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成田悠輔の「高齢者は集団自決、集団切腹すべき」発言を容認する社会

  • 成田悠輔の「高齢者は集団自決、集団切腹すべき」発言を容認する社会

 

 

経済学者・成田悠輔氏はメディアによく出ている人気者だが、「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」と発し[1]、一時期問題になった。

<成田の発言>

 唯一の解決策ははっきりしていると思っていて、結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなことしかない。(私は)けっこう大真面目で、やっぱり人間って引き際が重要だと思う。

 別に物理的な切腹だけでなくてもよくて、社会的な切腹でもよくて、過去の功績を使って居座り続ける人がいろいろなレイヤー(階層)で多すぎるのがこの国の明らかな問題で、まったくろれつが回っていなかったり、まったく会話にならなかったりするような人たちが社会の重要なポジションをごくごく自然に占めていて、僕たち、それが当然だと思っちゃっているじゃないですか。

 当然だと思っていることがすごく危機的な状況だと思っていて、消えるべき人に「消えてほしい」と言い続けられるような状況をもっとつくらないといけないんじゃないか。

 

だがその後も彼はテレビなどのメディアで活躍し続けその社会的存在が容認されている。みなさんの中でも、偉い学者でテレビで出ている人気者だから、そう悪い人ではないし、ムチャも言ってないと思う人が多いのではないか。それこそまさに権威に寄り掛かった感覚だ。

だが彼の言ったことはまさに、生産性、能力主義、優生思想に無批判的な主流秩序の状況を反映している出来事と言えよう。高齢者だけでなく障がい者も対象になるだろうし、人間のためにはアニマルライツなども問題にはしない思想だ。

私はまず、自分の頭で考えず、テレビなどで許されているから、許してもいい発言なのだと考えてしまう、その受動的な思考の在り方だ。茨木のり子に怒られるだろう。

またこうした発言は、ネットやメディアでよく言われる、高齢者はずるい、若者は損しているという世代論での「格差に対する現役世代の不満」にものっておおり、それは「弱者男性」「ネトウヨ」らがフェミやリベラル・左翼をたたく風潮とも重なっている。自分の正しさ以外のやつらは敵で、叩いてもいい奴で、誹謗中傷などお構いなしの風潮の表れだ。じっさい、成田を強く支持する人もいて、分断があらわになった。成田が「バズる」ことを狙っているとしたら、分断を意識的に煽っているので余計に悪質と言える。

日本社会には諸問題があること、政治が対策をとれていないことは、成田が言わなくても、この講義でも第6回資料でまとめて示したように明らかだ。しかし、その解決を「老人の抹消」で済ませられるというのは、原因分析としても対処策としても間違いなのだ。高齢者をひとくくりにするのがおかしく、貧困高齢者も、質素な生活をしている高齢者も多い。 経済協力開発機構OECD)が21年にまとめた資料によると、日本の高齢者の貧困率(18年)は20%で各国平均13・1%を大きく上回る。特に高齢女性は22・8%とさらに貧困率は高い[2]。30台、40台、50台絵も金持ちは多くいるし、貧困者も多くいる。「全部男が悪い」「中国人が悪い」というのが間違いのように、「高齢者が悪い」も間違いなのだ。

主流秩序の上位者中心の借金依存の偏った政治・経済政策を変えないといけないのに、主流秩序の中で上位者も注意者も下位者もいる「高齢者」というものをひとくくりにして「原因」のように言うのは、間違いである。つまり成田は、原因に目を向けさせず優生思想的に「不要な奴はいなくなれ」というのか。

例えば、多様性保障と格差縮小のために、個人単位型にすべての制度を変革すべきであり、高収入者や企業へ高い税金をかける必要はある。軍事費や多くの企業への補助金的なもの、減税的なものを減らす必要がある。北欧の社会をイメージして、そことの大きな違いを減らす方向ですべきことは色々ある。成田はそこに目を向けさせないで、「馬鹿なネット民」などを煽ったのであり、予想通り馬鹿な人が煽られて、「高齢者が集団自決しろ」と言って喜んでいるだけの状況である。何も解決しないでただ分断が煽られているだけで、トランプの政治手法と同じだ。

 

 

[1] 成田は、インターネットテレビ局「AbemaTV」(2021年12月17日に放送)で、少子高齢化化などについて議論する中で「集団自決」に言及した。2023年2月に米紙ニューヨーク・タイムズがこの発言を報じ、日本国内でも少し問題とされたがすぐに忘れられ、結局容認された。

[2] 「「高齢者は集団自決」発言どう捉えるべきか 識者3人の見解」(毎日新聞 2023/5/18)より。