ドランクドラゴンの鈴木拓さんの意見、主流秩序を考えるうえでめっちゃ面白いです。
また内部告発してオリンパスからひどいいじめパワハラを受けている浜田正晴さんの言葉は重いです。
(耕論)もの申す私たち 山本太郎さん、浜田正晴さん、鈴木拓さん
朝日 2015年10月22日05時00分
ふと見渡せば、幅をきかせるのはイエスマンばかり。生き延びるには、異論など唱えようもないのか。といって不正まで見過ごせるものか。各界の個性派がモノ申す、この国の空気。
■組織の闇、外部に訴えよ 浜田正晴さん(内部告発したオリンパス社員)
念願かなって入った会社でした。一念発起して技術畑から営業に転じ、身を粉にして働いてきた。一家4人の暮らしを大切にする、平凡なサラリーマンに過ぎません。
こんな私が現役のまま、自らが勤める巨大企業と法廷で闘うことになるなんて、思ってもみませんでした。
発端は2006年。大切なお客様である取引先メーカーから、上司が優秀な社員を引き抜いたことです。07年に、この会社の営業担当になって新任のご挨拶に行ったら、いきなり「技術者泥棒だ」と怒られた。さらに2人目も引き抜こうという動きを見て、このままでは我が社は信頼を失ってしまう、何とかして止めなければ、と意を決して幹部に中止を進言しました。
でも無駄でした。やむなく社内のコンプライアンス窓口に通報すると、今度はその情報が漏れて、私は畑違いの閑職に追いやられた。
社内外の人との接触を禁じられ、暴言をはかれ、人事評価は最低水準。頼みの労組も見て見ぬふりです。このままでは壊れてしまう。そう思った私は08年、配置転換の無効確認と損害賠償を求める裁判を起こしたのです。
最近、東芝や東洋ゴムなど大企業の不正が相次いで明るみに出ています。闇を抱えた企業はきっと、ほかにもいっぱいあるんでしょう。
一方で、これはおかしい、このままではいけない、と思っている社員も、どんな会社にも少なからずいる。そんな声を、残念ながら多くの会社が受け付けないのは、ムラ社会だからでしょう。「おかしい」と認めると今度は自分がやられてしまう。下手すると裏切り者扱いされ、築いた地位まで奪われる。保身の集積が会社を腐らせるんです。
我が社の旧経営陣3人が12年2月、粉飾決算の疑いで逮捕されたとき、私に驚きはありませんでした。社内のモノ言えぬ空気、見て見ぬふりをする企業風土が、元社長らの不正を見逃してきたのだと、わかっていたからです。
私の訴えは認められ、12年6月に最高裁で勝訴が確定しました。この間、爪をかむ私のクセはひどくなり、歯ぎしりで歯もすり減って、寝るときにマウスピースを着け始めました。文字通り、歯を食いしばって耐えてきた。
だから、他人にも同じことをやれとは、とても言えません。黙っていたほうが身のためです。正直者がバカをみる世の中ですから。
もしも、きちんとモノが言えて、組織が腐りきる前に救いたいと本気で思うのだったら、外部の第三者機関に通報し、通報者も守る体制を国が整えるしかありません。
組織は必ず臭い物に蓋(ふた)をする。組織の中の内部通報では何も変わらない。それが私が人生をかけて学んだことです。
(聞き手・萩一晶)
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はまだまさはる 60年生まれ。85年にオリンパス入社。08年に配転無効の確認を求めて提訴。12年に最高裁で勝訴が確定。
■正論吐いたら変わるのか 鈴木拓さん(お笑い芸人)
俺なんて、まぁクズ芸人ですから。何か異論を述べたって「そうだな」なんて誰も思わないですよ。
ありますよ。テレビの現場で「こうした方がおもしろいのにな、うまくいくのにな」と思うことって。でも自分の意見を言って爆笑を取るより、ディレクターの指示に従ってスベる方を選びますね、俺は。だって意見通してスベっても責任取れないですもん。そんな俺に、異論を述べる資格なんかないんです。
スベってる俺を見た、くだらねぇヤツが、ツイッターに「お前、つまんねぇのに、何でテレビ出てんの」みたいなこと言って絡んでくる。「何ででしょうね。すいやせ~ん」なんて、軽~く返します。いいんですよ。別にネットで炎上して火だるまになったって。痛くもかゆくもない。だってあの人たち、俺のお客さんじゃないですから。
俺の本当のお客さんは、仕事をくれるメディアの人。そこでは、異論なんてみじんも吐かない。現場でめんどくせぇヤツだな、と思われたら次の仕事がもらえませんから。素直に従った方が「じゃあ次も」って気になってくれるでしょ。ディレクターが黒いものを白と言ったら「ハイ、真っ白です!」って返します。
最近、外国の影響なんすかね、「自分の主義主張は堂々と言え」「間違っているものは間違っていると言うことが正しい」みたいな風潮があるじゃないですか。
でもね、こんなこと言っちゃ申し訳ないですけど笑っちゃいますよ。だって、だぁ~れも、そんな正論なんか聞いてませんし、言ったとしても、会社も世の中も変わりませんから。みんなが半沢直樹になれるはずないんです。
言っていいのは、周囲が「なるほど」って耳を傾けてくれて、失敗した時に自分でケツ拭ける人。でもそんな人ってほんのわずか、一握りでしょ。世の中のほとんどの人に異論を述べる資格なんてないんです。
そもそもですよ、日本人は歯車になって、黙々とやってきたから、すげぇ経済成長とかもしちゃったわけでしょ。外国のやり方が正しいみたいな変な風潮ができてからですよ。GDPも中国に抜かれちゃったじゃないですか。
会社や組織の中で、能力も才能もないのに妙な正義感を振りかざして正論吐いても、誰も聞いちゃいない。それで上司ににらまれたら、自分が困る。ましてや会社が傾くなんてことになったら、みんなも困るんですよ。「それでも言うんだ」って人は逆にすげぇとは思いますが……。
まぁ俺のクズみたいな考えですけどね。でもなぜか仕事のオファーをいただける。この文章を読んで不快に思われたなら謝罪します、どうもすいやせ~ん。
(聞き手・諸永裕司)
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すずきたく 75年生まれ。96年、塚地武雅さんとお笑いコンビ「ドランクドラゴン」結成。著書に「クズころがし」。
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僕もできるもんなら、周りとじっくり付き合い、良好な人間関係を築いていきたい。そのなかで、少しずつ物事を正していきたい。でも、そんな余裕もないほどの猛スピードで、いまこの国は変わりつつあります。だから批判されても、僕なりのやり方で異論を唱えているんです。
安保法案の参院採決で、僕は1人で牛歩をしました。実は、すべきか否か3日ほど悩んだんです。だって近ごろ牛歩にいいイメージはないし、1人でやってもワル目立ちするだけで、今後の野党再編に水を差しかねない。
喪服にお焼香ポーズで、たたかれたのも覚悟のうえ。なんで、あんなバカなことやってるんだという興味から、政治に無関心だった人にも知るきっかけにしてもらえたら十分です。単なるパフォーマンス? 上等じゃないですか。
僕のような、ぽっと出の政治家と違って、自民党の議員はいま大変でしょう。たとえ腹のなかに異論があったとしても、何もモノが言えない。資金、ポスト、党の公認権と、急所をすべて握られているんですから。官邸の下請けとして働くしかない。
だから、総裁選が無風で終わったのも十分に理解できます。だって人間ですもん。よけいなことは何も言わず、「そうですねえ、その通りですねえ」と調子を合わせておくのが一番楽でしょう。
自民党政権に戻って、TPPも武器輸出も労働法制も、経団連が過去に政策提言で望んだものが次々に実現しています。組織票を持ち、献金もしてくれる財界の権力者への政治からのご恩返し。「大人の約束」を守って期待に応えているわけです。
でも、みんなが言うべきことも言わず、長いものに巻かれ、我が身の保身と目先の利益ばかりに汲々(きゅうきゅう)とした結果が、この「今だけ、カネだけ、自分だけ」の世の中なんじゃありませんか。これは長続きしませんよ。
この流れをひっくり返すには、市民の側も経団連を見習うべきです。どうやったら自分たちの代弁者を国会に送り込めるか、じっくり考えてほしい。前回の総選挙で足を運ばなかった4割もの人を、僕も何とかこちら側に引っ張り込みたい。政治の選択が結局は生活に直結してくるんだと、実感してほしい。
では、どうするか。原点に戻ろうと思ったんです。自分はいま、なんで政治をやっているのか。大勢の市民が後押ししてくれたからだろ。反対の声が各地であがり、デモの声は国会内にまで響いてきた。これは負けてられへん、期待に応えなあかん、って。
ワル目立ち、パフォーマンスとたたかれてもいい。政治の実情を訴え、市民と連帯していく。これが政治家として、たった1人でもやるべきことです。
(聞き手・萩一晶)
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やまもとたろう 74年生まれ。16歳で芸能界デビュー。13年参院選で初当選。「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表。
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