AV出演強制に対抗する情報
PAPSのわかりやすいチラシ(パンフ)を紹介しておきます。
街中でスカウされ、脅されたり騙されたりして巻き込まれ逃げられなくなるという状況に対して、もっと啓発が大事ですね。
あとに、例の裁判にかかわる記事も載せておきます。「契約だからいいじゃないか、本人が納得しているんだから、金もらってるんだから」、というのがいかに間違っているか、大学の授業でも少し触れるのですが、実態を知らず、主流秩序にとらわれた人は、ひどいことを言ってしまう状況です。
性教育の場でも、対抗する方法、相談することの大事さを伝えていきたいものです。
先日京都での性教協の集まりでもそのことが論じられました。
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パンフ紹介
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AV出演拒否で2460万円請求裁判の女性勝訴 「契約してしまっても諦めないで」
(ウートピ/2015・10・1)
http://wotopi.jp/archives/27417
「AV出演を強要される女性が続出している」。2014年の夏、そんなネット記事が話題になった。執筆者は、人権に強い伊藤和子弁護士。アイドルやタレントにならないかと街中でスカウトされた若い女性が、無制限に事務所の指示に従うというアンフェアな契約を結ばされる。無理やりAVを撮影したうえにギャラも払わず、本人が拒否すると「親にバラすぞ」「多額の違約金が必要になる」と脅す――悪徳プロダクションの実態を暴き、注意喚起した同記事は、Facebookではシェア数が2万5000人にのぼった。
※参考記事:女子大生を騙し強制的にAV出演 性を売る文化が発達する日本の「人身取引」の実態
記事内では出演を拒んだ女性がプロダクションから2460万もの違約金を請求されたという事案が紹介されている。今年6月には同じく伊藤弁護士によって、プロダクションが弁護士を雇い、実際に支払いを求める訴訟を起こしたという続報も伝えられた
(被害続く・AV出演を断った20歳の女性に芸能プロダクションが2460万円の違約金支払いを求め提訴。)。
裁判はどうなったのか。伊藤弁護士ら代理人と、ポルノ・性暴力の被害者を支援する民間団体「PAPS (ポルノ被害と性暴力を考える会)」の世話人・宮本節子さんは9月29日に記者会見を行い、結果と経緯を報告した。
AV出演強要、ギャラ未払い…奴隷のような実態
被害者が「タレント活動ができる」とスカウトをされたのは、高校生時代のことだった。プロダクションは詳しい内容を説明せず、親権者の同意もないまま「営業委託契約」を締結させた。しかし実際はタレント活動ではなく、AVに近いわいせつビデオの撮影に終始していた。製造プロダクションに派遣される形式だったという。
被害者は「辞めたい」と伝えたが、「100万の違約金が発生する」などと脅された。被害者が契約書のコピーを要望しても交付されることはなく、またギャランティも支払われていなかったという。
ついにはAVに出演させられ、新たな契約も結ばされた。その契約書にはアダルトビデオ出演の旨が記されていたが、被害者は既に出演しており、また撮影のショックで疲労困憊状態であったことから、拒否する気力も失われていた。
被害者はその後も「終わりにしたい」と申し出たが、今度は1000万の違約金がかかるとし、「あと9本の撮影を終えれば発生しない」と出演を強要。ここで被害者は支援団体「PAPS」の存在を知って相談を持ちかけ、あらためて出演を拒否、書面での契約解除も求めたが、プロダクション側は弁護士を雇い、2460万の違約金支払いを求める訴訟を起こした。
2460万という請求金額の内訳は、撮影キャンセルに伴う損害が80万、売り込みのために要した経費が400万。大半を占める残りの1980万円は、1本につきプロダクションが得られるはずだった報酬220万円×9本分だという。
被害相談は4年で1件→59件に急増
裁判所は「アダルトビデオへの出演は、出演者である被告の意に反して従事させることが許されない性質のもの」であることなどを理由に訴えを退けた。伊藤弁護士は判決に対し、「違約金がかかると脅して性的業務を強要することは、債務奴隷的な契約であり、女性の人権侵害。このような判決が得られてよかったと思います」「同様に苦しんでいる被害者はたくさんいらっしゃいます。違約金による強要をなくすため、この判決をもとに法的な規制が進むことを望みます」と述べた。
会見では、「PAPS」世話人・宮本さんによって、被害者の手記も紹介された。女性は支援団体への相談前は「契約書があるかぎりは、私には自由など存在していない」と思い込み、また「プロダクションの言いなりにならないと、身の危険を感じることもあった」という状況のなかで、死にたいと思うほど追い詰められていたという。
また、PAPSと同時に警察にも相談したが、対応した男性から「あと2本出演したらどうか」と軽々しく言われ、心理的な傷を負ったことも明かされている。被害者は、“出演を強要された女性たちにとって、性行為を誰でも見ることができる状態が重大な問題であるという認識を持ってほしい”とし、また映像では楽しんでいるように見える女性でも、それはあくまでも「演技」であって望んで出演しているとは限らないと主張した。
PAPSに寄せられたポルノ被害相談は、2012年、13年は1件ずつだったが、伊藤弁護士が注意喚起した記事により認知度が広まり、今年は9月時点で59件の相談が寄せられているという。宮本さんは「(AVへの出演強要被害は)解決すればそれで終わりという問題ではない。『映像が世界中に回っているといても立ってもいられない、死にたい』と思いつめ、実際に命を絶ってしまう人もいます」と実情を話し、「心身に傷を負っても、その後の人生を強く生きていけるようなサポートを考えていきたい」「弱小の団体ですが、声を大きくすることによっていろんな人を巻き込んでいけるのではないか」と意気込んだ。
契約してしまっても「諦めず、逃げる」
記者会見の模様は、テレビや新聞からWebサイトまでさまざまなメディアで報じられた。報道を見て、街中のスカウトをきっかけにAV出演を強要されることがある、という実情を知った人も多くいるだろう。
しかし、PAPS公式サイトに掲載された被害例を見ると、スカウト段階では当然だがAVのことは告げられない。「深夜番組のメイクアップ企画で素人モデルを探している」と巧妙な嘘をつくこともあるため、知っていても騙されてしまうというケースは起こりえる。
ウートピ編集部から「もしスカウトについていってしまい、契約を迫られた場合、どうやって逃げればいいのか」と質問すると、宮本さんは「プロダクションは手練手管に長けている。若い女性ひとりで対抗できるようなものではなく、契約させられるのが普通です。でも、そこで諦めてしまわないでほしい」と述べた。伊藤弁護士も「今回の判決で、いったん契約しても解除できることが証明された」とし、泣き寝入りせず逃げてほしいという内容の回答だった。
悪徳プロダクションの手口を広く知らしめた今回の事案。また、判決内容と支援団体の存在が周知され、被害女性が減ることを願いたい。
(編集部)
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