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「年収の壁」とジェンダー、家族単位

講義録第6回 に加筆したものを、掲載しておきます。

「年収の壁」とジェンダー、家族単位

2025年段階で以下のように「浅く解説」する記事はあるが、記者も、識者(学者)も「自分の意見、こうすべきだという対案、解決策」を示さない。意見がないようなのは、実は深く考えていないのである。

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年金3号を維持してきたのは誰なのか? 政治の責任を考える

朝日新聞 聞き手・大貫聡子 2025年5月17日

「130万円の壁」で板挟みになる女性たち

 「130万円の壁」の正体はーー。性別役割分担を強化していると批判を浴びる年金の第3号被保険者制度は、どのように導入され、維持されてきたのか。お茶の水女子大学の豊福実紀准教授(政治学)に聞いた。

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 第3号被保険者制度や所得税配偶者控除について、ジェンダー平等の観点から批判の声があがっていますが、そもそも両方とも「夫が給与所得者で妻は専業主婦もしくはパート」という世帯の増加とともに、低中所得者層の負担軽減を意識して導入されました。そのため、長く政権与党を務める自民党だけでなく、中道・左派とされる野党も、単に廃止して負担を増やすことには反対の姿勢を示してきました。

 小泉政権下で配偶者特別控除の上乗せ分が廃止された時も、当時の最大野党であった民主党共産党などからは「増税だ」という批判が上がりました。

 いま人手不足を背景に経済団体や労働組合の中央組織からも第3号被保険者制度を廃止すべきだという声が出ていますが、大切なのは「廃止した先にどんな社会を目指すのか」です。長く性別役割分担世帯向けの政策をとってきた国で、個人を支援する政策に切り替えるのは簡単ではありません。

 1970年代にジェンダー平等の観点から所得税の課税単位を世帯から個人に変更したスウェーデンでは、男性が主な稼ぎ手であるブルーカラー世帯に不利になると受け止められ、大きな反発を招きました。そのため政府は低所得者向けに所得税を減税し、公的保育を拡充、女性の就労を支援するため公務員として積極的に雇用するなど、個人への支援を拡大した。その財源の中心は増税した消費税などで、国民の重い税負担と引き換えでした。

 米国のように公的支援が手薄い国もあります。税負担は軽く、市場原理の中で能力ある女性は活躍できる半面、国内の経済格差は大きい。

 日本は、いったいどちらを目指すのか。与野党とも、提案する政策に世帯と個人を支援するものが混在している状況です。税負担とセットにして国民に選択肢を示すべきだと思います。

年金の「第3号被保険者制度」

 1985年にできた制度で、配偶者が会社員などの2号被保険者で自らの年収が130万円未満なら、3号として国民年金の保険料を支払わなくても老後に基礎年金を受けられる。3号の保険料は、会社員ら2号被保険者全体で負担している。

 対象者675万人(2024年5月)のうち、98%が女性。夫婦共稼ぎの増加に加え、パートなど短時間労働者にも厚生年金の適用を進めていることもあり、1995年度の1220万人をピークに減少している。

 昨年秋以降、経済界や労働団体から3号制度の廃止を求める提言が相次ぎ、厚生労働省は5年に1度の年金制度改革の関連法案の付則に初めて検討規定を設ける方針を決めた。改めて3号制度の実態を分析した上で、検討する場を設置することを想定している。

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蒸気と同じ記事を書いた記者のもう一つの記事。こちらの方は、すこし永瀬氏の意見が明確に示され、対案も出している。だから「ましな記事」である。

ただし私から見れば、不十分である。個人単位型で総合的に改革することを言わないので、例えば子供を個人として考える」というのではなく、「子どもを持つ女性が自立できる賃金を得られるようにする」というような言い方になっており、これはまだ家族単位的な発想が残っている面がある。中心にすべき考え/原則は、子どもを持つか持たないか、いるかいないか、男性か女性か、そういうことを関係なしに制度を設計することが必要なのである。

育休や時短勤務なども、子どもの権利として考えて、誰かがケアする必要があり、それが学校や学童や保育所であり、育休であったりするのである。母子をセットで考える危険性に敏感なるケア論でなくてはならない。ケアは子供の権利であり、社会的労働である。だから血縁者でなくても高齢者や子供をケアするときには社会的な再生産労働を担うとして賃金などが保障されるのである。子供がいない人にも、ボランティア休暇など、公平性が必要である。

また女性の賃金を上げるというのも、家族単位発想の年功賃金を批判・解体し、個人単位の職務給にしないといけないがそういう指摘もない。家族単位系の手当もなくす必要がある。民法夫婦別姓などの改革との連動も書かれていない。ワークライフバランスも個人単位にしないといけない。年金だkでなく税と年金含め社会保所全体の個人単位化が必要である。それは結婚制度の特権の廃止である。男性の労働自体を残業しない個人単位型にしないといいけない。その他、今回の第6回講義で示したような制度と考え方の統合的な個人単位化と、そのための基盤としての高負担の社会民主主義の連帯社会にするという話にしていく必要があるが、以下の意見もそのような全体から見れば非常に狭い部部の指摘にとどまっている。今なら所得税を上げることを含め、財政問題にも言及し、ポピュリズム的な円税志向、手取り増やせ論を批判すべきであるが、それもない。

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突出して低い日本女性の賃金 経済の停滞や少子化にも影響

朝日新聞、聞き手・大貫聡子 岡林佐和2025年5月17日

年代別にみた女性の第3号被保険者の割合

 夫が稼ぎ手で、妻は扶養内で働く。こうした性別役割分担世帯を優遇してきた第3号被保険者制度。女性のキャリアに詳しい大妻女子大学永瀬伸子教授(労働経済学)に問題点を聞いた。       

 残業や全国転勤、配置転換などの企業の命令に「無限定」に従う正社員の夫と、家事育児を担う被扶養配偶者の妻。こうした夫婦のあり方を推奨する日本型雇用慣行と第3号被保険者制度は、性別による役割分担を推進し、日本経済の停滞や少子化の一因となっています。セットで見直すべきです。

 1980年代、正社員は未婚女性と、妻を扶養する男性のものだった。一方、低賃金だが労働時間が比較的自由になり、企業側にとって社会保険を負担せずに済む「パート労働」は主婦のものでした。

 しかし2000年代以降、規制緩和で非正規雇用が増え、主婦のものであったパート労働が配偶者のいない男女や、本来ならキャリアの基盤を築くべき若者にも広がりました。

 また近年は、女性の労働力人口が増える一方で賃金構造は変わっておらず、女性の低賃金が全体の賃金を押し下げる要因となっています。労働力調査などを元に推計したところ、大卒男性の中年期の年収中央値が800万円程度なのに対し、大卒女性は170万円程度でした。英国や米国と比較しても日本の女性の賃金の低さは突出しています。

 こうした環境で、低賃金で子どもを持つことを考えづらかったり、たとえ正社員であっても依然として「無限定」な働き方を求められ、子育てをしながらの継続に難しさを感じて離職したりする女性は少なくありません。

 子育て期に配慮が必要なのは、配偶者の有無や正社員であるかどうかとは関係ない。3号だから保護するのではなく、育児をする男女への保護を拡充し、そうした事情がない場合は社会保険料を支払うとともに一人前の給料を得るようにすべきです。

 2040年までに現役世代が約1千万人減少するとされるなかで、女性の賃金向上は日本経済の最も大きな課題です。

 女性活躍推進法で、正社員の中の女性管理職比率を増やしたとしても、 そもそも女性が正社員を続けにくい働き方がある。男女問わず雇用者が子育ての時間を持てるとともに、子どもを持つ女性が自立できる賃金を得られるようにする改革を考える必要がある。

 そうしなければ、女性の低賃金は解消されず、子どもを持たない選択をする女性は減らないでしょう。その結果、日本の未来は明るくなりえません。正社員と非正社員の二重構造を解消することが、子どものコストを負担できる社会構造のためには不可欠です。若い女性が十分に自立できる年収を持てると期待できる社会を、「社会保障」として考えるべきです。

年金の「第3号被保険者制度」

  1985年にできた制度で、配偶者が会社員などの2号被保険者で自らの年収が130万円未満なら、3号として国民年金の保険料を支払わなくても老後に基礎年金を受けられる。3号の保険料は、会社員ら2号被保険者全体で負担している。

 対象者675万人(2024年5月)のうち、98%が女性。夫婦共稼ぎの増加に加え、パートなど短時間労働者にも厚生年金の適用を進めていることもあり、1995年度の1220万人をピークに減少している。

 昨年秋以降、経済界や労働団体から3号制度の廃止を求める提言が相次ぎ、厚生労働省は5年に1度の年金制度改革の関連法案の付則に初めて検討規定を設ける方針を決めた。改めて3号制度の実態を分析した上で、検討する場を設置することを想定している。

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