ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

SMAP問題4 ――― メンバーは労働者か?

 

日刊スポーツ、スポニチ等と同調して、ミヤネヤの宮根もジャニーズ事務所寄りの発言をしていました。

宮根氏は女性マネージャーを「職場放棄した」「メンバーを放置した」とひどいことを言っていました。中居君は司会はできても交渉事はできないとか、4人のメンバーはことの状況を全くわかっていなくて円満解決すると女性マネージャーに言われて思い込んでいた、と馬鹿扱いしていました。

 

週刊新潮週刊文春メリー喜多川・副社長の言い分をそのまま載せる路線です。
「メンバーが戻るには、条件がいります。ファンや関係者にご迷惑をかけたことへの謝罪。内に向けた謝罪も必要です。社長のジャニーはじめ、事務所の社員に許しを乞うこと。寂しい思いをした木村君にも謝るべきだ」


しかしネットや評論では、そうした動きがおかしい、ということが増えているようです。ジャニーズ事務所に同調する御用メディアの感覚とかなりずれています。

 

特にファンがSMAPメンバーの立場から感じ考え、署名活動まで出てきました。当事者の側に立つという一例ですね。

 

メリー喜多川氏の解任要求運動、SMAP謝罪に憤慨のファンが署名活動。
署名の概要説明には「長年SMAPを支え、共に歩んできたチーフマネージャーさんへのパワハラ退社。中居くんが反省して事務所に謝罪? 木村くんが事務所を説得? なぜ謝らなければならないのでしょうか」「全ての原因はジャニー喜多川さんの姉、メリー喜多川氏です。彼女が居なければ全て解決、なんて簡単なことではないのは理解しております。ですが、やはり事の発端がメリー喜多川氏であることに間違いはないのです」
ジャニーズ事務所、そしてSMAPを救う一つの手段として、メリー喜多川氏の取締役副社長・そしてレコード会社『ジャニーズ・エンタテイメント』の代表取締役社長の解任を求めます」


**********
ところであるひとから、私のブログ記事を見て、「芸能人の中でも特に成功しているSMAPは金銭も生産財も潤沢に持っているので、事務所とSMAPとの関係は、企業と労働者との関係というより、王国と貴族の関係に近いのではないか」という趣旨のコメントをいただきました。

 

SMAPが高収入なので普通の労働者と違うのはその通りですが、私は今の日本では、労使関係・労働者というとらえ方がとても欠如しているので、今回の事例ではSMAPメンバーを労働者ととらえることに積極性があると思っています。

 

例えば最近では「アイドルグループの一員だった女性(23)がファンとの交際を禁じた規約に違反したとして、会社が女性と交際相手の男性らに損害賠償を求めた訴訟」で、裁判長は「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」と述べて、会社側の請求棄却の判決が出た事例があります(以下に記事添付)。

 

これはアイドル・タレントにも労働者性を認めた判決と言えます。経営側の支配性を制限し、働く側の人間性・その自由を一定認めたということです。


この例にもみられるように、芸能事務所の強い力に対して、そこの芸能人は被雇用者・労働者ととらえることには大事です。


そして今回、SMAPは芸能人の中でも勝ち組ですが、それでもジャニーズ事務所幹部との関係では、立場か弱く、今回、公開処刑的に謝罪させられている(独立させてもらえない)のですから、会社対労働者ととらえることもあながち間違いとは言えないと思います。

 

これはプロ野球選手の組合についても同じように理解できます。
プロ野球選手のトップなどすごい収入を得ていますし、狭い法的理解では通常の雇用関係の労働者ではないといえますが、しかし球団・経営側に対しては、事実上、労働者の面があるので組合をつくって交渉することには意義があります。そしてそれは法的にも可能ですから、それが一定行われています。

 

労働問題では基礎の基礎ですが、今、外形的には自営業とか個人経営とか個人請負とか派遣に見えても、実は労働者・被雇用者的であるというようなことがあるので、労働者性の理解を柔軟・広範にとらえることには意義があります。「ユニオンぼちぼち」などでもキャバクラ嬢とか塾講師とか、広告制作関係とかでそうした相談があります。

 

SMAPの労働者性について
労働者性の判断にあたっては、労務提供の形態や報酬の対償性およびこれらに関連する諸要素を勘案して総合的に判断することが必要で、具体的には特に労働時間や場所や仕事内容で指揮監督下にあるか、自由があるのか、使用従属性があるのかなどで判断します。


SMAPといえども、業務の指示等に対する許諾の自由があるか(その仕事は嫌と断れるか)というと、ほぼないでしょう。勤務時間や場所を自由にできるかというとそれもない。拒否する自由を有しない場合は、指揮監督関係があるとみなせます。

契約もいったん結べばかなり奴隷的ですよね。おおざっぱな注文があってあとは請け負った人が誰にも監視されずに自由にできるというより、芸能活動でも多くは「使用者」の具体的な指揮命令の下で動いていることがおおいとおもいます。

歌番組にいつ出るとか、CDを出すとか、このイベントに出ろとか、CM契約、番組宣伝に励まないといけないなど、会社=マネージャーが決めた仕事に従うのが基本でしんどそうです。


本人に代わって他の者が労務を提供することが認められているなら指揮監督関係を否定できますが、SMAPが僕らのかわりに「嵐、この仕事やっておいてよ」と頼むことはできませんから、この点でも労働者性の否定はできません。
他社の業務に従事することが制度上制約されているのも労働者性のひとつです。SMAPジャニーズ事務所の仕事以外を自由に自分で選べるなら自営業的ですが、そんなことはできないですからまさににジャニーズ事務所の労働者となっています。
服務規律を適用されている点も労働者的です。

 

だから芸能人でも事務所との関係で労働者と捉えることが大事なんです。この点を私は以前にも例えばAKBの指原さんや峰岸さんの恋愛問題でも指摘しました。
日本社会では労働組合が弱く、大手労組は主流秩序の上位でしかなく、そういうまともな労使関係の視点がとても少ないから、今回の問題も労働者の視点で見れない人が多いのです。

なお以上のことは、SMAPのメンバーが主観的に労働者として経営側と戦っているといっているのではありません。

 

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 


以下資料
アイドル交際禁止「行き過ぎ」 地裁、会社側の請求棄却
朝日 2016年1月 18日


 アイドルグループの一員だった女性(23)がファンとの交際を禁じた規約に違反したとして、東京都港区のマネジメント会社が、女性と交際相手の男性らに約990万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。原克也裁判長は「異性との交際は幸福を追求する自由の一つで、アイドルの特殊性を考慮しても禁止は行き過ぎだ」と述べ、会社の請求を棄却した。

 判決によると、女性は19歳だった2012年4月、「ファンと交際した場合は損害賠償を求める」などと定めた契約を会社と結び、グループの一員として活動を始めた。13年12月ごろにファンの男性と交際を開始。14年7月には辞める意思を伝え、予定されていたライブに出演しなかった。会社が「契約違反で信用を傷つけられ、損害も受けた」として提訴した。

 判決は、「ファンはアイドルに清廉性を求めるため、交際禁止はマネジメント側の立場では一定の合理性はある」と理解を示す一方で、「異性との交際は人生を自分らしく豊かに生きる自己決定権そのものだ」と指摘。損害賠償が認められるのは、アイドルが会社に損害を与える目的で故意に公表した場合などに限られる、と判断した。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞