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朝鮮総聯中央本部への銃撃事件にたいして

私たちは抗議の意を表明し、日本政府に厳正な対応を求めます

 

  報道によれば、2月23日午前4時頃、東京・千代田区にある在日本朝鮮人総聯合会

朝鮮総聯)中央本部の前に、男2人が車で乗りつけ、建物に向かって拳銃の弾を数

発撃ち込む事件が発生しました。

犯人は右翼活動家の桂田智司容疑者と右翼関係者の

川村能教容疑者であり、二人は建造物損壊容疑で逮捕され、容疑を認めているといい

ます。

 

警視庁公安部によると、桂田容疑者は、「北朝鮮による相次ぐミサイル発射に

堪忍袋の緒が切れた」と供述し、発砲後に中央本部に車で突入するつもりだったとの

ことです。

 

 

  桂田容疑者は、2013年に日本最大の在日コリアン集住地域である大阪の鶴橋におい

ヘイトスピーチデモ・街宣を行なった団体の顧問として活動を主導し、「われわれ

日本人はいかなる在日韓国、反日勢力、不逞鮮人どもの圧力に屈しない」とスピーチ

する(20161225日の「韓国とは絶縁せよ!日本国民怒りの大行進」にて)など、

南北を問わず朝鮮半島にルーツを持つ在日コリアンにたいするヘイトデモ・街宣にお

いてヘイトスピーチを繰り返してきた人物であり、今回の事件は、在日コリアンにた

いする差別意識・排外主義にもとづく「ヘイトクライム」(差別的動機に基づく犯

罪)にほかなりません。

 

 

私たちは、あらゆる人びとの人権と尊厳が保障される社会を擁護し、またそうした

社会を構成するメンバーとして、このようなヘイトクライムは決して許されないとい

う抗議の意をここに表明します。

 

 

私たちは政府にたいして、以下のとおり、今回の犯罪行為に厳正に対応することを

強く求めます。

 

1.今回の事件を非難する声明を直ちに公表すること

政府は今回の事件にたいして、在日コリアンへの差別意識・排外主義に基づくヘイ

トクライムとして、事件を非難する声明を公表すべきです。また、在日コリアンをは

じめとするマイノリティ集団への差別意識・排外主義に基づく犯罪行為にたいしては

厳格に対処していくことを、あわせて言明すべきです。

 

ヘイトスピーチ解消法は、ヘイトスピーチが被害者に多大な苦痛を強い、社会に深

刻な亀裂を生じさせているとし(前文)、解消が喫緊の課題であることに鑑み(1

条)、国は解消のための措置を講ずる責務を有すると定めています(4条1項)。今

回の犯罪は、言動による攻撃よりさらに深刻な銃撃という究極の暴力による攻撃で

す。在日コリアンの受ける多大な恐怖、絶望感を伴う苦痛と、在日コリアンを同じ社

会の構成員としてみず、殺傷してもいい対象だというメッセージのもたらす社会の亀

裂の深刻さを踏まえ、同法の責務としても直ちに非難の態度を明確にすべきです。

 

 

 

2.今回の事件をヘイトクライム事件として捜査し、差別的動機が認められる場合に

は厳罰を科すこと

 

欧米等多数の国においては、特定のマイノリティ集団への差別的動機に基づく犯罪

であるヘイトクライムにたいして、通常の犯罪よりも加重に処罰するヘイトクライム

法制が整備されており、本件のような特定のマイノリティ集団への差別意識に基づく

ことがうかがわれる犯罪については、動機についても詳しい調査を行ない、通常の犯

罪よりも厳格に処罰しています。日本においては、ヘイトクライム法が制定されてい

ませんが、政府は国連人権監視諸機関にたいし、動機が悪質な場合には斟酌して重く

処罰できる、と報告しています。本件においても、在日コリアンへの差別的動機を認

定した場合には、通常の建造物損壊事件に比べて、ヘイトクライムとして刑罰を加重

すべきです。

 

 

3.排外主義団体によるヘイトクライム再発の防止

 

日本社会には、朝鮮総聯がテロを準備しているかのような言説が流布されています

が、実際に近年連発しているのは、日本の排外主義団体あるいは排外主義思想を持つ

者によるヘイトクライムです。1990年代、朝鮮学校の生徒たちにたいするヘイトクラ

イムが続発したため、生徒たちが民族衣装の制服を着ることができなくなってしまい

ました。さらに2000年代にヘイトデモが行なわれるようになって以降、200912月か

2010年3月にかけての京都朝鮮学校襲撃事件、2014年1月の神戸朝鮮高級学校襲撃

事件、2015年3月の新宿の韓国文化院放火事件、2017年5月のイオ信用組合名古屋市

大江支店放火事件等と頻発しています。また、今年に入ってからも、福岡県直方市

ある在日本大韓民国民団の施設でのガラスが割られるなどのヘイトクライムをうかが

わせる事件が発生しています。

 

今回の事件は、排外主義団体あるいは排外主義思想を持つ個人によって引き起こさ

れる犯罪の危険性を端的に示すものであり、警察は、特定の民族への憎悪や排外主義

的な思想を表明する個人・団体の活動の取り締まりを強化し、ヘイトクライムの発生

防止に努めるべきです。

 

 

4.人種差別禁止法およびヘイトクライム法の制定

 

今回のヘイトクライムヘイトスピーチを連発していた人により起こされたもので

あり、ヘイトスピーチを放置するとヘイトクライム、暴力へ直結することを如実に示

しました。またヘイトスピーチ解消法には禁止規定、制裁規定がなく、実効性が弱い

との問題点が浮き彫りになりました。

 

日本には人種差別それ自体を禁じる法律はなく、人種差別は許されないという社会

的認識も低く、また、日本における人種差別の実態について、教育現場で教えられる

ことはほとんどありません。今回の事件の背景、および事件後に「在日朝鮮人による

自作自演」「総聯だから仕方ない」といった反応が散見される背景には、「人種差別

を禁止する」という社会規範が弱いことにも原因があります。今後のヘイトクライム

の発生を防止するためにも、政府は、ヘイトスピーチ解消法を実効化し、さらに人種

差別禁止法およびヘイトクライム法を速やかに制定すべきです。

 

  また、私たちは、報道機関においても、排外主義的な思想が実際の銃撃にまで至っ

た今回の事件が、南北を問わず多くの在日コリアン朝鮮半島にルーツをもつ人びと

を恐怖や不安に陥れていることを踏まえ、その背景を取材、報道し、ヘイトクライム

を決して容認しないという立場をいっそう明確にすべきだ、と考えます。

私たちは、この社会に暮らすすべての人びとの人権と尊厳が保障され、誰もが安心

して暮らせる社会の構築にこれからも力を注いでいく所存です。

 

2018年2月28

 

 

外国人人権法連絡会

移住者と連帯する全国ネットワーク

人種差別撤廃NGOネットワーク

のりこえねっと

ヒューマンライツ・ナウ