トランプがエリートたちを追い出せといっている。
それをうけて、いまの米国社会に不満を持っている人々がトランプに喝さいを送っている。
反特権階級という動きの側面があるということだ。
グローバリズムなどの経済の現実の中で取り残された貧しい階級の人々が、夢よもう一度と思ってトランプに期待している。大型製造業で雇用を作るなどありえないのに。愚かなことだが、反特権階級の訴えが、取り残された人々に受けるのは必然でもある。特権階級に不満があるのだから。
(日本のように特権階級に文句もいわないようなおとなしい「支配される大衆」よりも怒りを持っているだけましである)
私は主流秩序といっているが、それは従来の「リベラルとか左翼とか労働組合とか革新勢力」と「保守」が対立の主軸ではないと思っているからだ。私は反貧困運動がそうであったように、社会の上層、大金持ち、特権階級が支配している構造を批判する立場であり、それを序列化された社会としてとらえていて主流秩序といっている。
そして主流秩序を支えているのは、「リベラルとか左翼とか労働組合とか革新勢力」といっている人や大学など、そして普通の正社員とか、主流秩序の中位の人、そして主流秩序の下位の人までがそうだといっている。
だからこの格差構造を批判するが、それは「上」だけを批判するというような認識ではない。
トランプを支持する人も主流秩序を強化するような動きをしている。たとえば反移民、排外主義、人種差別など。
つまり反特権階級という訴えには主流秩序論の観点と重なるので、一定の意義はあるが、トランプの様な訴えはまさに主流秩序を強化する形でしかないから、全く主流秩序論とは方向が逆の「反エリート運動」だ。
彼が当選しても失業が解消されるわけではなく、米国がかつての様な栄光と繁栄を取り戻すのでもなく、不法移民が減るわけでもなく、移民問題が解決するわけでもないのに、彼が言う「口先だけの約束」に期待している。そもそ白人中心主義のむかしがよいとも言えない。
その意味で、愚かな大衆であるが、それくらい大衆に不満があると、そこに単純なメッセージを繰り返せば、大衆は動くということで、ファシズムと同じ構造だ。
自民党もダメだが民主党もダメといって、けっきょく現状維持に加担している人が多いように、米国でもサンダースを支持していた人がヒラリーを応援しないというのは、愚かなことだ。ファシズムのときには反ファシズム統一戦線がいるのに。