ソウルヨガ

主流秩序、DV,加害者プログラム、スピシン主義、フェミ、あれこれ

関東大震災・朝鮮人犠牲者へのヘイトの動きとそれに加担する東京都

 

 2023年は関東大震災から100年、つまり朝鮮人虐殺から100年となる。震災そのもの以上に忘れてはならないのが、大地震の混乱のなか、「朝鮮人が暴動を起こした」「井戸に毒を入れた」等のデマが広がり、日本人らが多くの朝鮮人を惨殺してしまったこと(朝鮮人虐殺)である。朝鮮人虐殺における犠牲者数については諸説あるが、「朝鮮人が暴動を起こした」などというデマや流言によって多数の朝鮮人や中国人が、日本の警察や軍、自警団によって虐殺されたのは歴然たる事実である。それは、当時、治安出動を指揮した警視庁官房主事の正力松太郎自身も証言していることだ。

この朝鮮人虐殺に対して、右翼・ヘイトスピーチ勢力[1]ネトウヨは、歴史修正主義的に、そういうことはなかったような宣伝をしている。彼らはこれまで「関東大震災時、朝鮮人は実際に放火略奪を行ったのであり、朝鮮人に対する暴力は正当防衛だった」と主張している。

 東京・横網町公園[2]で毎年9月1日、朝鮮人犠牲者追悼碑(写真)[3]の前で、朝鮮人犠牲者追悼式典が開かれている。歴代の都知事がこれに追悼文を送ってきたが、2017年以降、小池百合子知事がそれを取り止めている。小池知事自身の右翼的スタンスに加えて、ヘイト・右翼勢力に忖度して、人権問題に及び腰となっているのである。背景には、安倍政権になって以降の政治の右翼化がある[4]

朝鮮人犠牲者追悼碑

 

特に東京都については、小池都知事が、差別主義団体「そよ風」の圧力に屈している面もある。「そよ風」は2009年に結成された在特会関連の女性団体で、代表の鈴木由起子氏は、「朝鮮人ヲ一匹残ラズ殲滅セヨ」などといったプラカードを掲げるヘイトデモの代表世話人も務めている。また「そよ風」としても「韓国人の皆さん、人間扱いしてごめんなさい」などと掲げたデモを行っているような団体である。「慰安婦」問題の否定も主張している。「そよかぜ」北海道支部長の女性は、桜井誠・前在特会会長の「日本第一党」の副党首まで務めている。鈴木由起子氏たちは、2013年には大阪・鶴橋で「いつまでも調子にのっとったら、南京大虐殺ではなく『鶴橋大虐殺』を実行しますよ!」などとジェノサイドを先導したヘイトデモに協力していた。

 

その「そよ風」は毎年9月1日、朝鮮人犠牲者追悼式典と同時刻に、そこから30メートルほど離れた「大正大震火災石原町遭難者碑」の前で、「先祖の濡れ衣を晴らす」などと掲げてヘイトスピーチを繰り返す集会を行っている。その目的は、朝鮮人犠牲者追悼式典を潰し、「関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑」を撤去させることだと公言している。

あまりにひどいので、彼らの集会での「犯人は不逞朝鮮人」などの発言が、2020年に、東京都の人権審査会によってヘイトスピーチと認定された。

その「そよ風」が、2023年9月1日に、いつもの場所と違って、朝鮮人犠牲者追悼碑の前で「慰霊祭」と称する集会を行おうとしているのである。虐殺を否定する勢力が、朝鮮人犠牲者追悼碑の前で、ヘイトをしようとしているのである。朝鮮人死者への冒涜であり、罪の上塗りであり、許されない行動である。

したがって、 東京都は人権条例(オリンピック条例)に定められたヘイトスピーチ集会への「利用制限」を適用すべきである。だが、東京都は、この集会に対して追悼碑の前を使用する占有許可を与えようとしている。ヘイト勢力のこうした行動に許可を与えるとすれば、それは「中立・公平」ではなく、「右翼の差別・ヘイト・人権侵害に加担する行為」「差別煽動の共犯者になること」と考えるべきである。

 すでに集会としてヘイトスピーチの認定を一度受け、さらに繰り返しヘイトスピーチを認定されている活動家たちがそこに参加するのであるから、「ヘイトスピーチが行われる蓋然性」は十分にある。そもそも追悼碑の前でヘイト団体が集会を開くこと自体が、ヘイトスピーチというべき「不当な差別的言動」といえる。

とはいうものの、なんといっても、小池知事の責任が大きい。小池都知事は知事に就任した翌年、2017年、突如としてこの朝鮮人犠牲者に対する追悼文を取り止めてしまったのだが、確信犯なのであろう。しかも小池氏自身がヘイト団体と近いという話がある。なんと、小池氏は2010年、このヘイト団体「そよ風」で講演をおこなっていたのだ。つまりそのころからの付き合いなのである。

小池都知事が知事になってすぐ朝鮮人犠牲者への追悼文送付を取りやめたのは、この「そよ風」の動き(小池が知事となった直後の2017年から横網町公園内で追悼行事を邪魔するようなヘイト集会を開始)と関係があったと考えるのが妥当であろう。実際、小池が知事になったとの、2019年12月、東京都は、積み重ね圧れてきた「朝鮮人犠牲者追悼式典」を妨害する動きを始めた。「朝鮮人犠牲者追悼式典」実行委員会の公園占有許可申請に対し「公園管理上支障となる行為は行わない」「拡声器は集会参加者に聞こえるための必要最小限の音量とする」などと様々な条件をつけ、これに従わなければ中止や不許可にされても「異存ありません」とする内容の「誓約書」を交わすよう要請したのだ。これは抗議によって撤回されたが、「そよ風」をアシストする姿勢は隠さなくなった。

 

***

オリバー・ストーン監督と、アメリカン大学のピーター・カズニック教授による、追悼メッセージ(2020年)】

アメリカ人は、日本の40年にわたる朝鮮半島の残酷な植民地支配について知っているかもしれませんが、1923年9月1日の関東大震災の後、流言飛語に扇動された軍、警察、民間の自警団によって、何千人もの朝鮮人、何百人もの中国人、そして社会主義者が虐殺されたことを知っている人はほとんどいないでしょう。
 私たちは、日本人がこの恐ろしい不正義を記憶し、反省し、大虐殺の被害者を追悼する式典を行っていることを聞き、勇気づけられる思いがします。
 私たちは、東京都知事を含む、日本の右翼的歴史否定主義者たちが、この歴史を歪曲しようとする動きを強めていることを聞いて、驚きはしませんが、失望しています。
 過去に正直に向き合うことは、どの国にとっても容易なことではないでしょう。それは私たちの国が今直面している課題でもあります。とりわけ人種的抑圧、広島・長崎への原爆投下を含む第二次世界大戦負の遺産、帝国の歴史といった歴史問題があります。私たちは、みなさんのような、真実の歴史観のために闘う人々との連帯を強固にし、このような憎悪に基づく犯罪を2度と起こさせないという決意のもと、みなさんとともに被害者を追悼したいと思います。

 

 

<加藤さんの呼びかけ>

「一つは、朝鮮人犠牲者追悼碑の前で差別主義団体が集会を開くこと自体がヘ

イトスピーチであり、許しがたい死者への冒涜であること。もう一つは、その

開催を認めるとすれば東京都の責任は重大だということです。

 読者の皆さんには、第一に、これが最悪の死者への冒涜であり、最悪のヘイ

トスピーチであると多くの人に伝え、その事実を広めてほしいと思います。

 第二に、東京都に対して「死者への冒涜を認めるな。条例に基づく『利用制

限』を行うべきだ。そのために人権審査会に調査審議を求めよ。慰霊の公園を

守れ」と訴えてほしいと思います。都庁の窓口から都に意見のメールを送るな

どの方法があります。各種団体で声明を出して、メディアや都庁、都議会各会

派などに送ることもできるでしょう。

 9月1日まで、わずかな日数しかありません。それぞれに声を上げていきまし

ょう。」

 

★東京都に「差別団体に公園の占有許可を出さないで」の声を届けてください!

 

※できれば人権審査会が予定されている明日8月22日(火)までに。その後でも

間に合います。

 

◆メール:「インターネットの場合」の隣「都民の声総合窓口」をクリック↓

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/iken-sodan/otoiawase/madoguchi/koe/index.html

 

◆FAX 03-5388-1233

 

※それぞれの団体で声明・要請書を作り、都に提出するのも有効です。

※メディア関係者はこの問題を大至急報じてください!

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[1] ヘイトスピーチ解消法は、ヘイトスピーチを「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」と定義している。「言動」とは「言葉と行い」である。

[2] 横網町公園は、関東大震災の死者を追悼する場として1930年に作られた。戦後は震災の犠牲者と空襲の犠牲者を共に追悼する場になった。「慰霊と継承の公園」となった公園内には多くの追悼モニュメントがあり、3月10日と9月1日には中央にある慰霊堂で大法要が行われている。

[3] 悼碑は、震災50年の1973年に横網町公園に建立された。建立実行委員会には、自民党から共産党に至る都議会全会派の幹事長が名を連ねていた。震災時の現実を見て経験した世代が、政治的立場を超えて、悲劇を二度と繰り返さないという、死者への誓いの表現として、この碑を建てたのである。

 

[4] この問題については主に、加藤直樹氏(ノンフィクション作家)の「ヘイト団体「そよ風」が9月1日、「朝鮮人犠牲者追悼碑」の前で集会を画策――東京都は朝鮮人犠牲者への冒涜を認めない対応を!」

http://www.labornetjp.org/news/2023/0820kato?fbclid=IwAR1_CwkY6_xA4fpC3ocBJrjI5YQ04wr_KjkIhrm64aWOLBGm95dI9LyqKL0

および「関東大震災朝鮮人被害者の追悼式典にオリバー・ストーン監督が反ヘイトのメッセージ! 一方、小池百合子知事はヘイト団体を後押し」(LITERA、20年9月3日)、「小池百合子都知事の最大の問題は極右ヘイトとの関係だ! 関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典に圧力かけ「虐殺なかった」ヘイト集会にお墨付き」(LITERA、2020.06.13 )などを参考にしている。