「母になる」7 より
二人の母の本音のぶつかり合い。深いところから絞り出す声。片方の言い分で勝負ついたかと思うと、さらなる手が繰り出される、その応酬は見事。《たましい》がみえた瞬間。
あの子ちゃんとしてるでしょ。私が育てたの。しつけたの。あの子がいて一番うれしかったのは、もう誰からも『子供は生まないんですか?』と言われなくなったこと。あの子を手に入れたことで私は初めて自由になれた。
あの子、かわいかったでしょ。私が生んだのよ。私のおなかに10か月いたの。3歳まで育てたの。あなたがあの子を手に入れていた時、私はバッシングされていた。でもそんなことどうでもよかったの。その時思っていたのはただ一つ。どうか生きてますように。私が思っていたのは、どうか生きてますように。それだけよ。母親だから。あの子が生きていることだけを願っていた。母親だからよ。