読売新聞がついに権力の謀略の道具に成り下がる
小説・映画・ドラマなどで腐敗した権力はしばしば敵対勢力を陥れようとしてでっち上げたことで「敵」を追い落とす。フレームアップ、謀略ってやつだ。
それに近いものとして、何かまずいことを言う敵(A)が出てきたとき、なんとかそいつを黙らそうとか追い落とそう、その人物や証言の信ぴょう性を落とそう、論点を変えよう、弱みをにっぎって黙らせよう(口封じ)としてAの身辺調査をして何か攻撃材料がないかをさがす。小さなことでもいいし時にはでっち上げもあるが、時には「たたけば出てきたほこり」みたいなことがある。
何か犯罪歴があるとか、不倫があるとか、性的なこと(性的アイデンティティ、性指向とか)、女性・男性関係、お金にまつわる弱み、税金のごまかし、交通違反・交通事故、傷害事件、離婚とか隠し子とか、家族の秘密情報、酒の失敗、経歴詐称とか、などなどなんでも「世間にばらされたら困るようなこと」を探す。
そしてそれを流す。あるいは流すぞといって脅して黙らせる。
「Aはこんなに信用ならないやつだ」という情報を流す。酷い場合は些末な違反で逮捕する(別件逮捕)。(べつに起訴しなくてもいいので、世間は逮捕されただけで「何か悪いことした」と思うので)
そうしてイメージ、信用を落としたり、論点をそらす。
探してもその材料がないならでっちあげることさえある。
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さて、今回、加計学園問題で、なんとメジャーメディアであるはずの読売新聞が、この手の謀略的なことに加担した。恥ずべきことだ。
「加計学園」をめぐり「総理のご意向」などと記した文書が「本物」であると証言した前川喜平・文科前事務次官に対する個人攻撃を行った。前川氏をめぐって、読売新聞が5月22日の朝刊で「在職中に出会い系バー通いをしていた」と暴露する記事をスクープとして報じた。
むかしのことを今頃載せた。
(前川氏は行ったことは事実と認めた上で「女性の貧困について、ある意味実地の視察調査の意味合いがあった」と釈明した。)
すでに退官した官僚の過去(2016年秋に注意を受けていた)の私的な行いについて、しかも法的に違法ではないこと(買春の証拠は全くなし、逮捕に至っていないことで、仕事の後の夜の時間に行っていた)で、大々的に個人名を出してかなり大きなスペースをとって、まるで買春をしていたかのような書きぶりで全国紙の社会面で今頃報じるというのは異例中の異例。
過去、こんな記事はなかった。官僚の誰々が、逮捕もされず、ただいかがわしい店に行っていたというだけの記事を週刊誌でもない「読売新聞」が大々的に報じるのは完全に異常だ。
加計学園関係の情報リーク者(前川)への攻撃ということがあからさまだった。実際、この記事が出て、世間では、「前川氏が文書のネタ元で、それが理由で潰されたのでは」と指摘する声が出ていた。
その見出しも、「前川・前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」(新聞)
「辞任の前川・前文科次官、出会い系バーに出入り」(ネット記事)
と、個人攻撃があからさまなもの。
記事内容でも
「在職中、売春や援助交際の交渉の場になっている東京都新宿区歌舞伎町の出会い系バーに、頻繁に出入りしていた」
「教育行政のトップとして不適切な行動」
「同店では・・・女性らは、「割り切り」と称して、売春や援助交際を男性客に持ちかけることが多い。報酬が折り合えば店を出て、ホテルやレンタルルームに向かうこともある。」
等と書き、識者のコメントでも、彼を批判するようなものを載せている。まるで買春をしていたかのような印象を植え付ける記事だ。あからさまな個人攻撃の記事だ。
名誉棄損の危険あるような記事。まともなデスクならこんな記事を持ってきた記者に「こんな記事、今ごろ載せられるか!」といって没にするようなもの。だが載ったということは政治判断で読売新聞社をあげて載せることにしたということ。
この記事を書いたのも大手新聞では読売新聞だけ。そもそも、個人がいかがわしい店に行ったというのは、大々的に取り上げる材料ではない。
つまり、これはスクープ記事でも、社会的意義のある記事でもなく、ただ官邸の不正・スキャンダルを覆い隠すために「情報をリークした前川を黙らせようとした」「社会的に抹殺してこの情報提供者の信ぴょう性を落とし、加計学園問題にふたをしようとした」ということに過ぎない。
読売は、権力チェックどころか逆に、特定政権の御用宣伝紙になった、ということだ。いや、まだそれが「安倍首相の宣伝紙」ということが明確ならましだが、中立公平の大新聞の顔をしてこんなゆがんだ記事を載せたのだから、大本営発表も真っ青の、秘密諜報組織の大衆洗脳の道具になったということだ。
政府のスパイとなって洗脳・情報操作・情報誘導のお先棒を担いだということ。
先に述べたように個人の告発、その効果を減らすために、個人のスキャンダルを社会に流す典型的なリーク手法。三流週刊誌以下になりさがつた。読売は恥を知れ!
読売新聞社員は抗議すべきだ。黙っているとすればまたまた官僚と同じく、この陰謀に加担していることになる。憲法問題で安倍が読売だけに改憲の考えを語り、国会で説明を求められると「読売新聞をよめ」というような、もたれあい。私物化された官邸宣伝紙になりさがった読売新聞。社をあげて総括し、謝罪の上で廃刊すべきレベルの出来事だ。
こんなマスメディアにあるまじき行為を読売新聞はしてしまったのだから、会社内部で大問題にならなかつわたらおかしい。三菱自動車、東芝、オリンパスなどなど、と同じ、自浄作用のない、不正・偽装隠ぺい企業と同じではないか。
権力の脅しと思うか?記者会見で聴かれて「そんな国家とは思いたくない」と前川氏は言った。
前川氏は公平公正な行政ということがゆがめられたと認めた。
前川氏も昨年の段階で抵抗すべきだった。押し切られて子の不正に加担してしまったのだから責任はある。だが彼はこれ以上罪を重ねることを思いとどまった。行政がゆがめられたことを放置できない、嘘を言い続けないといけない状況を放置できない、文書がないとされることが許されなかったという。
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- これに対応しているのが菅官房長官の「天下り問題については、調査に対して問題を隠蔽した事務方の責任者であり、かつ本人も文科省の再就職あっせんに直接関与していたという報告になっている」「当初は責任者として辞意も示さず地位に恋々としがみついていたが、世論の批判に晒され、最終的に辞任された」という前川氏への個人攻撃発言。
「辞意も示さず地位に恋々としがみついていた」というなど、あまりにあからさまだ。
政権がここまで個人を攻撃するのは、この情報を何としても隠蔽したい、この情報を出したものをさらし者にし、黙らせたいという明白な意図の表れだろう。そういう事をしてもいいという自民党の体質の表れだ。文書も実際に存在したことは明白なのに、しらじらしく嘘を言い続けている。そしてこの資料を「怪文書」などと言い続け悪いイメージを貼ろうと必死である。
こんな菅のいいかげんな言葉に対してちゃんと反論して粘るのでなく、一回菅が答えられたら合理的理由説明がなくても矛盾していても黙って聞いている記者会見場の記者たちは権力チェックという牙を抜かれた羊に過ぎない。民主主義国家ではない。
なお菅官房長官は5月25日の記者会見で、前川氏が出会い系バーに出入りしていたことについて問われ、「そうした事実は把握していない」と述べたが、これまた怪しい。昨年の秋にこれはすでに問題になり首相官邸幹部から注意されていたことで、官邸サイド・菅は今回前川氏がその人だとすぐに気付いたはずだ。そのうえでこれをリークするように動いたから、逆に「知らない」と白を切った。幼稚な対応で、まさに自分でリークしたと告白するようなものだ。
またこれは強調すべき点であるが、読売新聞だけの問題でなく、むしろ主体は読売にリークした側、つまり官邸側の口封じ的犯罪的行為だということ。ここはロシアか?!
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この不正にかかわった者たち(官邸関係者、官僚、今治市など)は、国民市民の利益に反することをしているので背任容疑があるといえる。
地検特捜部はこれを起訴しないといけない。地検が動かないなら読売新聞と同じく安倍の機関に成り下がる。
あまりにこの問題があからさまなので、民進党の山井和則国対委員長も、
「前川喜平・前文部科学事務次官の証言に関して、前川氏のスキャンダル的なものが首相官邸からリークされ、口止め、口封じを官邸がしようとしたのではないかという疑惑が出ている。私は背筋が凍るような思いがする。政権に批判的な発言をした、しようとする人間に対しては、政権がスキャンダルを流して、その口を封じようとする。一体、どこの国の話かと。そんな恐ろしい国に今の日本はなっているのか。私は非常に心配で心配でならない。一言で言えば、安倍1強政治の弊害、おごり、ここまで来たのかという心配をしている。そういうことの真相解明のためにもしっかりと、(前川氏の)証人喚問をしていく必要があるのではと思う。」と国会内で記者団に)話した。
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前川氏は、右翼などが犯人探しをし、読売新聞にこうした記事が載ったことから危機を感じて、逆にあちこちで話をし記者会見などもして、問題を社会化して自分がつぶされないように対応しているのだろう
前川氏の証言
「(文書確認できないということについて)大変残念に思った。あったものをなかったことにはできない」
「改めて調査をすれば存在は分かることだと思う」「そんなに難しくない」
条件を満たさないまま獣医学部の新設方針が決まった
「極めて薄弱な根拠の下で規制緩和が行われた」
「疑問感じながら仕事していた」
「(文科省が)負いかねる責任を負わされた」
新設に至るプロセスにおいて「公正公平であるべき行政がゆがめられた」「行政の在り方として問題がある」 「これ以上行政のあり方をゆがめることのないようにしてほしい」
「官邸の最高レベル」については「一番上なら総理、その次なら官房長官なので、どちらかかなと思った」
官僚トップの次官として「筋を通すべきだった」
「加計学園が(新設校に)選ばれる前提で話が進んでいた」
「加計学園ありきだったのか」との質問に、「暗黙の共通理解としてあったのは確か。内閣府でも文科省においても議論している対象は、加計学園のことだという共通認識のもとで仕事している」「口に出して加計学園という言葉を使ったかどうか、そこは使っていない場合が多いと思う」 「現在の文科省は官邸、内閣官房、内閣府といった中枢からの要請について逆らえない状況がある」「政権中枢の力が強まっていることは事実だ」
「文科省職員や大臣は、あるものをないと言わざるを得ない状況に追い込まれている、気の毒だと思う」
「赤信号を青信号にしろ」と迫られたときに「これは赤です。青に見えません」と言い続けるべきだった。やれなかったことはほんとうに忸怩たる思いです。力不足でした。
「黒を白と」
(過去のバー通い情報リークは権力の脅しではないかと聞かれて)「私はそんな国と思いたくないですね」
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わかってきたこと
内閣府から、文科省に首相のことをちらつかせてプレッシャーをかけたのは内閣府の藤原豊審議官。彼は経産省からの出向者で、とにかく官邸の意向を大切にする人。国家戦略特区有識者議員で、特区選定の実力者である竹中平蔵・東洋大教授に可愛がられている人物。
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