ソウルヨガ

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軍事費5%の圧力で喜ぶのはだれか

  • 講義録の一部紹介
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  • 軍事費増大は米国から「押し付けられる」ものか

私が昔から言っている「軍事費増大の圧力」について基本の考え方をここで書いておく。

25年6月、トランプ政権は、日本などに大幅な軍事費増大増額を求めてきた。

 。「米国第一」を掲げ、安全保障をめぐる同盟国との関係が「不公平だ」と主張して不満を見せるトランプ大統領は、アジアや欧州へも圧力を強めている。

トランプ政権は、中国による大規模な軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発を理由に挙げ、アジアの同盟国が欧州・北大西洋条約機構NATO)にならうべきだ、「より公平な負担の分担は、同盟国と米国民の利益となる」と述べた。

NATOは、ロシアの脅威とトランプ氏の復権・圧力を受け、従来の防衛費を国内総生産(GDP)比で3・5%に引き上げたうえ、防衛関連・インフラなどのより広い範囲の支出に1・5%を充てる計5%を、新たな防衛費の基準とすることを検討している。

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これに対して、関税・輸出入問題と同じく「米国からおしつけられた負担」ととって「とてもそんな増額できない」と財政負担の重さで困ったり反発する人もいるであろう。軍拡反対論者、平和主義者、非暴力主義者というスタンスから、反発する人もいるであろう。

だが逆に、もともと日本の軍事力増大を求める「軍拡論者、好戦論者、保守主義者、右翼、極右、防衛省関係者、日本ファースト、愛国主義者、ナショナリスト、排外主義者、民族主義者」(軍拡派Aとする)は、この「米国からの要請」を好機ととらえて、いまでさえ急速にDGP2%水準へ向けて大幅な防衛費増額をしている(2027年度の防衛費をGDP比2%に増やす方針で毎年大幅に増額中)のに、一層の増額を求めていくであろう。防衛費増額は、そうした「軍拡派A」にとって政治的勝利(政治的な勢力拡大)であるので、団結して大軍拡を進めるであろう。

また実は、日本の大幅な防衛費増額(対GDP3%以上)を喜ぶ別の勢力もいる。それが、防衛費関連で儲ける者たち、利権を得る者たちである(これを軍拡派B,とする)。米国が求めるのは米国の武器関連を日本が購入することであろうが、武器購入でもその手続き・流通関係関連で日本でも設ける者たちがいる。また日本の国内にも軍事関連産業があり、当然防衛省はそこも使うので、日本国内で儲かる者たちがおり、そことつながって利権・リベート・キックバック・接待などを得る者たちがいる。

こうした軍拡派AとBは、重なっていることもあるが、結論はトランプ政権の要求を内心では大喜びしており、これを好機ととらえて裏で暗躍しているということである。

こう考えると、裏でのロビー活動などでも、米国の共和党・右派系に、「日本への軍事費増額を求める」要請をしている事だろう。

そういう人たちがいるので、今後警戒しないといけないのは、日本の世論の形成・誘導において、「軍拡派A/B」が自分の本音をおくびにもださず,「本当は財政の事もあって米国からの防衛費増額は困るから少し嫌だけど、米国と同盟国だし、確かに中国やロシア、北朝鮮が攻めてくるかもしれないし、抑止効果もあるだろうし、世界的に皆が3・5%ぐらいは最低水準になってきているから日本も増額はしょーがないよね」という空気を作って、「交渉して、米国にもがまんしてもらって、間をとって、せめて軍事費をGDP比2.5%にとか、3%で米国と交渉しよう」といって、まるで、2,5%なら日本の勝利だみたいな話をする、そういう話の進め方である。

の本のGDPは巨大で、2%も巨額過ぎるのであり、増額は全く必要なく、危険性を増大させることにしかならない。軍拡をしたくて仕方ない人びとの思い通りになって、戦争を近づける選択をすべきでないと私は考える。

皆さんは、今後数年の日本社会の議論の状況を見て、テレビに出てくる人がどういう言い方をして結局、軍事費増大を進めるのか、抵抗したり減らす方向を主張するのかよく見てほしい。多くは2%への増額を根本批判せず、2%以上に少し増やすのは仕方ないというだろう。

なお、トランプ政権の話の進め方はディールであるので、最初にガツンと大目にいって(トランプはこの間、なんの合理的根拠もなく、5%と言っている)少し妥協したように見せて目標を獲得するという作戦をよく取る。だから、米国防総省のパーネル報道官が「NATOの同盟国が防衛費支出をGDP比5%とする基準の設定に動いているので、日本を含むアジアの同盟国が欧州のペースと基準に迅速に追いつくよう行動するのは当然のことだ」というような言葉に影響されて、「2%では少ない」なんて思うのはまったく愚かだと自覚しないといけない

日本は戦争する必要はないし、日米軍事同盟は不要で破棄すべきだし、自衛隊は災害救助隊にすべきだし、財政は大幅赤字なので軍事費はなくして災害救助隊に回すだけでいいのである。戦争や軍拡で儲けたい輩に騙されてはならない。米国には、米軍基地から出ていってもらって、まったくおもいやり予算も出す必要などないのである。

米国が日本御国内に米軍基地を置く持ち治外法権的に特権をもってふるまっているのも問題である。軍事負担をもっと増やせ、思いやり予算を増やせというなら、米軍はもう日本から出ていけばいいと交渉すればいい。日本から米軍基地を引き上げるのは米国は嫌なので、日本は平和国家としてもっと米国基地を減らす方向で交渉すべきと思う。私のスタンスと違う人は決まり文句で「お花畑の意見」というが、そういっている者が実は根源的に考えていないだけなのでいくらでも議論はできる。

だが生き方や思想の問題なので、簡単には理解し合ったり妥協できたりしないであろう。しかし、平和主義・非暴力主義・非武装系のスタンスも入れて様々な可能性を選択肢に入れて議論すべきは当然ではないのか。世界最悪の赤字国歌で軍事費を2%以上にするなどありえないという現実主義を話し合わねばならない。

すでに軍拡派ABと利害が重なる自衛官自衛隊関係者、制服組、防衛省関係者)が日本社会でのさばり始めている。テレビには、防衛研究所の人間が多く出て、世論を「暴力主義、軍事発想」で誘導している。国会の議論などを経ずに多くの安全保障関連」の事が裏で勝手に進められて行っている。前の戦争の反省から「背広組(文官)」が制服組を統制する体制をとってきた戦後日本の「文民統制シビリアンコントロール)」は、形骸化しているともいえる[1]

石破首相は、制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長と月4回程度意見交換している。吉田氏と中谷元・防衛相との会談はさらに多い。「吉田氏は1日に何度も大臣室に入ることもある。そういう中で「ワンシアター(一つの戦域)」構想などが進められている。

 防衛庁時代を含め、3度目となる防衛省トップを務める中谷大臣自身、陸自出身の元制服組である。24年10月の就任後、同じ防大24期生の番匠幸一郎元陸将と半沢隆彦元空将を防衛相政策参与に任命した。

こうした傾向は安倍政管で進んだ。安倍政権下で河野克俊氏は4年半、統幕長を務め、安倍氏の唱えた自衛隊明記の改憲案について「ありがたい」と発言した。自衛隊OBの岩崎茂元統幕長は3月、台湾行政院(内閣に相当)の政務顧問に就任したりしている。

欧米では、軍の指揮官は政治的中立性を維持し、政治指導者の政策決定に絶対的に服従しなければいけないとされているが、日本は自民党政権が長いこともあり、自衛隊自民党・右翼保守主義者とが強く結びついている。制服組がコントロールするということが形骸化し、制服組は『自衛隊のオペレーション(部隊運用)はそが我々にしかできない聖域だ』と考えて自民党国防族と結託してのさばってきているのである。

その結果、「文民統制」の見直し(後退)が進められてきた。例えば、2009年の防衛参事官制度の廃止である。これは、自衛隊防衛省の重要事項は、防衛参事官という局長級以上の背広組だけで構成する会議で決めていたが、制服組は不満をもち、これを廃止したのである。また2015年に背広組の局長をトップとする内局の「運用企画局」を廃止し、自衛隊の部隊運用を制服組が統括する「統合幕僚監部」に一元化した。これにより、運用については制服組幹部が防衛相や首相に直接連絡し、指示を受ける仕組みとなった。

このように日本では制服組が力を拡大して軍事国家へ近づいて行っている。戦争がしたくてたまらない人が増えている。そのプロセスで軍事思考のみの人の勢力拡大や利権や金儲けや政治的勝利を得ようとする人々が群がっている。

こうした流れの中に、2008年の田母神俊雄空幕長(当時)が政府見解とは異なり、過去の日本の侵略行為を正当化する論文を発表したことや、17年に南スーダンPKO派遣部隊の日報の隠蔽事件なども起こった。自衛隊汚職も起っている。自衛隊員の靖国神社への集団参拝、陸自部隊が前の戦争を「大東亜戦争」と呼んだ事件もあった。24年には靖国神社トップの宮司に大塚海夫元海将が就任した。まともで冷静でバランス感覚ある自衛隊幹部もいるようだが、おおきくはやはり軍隊である。

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つまり自衛隊は全体として右翼勢力的になっており、中立性や文民統制憲法66条)を軽視しているのである。

以上を踏まえて根源的に考える議論が必要である。別のところで述べるが、台湾有事で勇んで参戦する愚を犯してはならないし、どこかに「攻撃されそうだから先制攻撃」してはならない。力による平和、軍事力による抑止効果などを「現実的」といって思考停止して戦争に近づく愚かさを見直すべきである。別のところで紹介した小倉利丸氏の議論のレベルで、考えていく人が増えてほしい。

 

 

 

[1] 「(フロントライン 政治)日本式「文民統制」は今 自衛隊の役割拡大、「制服組」に発言力や存在感」(朝日新聞、2025年6月22日)