや地方自治体や企業の関係者

Aさんが告発したのに、Aさんの側に立たず傍観している職員たち

この事件の調査や取材に応じない人、

アンケートなどの調査でも関わりたくないと思って本当のことを書かない人

この問題で積極的に動かない議員たち

この問題に無関心で次の選挙でも全く考慮しないで問題議員や知事に投票する人たち

知事の「おねだり」に困っていると今更いっていいる業者など(視察に来た嫌悪職員にカニや玉ねぎなどいろいろお土産を渡してきた業者らが、それを拒否すればいい野にむしろ、どうぞも誓ってください観たいな態度をとて説いて、あとでいまさら、「何度も視察に来られて困った、もう来ないでほしい」とか言っている。じゃあ断れよと思う。へいこらしていた自分達にも席にがあると自覚sべし。内部すベきことをしなかった)

 

 

主流秩序への抵抗、非協力、不服従

内部告発したAさん

事実を解明しようとしている職員や議員や市民や労働組合、メディアなど

アンケート調査に対して本当のことを詳しく書いていった人たち

 

 

 

東京都狛江市では、2018年、当時の市長が職員へのセクハラを認め辞職した。これを契機に、全国初のハラスメント防止条例が制定された。市長ら特別職や市議も、加害が確認できれば公表できるとした。例外なく『罰』の対象になるとの認識が広がることが大事という。

だがこうした条例が整備されているところはまだまだ少ない。地方自治研究機構の24年7月24日時点の調査では、57の自治体で特別職か議員、または両方を対象に含む条例が制定されているが、約1800ある自治体の3%あまりに過ぎない。 日本ハラスメント協会の村嵜(むらさき)要・代表理事は、条例制定だけでなく信頼できる相談窓口の設置や定期的な研修など、職員を守る態勢の「見える化」が必要だと説く。

現行の公益通報制度には不十分な点が多くある。対象を広げることや、不当な取り扱いに罰則を設けることがすぐにも必要である。交易通報に当たるかどうかは最終的には裁判所で決められるとなると時間はかかる。すぐに第3者委員会が必ず調査するようにしないと、今回のように、組織が握りつぶそうとする余地を残してしまう。強力な罰則も必要であろう。犯人探しに罰則がないのは完全におかしい。

奇しくも24年2月、「組織の不正をストップ! 従業員と企業を守る『内部通報制度』を活用しよう」という見出しの記事が、政府広報オンラインに掲載された。そこでは、「あなた(=通報者)を守る法律があるから大丈夫!あなたが不利な扱いを受けないように、ちゃんと国が決めてあるから安心して通報してね!」という、従業員や職員たちへの呼びかけがあった。

その精神はいいが、実際は、鹿児島県警でも兵庫県でもその他でも、公益通報したものが攻撃されているのである。「勇気を出して声をあげた通報者」は守ってもらえなかったのである。

自民党政権は、大企業寄りであるために、本気でこの公益通報制度が機能して、罰則まであったら企業が困るので、理念だけでとどめ、罰則をつけていないと考えることができるのが現状である。通報者を守るように、本気の改革が行われるかどうか、問われている。

以下の表になるようなパワハラなどはよく起っている。トップを告発するのはむつかしい。多くの職員は、権力者に対し、職員らが冷遇を恐れて「事なかれ主義」になりやすい。

和歌山市では、不正支出を知った男性職員の公益通報で、2020年に十数人が停職や減給といった処分を受ける事件もあった。だが、告発した男性職員は自殺した。

 

 24年5月以降、改正法の課題を洗い出す国の検討会が始まっているが、どこまでできるか。政府はこれまで腰が引けた対応をとってきた。ビッグモーターの内部告発にも動きが遅かった。財界側に立つ政府は、会社や行政の不正をただすことに熱心ではなかったのである。そろそろまともな民主主義国家になっていかねばならない。

他の先進国では、「内部通報者の保護を実質的なものにするための制度」が徹底されている。さまざまな角度から「内部通報者」が守られる仕組みが重層的に構築されている。例えば、EU欧州連合)の「EU公益通報者保護指令」では、内部通報者が異申し立てをできる窓口の設置が盛り込まれ、雇用主側に「不当解雇でないこと」を証明する責任があると定めている。韓国では、2011年に成立した公益通報者保護法で、解雇などの不利な扱いをした企業に対する、罰金や懲役を含む刑罰を定めている

また、米国では、通報者に報奨金が払われる。報奨金を出すことについては賛否両論があるが、米国はも労働者を守る制度が徹底されつつ報奨金もあれば、、企業の不正防止への効果は高まる。

政府にやる気がなく、法律が不十分と言うこともあって、一部の大企業では、公益通報制度は機能していない。たとえばダイハツでは制度があったが、社員は時分への報復が怖くて匿名で告発したが、会社は「匿名の告発は信憑性が低い」と言って相手にしなかった。また 22年、告発があったケースのうち、調査に至ったのは約4割でしかなかったそのうち6割は 事案が発生した部署に調査を依頼してるので内部で潰された。これが実態である。公益通報制度には期待も信頼もないのである。部長や所長に連絡が行くのみだから、会社に通報しても意味がないとアンケートには書かれている。ダイハツがしたことは、内部告発の連鎖を止めるために、告発者を見せしめにしたり、無力化したのである。

消費者庁 は内部通報制度の見直しを指導し、運用状況を発表し、要員の増員、 監査部が主導して利益相反のないチームを編成し調査するなどの体制にするように指導している。従業員300人を超える企業では内部通報制度を整えるとなっているが 実態は機能していない。

通報者の特定をしないことが一番大事で、そこで違反したら処分すべきである。経営トップが本当に組織を健全に動かすためには、この問題でもリーダーシップを取るべきだが、事なかれ主義(不正には目をつぶる風土)の日本の企業は、 それを 担当者に任せるなどで、結局つぶしてきた。

あえて 声を出した人を人を尊敬する、称賛すること、第2、第3の通報者が出てくることが必要であって、「潰す」などもってのほかである。

兵庫県の事件は、「公益通報制度への理解が低い」と甘く言うのではなく、意識的に通報者を粛清したととらえるべきなのである。 知事とそのとりまきは、自分たちの不正を突かれて、生存のために、はっきりと政治闘争としてイチかバチか相手を潰すか こっちが潰されるかの戦いで自分の不正を隠蔽したのである。ただ相手を潰したのである。そう捉えずに「理解が不十分だ」とか 「パワハラと思ってなかった」とかと問題を矮小化してはならない。強盗などの犯罪者が自分の犯行現場を誰かに見られたから、その人が証人になると困るので園目撃者を“抹殺”するのと、構造(関係)は同じなのである(まったく同じというのではなく、真実を見たものを消そうとするという意味)。そう捉えていない人が多いことが不思議である。

 

 

  • まとめ

最後にこの事件の総括を簡単にしておく。 A さんは正しかった。だからみんなも怖がらずに「公益通報(内部通報、外部通報)してほしい。ただし ポイントは反撃された時に負けないような知識を持っておくこと。すなわち法律の知識を持つことも大事だが、何と言ってもコミュニティユニオン に相談に行くこと、及び弁護士に相談することである。そうやって自分を守る基本視点を持っていれば、身を守ることはできるので、不正に加担せず、ちゃんと闘って欲しいと思う。

 

関連文献

内部告発の時代――組織への忠誠か 社会正義か』(宮本一子、花伝社)

オリンパスの闇と闘い続けて』(浜田正晴著、光文社)

 

過去の事件

オリンパス事件

西宮冷蔵の社長が報道機関に取引先の不正行為を告発(輸入牛肉を預けていた雪印食品が国産牛肉の箱に詰め替え、巨額の補助金を受け取った詐欺を暴露)

トナミ運輸富山県高岡市)の社員が自社の闇カルテル内部告発して30年近く閑職に追いやられた例(員は損害賠償を求めて提訴し、05年に勝訴)

 

 

参考記事

(ひもとく)公益通報 おかしいことはおかしいと言う  日野勝吾

朝日新聞、2024年10月19日)

公益通報者つぶし問題④ーー主流秩序の観点から

  • ようやく首長からもまともな批判が出てきた

兵庫県の視聴其の首長の動きは遅かったが、24年8月にようやく、県知事・県側の対応のおかしさを公益通報制度とつなげて指摘するようになってきた。

兵庫県内29市でつくる県市長会(酒井隆明会長=丹波篠山市長)が、元県民局長を公益通報者として保護せず、懲戒処分としたことについて「不適切」とする内容を盛り込んだ文書をまとめ、斎藤知事に提出した。斎藤知事の対応について「十分な調査も尽くさず、懲戒処分にしたことについて多くの市長から不適切であるとの指摘があったためである。

ただ、現在の県政や斎藤知事に対しても「憂慮すべき状況」「県市長会として到底看過できない」として県政の混乱、停滞の収束に努めてもらうよう求めたが、知事の辞任までは求めないものであった。

 

  • 県職員アンケートで実態がさらに分かってきた

議会の調査特別委員会(百条委員会)による県職員へのアンケートの中間報告が8月にでた(約9700人が対象で、約7割の6711件の回答)。

伝聞を含め約4割が知事のパワハを見聞きしたと答えた。また斎藤知事がカニやカキなど、複数の贈答品を受領したとの新たな疑惑も複数出てきた。

県北部の但馬地方で、、手土産として用意されたカニ随行職員が断ったにもかかわらず、斎藤知事が他の職員の分も含めて持ち帰って、個人で食べていた。北部への出張については23年、知事が希望しているとして、旅費の規定を超える城崎温泉の高級旅館が手配され、実際に知事が宿泊した。 他にも、養殖業者からカキをもらった際、独り占めして全部自宅に運ばせた事例、スポーツメーカーと面談した際、メーカーが新たに開発したシューズについて、「その靴欲しいです。白い靴が欲しいです」などと発言したケース、皮革工場を視察した際に、高級な革ジャンを所望したが断られたケース、などの情報があった。7月には、県西部の上郡町の職員から2022年11月に特産のワイン2本が届けられ、知事が個人的にのンdなことも確認されている。

 

パワハラについては、具体的には、目の前でエレベーターの扉が閉まったことに激怒し、「お前はエレベーターのボタンも押せないのか」と大声で怒鳴りつけた。公用車を運転する職員に「なんでこんなルート走ってる!と叱責した」「前方の座席を蹴った」と聞いた、「会議室の温度が低く、反省文を提出させたと聞いた」「イベントにマスコミが来ていないと怒る」との記述もあった。知事出席のイベントで、「(髪形をセットするための)控室や姿見を用意できていないと怒る」との指摘もあった。23年4月、斎藤知事が施策内容を「聞いてない」と発言し、ペンを机上に放り投げ、「場の空気が凍り付いた」という事例、別の職員の23年7月、県独自のデジタル商品券「はばタンPay+」の説明をした際、知事が舌打ちと大きなため息をした後、「私の肝いりの事業なのに、写真やメッセージがない」と発言し、うちわに知事の写真を載せるよう追加発注させた事例、などもあった。こうしたことから、知事は「瞬間湯沸かし器」「暴君」と呼ばれていた。

また県政運営について「イエスマンで側近を固めて、私物化した密室運営となっている」「リーダーとして思いやりのない態度に怖くなり、信頼できなくなった」との批判もあった。

メディア取材によって、知事室で県議会への説明を報告した際、「(議会に説明したのは)誰や」と激しく叱責された事例、知事室で説明中に、手元にあった付箋を投げられた事例、訪問先への到着時間に遅れそうになり、公用車内でタブレット端末を座席の間に放り投げた事例、年末の仕事納めの日の深夜に、県のホームページが読みにくいなどとして、翌日までの修正を指示された事例、知事から叱責を受けた職員を本人の精神状態を考慮して別の部署に異動させたケース、知事はお土産がない遠足には行かないとの指摘なども出てきた。

***

これも後で分かってきたことだが、知事のパワハラに対して、職員が内部で、共通の対応マニュアルを作って共有していた。

たとえば知事出席のイベントを実施する時の注意事項としては、「新聞、テレビなどのマスコミが居ないと激怒する」「鏡(姿見)付きの個室の控室がないと激怒する」などが職員間で周知徹底されていたという。そしてエレベーターでは先にいってボタンを押して待たせないようにするなど対応していたという。

だが、これは、知事のパワハラやおねだりや不正補助金利用等をチャンと指摘したり、批判したり、公的に問題にしたりする(人事や労働組合に訴える)のでなく、また大きな不正についてはAさんのように「告発、公益通報・内部通報」(外部に組織内の不正を通報するものを含む)をおこなうということをせずに、ただただ、沈黙し、従い、怒らせないように対応していたのである。それは、主流秩序への従属・適応でしかない。積極的な加担及び消極的加担でしかない。

だからこの兵庫の知事及び取り巻きの利権的横暴や犯罪的行為の事件は、多くの職員が、情けないこと自分の頭で考えて動けないという問題なのでもある。日本中に蔓延している、事なかれ主義、長いものに巻かれて、不正に沈黙する愚かな状態を典型的に映し出す事件であった。その唯一の例外のAさんの訴えをすぐに皆が支えればよかったのだが、みな、自分に火の粉が降りかかるのを恐れて、第2、第3の仲間にならず、沈黙し、Aさんを孤立化させ、見捨て、ついにAさんはいろいろ脅されて、自殺するにいたったのである。これを「見殺し」と言う。沈黙した兵庫県職員全員に重い責任がある(以下の図にあるように、加担責任に軽重はある)。それを「仕方がなかった」「私対のは知事など上層部」というのはもうやめてほしい。いつまで主流秩序に従属することを「仕方なかった」と正当化するのか。

 

 

  • 重大な事実が判明・・・公益通報巡り「処分しないほうがいい」と職員進言も無視 

百条委の超アを進める中で、複数の県職員が幹部を通じて斎藤知事に「公益通報窓口の調査結果が出るまで待ったほうがいい」と進言したにもかかわらず処分が下されたことがわかった。知事及び幹部が、適切な意見を無視し、逆に通報者をつぶす策動を急いだことがさらにうきぼりになった。

百条委が8月23日に非公開で開いた県職員への証人尋問の中で明らかになったことは、Aさんが4月4日に公益通報窓口に通報した後の4月上旬、ある県職員が「調査結果が出る前に処分するべきではないのでは」と副知事に次ぐ幹部である元理事と、元総務部長に進言した。 進言を受けた2人は同月中旬、斎藤知事に公益通報の調査日程の見込みを示しながら、この結果が出るまで処分を待つよう伝えた。これに対し、斎藤知事は一度は了承したという。 しかし、斎藤知事はその後、「公益通報の結果を待たずに処分できないか。弁護士に確認してほしい」と人事当局に指示。県の特別弁護士は「法的に問題ない」と回答し、人事当局は斎藤知事にその旨を伝えた。これを受けて、斎藤知事は処分を決断したという。

「処分は待った方がいい」と幹部に進言した職員は、懲戒処分の理由には告発文書の作成・配布のほかに私的文書を多数作成したことなども含まれていたことから、「『懲戒処分をすれば、自分への批判の風向きが変わる』と知事が言っていると(幹部から)聞いた」などと述べた。

つまり、意識的に内部通報つぶしを進めたことが証言されたのであり、一番のひどい対応は、知事、次に辯護士、そして3番目にこの不当な対応を追認したとりまきの県幹部たちと言うことである。

その後、元県民局長を停職3カ月とする懲戒処分案は5月2日、元総務部長や次長級の職員ら15人で構成される綱紀委員会に諮られた。ここで、委員の県職員3人が処分に否定的な意見を述べた。最終的に斎藤知事の決断は変わらず、同7日に処分が公表されたという。逆にいえば、処分に否定的な意見を言わなかった綱紀委員会のその他の12人の職員たちには大きな責任がある。これが主流秩序の観点である。知事だけの問題ではないのである。だから知事が辞任すればいい問題ではない。

 

  • ようやく「通報者(犯人)探し」にかかわる異常な行動が批判対象になってきた

私をはじめ、人権問題に監視なるものならすぐに思うことだが、24年8月末に、ようやく、Aさんに異常な強圧的「調査」をしてプライバシー情報で脅して自殺に追いやったことがおかしいと言われるようになり、県も調査に動き出した。風向きが徐々に変わって、みなが言い始めたので、多くの人が重い口を開き始め、不正に文句を言ったり正そうということになってきたのである。「みんなで信号を渡る」感じで、風向き次第というところがまさに風見鶏的で情けないがこれが日本である。

具体て的には、今回の隠ぺい事のお本丸である、兵庫県人事課が前総務部長の井ノ本知明氏、、片山安孝元副知事や前理事の小橋浩一氏、産業労働部の原田剛治氏の調査を始めたのである。取り巻き4人組で、いずれも文書で名前が出た知事の側近で、男性の懲戒処分に関与した者たちである。今までは権力を握っていたので誰も文句を言えなかったが(そこがおかしい)、流れが変わって、ようやくこうした動きになってきた。県はこの調査を、内部調査ではなく、外部の弁護士に依頼する形で行うことを検討している。あまりにも遅いが、まともな動きである。

Aさんが3月に匿名で文書を報道機関などに配布した後、斎藤知事の指示で作成者を調べていた片山副知事、前総務部長の井ノ本氏らが男性の公用パソコンを強制的に没収し、中を調べ、告発文書のデータを確認したが、その時知った情報――告発内容とは無関係な男性の私的情報――を県議らに開示して、Aさんを追い詰める動きをしていたのである。それは前から一部で報道されていたが重視されず、問題にもされていなかったたが、8月にようやく県が、公務員としての間違った行動――私的な情報を漏洩(ろうえい)した疑いーーで、処分が必要な行為ではないかと言い出したのである。、職務上知り得た秘密を故意に漏らした職員は、懲戒を処分の対象になる。斉藤知事の取り巻き4人組は皆、Aさんの告発文で批判されたものであるのに、逆に斉藤知事と一緒になって、Aさんつぶしの行動をとったということで、それが、私的な情報漏洩の処分行為にあたるうたがいがあると言うのである。

て、斎藤知事は、これに対して、8月29日、記者団に対し「私自身が情報の漏えいを指示したことはなく、名前があがっている職員に確認したところ『そういうことはない』と言っていたので、ないと信じている」と述べて、今だ隠蔽の言動を続けている。

 

犯人探しは、まるで秘密警察が敵の情報を得ようとするかのような、人権意識など全くなく、相手を脅すようなやり口であった。悪いことをしたような人間扱いし、「私がやりまとした」と自白するようにもって行く悪質なものであった。

片山安孝元副知事とその同僚は、元県西播磨県民局長の男性Aさんを問い詰め、人事権を盾に「協力者」が不利になるぞなどと強い口調で繰り返し「自白」を迫った。

片山副知事のAさんへの脅しの様子

「今からきっちり調査せなしゃあないやないか、県民局長がやっとんねんからさ。普通の一般職員やったらまだしもな、県民局長がこれだけ県政批判してるんやで。 名前が出てきた者は一斉に嫌疑かけて、調べなしゃあないからな。名前が出てきた者は、在職しとるということだけ忘れんとってくれよな。」

「全部な、お前が分かる話じゃない。誰から聞いたんや。聞いた者、全部名前言え」

メールについて、 「1年間の全部の記録チェックさせとんねん。いろんな人の名前や、やり取りしてるの出とるやないか」

 「全部自分一人で情報集めとんか。聞き回っとるんやろ」

 

またAさんの同僚X氏をつかって、Aさんから情報を引き出していた。信頼関係を利用して違法な取り調べに加担したX氏もこの犯罪的行為に加担したということになる。

知人X氏を使ってだまして情報収集の様子: A氏とX氏の電話のやりとり

 

(X氏は、片山が「まあ、手始めにXあたり危ない思うとんやけどな」 と疑われていた人物。片山らから言われるがまま、Aさんを裏切る行為を以下の様にした)

A氏がX氏に電話をかけたとき、X氏は、県幹部ら2人から聴取を受けている最中だったがそれをAに隠していた。 幹部らに通話をスピーカー状態にするよう指示されていた。

A氏 「片山さんが来て、取り調べを受けて、調べていたことがあって、このあいだ、それを文章にまとめたみたいなことをしたんやけど、それがバレて」

X氏 「えっ、Aさんがやったんですか」

A氏 「そうそう。Xちゃんがつながっているんじゃないかと、いろいろ勘ぐっていたから、ちょっと気にしとって」

A氏は、X氏が聞き取りを受けている最中であることを知らなかった。 県幹部らはX氏にA氏への質問を指示する。 ※ここより、部長がメモ等で指示した内容をX氏が聴取

X氏「えっ、告発文はAさんが撒いたんですか」 A氏「うん。ここだけの話」

X氏「それって、警察に撒いたんですか?」 A氏「警察と議会とマスコミ」

X氏「荒ちゃん(荒木 元副知事)も絡んでいるんですか」 A氏「絡んでへん」

X氏「ほかの県民局長も、なんもなく、Aさんだけで?」 A氏「そう、僕単独でやってん。事実上な」

 県幹部らが協力者ではないかと疑っていたのは、荒木一聡元副知事だった。

 

また片山副知事は「(知事らに)文句あってやっとったんか」と言うように、県庁内での政治的な権力闘争とみて、敵対勢力の策動のように、この公益通報をとらえていた。自分達がひどいことをしてきたことを反省せず、逆に、正当に告発したものを「悪者・裏切り者・的勢力」とみなす転倒した意識であった。

「名前が出てきた者は一斉に嫌疑かけて調べなしゃあないからな」と情報提供者の洗い出しを示唆。「手始めに○○(職員名)あたり危ない思うとんやけどな。10級に上げるっていいよったけど、どないしようかいな」と、特定の職員に関与の疑いがあるとして昇級を見送ることもちらつかせてた。

 告発文は公益通報に当たるかという十分な検討もなく、なぜこれほど苛烈な調査に踏み切ったのか。その理由について、片山氏自身は、24年9月6日の百条委で、「知事から『徹底的に調べろ』と言われたので」「選挙で選ばれた知事を地方公務員が排除しようとしている。(協力者がいるなら)早く見つけ、全体像を明らかにする必要があった」と発言した。だがこれは8割、嘘である。知事が調べろといったのは事実だろうが、言われたから仕方なくしたのではなく、自分も不正行為に加担していると通報内容にあったので、自分の保身も含めて、通報者つぶしに片山副知事自身が積極的に加担したのである。公益通報に当たるかどうかを考えなかったというのではなく、意識的に「適切な第3者の調査」を避けて、その前に通報者をつぶそうとしたのである。また「知事を地方公務員が排除しようとしている』とまるで悪いことの様に認識していることを告白しているが[1]、組織の腐敗を告発することは勇気あるまともな行為であって、「知事の不当な行為を告発した正当な行為を、権力闘争のように見立てた」片山副知すが完全に間違っている。

先にも書いたが、告発の1か月前、県のホームページに掲載されたA氏のメッセージには「気がつけば、権力者の周囲には二流、三流のイエスマンが主流を占めている状況に。(中略)そのような組織の腐敗・内部崩壊も外部にはなかなか伝わりにくく、不祥事、事件の発生といった出来事でようやく世間の知るところとなるのです」都ねべ手居り、純粋に、腐敗を正したいと思てtの告発だったのである。それを、まったく逆転させて、悪いことのように、Aさんを追い詰めたのである。泥棒が、通報者に対して「通報したな!」と怒っているようなものである。

したがって、この事件では、知事だけが辞職してすむ話ではなく、片山副知事をはじめとして、隠蔽工作・告発者粛清をしたもの全員が処分されるべき事件である。

以上から、奥山俊宏・上智大教授が「まるで独裁者が反対者を粛清するかのような陰惨な構図を描いてしまった」とし、「(告発内容の調査は)独立性を確保し、利益相反を排除すべきだった。公益通報者保護法の趣旨を逸脱している」と、また日野勝吾・淑徳大教授(労働法)が、「聴取の内容からは告発者やその情報源を処分しようとする意図がある」「片山氏は真実である部分が出てくると大変だからもみ消して、人事的制裁を加えようとしたのではないか。公益通報をした人を保護しようとする視点を欠いており、これまでに例のない悪質な調査だ」というのは当然の指摘である。

 

 

 

 

 

[1] 片山元副知事は、Aさんが「クーデターを起こそうとしている」「斎藤政権に大きなダメージを与えるなり、転覆させるような計画で、不正な目的ではないかと思いました」と話している。

公益通報者つぶし問題③ーー主流秩序の観点から

  • 百条委員会で露呈した「真相を妨害する県庁職員局と維新議員」

ここで学びとして考えたいのは、主流秩序の前でどう生きるかの話である。知事だけが悪いという橋ではなく、今回、知事のパワハラや不祥事などを告発した職員A さんの味方をせずに、逆に、真実の隠蔽の動きに加担した者たちの責任を考えていきたい。

すなわち、内部告発に対して、告発者の権利を守りながら、正しく調査していくのでなく、真逆に、告発者を探し、違法な処分をしたのである。鹿児島県警と同じく、組織による悪事の隠蔽であり「裏切り者」をつぶす動きに加担したものがいたのである。

それが、7月19日の百条委員会で暴露された。そこで示されたのは、県当局(県庁職員局)が職員に対して、事実上の口止めをしたのである。どういうことかと言うと、委員会から証人として招致された場合、守秘義務解除は少ししかない、事前に所属する総務課長の承認を取っておかねばならないと言ったのであるが、それはまったく合法的なことではない[1]。つまり、守秘義務があるから安易に話をするな、証言するときも上司にちゃんと報告しろと監視体制を作って事実上の口止め、調査妨害を露骨にしたのである。これは、内部通報制度に違反したことがばれるのを隠蔽しようとする権を上げての犯罪的な行為である。知事と結託してひどいことをしたことを隠そうとしているのである。情けない。

本来、職員を守るべき「県の職員局」が、知事・副知事と一体となって、調査妨害をして、Aさんの告発を無きものにしようとしているのである。Aさんが自殺したのも、維新議員と一緒になって、Aさんお個人PCの情報を使って彼のプライバシーの部分を使って脅しをかけたのである。そのPC内の個人情報も、公益通報者保護法違反の「調査」で取得したものである。県が内部通報制度違反をしているのである。

県がこういう姿勢であると、今後行われる百条委員会のアンケート調査でも、Aさんへの報復人事のようなことをされるんではないかとおもって本当のことなど書けない人も出てくるであろう。

***

また同日の100条委員会では維新議員が、さらに知事擁護で、真実を制限するようなことを言った。「維新の会」の岸口実議員は、7月8日の非公開である理事会の資料が外部に出たことによって、週刊誌で「維新の会の議員が元県民局長のプライバシーに関わる資料についても執拗に開示を求めていた」と報じられたことに怒った。そして今後、内容を確認しなければ、疑惑に関するものなのか、プライバシーに関するものなのか、わからないから、調査が必要な資料が出てきた場合は、その都度、開示を求めるといって、新証言したものはプライバシーまでさらすぞと暗に脅した。また自分がAさんと電話したとか疑われているし、そういうことを調べるのもおかしいと弁明していた。つまり真実を隠蔽する方向で、確かな証拠もないのに勝手なことを書くな、チクるなと言うような脅しをかけたのである。

***

これに関連するが、維新の掘井健智衆院議員(掘井氏は元兵庫県議)が斎藤知事の疑惑を巡って問題発言があったとして、維新の会の藤田幹事長から「厳重注意」されるということが起った。

掘井氏は、兵庫県加古川市での街頭活動中、疑惑の告発文書を作成した元県民局長Aさんのプライバシー情報を明かし、「自民党と作った怪文書」などと語った。

藤田幹事長は、「確証のない話をペラペラとしゃべって、それを録音されて公開された」と処分の背景を説明した。だが、厳重注意程度で済ませるのがおかしい。違法な調査で得た個人情報を県の職員が維新などの議員にばらし、それが堀井議員にも伝わり、Aさんを公衆の面前で批判したのである。

つまり、知事「4人組」の一人である片副知事がパソコン押収し、その中の情報を同じく4人組の井ノ本氏(百条委員会には病欠で逃げた人物)にも伝え、井ノ本氏がそれを印刷して皆に見せ、その情報が維新の堀井議員に伝わり、堀井氏は、県民局長Aさんの個人情報を街中で喋ったのである。情報管理がなっておらず、意識的にAさんをつぶすために関係ない情報で追いつめたのである。

重大な人権侵害である。個人情報を外部に出したものも、それを広げたものも処分されなくてはならない。先の維新議員が「元県民局長のプライバシーに関わる資料を開示しろ」と板子委員は、Aさんの口を閉じさせるために阻止活動をしたのである。こうしたことがAさんを追い詰め自殺に追い込んだ理由のひとつと推測するのは合理的であろう。

維新は今回の事件では、知事を擁護し、Aさんを「百条委員会で全て問うていけ」と攻撃し、自死に至らしめた側である。反省して事実を解明し、関わった議員などを処分する責任があるが、今はまったく隠蔽したままである。

そしてまるでそうした知事の側に立っていた「公益通報者つぶし」加害者側であることを忘れたかのように、新しい知事選で、独自候補を立てている。メディアも維新の過去の「公益通報者つぶし」加担性を追求しない。怖がって報道しないというのはどこかの全体主義国家と同じではないか。これに騙されて また維新に投票する県民もこの構造に加担していることになる。

***

なお、斉藤知事は維新だけが応援して担いだのではない。自民党とも強く結びついていた。たとえば、知事選中の斎藤知事を応援する有志の会のSNSには、河野太郎デジタル相、西村康稔経済産業相下村博文政調会長丸川珠代元五輪相、高市早苗経安相ら、自民党議員とツーショットを撮影した動画が投稿されている。維新は、吉村洋文大阪府知事松井一郎大阪市長清水貴之参院議員などがXに投稿している。これら知事を応援した政治家は総括と謝罪が必要なのにだれ一人謝っていない。

 

  • 7月20日、 公益通報担当部署が不十分な調査結果発表

当局が不当な元県民局長Aさんへの処分をする間に何も言わず、音沙汰なしであったが、7月20日、ようやく県の公益通報担当部署は七つの「疑惑」のうち、一部について「是正措置」を講じるよう県側に求める調査結果をまとめた。

 公益通報の調査結果では、パワハラの通報について、一部で強く叱責されたと認識する職員もいたとしつつ、「パワハラと認められる事案があったとの確証は得られなかった」とした。その上で、県にはハラスメント研修などの対応策を求めた。さらに贈答品をめぐる通報にも言及。県に贈答品の受領基準の明確化などを求めた。

しかしそれ以外への詳しい調査結果がなく非常に不十分な結果であり、内部通報者の保護の問題含め、担当部局が、本来の不正是正の機能を果たしていないことが露呈したと言える。7つの疑惑の多くの項目を判断しない、調査しないのは、責任放棄である。事なかれ主義であり、事実上の県の不正に「県幹部や知事・副知事は強者だから、あるいは仲間だから真実解明をしない」と手心を加え、あいまいに事を終わらせるようなことをしたのである。

公益通報なのに、調査の前に処分をした、通報者を特定し、PCなど強制的に取り上げ、退職も認めず処分するなど、全く公益通報者の権利を尊重しない対応をしたのに、報告書ではそこを総括しない、、批判しないのである。兵庫県公益通報担当職員は、この「通報者つぶしという犯罪」への加担者と言わざるを得ない。情けない。

こういう処なら、Aさんや他の職員は内部通報など安心してできないであろう。兵庫県公益通報担当部署はまったく内部通報制度の精神が分かっていない、ひどい組織・職員であると言わざるを得ない。

なお、 県人事課は、一般職員には「贈答品は受け取らない」という内規があるが、知事は当てはまらず、自分で判断する立場にあると、ふざけたことを言っている。

また、4月下旬段階のことであるが、丸尾牧県議が通勤途中の職員300人に対し独自のアンケートを行ったが、それに答えたのは、たったの21人だった。そのうち7人が「知事によるパワハラ行為を見たり聞いたりした」と書いていた。アンケートに答えないというところに、腰が引けて逃げている、真実を言おうとしない、様子を見よう、睨まれたくない、などという主流秩序への消極的加担の人が多いことを示している。なさけないことである。

 

 

2 / 

元県民局長が指摘した七つの疑惑

出所)「兵庫知事ら七つの疑惑、一部に「是正措置を」 公益通報担当部署、調査結果とりまとめ」(朝日新聞、2024年7月20日

 

  • さらなる隠蔽発覚――2人目の犠牲者がいたことが隠されていた

Aさんが告発した文書で、「業務を理由に療養中」と書かれていた職員の男性Bさんが24年4月に死亡していたことがわかった。自殺とみられている。このBさんは、23年11月の阪神オリックスの優勝パレードで、寄付金集めなどを担当した元課長の男性(53でが、不正に加担させられて業務で疲弊して療養中と、告発文で指摘されていた人物であった。このBさんが死亡していたことはこれまで隠され続け、問題が大きくなった後、7月24日の知事会見でBさんが24年4月に死亡していたことを明らかにした。

元課長Bさんは23年11月の阪神オリックスの優勝パレードを担当していたが、一連の不正行為と大阪府との難しい調整に精神が持たず、療養に入っていた

元課長は4月20日に死亡。元課長の子どものために職場の有志で「遺児育英資金」を集めようとする動きを県幹部が止めるということもあった。なんとしても事件の全体像を隠そうとする知事と県の意志が感じられる。

なお、7月23日に県職員向けのサイトにようやく訃報が掲載され、今後、遺児育英資金の手続きも進められている。

県は「個人情報に関わる」などと3か月にわたり公表しておらず、斎藤知事は「遺族の意向」としているが、真偽は不明。

このことがようやく明らかになったのも、一議員が追求したからであった。24年7月17日の総務常任委員会で、竹内英明議員が「在職中に不幸にしてお亡くなりになられた県職員に対し、生前に在籍していた部局の長が、公務災害等の基金や退職金とは別に、遺族への弔意を表すために任意でお金を集めるものである遺児育英資金が、ある職員(上記Bさん)については行われていないのはなぜか」と追及したのである。

それに対して当初は、兵庫県理事(若者・Z世代応援等調整担当)が「どなたのことをおっしゃっておられるのか……、今話題になっておられるお方とすれば、お亡くなりになったかどうか含めて回答を控えさせていただきます、という回答をさせていただきます。(中略)なぜ、そういったお答えをさせていただいているかというところですけれども、それにつきましては、やはりご本人、家族について守られるべきプライバシー、我々としても個人情報をお出しできないという状況にあります」と従来の答弁し、県は逃げ続けた。

それに対して県議が、「個人情報を出せとは言ってない。これは人間として、一緒に働いてきた方々が「絶対におかしいという気持ちでいるんです」とおっしゃったので、今日、取り上げているのだ」「Bさんに遺児育英資金をやらないといけないのにそれを止めた人間がいるんだ!」と追及した。

だが県は、逃げ続けた。このやりとりの様子がYouTubeで公開され、県に抗議の電話が殺到したため、県が突然、県職員に向けて課長の訃報をアップした。

また同じ会議では、竹内県議は公務災害認定請求についても追及しようと考えていたが、このことが明るみに出るのを痛がる県は、担当者をその会議に出席させなかった。調査プロセスで、なぜ課長Bさんが精神を壊すまで働かなければならなかったのかが、詳しく調査されることになるからそれを避けたのである。

この問題は、贈答品おねだりやパワハラ以上に、明確に公益通報制度の調査対象になる問題である。補助金を増額する見返りに、開催資金を寄付するよう働きかけたという優勝パレードの“資金還流疑惑”において、知事及び、当事者である金融機関の顧問弁護士(藤原弁護士)は、告発対象なのである。だがその二人が、これは公益通報ではないという判断をした。いわば、「犯罪者が、これは犯罪ではない」といっているようなもので、中立の第三者機関の調査を待たずに処分したという犯罪的事件である。第三者調査の対象なのに、それをされると困るので、「本院が嘘と認めた」と嘘を言って公益通報とみなさずに処分したのである。斉藤知事と藤原弁護士、この2人を中心とした意識的な「不正隠ぺい犯罪」である。

 

  • 真実を語らずに逃げる職員

上記したように、斎藤知事の側近で公益通報制度に違反した活動をした片山安孝元副知事が24年731日付で辞職したことに加え、斎藤知事を支えてきた側近の小橋浩一理事が8月1日付で総務部付に異動した。県政の混乱への対応による体調不良が理由とみられ、7月後半から病欠しており、本人の希望による降格である。これも逃亡である。小橋理事は、Aさんが作成した告発文書で、2021年の知事選の際、当時立候補予定者だった斎藤知事の事前運動に関わったとして名前を挙げられてた。

さらに、知事側近の一人、井ノ本知明総務部長も7月30日から病欠していることが判明した。井ノ本部長は、県庁舎建て替えや県立大無償化など、重点課題を担当してきたが、知事らが告発された問題の対応などにもあたってきた人物で、7月に死亡した元西播磨県民局長Aさんが作成した文書では、前回知事選で事前運動に関与したなどと指摘された人物である。

つまり片山副知事と同じく、井ノ本部長も自分が告発された対象であるにもかかわらず、通報者をAさんと断定して処罰したのである。

すなわち、斉藤知事とそのとりまきは、告発された側であるにもかかわらず、第3者の調査などを経ずに、自分たちで勝手に通報者を見つけ嘘を言っているとして処罰したのである。

そういう人物たちが今、権勢から逃げ出しているのである。

知事の側近で残るのは、服部副知事や「“牛タン倶楽部”の一人」である原田剛治・産業労働部長などだけである。

過ちを犯した者は、それを明らかに謝罪し、過ちを正し、適切に処罰され、再発防止の手立てをとる責任がある。だが知事のt理まきは、諸問題に加担した責任を明らかにせず、謝罪もせず、処罰も受けず、逃げ出しているだけなのである。

そういうことを許す社会こそが、主流秩序社会である。

 

 

  • メディアの認識変化

メディアではこの問題も、最初は「おねだり」に注目が集まるなど軽く扱われていた。私など最初からすぐに、通報者探しをし、処分したこと自体が大問題と思うのだが、そして専門家から「公益通報者保護法違反だ」との指摘が徐々に相次いだのは当然なのだが、メディアの追求は最初は甘く、徐々にこの問題の深刻性が集団的に自覚されて、厳しくなってきているという状況である。

そもそも最初から自殺したAさんやBさんに取材するなどが深くできていれば、早い段階〈24年3月段階〉から、もっと厳しく「どこが嘘なのか」「通報者探し自体がおかしい」「退職を認めないのはおかしい」と追及できたであろうし、副知事の自分の加害性を隠蔽し自己憐憫で泣いているような状況にも批判的に意見が出せたであろうに、メディアにはそういう力が欠如していた。

だが、今【24年8月初め段階】ではほぼ内部通報制度違反の問題として整理されてきた。

例えば朝日新聞では、24年7月31日に公益通報制度の問題としてまとめ記事が出た。これが3月末にすぐに出るべきであった。

同記事では、3つの違法性と明確に指摘した。

つまり、2022年施行の改正公益通報者保護法で、告発者捜しが禁じられ、自治体などには告発者捜しを防ぐための措置を講じることを義務づけたことを示し、初動の段階で保護法違反だったと指摘した。告発者を特定しなくても、告発内容を調査することはできるのである。

また公益通報窓口にも告発をしたのだからその調査を待たねばならないのに、待たずにAさんを3カ月の停職処分にした。これも告発者に対し、異動や解雇などの不当な取り扱いをすることを保護法が禁じているので違法である。

さらに内部通報に対する調査は公平・中立的に行われなくてはならないのに、訴えられた側の県が調査した点も問題である。っ斉藤知事や副知事たちという組織トップの問題に対しては、その組織で調べるのではなく、独立性を担保して調査する必要がある。知事の指揮監督が及ぶ内部組織が調査したというのはありえない。保護法が定める体制整備義務にも違反する。

 

1 / 2内部告発後の県の対応と公益通報者保護法上の問題点  (出所):「公益通報保護、三つの違法性 告発者捜し・懲戒処分・県が知事の疑惑調査 兵庫県庁、識者が指摘」(朝日新聞、2024年7月31日)

 

専門家は当然、県の対応は違法だらけであったと指摘する。しかし上記したように、県・知事は、Aさんの告発は、内部通報に当たらないと言い続けている。内部通報と認めるとまずいから、言い逃れを続けており、兵庫県に雇われた弁護士もそこに加担している。

だが、再度原則を確認しておくと、公益通報とは、組織内の不正の改善・是正につながる内部告発のことを指し、組織内の通報窓口に告発する「内部通報」と、報道機関などに対する「外部通報」がある。Aさん推したことはこの両方に値する。正当な告発者に対し、異動や解雇などの不当な取り扱いをすることは保護法が禁じるので、嫌悪したことは明らかに違法である。

3月段階の報道機関への告発も公益通報に該当する可能性が高く、県は初期の時点で、公益通報として慎重に扱い、内容の真偽にかかわらず独立性を担保してきちんとした調査をすべきだった。知事や副知事など4人組に関する告発であったのに、その当事者が、第3者機関でもなく、じぶんたといで勝手に判断し勝手に処分までした。犯罪者が警察・検察に代わって自分の捜査をし、裁判で自分で判決文を書いたようなものである。保護法が定める体制整備義務にも違反している。

***

斎藤知事は24年8月7日の会見でも、法的見解まで確認していなかったが、Aさんの告発は法の要件を満たしていなかったため、公益通報ではないとした対応は適正だったと説明した。

「3月20日に文書を把握し、21日に内部調査を指示した。その時点で、公益通報にあたるのではと検討したか。」との問いに対して、知事は「具体的な検討はできていない。だが、内容が事実ではないと判断したことや、証拠や信用性の高い供述がないことから、信ずるに足りる相当の理由がない文書だと認識した。」と答えた。

「いつ、公益通報にはあたらないと判断したのか。』と言う問いには、「3月25日に元県民局長が「うわさ話を集めて作成した」と供述した。その後、4月中旬に人事当局が弁護士に相談し、懲戒処分をした5月7日までに判断した。」と答えた。

「専門家の判断の前に内部調査をしたことに問題はなかったのか。」との問いには「法的な見解までは確認していなかったが、適正だった。個人名や企業、自治体名が書かれ、事実と異なり、その根拠が示されていない文書が流布すれば、多方面に不利益を及ぼすため、作成者を含めた調査は必要だった。」と述べた。

「知事や副知事は文書に疑惑を書かれている当事者。当事者が調査を協議、決定するのは違和感がある。客観的に調査しようという声は上がらなかったのか。』と言う問いには「文書には真実相当性がないという前提がある。懲戒処分に該当する可能性がある以上、人事当局中心に調査を進めるのは適切だった。」と述べた。

「3月25日に1回目の聴取をした直後の27日の会見で、告発文書について「うそ八百」と発言した。十分な調査もないままでの発言だったのでは。」と言う問いかけには「強い表現になってしまったのは反省している。真実相当性がない文書だったこと、職員や民間のみなさんが日々懸命に取り組む中で配布されたのが残念だという思いがあった。」と言い訳した。

「4月4日に公益通報窓口にも通報があった。調査の客観性に疑問があるにもかかわらず、5月7日に懲戒処分に踏み切ったのはなぜか。』と言う問いには、「文書の作成・配布を含めた四つの非違行為が確認されたので、適正に対応した。公益通報者保護法の要件も満たしていなかった。」と答えた。

「告発の情報源が特定されると、解任など不利益を被るかもしれない。県による調査で情報源を明かせないという可能性は考慮しなかったのか。』と言う問いには、「情報源や、具体的な供述を示してもらえば、しっかり調査、対応できたと考えている。外部通報した本人が証拠や信用性の高い供述をきちっと示すことが必要だった。」と答えた。

「告発文書を出した時点で証拠や供述を示さないといけないという認識か。消費者庁によると、文書を出した時点での提示は求められていない。』という質問には、「今回についてはそれがなかったので、外部通報に該当しないという判断をした。」「真実相当性が要件になっている。公益通報自体を否定するわけではなく、ルールの中でやるのであればきちんと対応する。」と答えた。

 「「うわさ話」という供述は、いつ、どういったやりとりの中で出てきたのか。」という問いには、「どこまで開示するのかは持ち帰らせてもらう。本来は供述の内容は差し控えているが、真実相当性の問題を示すのが今回の問題の根幹だと考えたので、一定話をしたにすぎない。」と答えた。

     ◇

 元県民局長Aさんは生前、4月1日に報道各社に配布した文書で、「今回の事案について、私と人事当局間でなされた意味のあるやり取りは、3月25日に電話で『告発文は自分一人で作成した。他に関係者はいない』と伝えたことのみ。26日電話により情報の入手経路についての漠然としたやり取りがあったのみ。告発文の内容の真偽についてどう思っているのかなどは全く聴取されていない」などと記載し、3月27日に県幹部に対し「内部告発文にある内容をきちんと精査してから対応してくれと要請した」と記していたので、上記の知事の答えと矛盾する点が多くある。

知事は、供述内容の中身は示さず、一方的に真実相当性がないと決めつけ、それによって県の対応を正当化している。このこと全体が、根幹から間違っている。適切な調査をまずすべきで、真実相当性があるかないかは、実は明確になっていないのに、嘘八百だと言っているのである。

このようなムチャな論理と対応をここまで許してきた組織、職員、県弁護士、議会・議員自体の責任も問われなければならない。

 

 

[1] 各部総務課の副課長らを集めた会議で配布された「守秘義務免除の手続き」には「委員会から職務上の秘密または職上知り得た秘密が含まれる事項について出頭または出席の要請があった職員は守秘義務免除の申請手続きを行う」とあり、「(守秘義務免除の)対象となる内容は最小限のものとする」、さらに「各部総務課宛に申請し、これを各部総務課長が承認する」となっていた。

公益通報者つぶし問題②ーー主流秩序の観点から 

  • 知事の辞職がゴールではない

主流秩序論との絡みで子のはなしをしている。知事が悪いのは明白だが、それに一緒に加担した人物たちの責任こそ、ここで問いかけたいことである。多くの者は見て見ぬふりで、一部は積極的に知事と犯罪的行為を重ねた。知事が辞職すれば済む話ではない。知事をはじめとして4人組など加担者は、先ず県民局長Aさんとその遺族に真実を語り謝罪すべきである。メディアも、斉藤知事に縛って、「4人組」(牛タン俱楽部)→加担辯護士の犯罪行為追及の点で生ぬるすぎる。

斎藤知事は、神戸市出身だが維新系で、大阪府財政課長をしていたところ、維新と一部自民党の支援を受けて知事になった人物である。自民は分裂選挙となり、斎藤知事と対立している者も多い。斎藤知事の任期満了は25年7月末で、来夏には知事選があるので、百条委の設置に賛成した会派内には、別の知事候補の擁立に向けた水面下の動きもあり、政局の側面もあるが、事の本質は行政内部の不正を告発した、内部通報への弾圧があっていいのかという問題である。政局だとして冷笑していいていい問題ではない

したがって斎藤知事が辞職すればいいのではなく、副知事や人事部も含め、今回の不適切な内部通報つぶしに加担した者たちをあぶりだし処分することが必要なのである。斎藤知事の進退問題に焦点を絞るものは間違っている。

また告発した元局長Aさんは、7月19日の百条委員会で証人として出席する予定だったが、維新などの議員が、「この元局長のPCの情報を全部出せ」と言って、個人的な問題まであぶりだそうとして、当該男性は、それは関係ないからやめてほしいと述べていた[1]。そういう圧力の中、この元局長Aさんは、録音などの証拠を残して、7月7日に自殺した。「死をもって抗議」するという言葉を残していた。

知事側に立った議員が、個人的私的な「弱味」を使って脅したこと自体が問題で[2]、内部通報者への攻撃をおこなったのであるから、そこも責任を問われるべきである。

 

  • 県の不適切対応の背景に県の藤原弁護士がいた

兵庫県がAさんに懲戒処分を出した際、調査に加わった藤原正広弁護士がAさんの告発内容を「居酒屋の噂話を信じて作成した文書」と断定し、公益通報者として保護する必要はないと県に伝えていたことがわかった[3]。藤原弁護士は、5月7日の処分発表の記者会見に「兵庫県特別弁護士」の肩書で同席していた。

Aさんの処分を決めた「決裁書・報告書」【5月2日】について、兵庫県明石市の辻本達也市議が県に公文書公開請求を行ったところ開示され、多くのことが明るみに出た。そのなかで、一連のおかしな動きにお墨付きを与えたのが県の藤原弁護であることが判明したのである。以下のような「弁護士の意見」があったので、県はAさんを公益通報者保護法上の保護対象として扱う必要がないと判断したのである。

「決裁書・報告書」では、告発を「誹謗中傷」と決めつけ、それに対して藤原弁護士は、「作成した文書を10人に配って、その中にマスコミ関係者がいたということは、報道してほしいという意図しか考えられない。マスコミは仕事柄知ってしまった以上書かざるを得ないから広がることを期待していたと評価されても仕方なく、流布したという認定は可能。 居酒屋などで聞いた単なる噂話を信じて作成した文書は、その内容が真実であると信じるにつき相当な理由にはならず、告発者の利益を守る対象ではない」と見解を示したとのことである。

つまり藤原弁護士が、Aさんの告発を公益通報とみなさなくてもよい、通報者の利益を守らなくてよいと決めつけたのである。当然、公益通報者保護法はメディアへの情報提供も公益通報とみなし、通報者の詮索や、通報者に不利益を与えることを禁じているが、当該弁護士は、その基本も知らないかのように、居酒屋で聞いた単なるうわさ話と決めつけて、違法な助言をしたのである。メディアに伝えたことが問題であるかのように述べているのも基礎知識の欠如と言うしかない。

集英社の記者がこの藤原弁護士を電話で取材したところ、自分が公益通報者保護法の保護対象ではないかという検討においてその旨の見解を示したことは認めたが、「内容については話せない」「県がどう受け止めたかはわからない」と肝心なところは逃げ続けた。

一方、県人事課担当者は、文書内の文言について公益通報者保護法を検討した末の藤原弁護士の判断だと認めている。「先生(藤原弁護士)からうかがったお話をまとめて記載している」とのべている。

斎藤知事も7月24日の会見で、(Aさんが4月4日に手続きを取った)公益通報の前に、内容が真実ではない、核心的なところに虚偽の内容が入っていたということで、懲戒処分の対象になるということで調査を進めた、当時の弁護士さんも、後から公益通報の手続きをとってもそれ以前に配布したことが保護される対象にはならないと発言をしたといって、藤原弁護士が一連の動きが適正であるとの根拠を与えたと認めた。

斉藤知事はその後も繰り返し、24年8月段階でも、告発文書を作成したAさんは公益通報の保護対象外だとの見解を改めて示した。定例記者会見で「(元局長は)事情聴取でうわさ話を集めて作成したと証言した。信じるに足りる理由があるとは判断できない」と述べた(この説明が嘘だらけ)。

つまり藤原弁護士が「真実であると信じるにつき相当な理由がない」と言ったので、県(知事勢力)は、専門家がそういうからいけると判断して、Aさん処分に突き進み、その後もその見解で居直り続けているのである。藤原弁護士は、知事側を擁護するスタンスで発言し、「告発された当事者」と一緒になって、「内部通報つぶし・Aさん処分」に加担したのである。

今回の公益通報握り潰し事件が、法律や制度に無知な斎藤知事個人の暴走ではなく、県が、弁護士という専門家も入れて、組織的に公益通報者保護法を意識して検討したうえでおこなったことだったというのは驚きである。政治権力という側面もあるが、利害がかかわっていったん認識が歪めば、正常な判断ができなくなるということの典型例のように見える。公益通報者保護法を意識したにもかかわらず、あとから検証されればあまりにお粗末な議論で、違法な調査、処分、公益通報つぶし、記者発表による名誉棄損などを行ったのである。藤原弁護士の責任が大きいことは言うまでもないが、集団的組織的に「先に結論ありき」の方にもっていた県の職員たちの愚かさが浮き彫りになっている。

なお、、斎藤知事にアドバイスをしている藤原弁護士は“中立の立場”ではなく、税金のキックバックで告発されている“信用保証協会の顧問弁護士”であるとわかった。つまり今回の不正疑惑の中で、訴えられている側の弁護士であった。ということは、”共犯者的立場“にある利害関係人であって、中立公平な辯護士ではない。そういう利害関係のある一人の弁護士だけに意見を聞いて、それで突き進んだこと自体がおかしい。他の中立的で、まともな意見を言う弁護士に聞くべきであった。藤原弁護士の責任が追及される必要がある。

 

  • 法的にも、斉藤知事の言い分がおかしいことは明白

メディアがなかなか厳しく追求しないのでおかしいと私は思っていたが、百条委員会でようやく、知事の言い分がおかしいということが指摘された。

斎藤知事は、亡くなった元西播磨県民局長による内部告発を「うわさ話を集めたもの」「真実相当性(真実と信ずるに足りる相当の理由)がない」として公益通報には当たらないと主張した。

これに対して「真実相当性はある」「そもそも告発された当人が真実かどうか決めつけること自体がおかしい」などの異論が出ていたが、上智大の奥山俊宏教授と費者庁公益通報者保護制度検討会の委員である山口利昭弁護士からの意見をふまえて、決着がついた。[4]

それは、「告発に真実相当性があろうとなかろうと、関係ない」 ということである。「告発に真実相当性はない」と繰り返す斎藤知事に対して、山口弁護士は「真実相当性はある」と反論することも有効ではあるが、法律に照らすとそもそも「告発に真実相当性があろうとなかろうと、斎藤知事がしたことは違法だ」と指摘できるのである。

2006年の施行当初、公益通報者保護法は通報者をクビにするなどの「不利益取扱いの禁止」だけを決めた短い法律でしかなく、その適用条件として外部通報には「真実相当性」が求められていた。lしかし2022年の大幅な法律改正によって、同法は「不利益取扱い禁止」だけではなく、新たに公益通報の保護する措置」についての事業者の義務も規定することになり、その内容として内閣府指針は 「やむを得ない場合を除いて、通報者の探索を行うことを防ぐための措置をとる」とした。 つまり、余程のことがない限り「通報者探しは禁止」と決まったのである。そして、ポイントとなるのが「通報者探し禁止」となる通報の範囲で、。同指針はその範囲を公益通報者保護法2条の公益通報」と定めた

 公益通報者保護法「2条」は、金もうけや私怨などの「不正の目的」ではない限り、広く公益通報に当たるとしていて、そこに「真実相当性」という条件はないのである。したがって「真実相当性がない通報」の場合まで含めて、広く禁止されたと理解しなくてはならない。

斎藤知事とつるんだ上記の藤原弁護士は弁護士としても間違っているのである。

 

[1] 維新の会は知事を担ぎだした会派で、百条委員会の設置に反対した。百条委員会の委員の一人である維新の議員から人事課調査にかかる資料はすべて開示されるべきだとの発言があった。それは、AさんのPCの中の私的利用部分もさらけ出してAさんの問題を追及するという意味だったので、Aさんはそれは内部告発とは無関係なので、そこはやめてほしいと訴えたのである。また維新の議員が「元局長をつるし上げてやる」 といった発言をしているという証言もある。

さらに7月8日午前、臨時で開催さらた百条委員会・理事会で、維新の県議が「告発文書には、斎藤知事の自宅や好き嫌いなどの記述がある。プライベートなことを取り上げているのだから、(元局長が)自らの調査結果はプライベートな問題だから公開しないでとは、あまりに都合のいい身勝手な論理ではないか」 「パソコンの所有者は兵庫県、データも兵庫県のものだ」、だから公開されて当然だと主張してAさんの要望を受け入れないよう訴えた。こうしてAさんを追い詰めたのである。維新の2人の県議が「すべて公開」の主張を変えなかったため採決となり、4対2で元局長の申し入れを受け入れることになったという。「斎藤兵庫県知事のパワハラ告発の元局長死亡 「つるし上げる」と維新議員から糾弾されていた」(AERA,2024年7/13)

[2] ここでは内容がわからないので「弱み」と書いたが、その内容は、個人的な不適切な使用というのではなく、他の人のことなどを考えて公表を止めようとしたのかもしれない。公用パソコンを私的に使ってはいけないのは一般論としては当然であるが、は県民局長という立場で部下も多数おり、様々な情報に触れ、対応する立場にあったので、外侮に出てはまずい情報があったのかもしれない。内部告発に関する情報提供者の割り出しや報復人事などを気にしたのかもしれない。データを出せという結論になることを悲観して自殺した可能性が高いのである。4人組や維新議員の責任は大きい。

[3] 「〈兵庫県知事側近の“牛タン倶楽部”は3人離脱〉自死した告発職員を「保護対象として扱う必要なし」「居酒屋などで聞いた噂話を信じて文書を作成」県の担当弁護士を直撃すると…」(集英社オンライン、24年8/2)記事より。

[4] 兵庫県庁の内部通報窓口で受け付けられた「内部公益通報」をきっかけとする調査については、県は、改正公益通報者保護法により体制整備を義務づけられている(11条2項)。体制整備の内容は内閣府告示である指針に示されており、それによれば、県は、「内部公益通報」の受付、それに関する調査、それに基づく是正のすべてについて「組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置」と「事案に関係する者を関与させない利益相反排除の措置」の双方を義務づけられている。こうした法的義務を果たすためには、何らかの第三者性ある調査に委ねざるを得ず、そうでなければ県の措置は公益通報者保護法の体制整備義務違反となりる。、「公益通報」に該当するとすれば、それを理由としたその人に対する不利益扱いは禁止される(同法5条)。告発文書送付を理由としたパソコン押収、圧迫的な事情聴取、県民局長解職、退職保留、懲戒処分はすべて、公益通報者保護法に違反する不利益扱いで、違法である。

兵庫県知事 公益通報者つぶし問題①ーー主流秩序の観点から 

ジェンダー論、主流秩序論の講義録に書いたものをアップしておく。長いので、数回に分けてアップする。

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類似の、内部通報制度にかかわるひどい隠蔽事件、通報者への復讐の事件が兵庫県で同じく2024年に起こった。この問題も主流秩序にどう向かうかが問われるものであるので取り上げたい。

斎藤元彦知事がパワハラなどで問題だという内部通報(公益通報)がメディアに送られ、それで元・西播磨・県民局長Aさん(60)が懲戒処分を受けた(退職も妨害された)という事件である。その中で告発した元県民局長Aさんは圧力も受けて自殺した。一番のポイントはパワハラではなく、内部通報者への間違った対応の問題(内部通報者粛清と言う問題)である。

事の発端は、県幹部の一人だった西播磨県民局長Aさんが(当時)が定年退職間近の24年3月、斎藤知事やほかの県幹部に対する「七つの疑惑」を告発する文書を作って、一部の県議や報道機関に配ったことである。その内容は、以下の通り。

【7つの疑惑】

1:斎藤知事による職員へのパワハラ、2:公益財団法人への恣意的人事、3:知事選での事前運動、4:次回選挙への投票依頼、5:贈答品へのおねだり(斎藤知事が県内企業から贈答品を受け取り)、6:政治資金パーティ券購入の圧力、7:昨秋のプロ野球阪神オリックスの優勝パレードの寄付金集めで片山安孝副知事らが不正行為

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知事側近の“4人組”と称される県幹部職員4人が選挙期間前から事前運動を行い論功行賞で昇任したとか、斎藤知事らがパワハラを繰り返したり企業から贈答品を多く受け取ったりしている、「プロ野球阪神オリックスの優勝を祝し計画した昨年11月のパレードで費用の原資にしようとした寄付が集まらず、信用金庫に補助金を増額してそれをキックバックで寄付させた疑惑、昨年7月の斎藤氏の政治資金パーティーの券を県補助金の減額をちらつかせて関係団体を脅して買わせていたとする疑惑など

 

 

「朱所:「パワハラ、優勝パレード不正…兵庫県知事が否定する七つの疑惑とは」(毎日新聞2024年7/13)

 

これに対し、誰が送ったのかを県はすぐに調べ(犯人探し)、県は局長Aさんであると特定し、Aさんを解任し、24年3月末に定年退職予定だったにもかかわらず3月27日に幹部の退職を取り消す人事を公表した。退職保留処分を下したのである。

素早すぎる対応で、退職金も払わないわけだから、内部通報へのひどいイジメ・復讐・報復人事・不正告発の握り潰しである[1]

Aさんは最初は告発者であることを否定したが、片山副知事らは元県民局長の業務用パソコンを持ち帰り、保存されていた文書などから、告発者だと3月に特定した。こうした行為自体が違法である。又後日判明したが、県の総務部長と人事課の職員が、元県民局長Aさんと関係のある別の職員の私物のスマートフォンを調べ告発文に思い当たることはないかなどと聞き、Aさんとやり取りしていないかなどを追求した。調査の目的や根拠を説明せず、私物のスマートフォンを見せるよう迫り、SNS上でのAさんとのやりとりを確認していた。こんなやり方が適切でないことは明らかであるが、知事は「誹謗中傷だった」「内部通報ではないし、調査は適切だった」と居直った。

後に分かるのだが、知事と検眼部職員が急いで処分しようといい知事に対して、一部職員が幹部を通じて斎藤知事に「公益通報窓口の調査結果が出るまで待ったほうがいい」と進言したにもかかわらず処分が下された

知事は記者会見で当該者につきましては、県民局長として相応しくない行為をしたということ、そして本人もそのことを認めているということで、本日付で県民局長の職を解きました。」「副知事とも相談しながら対応しました。(中略)事実無根の内容が多々含まれているということなので、名誉毀損や信用失墜、綱紀粛正ですから、ここは看過できない。業務時間中なのに嘘八百含めて文書を作って流す行為は、公務員としては失格ですので、被害届や告訴などを含めて法的手段を進めているということになります。」と発言した。

だが知事の発表は嘘であった。3月25日の片山安孝副知事の事情聴取にAさんは自身が書いたことは認めたものの、告発内容は事実と訴えた[2]。したがって、書かれていたことが嘘などとは認めていないのに、知事が「嘘八百だ」とかが「事実無根」「真実ではない≒誹謗中傷」といったのは、勝手なねつ造なのである。内部告発したことは「県民局長としてふさわしくない行為をした」ということはないのである。書いた人物を探したことも、職を解いて退職を認めないような対応をとったことも間違いなのである。だが知事は、Aさんが嘘を書いたと認めたかのような印象操作を行なった。さらに、Aさんは「不満」を抱えて文書を書いたのだと、動機をでっち上げてメディアに広報していた。

正しい調査をしないで、ここまでひどい断言と対応をした知事及び幹部は、Aさんの自死についても重大な責任を負っているといわざるをえない。Aさんは死をもって抗議するといって自殺した。

4月4日にAさんは、兵庫県公益通報委員会に同様の「告発文」を提出した。(これについては後で触れるがひどい対応をされた)

だが、公益通報委員会の調査とは別に、県人事課(実質は知事や副知事、4人組、藤原弁護士などの指示を受けて動いた)が元幹部の処分に向けて調査実施を表明し、安易な「内部調査」なるものを県の人事当局主導で実施し、5月2日の綱紀委員会の議論を受け、停職3ヶ月にするとの「決裁書・報告書」を作成した。それを斎藤知事が承認し、24年5月7日に「文書には根拠がなく、誹謗中傷」文書の核心部分が事実ではない」として元局長を停職3カ月の懲戒処分とした。一方、商品を受け取った幹部は訓告にとどめた

あとでどんどんわかってくるが告発のかなりの部分が事実であったったのに、Aさんには「嘘八百だ」と言って非常に重い処分をし、不正をした者には軽い処分で、しかも知事や副知事は何のお咎めもないままであった。だが、この時点でも、告発文書の一部が事実であることは分かっていた[3]。しかもこれは、公益通報委員会の調査を待たずに、勝手に県のほうで「調べて処分までした」ので、知事勢力が県職員人事課などと一体となって「口封じ」「報復人事・処分」をしたと言えるものだった。

斎藤知事は7月24日の会見でも、「(Aさんが4月4日に手続きを取った)公益通報の前に今回の文書が配布されました。内容が真実ではない。核心的なところに虚偽の内容が入っていた。人事課もそこは問題だということで、懲戒処分の対象になるということで調査を進めたということです」と主張し処分手続きを中断しなかったことを正当化しただ打がどこが核心的なところで、虚偽なのかは明らかにされていない。メディアはもっと初期から徹底的に公益通報制度に違反していると追求すべきであったが、最初の対応は「おねだりやパワハラ」だけを見ていてまずかった。

知事の言い分は完全に間違っている。4月4日に正式に公益通報の手続きをとる前から、メディアに対して告発情報を流したことも公益通報であるのにそこの理解が間違っている。知事は、 その根拠に「当時の弁護士さんも、後から公益通報の手続きをとってもそれ以前に配布したことが保護される対象にはならないと発言をされています」と述べたが、もし藤原弁護士(後述)が本当にそういったなら、この弁護士が間違っている。メディアへの告発も保護対象になるのは当然で、弁護士も県も間違っていた。

この一連の対応に対して、批判が噴出し、県議会の要請に応えて現在は第三者機関設置が決まったが(最初は知事が拒否)、人選や調査方法など第三者機関の中立性が保てるかはまだ未定である。ここの動きは非常に遅いままである。

また「知事与党」を公言する第2会派の維新(21人)を除く、最大会派・自民(36人)の一部や、ひょうご県民連合(9人)らが百条委員会[4]の設置を求め、結果、6月に百条委員会で調べていくことも決めた(51年ぶりのできごと)。その開始は7月19日となった。だがその過程で、知事派は委員会の開催反対し、この問題の重要性を認識できなかった[5]。維新の議員の責任も大きい。

 

  • 元県民局長Aさんの熱い思い

Aさんは現職時に毎月、県民や職員に向けてホームページ上でメッセージを送っていた。以下は24年3月、つまり懲戒処分を受ける前の最後のメッセージの一部である。

 

このメッセージ欄は一般県民の皆さんの読者もいらっしゃるようですが、一方で、県職員の中にも何人かの愛読者がいるようです。自分は間もなく、県を退職します(予定)が、これから県を支えていく後輩の皆さんに最後に伝えておきたいことを書いておきます。

/我々は公務員です。仕事は県民の皆さんのためにするものです。自分のために、自分の栄達のために、仕事をしてはいけない、仕事を利用してはいけない、県民を利用してはいけない。そして、自分の損得勘定で行動してはいけない、人を選別してはいけない。昇任、出世は結果であって、それを目的にしてはいけない。

(中略)最後に。人を大切にすること、義を通すこと、誠実であることを、ひとりの人間としてずっと心に持ち続けて欲しいです。そして、筋を通そうとして挫けることがあっても、理不尽な現実の壁に跳ね返されても、諦めないで下さいね。「いつかきっと」と心に念じながら。/素晴らしい人にたくさん出会えますように。県民の皆さんの心に残る仕事に出会えますように。/長らくのご愛読ありがとうございました。お世話になりました。おわり。

 

自分のことだけ考えたら、不正に対して告発・通報などせず、円満に退職して退職金ももらって悠々自適な退職後生活を満喫すればよかった。だが、彼は退職前に、危険を冒してでも、健全な県政のために発言したのである。「危険を冒して」となること自体がおかしいのだが。

 こんな職員が書いた告発文を、斎藤知事は「嘘八百」「公務員として失格」と切り捨て、自分に対することを告発された園調査対象者である「自分≒知事」が公益通報ではないと決めつけ、逆に副知事らと一緒になって「犯人探し」を市退職させず処分した。そして職員2人が自殺する事態にまでなっている。許されない犯罪的行為である。

 

  • 副知事、県が一体となって、内部告発をつぶす動きと分かってきた

ありもしないことを縷々並べた内容を作ったことを本人も認めている。不満があるからといって、業務時間中なのに、嘘八百含めて文章作って流すという行為は公務員として失格」「核心部分が事実ではない」と知事や県は言い、処分までしたが、その後徐々に、原田剛治・産業労働部長が企業から商品の供与を受けたなど、Aさんの訴えには事実があることが分かってきた。「ありもしないことを縷々並べた内容を作ったことを本人も認めている。」と言うのは完全なでっち上げだった。

たとえば、斎藤知事が23年8月視察で訪れた県内の家電メーカーから、県幹部がコーヒーメーカーを県産業労働部長が受け取っていたことが判明した(4月16日)。出張先で車を降りて20メートル歩かされ職員を怒鳴り散らしたなど、複数のパワハラ的な言動も確認されている[6]

県のワインを飲みたいといったり、家具を欲しいと言ってもらったりもしていた。家にもってかえったワインは飲んだ、カニも食べたということだが、そのワインなどをSNSなどで宣伝することはしていなかった。

また告発文書に出てくる、片山安孝副知事にも責任がある。彼は2021年から現職。知事の側近として、主要施策を議会側と調整する重要な役割を担ってきて、今回の処分に至ったAさんへの「調査」も行った中心人物で、百条委の設置を見送るよう、最大会派の自民に働きかけるなど、知事を守り事を丸く収めよう(公益通つぶしをしよう)と奔走した人物である。内部通報者を特定する調査はしてはならないのに、片山副知事は告発者の「犯人探し」をし、Aさんの職場に出向いてパソコンを押収し、その中に告発文作成の証拠が残っていたと言って、その情報を議員にも渡し、3月25日の「調査」で、この内部通報をしたのはお前だろと人事の脅し迄使って迫って認めさせるようなことをした。このこと自体が違法行為である。

今回、7月に辞職したが、その積極的な内部通報者攻撃の責任が追求されるべき人物である[7]。「知事も辞職するよう進言したが、断られた。県政がここまで混乱している以上、誰かが責任を取らないといけない」と理由を語り、まるで知事をいさめたかのように言い、自分は悪くないが責任をとると言ってヒーローの様に美談的に語っていたが、実は自分も告発されており、片山氏が斎藤知事の政治資金パーティー券販売で商工会議所などに圧力をかけたなどとする3項目の疑惑が記されていたのである。「斎藤知事のコミュニケーション力不足」を指摘したりもしたが、コミュニケーション不足ではなく、不正の隠蔽なので、まったく本質からかけ離れている。

つまり斎藤知事と一緒になって諸問題を起こしていた人物であり、辞職は「責任を取ったのではなくただ逃げだしただけ」なのである。片山氏は辞職で退職金1200万円(減額されたもの)をうけとっている。辞職会見の時に、知事を支えきれなかったと泣いていたが、自分の内部通報者つぶしという犯罪的な行為加担に反省や謝罪を示すこともなく逃げだしただけである。泣くのは自己憐憫で愚かしい。責任追求を止めてはならない。

副知事は、会見で以下の様に語ったが、問題の本質に目を向けておらず、自分の責任も正直に述べていない。

知事のパワハラについては、「 知事のパワハラについて、確定的なことは聞いていない。だが、厳しい叱責はあったとは報告を受けている。」「確定的なことは聞いていないので、パワハラはないということだと思っている。」とあくまでパワハラと認識することから逃げていた。こういう姿勢だから知事のパワハラを容認・放置していたのである。

また自殺した元局長Aさんにたいして聞かれて、「私の部下でもあり、適切に業務を行ってくれていたと思う。局長にもなっており、業務は一定評価している。」といいつつ、Aさんには、3月中に2回あており、1回は事情聴取、もう1回は解職の通告。また新年度になってからは5月7日に懲戒処分の通達をする時に会ったと言い、自分が中心的に彼を追い詰めたことの経緯は認めたが、自分は適切なことをしただけと責任を認めない発言をした。

記者から「元局長は途中から公益通報をした。人事課の調査を止め、公益通報の調査を先行させる方法もあったと思うが、どう考えるか」と聞かれ、「制度が違う中で動いていくということなので、適正であったのではないかと考えている。」と述べた。記者の追及も甘いし、答えへのさらなる追求もないお粗末なメディアであった。

また自殺したのは、単に証人になることがプレッシャーだったのではなく知事側の職員や維新議員などが個人的プライバシーも公表するぞと脅したことが原因なのに、片山副知事は、「何十年ぶりに設置されるということで、やはり証人喚問ということになれば、一般職員には大きな負担になることは容易に想像される。責任は私どもにあると思う。」と一般化してごまかした。

***

なお、この副知事がかかわっていた仕事はかなり利権的なところで、そうした体制もAさんが指摘した諸問題の背景にはあるといえる。

副知事は、兵庫県の信用保証協会の理事で、それは阪神オリックス優勝パレードキックバック問題でもかかわっていた。銀行に対する強力な権限を持つ役職で、企業は言いなりになるという。

このポストは兵庫だけでなく全国で、実は、何十年にわたって副知事らの「天下り」の指定席だという。全国51協会のトップの出身を調べると、50協会は都道府県や市からの天下りだった。民間の経営経験が乏しい自治体出身者が選定過程も不透明なまま就任している。大阪と兵庫は1948年の設立以来76年間、20代以上にわたって府県の元幹部がこの職についている。

トップの報酬は東京が月105万円、大阪が月85万円。協会は収入源として、中小企業から債務保証の対価として受け取る保証料のほか、政府や自治体から財政支援も受けている。天下り問題も絡まって、副知事の責任は大きい。

 

 

[1]公益通報者保護法」(2022年施行の改正法)で、受付窓口の整備が義務付けられたほか、調査担当者に守秘義務が課された。解雇や降格、犯人捜しといった通報者への不利益な扱いも禁じられた。自治体などには告発者捜しを防ぐための措置を講じることを義務づけた。だが、こうした「報復」に罰則は設けられていない。公益通報者保護法が適用されるのは、刑事罰、過料に当たる違法行為に通報者自らが告発で言及した場合に限られるという問題がある。

[2] Aさんが、4月1日に発表した反論文書では、「私と人事当局とのやり取りは、(中略)26日に電話で『告発文は自分で作成した。他に関係者はいない』と話したのみ」と記している。

[3] 百条委設置に反対したのは、維新と公明党系の会派、および一部の知事を支援する自民の議員であった。

[4]  4月中旬には県産業労働部長が議会答弁で、県内企業からコーヒーメーカーやトースターなど6万円相当の商品を受け取ったと明かし謝罪した。

地方自治法第100条に基づいて、地方議会が設置することができる特別委員会で、自治体の長や議員の疑惑、不祥事の真相を究明するのが目的で開催される。通常の委員会より強い調査権限を持ち、調査対象の関係者に出頭を求めて聞き取りをしたり、証拠や記録の提出を要求したりできる。関係者が虚偽の証言をした場合は5年以下の禁錮刑、正当な理由がないのに証言を拒否した場合などは6カ月以下の禁錮刑や10万円以下の罰金を科すことができると定められている。

[5]

[6] 20メートルほど手前で公用車を降りて歩かされただけで出迎えた職員・関係者を怒鳴り散らし、その後は一言も口を利かなかった、知事がさまざまな報告を受けるレクチャーの際も、気に入らないことがあると机をたたいて激怒、少し前では、知事の意を受けた秘書課の強い要求により(イベント会場で)一般用の授乳室を知事専用の個室に一時的に切り替えたなど。

[7] 片山副知事は、辞職を発表した会見で、「百条委から出頭要請があった場合はどうするか」と問われて、「出廷については法定義務があると認識しており、当然応じていく」と述べたが、辞職後もこの約束を守るか見ていく必要がある。また副知事事自身の三つの疑惑について以下の様に否定した。

「公益財団法人の役員人事について。(前)理事長(24年3月に死去)と面談したのは事実だが、日時はお亡くなりになる前日ではなく、6日前。(前)理事長を圧迫した認識はない。」「 次に(知事の)政治資金パーティーについて。2023年7月の知事の政治団体のパーティーでパーティー券の販売を手伝ったのは事実。特別職であり法的に問題はない。その際に商工会議所や商工会に圧力をかけて購入させた事実はなく、一般の職員を関与させた事実もない。兵庫県信用保証協会理事長の人事については、本人の能力や経歴に基づき適材適所の観点から総合的な判断をした。」「三つ目の阪神オリックスの優勝パレード(23年)について。企業からの寄付を募る際、信用金庫への依頼は私が行ったが、県の補助金キックバックするようにと言及したことはない。信用金庫への補助金は前年比50%減となっている。」

 

プエルトリコ人をごみと呼んだトランプ支持者 その顛末

  • トランプの集会でコメディアン(トニー・ヒンチクリフ氏)が差別的言辞を発した。「君たちが知っているかどうか分からないけど、海の真ん中に文字通りゴミの浮島があるんだ。プエルトリコって言うんだと思う。」。あた、トニー氏は他にも「ラテン系の人は子どもを作るのが好き」など、 ヒスパニック系の人々に対する差別的発言を行った。この発言があった集会に対してトランプは 「あの集会はまるで愛のフェスティバルのようだった。それに参加できて光栄だった」と発言。
  • ジェニファー・ロペス、歌手ルイス・フォンシらが相次いで反発したが、トランプは集会でのこの発言に批判も謝罪も撤回もしていない[1]。コメディアンでポッドキャスターのヒンチクリフは、彼を批判する人たちが「ユーモアを理解していない」とXで反論した。
  •  
  • バイデンが批判したことに関するメディアの歪み
  • バイデンがいったのは、プエルトリコ人をごみといって差別すること(それを言ったコメディアン、それを支持する人たち)を批判する意図で、「私の知っているプエルトリコ人、少なくとも私の地元、デラウエア州プエルトリコ人は善良で誇り高い人々です。本当の“浮かんでいるごみ”というのは、彼(差別発言をしたトランプサポーターであるコメディアン)の発言のほうです。悪者扱いなど許せません。アメリカ人のやることではありません」といった。
  • 文脈全体をみればそういう意味であるのは明らかである。ただ、部分だけを切り取ればトランプ支持者たち」とうけとられかれない表現ではあった。

トランプ支持者全体をゴミだとは言っていないのに、トランプは意図的に「トランプ支持者をゴミと呼んだ」と煽っているだけなのである。トランプはごみ収集車に乗ってごみ収集者の服装で、「トランプ支持者をごみと思っているのが彼らの本音だ」と選挙戦で利用しているのである。

 

私は、人権の視点を基本とすべきと思うので、プエルトリコ人をゴミだというような主張やそれを言う人、およびその主張を支持する人(ジョークだといって笑う人)は酷いと思うので、「プエルトリコ人をごみと言っている、そういう人こそゴミだ」という批判はあってもいいと思う。

だが浅い報道は、ただ、両者の対立とだけ報道(どっちもどっちだ)するので、日本でも米国でもそう理解する人が多くいる状況である[2]

トランプ自身も、ヘイリー前サイスカロライナ州知事からトランプの首魁での人種発言や女性蔑視の発言で女性有権者から見限られる恐れがあると警告している状況で、自分は無茶苦茶な人権侵害の発言やハリスを支持する人をこき下ろしながらのこの態度である。

 

[1] トランプの陣営は、批判を受けた後の声明で「プエルトリコに関する発言は、トランプ大統領や選挙陣営の意見を反映するものではない」と表明したが、トランプ自身は差別発言批判はしないまま。

[2] 印象は翻訳の仕方にもよるのであって、「私が目にする唯一のごみはトランプの支持者らだ。トランプがラテン系を悪魔のように扱うのは受け入れ難い」と述べた、というような報道があった。日本語への翻訳者の力量や思想によって訳し方は変わる。発言を「supporter’s」ととるか「supporters」ととるかで意味は違ってくる。日本では低レベルの応酬だとまたまた中立主義報道ばかりであった。

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以下、ほんの一部だが、トランプ側の問題発言

 

  • トランプ氏支持者ローラ・ルーマー氏(120万人のフォロワー)が、ハリス氏が勝てば「ホワイトハウスがカレーの匂いになる」「ホワイトハウスの演説はコールセンター経由で進められ、アメリカ国民は誰も理解できないような顧客満足度調査を通してしか、演説に対する意見を伝えられなくなるだろう」と発言。イスラム教徒を「野蛮人」と呼び、2019年のニュージーランド・クライストチャージでのモスク銃乱射事件について「どうでもいい」と述べ、移民の死亡事故を喜ぶコメントを投稿したこともある。
  •  スプリングフィールド市を巡ってSNSで、「住民のペットやアヒルなどの野生動物がハイチ人に食べられている」という真偽不明の情報が拡散し、バンス上院議員も「この国にいるはずのない人々によってペットがさらわれ、食べられているという報告がある」と投稿し、そのごトランプがテレビ討論で之を繰り返した。たABCニュースの司会者が当局に事実確認し、根拠はないと訂正を求めても、トランプ氏は「テレビに出た住民が犬を連れ去られ、食われたと言っていた」と言い張った。討論会後にはスプリングフィールド市に爆破予告が相次ぎ、市庁舎や学校が閉鎖を余儀なくされた。その後のユーガブ社の世論調査によると、、トランプ支持者の計52%が「間違いなく本当」「おそらく本当」と回答した。
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  • 9月のペンシルベニア州での2時間弱の演説で10回余り、不法移民の一部は「凶悪」だと繰り返し、児童虐待者や麻薬の密売人、女性の人身取引に関わっていると発言。どぎつい表現で何度も不法移民をののしった。
  • アメリカのトランプ前大統領は激戦州での9月の演説でハリス副大統領について「生まれながらの精神障がい者だ」「精神障がい者でなければこのようなことが起こることを許すはずがない」などと述べた。「ジョー・バイデンは精神障がい者となった。ハリスは生まれつきそうだった。彼女は生まれつきなんだ」 「ハリス氏が私たちの国境を消し去った」などと発言。
  •  
  •  大統領選終盤になって、トランプ氏は、米国の国境全体を越えて移民が押し寄せ、合衆国市民を大量に虐殺しつつあるという根拠のない主張を展開。「この連中はあなたののどを切り裂いて、翌朝にはそのことを考えようともしない最高レベルの殺人者たちだ。若い女の子をつかまえて彼女の両親の前で切り刻む」と語った。移民を「殺人者」「テロリスト」などと呼んでいたが、その後は、米国の女性が移民による犯罪の犠牲者になっていると根拠のない説明をする上で、「どう猛」「捕食者」などとおぞましい表現を用いるところまでいった。ある米国の小さな町を「荒れ果てた難民キャンプ」ともいった。不法移民と合法移民の境目をあいまいにし、移民が合衆国市民をレイプや略奪、盗み、不法占拠、殺害の対象にしようとしていると訴え、彼らは「あなたの台所に侵入してのどをかき切る」と断言したりしている。
  • 共和党副大統領候補のバンス氏は、民主党支持者が多い巨大IT企業を敵視し、AIが生成する文章や画像が「左派的だ」と訴えた。 生成AIを巡っては、対話型24種類を政治的立場の判定テストにかけたところ、中道左派の傾向があったとの研究もあって、バンス氏は6月、グーグルのAIが女性のローマ教皇や黒人のバイキングなど「多様性」を取り入れ歴史的事実と異なる画像を生成したと指摘し、AIはウオーク(意識高い系)の思想に沿っていると批判した。
  • トランプなどの発言を受けて、共和党議員クレイ・ヒギンズ氏がXに「大爆笑。このハイチ人たちは野蛮だ。ペットを食べたり、ブードゥー教を信じたりしている。西半球で最もひどい国で、カルトやふざけたギャングもいる」「こういう悪党は全員、1月20日(次期大統領の就任式)までに頭を冷やして国から出て行け」と投稿した。批判が出たが、共和党のマイク・ジョンソン下院議長は「親しい友人」であるヒギンズ氏を擁護した。
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  • 五―ロン・マスク氏は、24年9月29日、「トランプが勝利しなければ、今回が最後の選挙になるということをほとんどのアメリカ人は理解していない」とXに投稿。移民から民主主義を守ることができるのは「トランプ氏だけだ」と主張。 マスク氏は、民主党政権は「選挙結果を変えるために、移民を激戦州に送り込んで市民権を与えている」とも書き込んだ。
  •  フロリダ州などで大型ハリケーン「ヘリーン」や「ミルトン」によって多くの犠牲者が出たが、これに関して、トランプ前大統領やイーロン・マスク氏らが、「カマラ(ハリス氏)はFEMAの資金をすべて、何十億ドルも、不法移民のための住宅に使った」「FEMAは予算を使い果たし、米国人の命を救う代わりに不法入国者を送り込んだ」と根拠なく語り、災害支援に関する偽情報を広めた。
  • トランプは、ハリス氏の演説に集まった群衆の画像が捏造されたものだとの陰謀論を唱えた
  • 11月5日の選挙で勝利すれば「腐敗した」選挙管理委員会の職員を投獄するとの考えを示した

 

 

 

NHK「クローズアップ現代 アメリカ Z世代の選択」の問題点

  • 「トランプもハリスも攻撃ばかりで投票したくない」「バイデン・ハリスのガザ政策に失望する若者たち」というNHK番組・三牧氏のスタンスこそが問題
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NHKクローズアップ現代 アメリカ Z世代の選択」【24年10月30日放送】を見た。Z世代の4割が無党派で、選挙結果に大きな影響を及ぼすという特集で、民主党支持の若い支持者も、ガザ政策でハリスに失望しているとか言っているし、投票先を決めていない無党派・中間層の若者も、どっちもどっちだ、お互い対立ばかししていて辟易するとか言ってて「投票しない」という選択をするなどとと言っていた。若者に関心を持ってもらおうと、人気あるインフルエンサーがトランプをinterviewして、それをみてトランプに親しみを感じて投票するとか言っていて、レベルが低すぎる感じがあふれていた。

 

それがある面の現実だというのは分かるが、番組全体としても、コメンテーターとして出ている三牧聖子(同志社大学教員) 氏の発言を聞いていても、ハリスがバイデン政権のどこを変えるのか不明で支持率が低下しているとか、米国メディアでいっているような浅い情報ばかりでいわゆる中立主義で、Z世代はこう思っているとか断片的にいうだけで、トランプ支持者的状況の問題や構造を深く分析する視点がなかった。新しい視点がなく、情報の寄せ集めでしかなかった。

特に白人男性が「自分たちは差別されている。マイノリティの特別扱いにトランプ氏が反対しているので支持する」という話を示して、まるで、トランプ側にもいい面があるかのように示していた。

これは非常に主流秩序に沿って、視聴者からも政治家からも批判されない番組づくりである。

だがこの講義では、私は自分の見解を示しすし、群集心理の問題や第9回で詳しく示す愛国主義等の観点から、明確にトランプの方に多くの問題があり、そうであるにもかかわらず支持率が拮抗していることをどう考えるかのつっこんだ分析や評価が必要なのであるが、それがなかった。

この番組の問題点の典型は、Z世代でもガザの人権問題や移民政策に怒ってバイデン・民主党に失望しているのは一部であるのに、まるで多くがそうであるかのように政治意識が高いかのように言っている。Z世代は人権に敏感で民主党に批判的になり、ハリスに投票しないといって、「どちらの党もダメだ、ハリスもトランプ批判ばかりだと批判しているという。これではハリス批判に加担していて、トランプの問題が相対的に消されてしまっている。寛容さをなくしている原因はどっちにも同程度にあるのではなく、主としてトランプ側にあることを隠している。しかも、若者で「どっちにも投票しない」というのは、あまりにも幼くナイーブで、人権意識が高くて本当にガザのこと、イスラエル政策のこと、移民の事、貧乏人の事、LGBTQや女性のことを考えるなら、トランプを勝たしてはいけないので、まともな認識能力がある若者は、「完全にイスラエル・ネタニヤフ政権支持」のトランプを勝たせないないためにも、全く不十分でも米国政治の中ではハリスに投票する方がましと考えるのである。

そこを隠しているところが、今回の番組の最大の欠点であった。

しかも矛盾だらけであるのは、一方では、Z世代の若者を取材して、トランプが強そう、楽しそう、親しみある、自分が経済的に苦しいからとトランプを支持すると言う若者も多いというのだ。ここでのZ世代の者たちは、ガザの状況とか戦争とか、移民問題に敏感なのではなく逆なのである。

それなのに三牧氏は何度も「Z世代は人権、戦争に敏感」と言ってひとくくりに扱っている。矛盾したまま、明確な状況分析を示さず、結論はどっちも寛容ではないから、対立せず寛容になるべきだという、「どっちもどっち論」で終わっている。

私ももちろん、第9回で示すように、完全にバイデン政権のイスラエル擁護(ウクライナ武器供与)などには怒りの気持ちが十分にあるが、米国の現実政治のことをしているので、トランプというモンスターでありファシスト的な人物に勝たせないためには、不十分でも、民主党・ハリスを勝たせるのがベターと判断する。そこを明確にしないで、トランプにも良いところがあるかのような印象をもたらす一方、ハリス側にも寛容さがない、ガザ支援していない、と言って、中立主義で終わる番組作りは、まさに、事なかれ主義であり、日本のメディアの主流秩序従属的なダメさ、学者のダメさをあらわしていたと思う。

人権に敏感なら、「どっちもダメだから投票しない」ではなく、「明確に人権を軽視し、反移民がひどく、ガザ攻撃するイスラエルを(バイデン政権以上に)強く強く支持するトランプ」を批判し、勝たせないべきなのである。そこが分かっていない若者を批判すべきなのである。そうした明確なことを言わない、ぬるい番組であった。

トランプを支持したり、「投票にいかない」という“幼な過ぎる”若者のダメなレベルに寄り添うだけの、表面的な認識であった。大人としての、専門家としての学識と経験に基づく現実主義的な深い判断からの分析と提言がなかった。何もかもが付け焼刃で浅すぎる。

なお、私は第3回講義でも示したように、過剰な対立による批判合戦を肯定しているわけではなく、まさに、異なるものが耳を傾け合い、共存し、議論はすべきとおもっていおり、相手をつぶすような暴力を否定する「ダイバーシティ=平非暴力主義・和共存」路線者であり、慈悲や寛容の精神こそがスピリチュアリティとおもっている。だがそのためには、ブラックバスの様に他の魚を食う存在、つまり差別する自由はない、暴力で相手をつぶしてはならないと明確にすべきで、そうした点が分かっていない「暴力肯定主義者トランプ」を明確に批判しないで、どっちもどっちで終わらせるのは、ダイバーシティに反すると考える。番組にはそうした思想も主張も全くなかった。

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なお、私は、上記「NHK・クローズアップ現代」での三牧氏のスタンス・発言を批判したが、三牧氏が他のところでまともな発言をしているのを見たことがあるし、Z世代の中の人権意識が高い若者(ガザに悲劇に怒りを持って政府を批判する者たち)に期待している面には共感している。彼女の、「例外主義(exceptionalism)」的な観念に囚われず、新たなアイデンティティや世界との関わり方を模索する多様性の世代に期待する、イスラエル支持の姿勢を捨ててパスチナ人の命と権利を擁護すべきというスタンスには賛同する。

 

[1] 「例外主義」とは、アメリカの比類のないパワーや道義性を誇り、アメリカを諸国家を導く存在とみなす観念。

国民民主党の政策は時代に逆行:家族単位維持

ジェンダー論の講義録の一部 紹介

国民民主党の政策は家族単位維持で、全くダメなのに、メディアでは華族単位から個人単位への意義を理解していない人ばかりだから、これを正しく批判していない。35年間お二帆の停滞の典型である。

    • 24年衆院選の経済政策などの問題点

    選挙はとりあえず勝たねばならないので、各政党・各候補は、短期的に人気とりの話をする。騙す人もいるが、本当に短期的な視点しか持ててないから本気で、信じて、短期的なことを言っている議員もいる。長期的に本当に諸問題を総合的(持続可能的)に解決するビジョンを持てずに、付け焼刃で語る人が多いように思う。典型が、財政赤字問題にはほとんどの候補・政党が、具体策を言わないし、増税も言わない。従来からの日本社会の枠内でしか考えられていないんだなと感じる。深い見識のなさが出ている[1]。故人単位型の北欧のような社会民主主義にしていく展望はどの政党も言っていない。

    どの政党も、賃上げするとか、減税するとか、成長させるとか、物価抑制するとか、いい加減なことばかり言っている。いい加減というのは、本当にそれを実現するのはむつかしいので、具体化が大事であるのに、そこがあいまいだからである。この35年の延長ではだめなのに、そこが言えていない。とくに、財政の赤字の激増状況をどう止めるか、将来どう解決するかは分からないまま、まだバラマキを続けるというのであるから、私にはやはり、短期視点で、従来の政治の延長で、ますます日本社会はだめになっていくといわざるを得ない。

    労働運動も含めて大幅賃上げ、最低賃金の大幅アップはいるが、それを払えない組織はつぶれる・倒産するようにしていく展望の中で、価格転嫁、下請け構造での上位企業に、賃上げできるだけの価格で対応するように、すべてを変えていかねばならない。上位企業が買いたたくことができないように透明化し、下請けいじめする違反企業は摘発しなければならない。

    苦しい暮らしへの支援という短期的な視点のみでのばらまきは、解決にはならず、引き伸ばしに過ぎなく矛盾が拡大していくだけである。

    少なくとも、安倍政権、そしてコロナ以降膨張した財政規模をとにかく毎年縮小させ、大企業減税など多くの減税策をやめ、企業の内部留保に時限的に課税し、軍事費も大幅に削減し(自衛隊を災害救助隊にして、規模は今の防衛費の半分のGDP比0・5%で十分)、法人税所得税相続税も消費税も上げていく必要がある。日本経済は大きく失速するが、数十年かけてそれをしていくしかない。詰まり、私の展望では、いい解決策はない。経済は失速し、失業者は増え、消費は伸びず、倒産企業が続出する。だがそこの中で、積極的市場政策を行い、失業者には教育訓練して再就職支援するとか生活保護で援助するなどなんとか乗り切って行くしかないと思う。一言でいえば、伊田には、みなが幸せになる解決策は思い浮かばないのである。

    それぐらい厳しい状況である。少子高齢化も含め、中・長期の展望で本気で国全体の持続可能性計画せねばならないのに、誰も言えていない。それなのに、石破首相は「2023年度を上回る大きな補正予算を成立させたい」と訴えており、25年度も大きな財政を続ける模様である。いま、一時的に税収も伸びているのに、大幅に国債発行し利払いもあるので、赤字は増し続けている。まったく財政問題に展望はない。アベノミクスは大きな責任を負っているが、今だ、自民党はそこから脱却していない(記入緩和は続け、赤字国債依存のまま)。2%の物価上昇を目指していたのに、選挙では、物価高対策を言う始末である。異常な低金利だが、すこしでも正常に戻していけば、利上げ局面に入り国債の利払いは増え、財政圧迫要因が増大する。だから高市氏など安倍派はとにかくアベノミクス的政策(積極財政)を続けるということしかできない。日本経済はアベノミクスによる超低金利により、財源を国債発行に依存した積極財政が慢性化し、円安の影響を受けた物価の高騰で暮らしは打撃を受け続けるが、賃上げは少しで行き詰まっている。もっとも無責任な政策である。国民の側に、対案のビジョンがないので、国会議員の浅い言葉に騙されるだけで、国全体で“解決できないまま浮遊”していくと予想せざるを得ない状況である。

     

    伊田がダメと思う主張

    (何の本当の解決の具体策も示さず、以下のような過去と同じ主張をして)「失われた30年を終わらせる」「経済を活性化させ日本を強くする」

    電気・ガス料金、ガソリンなど燃料費への支援(税金投入による負担軽減)を続ける

    物価高騰の影響を受ける事業者や低所得者、地方などに補助金バラマキ

    低所得者世帯を下支えするための給付金による支援

    「経済あっての財政」の考えで、デフレ脱却最優先の経済・財政運営

    食料の自給率を高めるため、農家への新たな直接支払制度

    成長のための税制を目指し、消費税や所得税法人税の減税を行う。
    5年から6以内に全国加重平均で時給1500円の達成を目指す(遅すぎるし本気度が感じられない)→ いうなら全国一律の最低賃金制にして毎年100円以上のアップを10年続けるというようなものにすべき。

    消費税の廃止を目指し、当面、緊急に税率を5%に引き下げる。
    消費税の納税額を正確に把握するための「インボイス制度」を廃止する。

    所得税の負担を軽減するため、基礎控除を拡充し、年少扶養控除を復活させる。
    半導体、蓄電池、AIなど成長分野への投資減税を行う。

    季節ごとに10万円の「インフレ対策給付金」を届けるとともに、冷暖房費が大幅に増える真夏や真冬に暑さ・寒さを乗り切るための緊急給付も行う。
    環境対策として、エネルギーバランスの一部として原発推進を進める。

    、ライマリーバランス=基礎的財政収支の黒字化目標を撤回し、積極財政による経済成長を実現する。
    中小企業を支える政策に転換する。

    岸田政権が「5年で43兆円」と総額(GDP比2%水準を目指す)を決めた整備計画の推進、毎年の防衛費拡大。

    、所得・住民税の定額減税

    揮発油税などのトリガー条項について一時的に凍結を解除し、原油価格高騰時には確実に発動できるようにする、発動により減収する地方税は国が補塡

    「給付付き税額控除」の導入

    5兆円程度の「教育国債」を発行し、子育て予算と教育・科学技術予算を倍増する。

    103万円の壁を178万円にあげる

     

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    • 24年衆院選で「人気があった政策」の問題

    この講義は政治論そのものではないが、ジェンダーダイバーシティにかかわる政策については勧考えていこうとしているので、その観点で、24年秋の衆院選で、躍進し、「政策が若者にも評価されたといわれている国民民主党の政策」について、それが家族単位の発想の矛盾繰り延べの政策であるということを見ておきたい。

     

    【国民民主党ジェンダー関係の政策】

    政治の役割は「国のふところ」を豊かにすることではなく、「国民のふところ」を豊かにすること。

    国民民主党は、賃上げやインフレ、円安で増えた国の税収を減税や社会保険料の軽減、生活費の引き下げで国民のみなさんに還元し、手取りを増やします。

    社会保険料の軽減生活費の引き下げで、みんなの手取りを増やす。

    減税:消費税を5%に減税、所得税減税

    基礎控除等を103万円→178万円に拡大
    年少扶養控除を復活

    社会保険料の軽減:負担能力に応じた窓口負担

    公費投入増による後期高齢者医療制度に関する現役世代の負担軽減

    家計支援:トリガー条項の凍結解除によるガソリン代負担軽減、再エネ賦課金の徴収停止による電気代負担軽減、子ども・子育て支援若者支援、高校までの教育無償化、給食費と修学旅行費を無償化、所得制限撤廃、奨学金債務の負担軽減(教員等は全額免除

    その他にも…:年収の壁対策、年金の最低保障機能強化、就職氷河期対策

     

    ***

  • 以上のような政策は、基本、減税、社会保険料負担も減らす、その他も、税金を使ってのばらまき政策である。これは短期的にはおカネがもらえたり、負担が減り、個人の所得の点で得」だからうれしいだろう。だが財源の話がない。世界一の巨額の財政赤字で毎年累積赤字は増え続け、プライマリーバランスだけでも黒字化がむつかしいのに、累積した国債の利払い(利子)と償還で非常に財政が苦しい中、さらに安易にばらまくのは無責任な政策というべきである。103万円岡部を178万円まで上げるというのは、税金を払わくてすむ人をを増やし、控除を増やすので全体で8兆円規模の減税である。安易な人気とりの政策である。

    この政党だけの問題でなく、どの政党も含めて、明確に、新自由主義でないならどういう経済システムにするのかという点で、「税金を多く集めて再分配する個人単位型の社会民主主義」と言わない、そういう大きなビジョンがないから、この35年間の自民党政治「市場原理温存での、国債依存によるバラマキ、家族単位維持」と同じことを、他の政党も含め言い続けているのである。

    上記の政策――礎控除等を103万円を178万円に拡大、年少扶養控除復活税や社会保障での「年収の壁」対策など――は、ことごとく『家族を単位』にしたままの政策である。女性の経済的な自立は遠のく。まったくジェンダー平等・ダイバーシティへの見識がない政策と言える。

     

     

     

    [1] とはいうものの、私・伊田のような「総合的な根本的な社会システム変更、解決策」を言っても選挙では勝てないし、他の政治家も誰も味方になってくれないし、もし私が権力をもてても、政策改革を実際に進めれば、痛みも多いため、大きな抵抗運動が起こり、私はすぐに失脚するであろう。つまり私には政治的な突破力・実行力はない。しかし誰か、現実的な力を持ちつつも、こうした本格的改革のビジョンで日本社会を改革していかねば、日本はこのまま衰退していき、ひどい格差社会のまま、暗黒社会になっていくであろう。

     

     

 

 

追記: 最初、国民新党と書いていたが、国民民主党の間違いであった。また一部昔の国民新党の政策も書いていたのでそこは削除した。