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「可愛くてごめん」と自己肯定感と主流秩序

  • 可愛くてごめん」と自己肯定感と主流秩序

私の「ジェンダー論講義録」野かに書いた、事故肯定感がらみのエッセイです。

紹介しておきます。

 

 

2022年から23年にかけて流行った歌として「愛くてごめん (feat. かぴ)」[1]というのがある。自己肯定感を高めるといわれ、人気があるので、ここで扱いたい。

可愛くてごめん (feat. かぴ)/HoneyWorks - YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=a3FgmTfvJhA

可愛くてごめん (feat. かぴ)  HoneyWorks

発売:2022.08.28  作詞:shito  作曲:shito  編曲:HoneyWorks

私が私の事を愛して    何が悪いの?嫉妬でしょうか?

痛いだとか変わってるとか   届きませんね。そのリプライ

 

大好きなお洋服  大好きなお化粧で  お決まりのハーフツイン巻いて

お出かけしよ  日傘持って  ぼっちだって  幸せだもん!

 

Chu! 可愛くてごめん  生まれてきちゃってごめん

Chu!あざとくてごめん  気になっちゃうよね?ごめん

Chu! 可愛くてごめん  努力しちゃっててごめん

Chu! 尊くてごめん  女子力高くてごめん

ムカついちゃうよね?ざまあw

 

貴女は貴女の事だけどうぞ  私に干渉しないでください

類は友を呼ぶと言うけど…  届きませんね。その陰口

 

重い厚底ブーツ  お気に入りのリュックで

崩せない前髪 くしでといて  お出かけしよ

軽い女?ふざけんな  重すぎるっつーの!

 

Chu! 可愛くてごめん  この時代生きてごめん

Chu!目立っててごめん  意識しちゃうよね?ごめん

Chu! 可愛くてごめん  自分磨きしてごめん

Chu! ぶりっ子でごめん  虜にしちゃってごめん

ムカついちゃうでしょ?ざまあw

 

趣味の違い 変わり者と  バカにされても 曲げたくない

怖くもない あんたらごとき 自分の味方は自分でありたい

一番大切にしてあげたい  理不尽な我慢はさせたくない

“それが私”

 

Chu! 可愛くてごめん  生まれてきちゃってごめん

Chu!あざとくてごめん  人生楽しんでごめん

Chu! 可愛くてごめん  努力しちゃっててごめん

Chu! 尊くてごめん  女子力高くてごめん ムカついちゃうよね?ざまあw

 

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この歌の評価だが、私は、主流秩序・ジェンダー秩序へのスタンスの面で二面性(両義性・両面性)があるとおもう。

この歌は、だれかを相手にして、対抗的に「私がかわいくてごめん」と自己主張している。

だれにどういう気持ちや意味でいっているか、その社会への影響によって考えるべきである。

 

全体として、あまり他者の評価を気にせず、自分の基準で自分で楽しむ 好きにしていいでしょ、私に文句を言う人なんて気にしない、という感じの面は、主流秩序に囚われないパワーの面、主流秩序とは関係ない自己肯定感を高める面を少しは感じる。美の秩序においても、自分独自の視点のものだから他人がどう思うと関係ないという側面は、ジェンダー秩序を揺るがす面が少しはあると感じられる。

以下は、歌詞で、そのように、「主流秩序・ジェンダー秩序・他人の目にとらわれず、「自分は自分」という感じられる部分である。

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あまり主流秩序・他人の目にとらわれず、自分は自分という感じの部分

痛いだとか変わってるとか 届きませんね。そのリプライ

ぼっちだって 幸せだもん!

貴女は貴女の事だけどうぞ 私に干渉しないでください 届きませんね。その陰口

趣味の違い 変わり者と  バカにされても 曲げたくない

怖くもない あんたらごとき 自分の味方は自分でありたい

一番大切にしてあげたい  理不尽な我慢はさせたくない “それが私”

 

*************

しかし一方で、上記とは違う意味で、主流秩序の上位になれているという自己肯定感の高さ、ポジティブさが示されている面がある。主流秩序・ジェンダー秩序にとらわれ、自分とあわないものと敵対し、一軍的な人からの上から目線の側面がこの作品には強くあると言わざるを得ない。かわいくて尊くて女子力高い自分を肯定して、相手を「それに文句言うやつら」という感じで、「ざまあW」と馬鹿にするところなどは、嫌な一軍的な強さの、“下”を馬鹿にするニュアンスが漂っている。

今の時代の、美の秩序自体に疑問を持つのでなく、主流秩序んぴったりよりそっている面が強く、いまの美の秩序に乗っての“かわいい”を追求し、その面で自信を持っていて、それに少しでも批判がある相手には、「嫉妬するな」「むかつくでしょ」「あざといのが悪い?」「私がかわいくてごめんね」「虜にしちゃうの」という感じで一軍的攻撃をしている。「あんたらごとき」「ざまあW」「こっちは人生楽しいわー」という相手への見下し方は、身分的・階級的な感じで相手を押さえつける暴力性がある。

具体的なファッションは、既成の流行りものであって、主流秩序に合わせているような感じのものばかり。楽しいのは外見・ファッション系ばかり。目立つのがよい、女子力が高いのがいい、あざとくていい、ぶりっこでいい、という現状の主流秩序への無批判性。

そあいってこの歌にある攻撃性は、「自分をかわいいというのはよくない」というような常識に対して、「いいじゃん」と対抗する感じがあり、それは「タテマエ前より本音でいいじゃないか」という意識、あらには、ポリコレが嫌いで、「本音の欲望に忠実でいいじゃん」、「フェミニストルッキズム批判がうざい」「エリートが外見重視の子を馬鹿にする感じが嫌い」というような気分の人にもつながる可能性が感じられる。

テレビ番組で『あざとくて何が悪いの』というのがあり、一軍的なコミュニケーションレベルで、恋愛とか人間関係をうまくやるコツの話や外見の話、浮気を見破る話などをしているが、そこと共通する、主流秩序自体への「無批判・無条件的前提」感がこの歌にはあるように思われる。勝ち組のにおいがプンプンで、多くの人を一軍的価値観で抑え込む影響がある。

以下は、主流秩序に無批判に乗ったうえでの、勝ち組的な視点からの言葉と思えるものである。

 

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主流秩序に沿った感じの部分

かわいくてごめん 嫉妬でしょうか? 

大好きなお洋服  大好きなお化粧で お決まりのハーフツイン巻いて

(かわいく)生まれてきちゃってごめん Chu!あざとくてごめん

尊くてごめん  女子力高くてごめん

ムカついちゃうよね?ざまあw

重い厚底ブーツ

お気に入りのリュックで 崩せない前髪 くしでといて

目立っててごめん  意識しちゃうよね?ごめん

自分磨きしてごめん Chu! ぶりっ子でごめん  虜にしちゃってごめん

趣味の違い 変わり者と  バカにされても 曲げたくない

怖くもない あんたらごとき  理不尽な我慢はさせたくない

あざとくてごめん  人生楽しんでごめん 

 

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総合的にみると、主流秩序・ジェンダー秩序(ルッキズム)への批判性より、それに乗っている面が強く、「自分たちと違うタイプとか、“下”とか、自分の仲間でない人」「ルッキズム批判する人」と敵対的で、クラスの一軍的で、客観的にも美の秩序を上昇しようと努力し、結果、女子力高くすることがいいことだとしている点で、主流秩序を強化・維持する側面の方が強い作品と言えるだろう。自己肯定感でいうと、美の秩序の上位という「自信」なので、この講義で目指す、ダイバーシティ的な自己肯定感ではないものといえる。

主流秩序の中で上位の勝ち組、そういう人が、メイクとかすごく努力して「かわいくてごめん」というのは、言わなくてもいいことをどこかの“相手”に言ってマウントをとり、相手を痛めつけている感じがある。アニメであり、キャラクターの絵も含め幼い年齢のイメージでもあるが、若者、大人全体を包む、「美にとらわれている」中での「ポジティブさ」の表れの歌と言える。

これの真似をしてTikTokでダンスしたり歌を歌い、化粧したりおしゃれして、元気が出ているような質の「自己肯定感」は、主流秩序を揺るがさず、多くの人を解放はしないだろう。

***

軽い作品であり、同類のものとかもっとひどいものもあるだろうから、この作品だけ特別に目くじら立てるものではないが、いまの日本社会を反映しており、ルッキズムにとらわれている多くの人を助けず、この歌で「元気が出る」のは、主に、美の秩序にとらわれ、その面ばかりで努力し、女子力が真ん中以上の人たちであろうと思われる。

結論を一言でいえば、勝ち組系の歌であり、美の秩序を再生産する作品である。「自己肯定感を高めるいい曲だ」とは言えない。

 

[1]日本のクリエイターユニット・HoneyWorksの楽曲。 HoneyWorksによる楽曲シリーズ・プロジェクト『告白実行委員会〜恋愛シリーズ〜』およびTVアニメ『ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜』の登場キャラクター・中村千鶴(ちゅーたん〈CV:早見沙織〉)のキャラクターソング。